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ステルス・テーパリング

本日の日経平均は米株式の4日続伸や為替が円安に振れた事もあって続伸となったが、市場では先週来、日銀がETF買い入れのひそかな縮小所謂ステルス・テーパリングに踏み切ったとの観測が強まり市場に戸惑いの声が広がっている旨が昨日の日経紙マーケット面に出ていた。

日銀のETF購入に関しては当欄でも今月初めに「日銀トレード終焉」と題してETF購入配分見直し検討後のトレード変化などについて触れたが、NT倍率然りこれまでの購入タイミングも先週の動向を見るに上記のステルス思惑がより募るようになってきたが見えぬ真意を放置すれば出口の大きな障害になると同紙の末尾は締めている。

これまでイグジットに関しては様々な観測が飛び交ったがGPIF絡めた売却や移管論、信託銀行交えたクロスなど今も戦略論議が尽きないが何れにしろ長期戦になるといわれている。企業の4割の大株主にまでなり自己資本の3倍に相当する株の変動リスクを自らのバランスシートに抱える異例尽くめのケースになっただけに今後の具現化は以前にも増して注目されるか。


売られる金に買われる金

さて、昨日はトルコリラ急落で外貨ベースでの割安感が大幅に増した最大都市イスタンブールなどの高級ブランド店に連日外国人旅行者が長蛇の列をなして殺到している旨を書いたが、当然ながらその裏でタンス預金目的等で人気があった金貨はここ1週間で約35%値上がりしたとされ一般は購買力低下が起きている模様だ。

ところで金貨といえば、一方で米国の経済制裁の対象となっている反米国では金の存在感が増している旨が先週末の日経紙商品面に出ていた。中でも個人の金買いが飛躍的に伸びているのがイランでWGCによれば今年1-6月の地金やコイン需要は前年同期に比べて3倍に増えた模様。

通常は通貨安が進むと冒頭のトルコのように現地通貨建て金価格は上昇し買い手控え現象が起きるが、今回は経済制裁再会を控えての更なる金価格上昇見込みを背景に買いが旺盛になっているというこれまで培った肌感覚に因る現象が出ている。また他国ではロシアも昨年末からわずか半年で中央銀行が105トン積み増した模様。

米国債売却と併せ外貨準備における金積み増しで米国依存度を低下させる狙いだが、当の金価格は1週間前から1年半ぶりに1200ドルの大台を割ってきておりロシアはじめとした中央銀行にとっては好都合とも言える。今後のディスクロで各国中銀の保有状況がどのように変化しているのか興味深いところである。


にわか爆買い

さて、周知の通りの米対立を原因として深刻な急落に見舞われているトルコリラだが、最大都市のイスタンブールなどでは店側の価格改定が追い付かず、外貨ベースでの割安感が大幅に増した高級ブランド店には連日外国人旅行者が長蛇の列をなして殺到している模様が伝えられている。

ブランドによっては自国の約半額にまでなったケースも出ているようだが、欧州高級ブランドといえば先に発表された仏LVMHの1-6月期純利益は前年同期比41%増となり、仏ケリングも純利益が3倍近く拡大した模様だ。ミレニアル世代やエシカル志向へもターゲットを広げアジア地域も活気を取り戻したのが背景という。

そんな折に足元では米中貿易摩擦への警戒感が依然燻っておりアジア地域の消費意欲に再懸念も一部出ているものの、本邦では高額コト消費など中心に富裕層の高額消費が増えている旨が先週の日経紙夕刊一面を飾っていた。斯様な環境下で消費者の細かなニーズにどれだけ対応出来るかが鍵となろうが、冒頭の爆買い現象よろしく一点依存型のリスクも経験しているだけに各社の舵取りが問われよう。


根強い短期嗜好

さて昨日は貴金属系ETFなどコモディティモノが中長期目線で人気がある旨を書いたが、株式モノとでは一寸事情を異にすると思ったのが一昨日の日経紙市場点描にあった日本株運用のETF大手ウィダムツリー・ジャパンを提供しているナスダック上場の大手ウィダムツリーが、3年前に都内に構えた拠点を来月末までに手じまうというスピード撤退の記事か。

理由としては長期保有を促したい同社の戦略に対し、国内ではレバレッジ型など長期投資には不向きとされるETFに人気が集まるなど同社の戦略と相いれない事が背景にあったようだ。この辺に関し当欄では2年前の今頃に「本来ETFは長期向けなものの、レバ系への傾斜が鮮明な日本は投資家の短期嗜好が顕著に表れているか。」と書いていたが、果たしてという感じだ。

ETFといえばこれまで200銘柄以上が上場しているにもかかわらずレバレッジ型の一部を除けば売買高が極端に少なかった事で、リクイディティーを高めるために先月から東証ではマーケットメイク制度が導入されたばかり。見切り千両で撤退する外資と進行中の改革、何れも粛々と為されているがNISA等とも併せ今後どう啓蒙してゆくのかにも懸かっている。


安定の貴金属ETF

さて昨日触れたトルコリラ急落だがその余波はコモディティーにも及び、この急落を受けユーロ安・ドル高が加速、ドル相場と逆相関の金からの資金流出でニューヨーク先物の週初終値が前週末比約20ドルほど安い1トロイオンス1190ドル台とほぼ1年半ぶりに1トロイオンス1200ドルの大台を下回った旨が本日の日経紙商品面に出ていた。

1年半ぶりの安値示現という一方で、この金などを中心とし東証に上場されている金の果実シリーズを筆頭としたETFなどの貴金属投資が、実物資産という観点から不測の事態に資産全体の目減りを防ぐ「守り」の役割なども期待されじわりと浸透している旨が週明けの時事にも出ていた。

このシリーズ、主力の金が上場した8年前には当欄で「売買代金は1億3千万越えとなかなか。この手では首位を誇る「SPDRゴールド・シェア」の同日の売買代金が約7億7千万、大証に上場している「金価格連動型上場投資信託」は約3億8千万、同じ大証の「国内金先物価格連動型上場投信」が約1,600万、そして「ETFS金上場投信」が約6百万であった事を考えると今後にも期待が持てよう。」と書いていた。

あれから8年、その純資産残高は588億円となり実に上場時の30倍近くに膨らんでおり、これを含め銀、プラチナ、パラジウム4商品のそれも今月アタマの時点で736億円と上場時から20倍を超えるなど軌道に乗った感がある。市況に左右されない安定感が要だが、世界規模で見ても金ETF残高はこの2年半で5割強増加しており今後も要注目といえる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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