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今年もいたちごっこ

GOLD NEWSでも出ている通り、昨日に田中貴金属工業が発表した平成30年の資産用金地金の販売量は米中貿易摩擦や英国のEU離脱等のリスクに備える意識の強まりから「安全資産」とされる金に個人の投資資金が流入した結果、前年比35.7%増加の2万4403キロとなり買い取り量は前年比20.7%減の1万7757キロとなっていた。

昨年のドル高加速で夏にかけて金の国際価格が下落、これに伴い国内価格が28年1月以来の安値を付けた事で割安感から8月の月間販売量は実に約4千キロに迫る結果となったという。真っ当な主力業者のデータはこんな感じであるが、一方で今年も都内の買い取り業者で密輸した金塊を換金していた輩が本日千葉県警と東京税関成田税関支署に逮捕された。

手口としては正規輸入を装い自動車サスペンションのバネ部分などに金塊を挟み込んだ上で段ボールに詰め空路で密輸していたというが、押収された220キロというのは一度の押収量としては過去最多という。以前書いた国庫から100億円超が奪われている試算も、今回逮捕された輩の密輸量が計4トンにもなるとみられる事であながち的外れな数字ではなく当局との飽くなきいたちごっこは今年もまた継続しそうだ。


慣行の呪縛

本日の日経紙金融経済面には松井証券や岩井コスモ証券など各証券会社の新たな顧客獲得に繋げるサービスなどが書かれていたが、うち後者の岩井コスモ証券は主流の対面取引を効率化し純増に応じた報奨金のほか手数料収入の一部を得られるものの、金融商品の乗り換えに関わる営業では報奨金を得られなくしている旨が書かれていた。

対面営業の過剰営業防止策ともいえる措置だが、この過剰営業といえば日曜日の読売紙では証券会社が株売買の委託手数料を稼ぐために顧客に株を短期間で買い替えさせる回転売買が横行し、証券取引当監視委員会が今後証券各社への立ち入り検査を強化するなど警戒を強めている旨が書かれていた。

背景には某証券会社による過剰な回転売買で常識を逸脱する手数料を払わされ損失を出した高齢者の例が出ていたが、ネット取引の普及と共に暫くこうした記事を見掛けなかっただけに一寸新鮮であった。ネット取引に不慣れな向きなど根強い需要がある対面取引だが、今の営業マンはスキャルピングなら分かるが仕切りや不抜けなどは知らない向きが普通で未だこうした悪しき慣行が残っている組織は早晩淘汰の道を辿る事になるか。


侃々諤々遅々として

先週末の日経紙・マネーアンドインベストメントには「金融商品、損益通算で節税」と題して、各種金融商品で損益通算が出来る組み合わせ例などが出ていた。また今回は末尾の方に高値から急落した背景もあってか、一昨年に人気が沸騰した仮想通貨に関して雑所得との損益通算が可能な旨も触れてあった。

またFXの損益は日経225先物など先物商品と損益通算できる旨も書かれていたが、このデリバティブと絡めた株式などの損益通算に関してはいまだ侃々諤々といった感じで実現には至らず。この辺に関しても先週木曜の日経紙・市場点描にて証券会社等による2018年末調査で93%が賛成という旨であった事が書かれている。

当欄でもこの件に関してはかれこれ10年くらい前から触れ、今から6年前の税制改正大綱にてデリバティブと株式の損益通算が検討事項に盛り込まれた時には、投資の啓蒙・促進にはある程度暫定でもドラスティックな措置の必要性を感じると書いていたが、上記の通り悪質とされる課税回避懸念等から遅々として先へは進んではいない。

斯様な侃々諤々の過程でテクノロジーの進化から仮想通貨などが俄かにクローズアップされ取り急ぎ?の対応で追われる様なども想像に難くはないが、取引所収益の柱などデリバティブが時代の趨勢となっておりこういったインフラ整備も並行して為されてゆかねばそれこそ国際競争で勝ち残りの道も遠のく懸念がまたぞろ出てくるか。


日本のセンス

さて、昨日の日経紙社会面には横山大観らの近代日本画コレクションで知られる足立美術館が、米国の日本庭園専門誌である「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の2018年日本庭園ランキングで1位に選ばれた旨の記事があった。これで2003年のランキング開始以降、16年連続で1位に選ばれている。

同美術館は上記専門誌以外にも「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」にも取り上げられており、日経紙では専属の庭師が手入れをしており季節ごとに違った景色が見られるとしか書いていないが、個人的に魅せられるのは例えば楠や赤松を計算し尽くされた位置に植え窓枠を刳り貫く事で庭園の景観を絵画のように変貌させる「生の掛け軸・額絵」のようなユニークかつ計算された美の演出が為されている点か。

また、計算された美といえば他にも背後の山を借景する事でその奥行きに深みを持たせている演出もあり、こうした借景は此処以外でも例えば京都実相院の優美な枯山水は比叡山を借景している。また此処は四季おりおりで風景をピカピカに磨いた床に反射させて見せる所謂「床もみじ」も有名である。

この「床もみじ」といえば当社のゴールドフォトコンテストで特別賞に輝いたモノに瑠璃光院の廊下に映える秋の景色もあったが、斯様に計算された日本独特の美の演出というものは唯一無二のもので、ジャポニズムが時代を超え諸外国の人々を虜にし続けているのも合点がいくというものだ。


アクティビストの捉え方

さて、本日の日経紙マーケット面には「還元期待 買いを集める」と題し、昨日のオリンパスのストップ高に見られるように「物言う株主」が保有する銘柄への買いが膨らんでいる旨が出ていた。このオリンパスだがクリスマスに付けた年初来安値から、一気に年初来高値を更新してきた背景には先週末発表の企業変革プランの策定があった。

特に異例だったのは大株主である有力アクティビストであるバリューアクト・キャピタルのパートナーを取締役に自ら受け入れるという点で、市場の想定を超えた大幅な構造改革を伴う組織変更がポジティブサプライズ視された。このアクティビスト、バリューアクトといえば当欄でも昨年の3月に同社が日本企業への投資を始める旨を取り上げたことが思い出される。

当時同じアクティビストの米エリオット・マネジメントが日立国際電気のTOB劇において価格引き上げ要求の揺さぶりをかけるなどの行動に出た事で同様のケース続出も予想されたが、懸念される全体価値よりも自社のリターンを優先させるのではという部分に関しては株主からの選任ありきではなくグローバル企業のガバナンスを検討した結果だとしている。

確かに同社はマイクロソフトはじめ40社以上に取締役を派遣した実績があるという事でオリンパス側は企業価値向上のカタリストとする意向を表しているが、今後アクティビスト側がどのように舵を取りはたして相乗効果も出るのかどうか株式保有姿勢とも併せて注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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