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東京2020

さて、いよいよ今週は東京五輪の開幕である。この東京オリンピック・パラリンピックは「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として世界に発信する機会としたい」と菅首相は常々発言してきたが、打ち勝つどころか対策分科会が警鐘を鳴らしてきた通り感染者数増加ペースが急上昇するなど一向に収束しないまま4度目の緊急事態宣言下で行われる。1年の延期が決定して以降の徹底的な検証・対策を怠り、場当たり的に希望的観測を抱き続けたツケが回って来た結果だろう。

しかしこの東京五輪、「お・も・て・な・し」のプレゼンで誘致が決定し日本中が沸いたのも束の間、新国立競技場に選ばれた当初のデザイン案が途中で断念撤回され、当初の五輪エンブレムもベルギーの劇場ロゴのパクリと問題になりこれまた白紙撤回、大会組織員会会長は女性蔑視発言で辞任に追い込まれ、開幕を週末に控えた直近では開会式作曲担当者が過去を掘り返され突如の辞任と何かとケチがついているが、ここまで祟られる?ともはやカオスである。

カオスといえば最近の「御触れ」もコロナ禍でも資金繰りを支えるように金融機関に求めておきながら、その一方で要請に従わない向きには立場を利用した融資制限を仄めかす民主主義の原則を無視した強圧的な態度で担当大臣が炎上したり、切り札とされるワクチンにしても需給を見誤りボトルネックの問題が起きているなど彼方此方の綻びが目立つ。

この令和の時代に昔の軍隊を彷彿させるような光景を見るとは想像もしなかったが、今更ながら政府はリスクコミュニケーションを再考し情報発信の仕方に全力をあげるべきか。今回のオリンピックも別な意義で開催ありきの話が進められていたならその旨明言したうえで対策を考えた方がよかったと思うが、何れにしろもう後戻りが出来ない現況下大過なく五輪を終えられるのを祈る。


サステナブル社会へ

過日所用で高島屋へ行ったのだが、エントランスを抜けた先で目を引いたのは新たに取り組みを始める「Depart de Loop」の大きなデコレーションであった。これは販売した服を回収し新たしい服に再生して販売するという完全循環型社会の実現を目指した同社のプロジェクトで今が旬?なサステナブル社会を意識した感が全面に出ていた。

この手の試みはアパレル業界では既にユニクロがこれと同様のダウン商品のリサイクルを昨年に始めているが、ファッション産業は世界で年間約9200万トンもの大量の服が廃棄されている事で非常に環境問題に対して負荷が高いと指摘されており、石油業界に次ぐ世界2位の環境汚染産業とまで言われているのが現状である。

洋服の6割を占めるポリエステルのリサイクルは廃棄量の大幅な減少に繋がり、先月の日経紙の広告でもクラボウが再生ポリエステルを原料とする次世代羽毛を開発した旨が出ていたが、上記のユニクロと並ぶファストファッションの雄H&Mも2017年にはサステナブル戦略を発表、ZARAもペットボトルからの再生を既に導入している。

但し現状リサイクルの手法によっては石油で一から創るよりコスト的に高くなり、冒頭の高島屋の製品に見られるように自ずと末端価格に反映されてしまうのは以前当欄で書いた廃材から創ったチョコと同様か。とはいえ斯様に百貨店はじめイオン等も再生ポリエステルを一部使用した衣料品を先月から本格販売するなど大手流通でも続々とこの手の動きが顕著になってきており、漸く各社サステナブルに本腰を入れ始めたのが肌で感じられるようになってきた今日この頃である。


遜色のないバカ

さて、本日の日経平均は手掛かり材料難のなか米市場の軟調を受け3日ぶりに反落となったが、そんな中で一際立っていたのが肥料大手の多木化学か。この株、つい4営業日前の先週末には5,000円の年初来安値を示現していたのだが、本日は寄り付きからストップ高まで買われ一気に年初来高値を更新と破竹の勢いとなっていた。

この背景としては、同社が香り・食感共に「松茸」に酷似する「バカマツタケ」の大量生産試験が可能な研究栽培施設の増設を発表した事で事業化の前進が囃されたものだったが、昨日今日の急騰劇を見るにちょうど3年前に同社が世界で初めてこのバカマツタケの完全人工栽培に成功した時の事が思い出される。

当時もその発表翌日から3日連続でストップ高を演じた後も日経平均が4ケタの急落となるなかを続伸するなどわずか3営業日で株価は約7割の急騰を演じたのが鮮明に思い出されるが、絶対に不可能といわれた舞茸の人工栽培を雪国まいたけが成功させたのを皮切りに斯様な日進月歩の技術を以て従来は絵空事だった領域の克服が加速している。

かつて高根の花だった舞茸や山伏茸など今ではどこのスーパーでも安価で何時でも手に入るが、こうなると今後この分野では料理界のダイアモンドと称されるトリュフなども人工栽培を成功させる向きが出て来るのだろうか?と夢は膨らむ。何れにせよ斯様な進化で数年後の食文化が今とは違った光景になっている可能性も十分に考えられるか。


鯨の存在感

先週末の日経紙マーケット面では「クジラが動かす欧米金利」と題し、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)が5年に一度のポートフォリオ見直しを2020年度に実施し空前の外国債券買いに動き、欧米を中心に海外の金利上昇を抑える一因になるなど債券市場でGPIFの動向に関心が集まっている旨が出ていた。

このGPIFといえば新型コロナウイルスを受けた主要国の経済対策で大規模な財政支出や金融緩和から主要国株価が大幅に上昇し斯様なポートフォリオ見直しも奏功した結果、先に発表された2020年の運用実績は37兆7986億円の黒字となり、その黒字幅や収益率共に過去最高となっている。

年度の運用実績が黒字になるのは2年ぶりの事だが、昨年の1~3月にこの損失額が四半期としては最大に膨らんだ際に当欄では国債等に振り向けるべきとの慎重論も出てきそうだが、断片的にスポットで見るのではなく過去と照らし合わせマクロな視点で捉える事も肝要かと書いておいた。

しかしGPIFほどのクジラ的存在になると、小さいところでは先に婚約?が決まっていたところへニトリがTOB参戦し手中に収めてしまった島忠の筆頭株主であったり、約1兆円保有しているアップルが大化けの波に綺麗に乗るなど世間の関心事にも密接に絡んでおり、株に興味等ない向きも年金を意識する都度頭の片隅にでも思い出したらより身近に感じるようになるかも知れない。


其々の奔走

さて、東京都に4度目の緊急事態宣言が出された事もあり本日の日経平均は終日ダラダラと続落し安値引けとなったが、そんな中で今週は6日まで東証2部指数が3営業日続伸し7,739.83ポイントと、2018年1月23日に付けた7,731.41ポイントを上回りおよそ3年5か月ぶりに過去最高値を更新している。

この動きの背景には一昨日に当欄でも書いたように、東証の市場再編を見据え東証一部に代わるプライム市場に昇格するとの思惑による個別物色も背景にあるところが大きいだろうか。かつては一部に上場しで日経平均構成銘柄にもなっていたエンジニアリング御三家の一つ、千代田化工建設はじめ日本精機や中央自動車工業、つい昨日に年初来高値を更新したヨネックス等々候補銘柄は数多ある。

この東証2部指数の約3年5か月ぶりの過去最高値更新と並んで日経ジャスダック平均株価も先月末には2018年5月以来、約3年ぶりの高値を付けてきているが、こちらのポストからはフェローテックホールディングスや芝浦電子などがプライム昇格有力銘柄として挙がりいずれも先月末には年初来高値を更新してきている。

当然ながら既定の一部からも多くの企業がプライム入りを目指し、創業者など大株主に株を手放してもらう働きかけや保有する自己株式を消却したりと奔走する動きが見られるが、駆け込み?でこれが適ったとしても要はその後の維持で中長期的に企業価値を高めるべく市場と向き合う事が求められるなどその後こそ大規模な再編イベントの意義が問われるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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