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無い物強請りの市場経済

先に東京商工リサーチが発表した10月の全国企業倒産件数は596件と前年比で14%増加、燃料価格の高止まりや販売減を背景に食品製造業の破綻は昨年の4倍以上に増加している。さて、この発表があった日に廃業を発表したのが佐久間製菓だが、商品名でないとなかなかピンと来ないと思うがあの「サクマ式ドロップス」の販売元である。

ジブリアニメ「火垂るの墓」にも登場したこの不朽の名作だが、今年で製造を中止し来年1月に自主廃業というなんとも残念なお知らせだ。この報があって以降、まさかと思いながらも興味本位で彼方此方ネット上を見てみたら果たしてというか1缶200円程度のこの品が数倍から中には10倍を超える値で出品している向きが続々と確認された。

そういえば上記のアニメで思い出したが、今月はこのスタジオジブリ作品の世界観が再現されたジブリパークがオープンしている。爆発的な人気で既に年内の入場券は完売状態だが、これまたネット上ではパーク内でしか買えないぬいぐるみやクッション類などの限定グッズが定価の2倍から5倍近い値で販売される事態になっている。

更には企業など関係者向けに無料で配布されたパークの招待券が、通し番号を消したうえでフリマアプリ等で約4~7万円の法外な値段が付けられて販売され既に売り切れのモノも目立つ。本人確認の必要が無い盲点を突かれた格好だが、冒頭の件含め転売ヤーのあくどい商魂には呆れつつも同時に広義では経済的自由主義の一角と捉えられなくもないが、売る悪に買う愚で成立するこの構図に対するプラットフォーマー側の対策も引き続きの課題となるか。


ボージョレ・ヌーヴォー2022

今晩いよいよ年に一度のイベント、ボージョレ・ヌーヴォーが解禁される。今年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で空輸ルートが制限され、遠回りになった影響で輸送コストが高騰した事や円安が背景となって価格が2倍以上になるモノも出て来ているという。そういった事で船便利用も拡大し、輸入期間の長期化から年末まで売り場を構える店舗も散見される。

ところでボージョレ・ヌーヴォーといえば、ワインに造詣が深くない私でも今年の出来栄えなるものが毎年興味深い。バブル期から「過去10年で最高」とか「ここ10年でも最高の出来」なる表現が目立ち、輸入量のピークを記録した2004年は「100年に一度の出来といわれた昨年に劣らない」と評され、その後も「50年に一度の素晴らしい出来」等々○○に一度の乱発で一体どれが当たり年なのかさっぱりわからなくなる。

それは兎も角もボージョレ・ヌーヴォーの輸入量は2004年をピークに長期減少傾向にあり、昨年の輸入量はこのピーク時の3割程度にとどまっている。こうした素地の上に今年のこの値段高騰でボージョレ・ヌーヴォー離れが加速し更なる市場縮小が危惧されるところでもあるが、販売側も国産新酒で代替需要模索などの動きも見られ各社戦略転換が今後の課題になって来ようか。


過去最大級

米FTXの破綻で各所が戦々恐々だ。周知の通り先週は世界最大の仮想通貨交換業者バイナンスが買収合意するも一転してこれを撤回した仮想通貨交換業大手の米FTXが、チャプター11の適用を申請との発表が為された。その負債総額は数兆円にものぼり暗号資産業界では過去最大の破綻になる見込みというが、エンゼルスの大谷翔平選手がCMをやっていた事もあって日本でも利用者が広がっていた矢先の出来事である。

斯様に有名スポーツ選手らへの影響も気になるところだが、上記の大谷翔平選手は昨年に3兆円企業の顔!と同社とアンバサダー契約を結んでおり、その報酬の全てをFTXの株式と仮想通貨で受け取る事になっている。またテニスの大坂なおみ氏もパートナーシップを結びFTXの株式を取得しアンバサダー報酬を仮想通貨で受け取る事になっていた他、NBAやNFLの選手からスーパーモデルのジゼルブンチェン氏等々数多絡んでいる。

仮想通貨を巡るこの手の騒動は半年ほど前のステーブルコインのテラUSDなどが記憶に新しいが、その前には当欄でも度々取り上げたマウントゴックス事件もあったが今回の規模は桁違い。毎度の事ながらこれを受けた代表格のビットコインの価格は年初比較で約3分の1にまで落ち込む憂き目に遭っている。同社はロビー活動も精力的に行っていたというが、これでまたこれまで度々出来て来た規制強化論が再度喧しくなるかどうか注視しておきたい。


春闘

先週は日銀の総裁と総理が国内外の経済情勢や金融市場の動向などについて意見を交わす会談がなされたが、ここでは賃上げを伴う経済成長や物価の安定を実現するため金融緩和を継続する考えが伝えられている。この賃上げに関しては経団連の会長も先週に来年の春闘に向けた経営側の方針を伝えている。

そこで経団連会長は「今回の物価高騰が一時的であれば例えば一時金という考え方もあると思うが、ベア中心に考えていただきたい」と発言していたが、連合は5%程度の賃上げを求める方針という。ちなみに野党の提案で国民一律インフレ手当などの案も出ていた一時金だが、既にIT大手サイボウズや家電大手ノジマなどでは一時金や月払いという形で支給が開始されている。

日銀総裁は先月の会見で3%ぐらいの実質的な賃上げが無いと2%の物価目標を継続的・安定的に達成出来ないと発言していたが、確かに物価の実力とも言われる基調分野は1%にも満たないのが現状で物価目標の半分にも満たないでいる。これに影響を与えるのが賃金だが、連合の5%はそれとして3%程度はないと上記の日銀シナリオとの整合性がとれない感だがいずれにせよ来年の春闘が天王山となるだけに注目される。


再上陸彼是

さて、ちょうど1週間前に毎年恒例の日経トレンディ特集では2020年ヒット商品並びに来年のヒット予測ランキングが発表され、今年のヒット商品で首位となったのは累計で約10億本を売り上げた「ヤクルト1000」が輝いた。コロナ禍による生活リズムの乱れやストレス増加を背景にこの手の保健機能食品の21年の市場規模は1.5倍に伸長し今年は更に拡大する見込みという。

2位にはSNS発のキャラが国民的キャラに成長を遂げた「ちいかわ」がランクインし、5位には意識高くないY世代の心に刺さった「完全メシ」がランクイン、そしてY世代の次のZ世代の支持を集めたのは12位にランクインした安くSNS映えする服がヒットしたファストファッションブランド「SHEIN」で、先月大阪に店がオープンした際には4000人以上が詰めかけたという。

ところでこのファストファッションといえば、2009年に鳴り物入りで登場したものの19年に日本市場から撤退した米国発の「フォーエバー21」が来年日本に再上陸する。東証プライム上場のアダストリアがパートナー契約を結んだというが、この度の再上陸では激安を脱却し平均商品単価を上げる方向への方針転換で臨むという。

過去の失敗をもとに戦略変更といったところだが、もう一つフォーエバー21と時を同じくして撤退したアメリカンイーグルも先に再上陸を果たしている。日本はやはりブランドが再活性してゆくのに重要な市場という事なのかどうかだが、何れにせよSHEINのようにZ世代の心に刺さり勝ち組となれるか否か予断を許さないだけに注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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