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COP27

地球温暖化対策を話し合う国連会議であるCOP27の首脳級会合が終了したが、今会議は仏大統領や英首相がロシアによるウクライナ侵攻のエネルギー危機は気候変動対策に遅れを取る理由にはならず迅速に行動しなければならないとしながらも、今はこれまで話し合った様々な目標を実行出来ないと開始前から気候変動交渉官らが明言するなどやはりロシア侵攻が状況を一変させた感は否めない。

実際のところロシアへの経済制裁でエネルギーの輸入をストップさせたヨーロッパの燃料費高騰の酷さは連日報道されている通りで、これまで脱炭素を牽引してきたEUは石炭の取扱量が急増、段階的に火力発電所廃止の方向に向かっていた国も石炭利用拡大が報じられるなど各所で石油石炭回帰の動きが各所で活発化、先進国にあっても耐えられぬ民が各地でデモ行動を起こすなど反発する動きが多発している。

そうこうしている間にも着々と温暖化は進行しており今年は我々も猛暑日の多さを本当に実感した夏であったが、上記のヨーロッパはじめとし各国では猛暑どころではない最悪レベルの干ばつ化が進行し、パキスタンでは実に国土の3分の1が水没する事態に陥るなど生活を脅かす被害が世界中で多発しているのが現状。

これまで世界の気温上昇を1.5度に抑える努力を各国が追究するとの合意であったが、この設定した各国の目標が全て履行されたとしても今世紀末までに気温は約2.5度も上昇してしまうとの見通し。会議の冒頭で国連事務総長は「人類は選択肢がある。協力するか滅びるかだ」と発言していたが、まさにいま試されているようにも見える。


値段の価値

さて、7月末に当欄では所謂「ダイナミックプライシング」を取り上げたことがあったが、今月アタマの日経夕刊・値札の経済学ではUSJはじめとしてテーマパークに価格変動制が広がっている旨の記事があった。収益の最大化と混雑の緩和による顧客満足度の向上が狙いだが、プライシングを巡ってはこのUSJのエクスプレス・パスやディズニーリゾートのプレミアアクセスなど近年枝葉の広がりが目立つ。

このプレミアアクセス、乗るまでに長時間覚悟のアトラクションやショー観賞の待ち時間を短縮できるまことに便利なシロモノだが、待ち時間の短縮といえば長年皆に知られていたモノとしてはいつの間にか休止になってしまったファストパスがあった。これが有料化になって復活?した時は失望の声もあったが、頻繁に来援が難しく効率よく回るのがミッションの遠方の向き等にとってはお金に変えられない価値になるか。

お金に変えられないといえば、超予約困難名店の予約席オークションサービスも先月から始まっている。既に某寿司店のランチ席では飲食代をはるかに超える10万円以上の入札があるようだが、落札時には手数料を取られ来店時には当然乍ら飲食代は別。そこまでして行きたいのかと賛否両論必至だが、プライシング理論の基本はより価値を感じている客から多く対価を受け取る事と同紙に書いてある通り今後もこうしたところへ商機を見出す動きは続きそうか。


効果と弊害

昨日の日経紙総合面には「中小、価格転嫁に遅れ」と題し、帝国データバンクの9月の調査では原材料などコストの上昇分を商品・サービス料金に全く転嫁できていない企業が6月の調査の15.3%から2.8ポイント上昇し18.1%を占め、東京商工会議所が9月に纏めた中小調査でもコスト増を全く転嫁出来ていないが22.9%に及ぶ旨の記事があった。

こうした取引価格の適正化無くして賃上げの原資は生み出せないワケだが、需要減少や競合他社が価格を上げない等々の要因もあり上記の通り遅々として進んでいないのが現状。加えて中小企業は重くのしかかって来るのが新型コロナ関連融資の返済負担で、現在借り入れがある企業は全体の半数にものぼる。

米などを見るに賃上げ競争に付いて行けない低収益企業は淘汰され、そうしたことによって新陳代謝が進んで生産性の高い企業が台頭し賃金も全体として伸びてゆく構図だが、日本の場合は上記の融資等に加え税制や助成金での優遇を受け易くするなど政府の過度な保護政策が低収益企業やゾンビ企業増殖の一因となっているのも否めないところではある。

また日銀も意固地な超緩和策を粘り強く貫いているが、社会が変らぬようにとの痛み止め政策を維持している限り賃金は全体としては上がり難いか。先月の所信表明演説で首相は企業の生産性向上を軸とした構造的な賃上げを目指すとしているが、効果と弊害を天秤にかけた新陳代謝の促進へ中小企業政策の見直しが求められようか。


霜月の実感

本日から霜月入りである。既報の通り帝国データバンク調べでは先月の値上げが月別で最多であったことで峠は過ぎたという事だが、今月も明治や森永乳業など乳業大手が牛乳やヨーグルトなど身近な品目を本日出荷分から3年7ヵ月ぶりに値上げし、8月に書いた通り大塚製薬も今月出荷分からオロナミンCドリンクやファイブミニ等を25年ぶりに値上げする。

今年中に値上げされる累計2万品目超のうち約3分の1は先月値上げされたのに対し、今月の値上げ品目は先月の約9分の1程度と落ち着きを見せるものの、一方で今月は外食チェーンでの値上げが一段と広がる。原材料価格の高騰や円安を背景にフードコート等で人気のリンガーハットや餃子の王将、ミスタードーナツも人気商品を中心に何れも再値上げに踏み切る。

上記の通り値上げ品目数一服とはいえ、購入頻度の高い身近な品目の今月の値上げは物価高をより実感させる。今の足元の値上げは円相場が1ドル130円台だった夏頃に計画されたもので、先に大規模な介入が行われた150円に絡む水準が反映されるのは来年の2月頃になる見通しで一般は引き続き物価上昇圧力を肌で感じる日々が続きそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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