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不可解な引け商い

昨日まで4月以来の連騰記録の8日続伸を演じていた日経平均であったが、本日は年初来高値を更新した後さすがに息切れで9営業日ぶりに反落して引けた。各種テクニカル指標の過熱を横目に前日までの8日続伸で2000円近くも上昇しただけに漸くの一服といった感じだが、そんな中で本日はトヨタ自動車の引け際の急落が市場の話題となっていた。

寄り付き後早々に年初来高値を更新しあと後場は前日終値近辺での値動きで推移していた同社株だが、大引け商いで1400万株以上と日中の売買高の4割近くが集中し引けてみれば約5%安の急落での引けとなった。言わずもがな東証プライム市場で時価総額トップを誇る同社だけにこの引けの下落分だけで約1.5兆円が飛んだ計算。

これだけ纏まった売り注文であれば株価への考慮から時間外等の選択もあった筈という事で各所では誤発注の憶測まで飛び交っているが、引け後も特に何の発表もなされていないだけに思惑が募る。ここ相場の過熱感が意識されていたなかで思わぬ冷や水となったが、これだけでTOPIXの約4ポイントの下落に寄与するなど影響は少なくなかっただけに真相が待たれるところ。


33年ぶり

さて日経平均の騰勢は週が明けても衰えず本日で8日続伸となったが、大引けで31000円台をつけたのは1990年7月以来、実に約33年ぶりのことでバブル経済崩壊後の高値を更新することとなった。この日経平均の高値に先駆け同じく33年ぶりの高値を付けていたのはTOPIXであったが、斯様に今回の急騰は大型株が牽引している色合いが強い。

大きな節目の3万円大台を破った背景には先に発表されたGDPも一役買っている。内閣府発表の2023年今年1-3月のGDP速報値伸び率は年率換算で1.6%の増加、プラス成長となるのは3四半期ぶりで市場予想を上回った。全体を押し上げたのが内需の柱でGDPの半分以上を占める個人消費ともいえるが、こちらもまたバブル期並みの光景が徐々に復活してきた。

三越伊勢丹の購買データでは昨年の年間100万円以上の購買顧客が約50%とコロナ禍前を上回り、中でも年間1000万円以上の買い物をしている人の比率は倍以上に膨らんでいるという。なるほど確かに三越の逸品会など訪れた際には各ブースで高額品が次々と成約され、顧客が満足気にふるまわれたシャンパングラスを傾けている光景が彼方此方で見られたものだ。

今から3年前には米の所謂GAFAMのたった5社だけで東証上場全企業の時価総額を上回ったのが話題になっていたが、先週末には株式時価総額が1兆円超となった企業が過去最多となった旨が日経紙で報じられていた。33年ぶりの株価水準と併せいよいよ失われた30年を取り戻す時と期待は膨らむが、この間に欧米の主要株価指数は9倍~12倍に化けているのを見るに本邦はまだ東証改革のゴールに向け漸く緒に就いたばかりという感だ。


お家芸の商機

さて、先月末より公開している任天堂が共同製作したスーパーマリオのアニメーション映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の快進撃が続いている。既に全世界で累計で1600億円を突破しているが、日本でも累計興行収入が80億円を突破しており公開17日目での80億円の突破は今年公開作品の中で最速記録となるなど日本のコンテンツが世界を席巻している。

またこれに先立ち「スラムダンク」も中国で公開されているが、封切りからわずか10日で4月に中国全土で上映された映画の中で興行収入トップを記録、先週末段階で約121億円に達している。また欧州各国に先立ちイタリアでも公開されているが、メディアなどが挙って絶賛と少年ジャンプの掲載終了から26年も経っての映画化にも関わらず異例の大ヒットとなった。

アニメ等がお家芸とされる日本も近年はエンタメ産業の遅れが度々指摘されてきたが、こうした現象を目の当たりにするとやはり世界的な人気キャラクターを保持していることの強さを再認識させられる。こうしたエンタメ産業を席巻する人気キャラを生み出しているのは日米が2強ともいえるが、40周年を迎えた東京ディズニーリゾートのような外国のリソースを使ったテーマパーク創設等のコンテンツの活かし方など今後の労働力不足をも睨むにまだまだ商機があるか。


逆ザヤ苦境

本日の日経紙総合面には全国の地銀97行が保有する日本国債や外国債券、投資信託の含み損が2023年3月末時点で合計1兆8000億円と、1年前に比べて5倍に増えた旨が出ていた。欧米は言わずもがな日銀も昨年末に金融政策を修正するなど世界的な金利上昇による債券価格の下落が大きく影響した格好だ。

地銀といえば本邦勢もさることながら更に深刻な状況なのは米地銀勢か。同じく同紙のグローバル面には米株式市場で経営不安が高まる地銀株を標的としたファンドなどの空売りが勢いを増している旨も出ていたが、回転が効いているだけにこれらのポストの空売りによる利益は3月から5月上旬までの間で既にリーマン・ショック時並みの水準に上った模様。

浮動玉に対する空売り比率が平均で8割近くにも達したモノもあるといい日本なら即売り禁で逆日歩攻めに遭いそうな感じだが、それは兎も角もこれまでの金利環境下で構築していたレバレッジ経営のアセットが全て劣化してしまっている現状だけに厳しい状況だ。長短金利はここ30年で最も逆転している現状で、前にも書いたがこの辺が信用収縮に繋がってくると経済全般の下押し圧力にもなってくるだけに今後も注視しておく必要がありそうだ。


G7のジェンダー平等

さて、目前に控えたG7広島でもジェンダー平等は注目される議論の一つであるが先週の12日付け日経紙ではジェンダーギャップ指数や、グローバルから見た日本の課題を浮き彫りにすると共に先進企業による女性活躍推進の“異次元の解決策”を徹底討論するジェンダーギャップ会議の全面広告が出ていた。

前にも書いたが、昨年のジェンダーギャップ指数は146か国中で日本は116位と下位に甘んじG7の中では最下位と不名誉な順位となっている。特に経済では女性管理職の少なさなどが足を引っ張り下から26番目の121位となっているが、先月の男女共同参画会議では首相が東証プライム上場企業の女性役員の割合について2030年までに30%以上とする事を目指すと新たな目標を示している。

いまだ女性役員がゼロの大手企業が存在する日本だが、米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄は女性取締役の居ない企業は無くいずれも取締役総数の3割を女性が占めている。上記の首相が掲げた目標はこの辺を意識しているものと推測されるが、微増にとどまる女性社内取締役の嵩上げは急務と思われROEやPBRと並び欧米の株価指数がこれまたお手本ということになる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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