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他業種に競り勝つ価値向上

本日の日経平均は3日ぶりに急反発し約34年ぶりの高値を更新していたが、昨日の市場で目立っていたのはやはり年初来高値を更新したローソンの大幅高か。この背景には50%の株を保有する三菱商事と共同経営に乗り出すべく、KDDIがローソンにTOBを実施すると発表した事があり1株10,360円のTOB価格にサヤ寄せしたもので、親会社の三菱商事も自社株買い発表とも相俟って揃って年初来高値を更新していた。

コンビニといえば、現在国内で店舗数や売り上げ等で首位を走っているのがセブンイレブン、次がファミリーマートで3位に位置しているのがこのローソンだが、KDDIはテクノロジーと共存し通信やデジタルを活用してローソンのサービス価値の向上を図るとし、店頭での保険や服薬のリモート接客のほかドローンを使っての配達など未来のコンビニの実現を目指すという。

ところで2位を走るファミリーマートも、昨年に国立代々木競技場でコンビニ業界初となる店舗で取り扱う衣料品を着用したファッションショーを開催したのが記憶に新しいところ。このファミマもローソンに先行して株式の非公開化に踏み切っているが、ファッションに強みを持つ伊藤忠商事系ならではの新たなコンビニの姿を示すことになった。

この度の通信との連携強化を高めた今回の発表、三菱商事も食品など追加のサポート以外である一定部分を超えたところでの企業価値向上には限界があったというところだろうが、これからのコンビニはドラッグストアなど他業種に競り勝つためにも消費スタイルの変化に合わせてあらゆるサービスの範囲を拡大し続ける事が成長のカギを握るのかもしれない。


中国関連劣勢

昨日の中国本土マーケットでは主要指標の上海総合指数がようやく7日ぶりの反発を見せていた。株式市場を巡り指導部トップが中国金融規制当局と協議する予定との報を受けてのものだったが、とはいえ週明けまで同指数は景気の不透明感から6営業日続落しコロナ禍で株価が暴落した2020年3月を一時下回るなど一人負けが際立っている。

株安の警戒感をいだく中国当局は先月から空売り規制や昨日は市場操作をするなど違法行為の取り締まりを徹底する対策に乗り出したが、とても歯止めが効いているとは言い難い。IMFでは今年の中国の成長率が4.6%に鈍化するとみており、さらに中期見通しでは3.5%まで下がるとしている。

こうした景気の不透明感は本邦の中国関連株にも影を落としている。2023年の日経平均の年初を100としてみた場合、同指数は昨年1年で140近くに上昇したのに対しファナックは横這いの100近辺を這い、モーターのニデックは約80に下落、クリームこと資生堂に至っては約60近辺まで下落しているが、目先では明後日の同社の決算発表に注目としたい。

資生堂といえば規模こそ違え同業の米エスティーローダーも中国関連として挙げられて来たが、その株価は2017年以来の安値水準に沈んでいる。同社の2023年10月~12月期の決算も中国本土などの売り上げ不振で採算の悪化が続き前年から減収減益で、収益性向上のために従業員の最大5%を削減する事を明らかにするなど厳しく、中国関連株の劣勢に今後何処で歯止めがかかるか注視しておきたい。


市場席巻の生成AI

米巨大IT企業の2023年10~12月期の決算が出揃い、マイクロソフトは先の2023年10~12月期決算は売上高が四半期として過去最高を記録、アップルは2023年10月~12月期の決算が5四半期ぶりに増収増益となっていたが、昨日の日経紙社説には「AI時代に競争に入った米巨大IT企業」と題して、世界のテクノロジー産業に大きな影響力を持つ巨大IT企業の主戦場がスマホからAIに移り変わったと認識すべきとの旨が書いてあった。

それもその筈で生成AIの市場規模は2022年が推定で398億ドルであったものが、大手証券系ではそれが今後の拡大により2027年は0.4兆ドル規模の予想、2032年予想では1.3兆ドル規模に拡大が見込まれているとの試算を出している。実に2032年にかけて市場規模は約33倍、年率平均で42%の成長が予想されているからこれは凄い。

米の時価総額ランキング1位に君臨するのはマイクロソフトだが、同社の株価上昇率は1年で65%にも達し時価総額は24日に初めて3兆ドルを突破したのは周知の通りで史上初の4兆円企業が視野に入っている。2位はアップル、3位はアマゾンだが、元々本業で住み分けが出来ていた彼らも生成AIがこの領域に浸食し安定的な構図も変わりつつある。

大手が挙って新興生成AI企業に投資をし始め、更に大手から投資された企業がまた別の新興AI企業に出資するなどでこうした競争激化でAIはますます洗練化される構図か。経産省も国内の生成AI開発を支援する旨を表明、海外勢が先行する生成AI基盤の国産化を促すとしているが先行する米市場の背中はまだまだ遠く見える。


3年連続のスタバ

先週末にスタバが全体の8割以上のドリンクを今月中旬から4~28円値上げすると発表していたが、これで3年連続の値上げとなった。というワケで今月に値上げをする予定の飲食料品は帝国データバンクの発表では1626品目、前年同期の5639品目から大きく減少したとはいえ昨年10月以来、4か月ぶりに1000品目の大台を上回る。

身近なところで挙げれば、江崎グリコがプッチンプリンなど247品目を3~39%値上げ、また冷凍食品大手テーブルマークは家庭用冷凍食品やパックご飯など56品目を約3%~13%値上げ、そしてカゴメは家庭用トマトケチャップなど147品目を6.2%~16.4%値上げするが、このトマト関連製品は昨年の記録的な猛暑でトマトの価格が高騰した所謂“トマトショック”の影響が大きいか。

食品系ではこのトマトショック以外にも鳥インフルエンザによるエッグショック等もあったが、双方共に今は価格も落ち着きを取り戻している。一方5月迄で人件費を理由とする値上げ品目数は約2割を占めているというが、賃上げ分を確保する為の値上げが広がってゆくのかが今後の焦点で、そういった意味では春からの所謂「物流2024年問題」等もどういった影響を及ぼすか注目しておきたいところである。


モノづくり日本

周知の通り、先月は無人探査機の「SLIM」が世界初となるピンポイント着陸に成功しているが、その後太陽電池が発電できず電源を切った状態にしていたものが一昨日には太陽の向きが変わり太陽が当たった事から太陽電池パネルが復旧、地球との通信が確認されてその運用が再開したことが明らかになっている。

それにしてもこの度のピンポイント着陸、その誤差はこれまで数キロメートルとされてきたが、今回は目標地点からわずか約55メートルと前例のないピンポイント着陸であり大きな成果であったのではないか。このスリムを支えているのが搭載されている日本製品だが、三菱重工のエンジン、三菱電機のコンピューター、シャープの太陽光パネルに古河電池のバッテリー等々だ。

まさにオールジャパンといった感じだが、個人的に感心したのが着陸直前で月面に投下され月面を撮影したのがボール状のSORA-Qか。これをJAXA等と共に共同開発したのがこれまた玩具のタカラトミーだったが、月面に降り立ち変形する部分で変形型玩具のトランスフォーマーの技術が使われているということで、日本のおもちゃ技術が宇宙で活躍する時代が来たとは何とも夢のある話ではないか。

昨年末には宇宙ビジネス展示会「NIHONBASHI SPACEWEEK」を書いた事があったが、今や宇宙はこれまでの調査する場から様々なビジネスの場に移りつつある。世界的な競争のなかで日本企業が存在感を示す機会はまたとないチャンスともいえるが、今回の件では上記の通り宇宙という舞台で日本のモノづくりの力を改めて示す事が出来たのではないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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