3メガそれぞれの株価

さて、昨日は3メガバンクの2024年3月期の連結決算が公表されたが、05年に現在の3社体制が成立して以来の最高益を更新した。三菱UFJフィナンシャルグループは最終利益が前年比33.5%増の1兆4907億円、三井住友フィナンシャルグループも最終利益が前年比19.5%増えて9629億円とそれぞれ過去最高を更新、またみずほフィナンシャルグループも最終利益が前年比22.2%増の6789億円と過去2番目の水準となった。

日銀の大規模金融緩和策の修正による金利上昇、歴史的円安で円換算した外貨建て収益も膨らみ、底堅い国内経済を受け企業の資金需要堅調などあらゆるものが追い風になった格好。3メガはこの日同時に大幅増配に踏み切る方針も発表し、2025年3月期についても三井住友フィナンシャルグループは初の1兆円突破を見込むことや諸々の株主還元と併せて同社の株価は昨日に続き大幅続伸し年初来高値を更新していた。

しかしこの三井フィナンシャルグループ以外のメガバンクの株価回復も、一昨年の年末に長期金利の変動幅上限のサプライズ修正を行って以降は特に目覚ましかった。もうPBR1倍超えの回復は到底不可能とも思われていたが、14年半ぶりに三菱UFJフィナンシャルグループは3月にいち早くこれを回復、またみずほフィナンシャルグループも暫くは不可能と言われていた2003年の1兆円増資の優先株を16年に普通株強制転換した際の換算価格である2829円を3月に上回って来ている。

斯様に銀行を取り巻く環境も様変わりだが、ここからは米の利下げも睨みマイナス金利から金利のある世界へと変貌する世界で今後は融資能力なども問われてこようが、いずれにせよ日銀が追加利上げに動いた場合更に業績を押し上げる可能性も秘めているだけにこれらと併せ今後も引き続き株価共々注目が怠れない。


ローリング・キティの二番煎じ

週明けから米株式市場で話題になっているのが、ゲーム販売の米ゲームストップ株と映画館チェーンのAMCエンターテインメントHD株などの急騰か。13日にはゲームストップが前週末比で約2.2倍まで急騰し昨日も60%高の大幅続伸で2021年6月以来の高値を示現、AMCエンターテインメントHDも同約8割高急騰し昨日も約30%高とこちらも大幅続伸となっていた。

この手の所謂「ミーム株」といえば上記の通り3年前の狂乱相場が記憶に新しいが、この時に今や上場を果たしたネット掲示板レディットを舞台にしてこれら急騰銘柄の火付け役となった株式投資家が約3年ぶりにXへの思わせぶりな投稿をした事で再度火が付いた格好で、この動きは上記の双璧以外のミーム株にも波及しヘッドホンのコスや上記のレディットも急動意となった。

前回のミーム株相場では、当時ミーム株の筆頭格であり約1年前に経営破綻してしまったベッド・バス・アンド・ビヨンドなど短期で株価が5倍に化けたのも束の間、たった2日間でその株価が半値以下にまで急落するなど熱狂相場を演じたものだが、果たして今回もその再来なるか?前回は個別株のみならず銀などコモディティーにまで投機熱が波及したが、コモディティーといえば高値圏を維持する金にミーム株の急騰はひと際不気味に映るものだ。


密輸金の入札

さて、昨日は大阪税関が昨年までの4年間に空港や港で摘発した密輸事案で押収した金100キロを売却すると発表している。金の密輸といえば消費税分の差額狙いが目的だが、足元では国際価格の高騰にこの円安も背景に史上最高値を更新してきており、今回入札分の時価は約12億9千万円相当となり全額国庫に納められることになる。

斯様に金価格の右肩上がりの上昇に歩調を合わせるように落札金額もうなぎ登りで、22年は大阪税関で約87キロが約7億5千万円、昨年の東京税関では約150キロが約18億7500万円となっている。ところでこの金、WGC発表の世界金需要ではETF向けからの流出超過が目立つ一方で個人が保有する地金やコインが増加、特に中国の68%増やインドの19%増等が目立つ形となった。

また依然として各国中央銀行が基軸通貨ドルの代わりに金保有を増やす動きも継続され、純購入量は第一四半期としては過去最大となり、こちらでも中国人民銀行の4月の金保有が18ヵ月連続で増加するなど中国の動きが目立つ。この中国では現物価格にプレミアムまで乗っている状態というが、何層もの複合的な要因で高止まりする金価格は分断と世界経済の不安を映すバロメーターとして今後も注視が怠れない。


IPS細胞の可能性

本日の日経平均は日銀の国債購入減で金利が上昇し小反落となったが、先週の個別銘柄の上昇率トップスリーにはストップ高を交えて急騰を演じた化粧品大手のコーセーが入っていた。欧米や日本の拡販により2024年12月期1Q1-3月期連結営業利益は前年同期比35.5%増の79.0億円となり、これまでの売り上げ不振から明確な底打ち感を示した事が好感されたもの。

ところでこのコーセーといえば、この決算発表の日にはIPS細胞の最先端技術を持つ2社と提携、新たに利用者自身のIPS細胞から抽出した成分を配合したパーソナライズした美容商品の開発を始めるとも発表し、安全性が確認されれば2026年度までの事業化を目指すとし真のパーソナライズされた美容ソリューションを目指したいとしている。

斯様に今では個人レベルにまで手が届くようになったノーベル賞にもつながったIPS細胞だが、今やこの応用で神の領域への挑戦が繰り広げられている。既にIPS細胞で作る「腸オルガノイド」の手術など成功例があるが、人口脳である「脳オルガノイド」もまたマウスレベルでは成功の兆しが見えてきており、人への応用が可能なら再生医療に革命をもたらすのは想像に難くない。

つまり人の身体で臨床実験を行うことがまだ難しい薬でも、上記の脳オルガノイド等を用いればその効果を試すことが可能になるというわけだ。近年では世界のIT長者が挙ってこうした分野へ関心を持ち巨額の投資をしているのが顕著になってきたが、新薬開発や病気の解明など医療が飛躍的に進む可能性を秘めているだけに大いに期待したものだ。


ラグジュアリーとサステナブル

この連休中の日経紙ビジネス面では「食品ロス、未利用食材で防ぐ」と題し、牛丼の吉野家など大手外食各社などがこれまで使わずに捨てていた未利用食材の活用で食品ロスの削減に動いている旨の特集があった。農水省によれば21年度の食品ロスは食品事業者からの排出量が増加した事で、前年度比0.2%増の約523万トンで6年ぶりに前年度を上回った模様だ。

未利用食材といえば、毎年優待でお世話になっている某宴会大手のバイキングではこれらを生かしたメニューが大幅に増えてきている。昨年はザッと挙げても披露宴やパーティーのコース料理でどうしても出てしまう半端量のケネルや成型する際に出てしまう魚介類の端材や所謂未利用魚の類などを使った「海の幸のテリーヌ」、「野菜のババロア仕立て」、「車海老のタルタル」や「白身魚のエスカベッシュ」等のメニューが並んでいたが、どれを食しても本当に美味な一皿であった。

またラグジュアリーホテルでもこうしたサステナブルな取り組みが近年目立つのがパレスホテルか。昨年は同ホテル内のフレンチレストラン「エステール」で廃棄食材をソースに使い、魚は骨まで野菜も皮まで全て使う究極に食材の無駄をなくした「200%ノーフード・ウェイスト・ディナー」が開催されていたが、此処は今月末まで「サステナブルステイ」なる宿泊プランを設けている。

このホテルは以前よりペストリーショップで規格外野菜を使った「ケークサクレ」などを販売していたが、同プランでは規格外果実をアップサイクルして作ったシャンプーが備わり、部屋ではペストリーショップで作ったショートケーキの両端を使ったロールケーキ作りも体験出来てホテルレストランから出た廃油を活用したソープなども販売している。

ラグジュアリーが売りの高級ホテルにおいてラグジュアリーとサステナブルという両立しないモノが共存するのが面白く思えるが、国ごとに異なる環境や文化のなかでもサステナブルな部分は或る意味共通言語ともいえるか。ラグジュアリーホテルに限らず料理や商品を通して発信される持続可能な食とは何かを各所が再考するのも良いのではないかと思う。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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