19ページ目   商品先物

ラストカード

さて、昨日の日経紙商品面には、39年ぶりの豊作で2016年産の新潟産一般コシヒカリの卸間取引価格が下落した旨が載っていたが、新潟コシヒカリといえばこうした需給の緩みから転作思惑が意識され先物相場の方は取引を開始した約1ヵ月前から1割高と上昇している旨も先週末の同紙に載っていた。

この「新潟コシヒカリ」、業務米対象の「東京コメ」と一般コシヒカリを指標化した「大阪コメ」に次ぐ新たな銘柄として取引が始まったものだが、特定産地に的を絞り現物決済時に産地倉庫で受け渡しを可能にしたほか売買単位も既存上場商品に比べ小口化するなど利便性を狙い米では初モノで登場していた。

これらから解る通りピンポイントで生産者を呼び込もうとしている様が窺えるが、それもそのはず農水省は前回の試験上場延長時に生産者等の幅広い参加を得ているかどうかを本上場申請時には検証すると明言しているからに他ならない。

ともあれこれも含め農産物先物の試験上場はかつて3回以上延長された事は無いだけに今回はラストチャンスともいえる。18年度をメドに国はコメの減反政策を廃止するが、生産者等の側もリスクヘッジの重要性がますます高まるのは必至。それだけに本上場をクリヤ出来るか否か今後の動向は要注目となってくる。


想定外?

本日の日経紙商品面には「投資家が不満 売買低迷招く」と題して、先の米大統領選の影響で相場が乱高下を演じた10日に注文件数が処理能力の上限に達した事で、全商品の取引を一時停止するなどシステムを刷新したばかりの東京商品取引所でシステムの不具合が相次いでいる旨が書かれていた。

この東商取の新システム刷新に関しては当欄でもこの導入の一週間後に触れた事があったが、そこでは注文処理速度も従来と比べ向上、高速売買を手掛ける海外のプロップハウス等の誘致を視野に入れているとしたが、果たして移行後20営業日の1日平均売買高は移行前20営業日平均から減少している旨が報じられていた。

またシステムの都合上裁定が効き辛くなったのも影響して、この後の売買高も9月、10月と2ヵ月連続で前月を下回っている状況という。キャパオーバーで取引停止の事態といえばあのライブドアショックの時に東証がパンクしたのがいまだ記憶に新しく、「想定外」という言葉も東証パンクにまで使われたが、誘致を狙っていた層の信頼回復は今後の為にも早急の課題か。


売る人・買う国

さて昨日の日経紙の、今週の市場羅針盤の冒頭にはドラッケンミラー氏が米大統領選の投票日に保有する金を全て売却し、グローバルに債券を売り建てした旨が書いてあった。直近のインタビューで金保有の理由が全て消えつつあるように思われると発言していたが、成長加速と金利上昇の見通しに賭けたといったところか。

ところでこの金と言えばもう一つ、ちょうど一週間前に中国人民銀行が発表したところによると、中国の中央銀行が保有する金準備が今年10月末時点で5,924万オンスに拡大している。月間増加幅こそ少ないものの、5ヵ月連続の持ち高増加となり金準備の積み増しが進んでいる旨が窺える。

これまで金準備に関しては当欄では新興国を中心として積み増しが進んでいる旨を書いてきたが、この中国は以前より米国と同水準にまで金準備を引き上げると明言している。現状国別では世界5位とはいえ、外貨準備全体に占める比率は欧米諸国と比べてまだまだ極端に少ないだけに今後も同国の金準備政策の動向が注目される。


密輸熱

大注目された米大統領選に関してはまた明日触れたいが、本日はトランプ氏当確との見方ら株式急落の一方でETFはSPDR始め三菱UFJ純金やETFSまで金関連が一斉高となった。ところで金といえば先週末には財務省が今年6月までの一年間に全国の税関が金の密輸で罰金や刑事告発等の処分件数が、前年同期の1.7倍に上ったと発表している。

これに絡んでは約一年ほど前に韓国から下関に到着した活魚運搬車から密輸しようとした金が摘発された件があったが、今年も6月にマカオからプライベートジェットを使って大量の金を密輸しようと試みた事件を当欄で取り上げた事もあり、密輸に伴う脱税額は2.6倍となり上記の処分件数と共に2年連続で過去最多を更新している。

国別では上記の韓国と香港で8割近くを占めているというが、泥臭い方法ながら付加価値税と関税還付、そして消費税狙いと悪知恵は尽きず、前回の当欄で末尾に「〜今後も増税の度にこの手の密輸事件が表面化してくる気配である。」と書いたように果たしてという感じで今後も当局とのいたちごっこは続く気配が濃厚か。


電先延期

さて、今週は東電が柏崎刈羽原発の先行き不安から株価が急落し、直近で新高値を取った省電社も本日は大幅続落するなど電力系がボラタイルな展開となっている。ところで電力といえば、先に東商取は今年度内に予定していた電力先物の上場時期を17年度に先送りする旨を発表している。

電力先物に関して当欄で最後に触れたのが夏場だったが、東商取では1年物から1日物まで分割して取引でき、現物取引にも対応出来るシステムを作成して既に6月に上場企業から商社子会社等まで参加し模擬取引を実施した経緯があるものの、意見が分かれ制度設計が難航している模様だ。

4月から小売自由化がスタートし先物に対する重要性が増している現状下、ここからは市場設計や一本化運用等を鑑みた場合のJEPXとの調整等々こなしてゆかなくてはならない課題も幾つかあるものの、必要不可欠な産業インフラとして来年度の早期上場には期待がかかる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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