53ページ目   商品先物

旬商品

さて、横浜でのAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に伴い、中国の国家発展改革委員会主任と先に会談した経済産業相によれば、対日輸出が滞っているレアアースについて同氏から近く適切に解決すると輸出正常化の方針を示されたことを明らかにしている。

レアアースについては上記の通り世界生産量の約97%を中国が占めているが、輸出規制や採掘制限に動き当局の税関検査や操業規制がきつくなっている事で高騰が続いているのは周知の通り。さて、このレアアースといえば、先月末から米資産運用会社ヴァン・エック・グローバルがレアアースなど戦略金属の生産者に投資するファンドを上場している。

マーケット・ベクターズ・レアアース/ストラテジック・メタルズETFは中国の姿勢がここ若干軟化した模様との報道が一部あったことで数パーセント安くなったようだが、正に旬なだけにヘッジの用含め投資資金を集めるのは想像に難くないか。

ところで今年のアタマには東証がレアメタルETFの上場を年内にも目指す方針である旨の報道があったが、その後の状況はどうなっているのだろう?海外モノやTOCOM連動型まで商品系は相次いで上場が続いたが、NYMEXあたりを見るにつけ機動性はまだまだという感じ。レアアースなどの一部は二ヶ月そこそこで10倍にも価格がハネ上がるだけに、こうした物こそ様々な商品の誘致が望まれる。


世界に伍する日は来るか

さて、当欄のカテゴリーリストの「商品先物」でちょうど300番目となる今回は、今週の日経紙上で週明けの「日本の商品先物取引 グローバル市場へテークオフ」という見出しの元、久し振りに全面広告の特集が三頁に亘って組まれていたあたりに触れてみる。

今や渦中の東穀取の「2011年1月4日 東京穀物商品取引所は生まれ変わります」という広告は、はて「輪廻」を意味するのかどうかその去就を見守りたいが、それはさておき同文中ではインフラ的にはこのように整いつつありますといった話が羅列してあったが、中でもスパン証拠金などはもっと早くから整えるべきであると思いは常にあった。株式先物などやっている向きにはスパン証拠金は常識で、これが未だ非導入と解った段階でもう参加意欲をなくしてしまうのは当然なところだろう。

商品的には「商品指数」登場や、「損失限定取引」など委託者保護を謳ったものも予定されているが、「ETF」などへの資金の集まりの相違が明白でエッセンスだけ証券系へ流れ始めている感も強い。

また、業界でも急ピッチで対応作業が進んでいるとあったが、先に書いたシンガポール取引所のオーストラリア証取買収は城外からの資金流入に対応したものだが、逆に資金流出が続いている事情から国内ではワンストップ型がそう性急な課題ではないとの負の認識も一部台頭してきてしまっているのも憂慮すべきところか。

見出しには「〜商品先物取引はますますその影響力を高め、世界経済にとって不可欠な存在になってきた。日本でもシステムの高速化、ETFの登場で信頼性、利便性が増し、世界に伍しようとしている。」とあったが、こんな言葉とは裏腹に直近では取引所国内二位の東穀取の存亡がいわれ、取引員もまだまだ淘汰途上の様相、はたして世界に伍する日が来るのは何時の事になるのだろう?


交渉における温度差

さて【FUTURES PRESS】でも既報の通り、今週は東京穀物商品取引所が東京工業品取引所に経営統合を申し入れた事が明らかになった。このシナリオ自体はもう既に関係者の間ではコンセンサスとなっていたが、今週19日の定例記者会見でも両取引所社長がこの件に言及し経営統合の交渉を進めていることを認めている。

既に消え、または消えゆく商品取引所がしてきたように、東穀もまたJCCH株式を全て手放し矢継ぎ早にその次は自社ビルの本館まで売りに出すなどの動きが著しかったが、近年は業界団体からの突き上げも厳しくこれと並行して屈辱の統合申し入れに至ったという感じか。

ココは崩落の過程でも以前から一貫して自主独立路線を謳っていた経緯があり、この辺の悔しさは記者会見における社長コメントにも見て取れる。この期に及んでも引き継ぐ対象商品については「売買高にかかわらずすべての商品を前提に考えている」とし、また従業員の受け入れに関してもできるだけ多く引き継ぐよう求めるなどとあたかも立場が対等かのように錯覚している。

しかし、農水系のこうした一連の言動しかり、また業界で見れば仮にこの救済?統合となった場合にはTOCOMと関西商品との二拠点となるが、売買シェアが全国4商品取引所で1%にも満たない長年最低であった関西証取が最後に残るあたり、まさに各所の体質を色濃く表している感は否定出来ない。


デフレ下のインフレ資産人気

さて小麦急騰劇がまだ記憶に新しい中、本日の日経紙商品面ではトウモロコシの国際価格が6月末に比べ7割高と高騰している旨が載っていたが、コモディティー系の話題ではここ直近で綿花も140年の歴史で市場最高値を付けた旨もよく見かける。

また何十年ぶりという話題では通貨でも、15日のニューヨーク外国為替市場で豪ドルが物色され、同通貨が1983年12月に変動相場制に移行後では初めて、1豪ドル=1.0005米ドル前後と等価水準に達した。

斯様に国際商品、資源国通貨から新興国等の様々な投資対象が順次煽られているが、この辺は周知の通り何れも新興国からの旺盛な需要に加えて、FRBの金融緩和観測で余った流動性資金がコモディティー群に流れ込んでいるのが原因。

しかし上記の綿花の高騰では、ただでさえ需要が低迷しているアパレル業界などまた厄介な問題の出現だ。こんなデフレが進行する中を過剰流動性だけはインフレ資産の争奪戦となっているが、昨日は中国が2007年12月以来、2年10ヶ月ぶりに0.25%の利上げを発表している。これを受け既にNY金が2週間ぶりの安値に急落、NY原油も80ドル割れと4%以上急落しているが、一旦はリスクマネーの収縮から一服となるのかどうか各銘柄に注目である。


中京石油市場

昨日は連休明けから稼動した大証の「新ジャスダック市場」について触れたが、今週はTOCOMも同じ連休明けから中部大阪の石油市場を引き継ぐ格好で「中京石油市場」を稼動させている。デリバリー形態など従前市場を踏襲するものの、値付けは当然ザラバへと変更になる。

これで所謂ホールセールとリテール両方を補完ということになるが、先の夜間取引延長と併せ今後どれだけ低迷している売買高の底上げが叶うかである。ちなみに当初は従来の31社より増え39社でのスタート、気になる初日はガソリンが264枚、灯油が128枚にとどまり低調なスタートとなった。

ところで、昨日触れた「新ジャスダック市場」を擁する大阪証券取引所といえば、直近ではETFの普及をテコ入れする為に証券会社に奨励金を支給し、個人投資家から徴収する委託手数料の無料化を支援する制度を導入すると報じられている。はて、一方で商品取引所はどうだろう?

売買高低迷がいわれて久しい折に取引員各社は、それこそ証券各社とは逆に長年ほぼ横這いであった手数料の値上げ改定に動いたのは記憶に新しい。これの起因となっていた一部にはTOCOMの定率会費引き上げという問題があったが、定率会費値上げ分の吸収が企業努力で賄える環境には既に無く、その取引所新システム対応でも多額の資金を割かれている状況にあっては取引員側としても営利法人上選択の余地も無かったのだろう。

そんなワケで取引員も一概に責められないが、取引所の立場としては短期的な収益効果を求めて定率会費値上げを強行する愚行よりもっと先を見据え上記のような行動の一つも起こせないものであろうか? 株式上場を視野に入れた焦りもあるだろうが、今迄新規に打ち出してきた商品の低迷もこうした後押しで軌道に乗せる切っ掛けになった部分があったかもしれないとしばしば思う時がある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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