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ヨウ素と株価の半減期

さて今週の日経平均は膠着感の強い展開であったが、そんな中でもボラタイルな動きだったのがやはり東電。一服していた株式の方は賠償スキームやら今更ながらに出て来た福島原発の炉心溶解を巡ってまたにわかに動意付いており、今やディフェンシブ的な優等生からすっかり投機株に変貌してしまったなと。

レーティングの世界でも、みずほ証券のように「アウトパフォーム」据え置きで目標価格を900円!に設定するという特異なところ以外は何処も揃ってそのレーティング対象から外してしまっている。こうしてバリュエーション評価が不可能となった一方で今のところ一応は株式上場を維持し社債も保護ということになり、JALのように紙屑にならない妙な安心感?からこの高いリクイディティーを背景に商いが集まり易いか。

今のところは株主責任は免れたとはいえ今後株価は市場が然るべき値段に誘導するだろが、社債など先に一度書いた事があるが新規で引き合いなどあるのだろうか?この賠償スキームで通常であれば格下げ圧力が緩和されるはずだが、現状そうした動きとなっていなのはやはりその信憑性の問題だろうか。

ところで株価といえば事故当初は約一週間で株価が半値水準に暴落し、株価の半減期も放射性ヨウ素とほぼ同じなどと揶揄されたものだったが半減といえばもう一つ、原発事故の責任を踏まえ役員報酬も半減努力とか議論されているが、それでも3,600万円とか。こちらは相場じゃないが半値八掛二割引にしてもまだまだ高いだろう。


既存概念の脆さ

株式市場では本日も東電株が大幅続落、その性格上金融機関の保有も多く事実上の筆頭株主であった第一生命などは株価下落に因る評価損が甚大となった。また此処に限らず既報の通りで他の金融機関も今回の急落で巨額の減損処理を余儀なくされている。

ところでこんな公益株だけに投信系も挙って組み入れていたワケだが、判明しているだけでとっとと全株外したところは「住信日本株SRIファンド」、「住信アセット(グッドカンパニー)」、「住信アセット(すみしんDCグッドカンパニー)」、「STAM SRI・ジャパン・オープン」、「生物多様性企業応援ファンド(生きものがたり)」、「ニッセイ日本勝ち組ファンド」等々。

ブラックロックや日興AMもかなりヤラれた模様だが、その性格からやはりアクティブ系は見切り、一方でパッシブ系などはトラッキングエラーの観点からもなかなか外しきれないかと。しかしこうして並べて見ると「SRI」、「生物多様性企業」、「勝ち組」とか其処へ東電があると恥ずかしくなるようなネーミングばかりだが、逆にそこから震災前の優等生ぶりが窺えたというもの。

名門ブランドの優等生も既にJALを堺に投資対象足りうるのかという観点ではますます常識が通用しなくなってきている。


時間を買う選択

さて、週初の日経紙にはクーリエ・ジャポンの全面広告でマネックス証券社長の企業トップインタビューが出ていたが、このマネックス証券といえば既に既報の通り先週にはマネックスグループが米ナスダック市場上場のオンライン証券「トレードステーション社」を約340億円でTOBと発表されている。

トレステといえば以前のオメガ時代から一寸ハマった向きならディーラーから一般まで誰でも一度は手にしたことがあるツールだと思うが、直近でも小粒のM&Aをしてきたマネックスも今回は比較的大きな買い物をしたなという印象。これにより今後どういった環境提供が展開されるのかが焦点となるか。

しかし、こうした証券に限らず昨今金融界では規制の嵐。当欄では大発会のコメントで「今年もまたM&AやMBO等で商機ありかという流れが個別で続くか。」としたが規制の影にも商機有りといわれる昨今、マネックスのように時間をカネで買うM&A機運が盛り上がってきてもなんらおかしくはない。

例えば業界には株主還元策の一環で自社株買いを発表している向きも少なくはないが、其の先のアクションの一つとして厳しい業界環境からの再編過程で出て来る企業間のWIN-WINの絵図がマッチした場合、これを使う場面が今後出てくるのもまた自然な成り行きともいえるか。


PKOも直接志向へ

日銀が追加緩和策の一環として昨年末から開始したものにETFの購入があるがこのETF購入を巡っての市場の話題に、昨年12月以降買い出動した16回のうち14回は日経平均が前日比で100円以上下げた日である事から、日経平均の下げ幅が100円を超えると買いが入るとの話がある。

ところが昨日は、日経平均が113円安となった割にこの買いが観測されなかったのがアノマリー破りと一寸した話題になっていたようだが、今迄のコストの方は試算すれば9,841円ということで現状ではコスト割れとか。

リスク資金呼び込みが目的なだけに、早めの損失解消で押し目買いは報われると示したいところと日経紙には出ていたが、震災や原発事故に伴う損失の程度が如何ほどか特定できない中での機械的買付けは報われるのだろうか?外国人が震災後に突出した買いを見せたが、やはり其れなりに世界の株価が堅調な中において日本株のみ直下型急落を見せたことによる相対的出遅れを買ったことによるものもある。

この手の買いとは似て異なるPKOK系だが、金融庁は先週末にも所謂「空売り」への規制を6ヶ月間延長し10月末まで続けると発表している。延長はこれで9回目だが、上記のものと併せこういった中途半端な直接市場介入は明確な効果が見えないないわりに需給の歪みという副産物も作ってしまう。日々の高い安いはあっても、近年は海外の映しで寄った後の独自のうねりが近年めっきりとなくなってしまっている点など当局は懸念すべき項目だろう。


争奪戦回避

本日の株式市場は円高一服や米インテルの好決算を背景に急反発から全面高で引けたが、そんな全般高の中で一際弱かったのがパルコ。朝方でこそ全般の流れで5日ぶりに小高く始まったものの、後場からはズルズルと値を下げて独歩安の展開に終始していた。

ご存知、此処は日本政策投資銀行への第三者割当増資を巡っての確執から、途中でファンドからバトンタッチしたイオンも参戦して以来役員人事を巡って対立、直近ではイオンへの対抗策としてシンガポールのキャピタモールズ・アジアとも業務提携し、このまま行けば株主総会に向けて委任状争奪戦という構図が有力視されていた。

今回は一転、大株主の要求を受け入れたことからこうした争奪戦のプレミアムが後退、株価もそのプレミアム分が剥げたという格好になったワケだが、これで日本政策投資銀行が割当てられたCBを株式転換するような動きにでも出るとそれはそれで面白かったのだがなんとか穏便に収まってしまった格好。

しかしやはり時価総額というかカネの力は大きい。そういえば、一寸逸れるが先の狂乱オプション相場で多額の貸倒引当金発生懸念からネット系は軒並み新規ショートを停止してしまったが、そうした措置を取らなかった向きもありこの辺はいろいろ懐具合の深さが感じられる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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