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ローリング・キティの二番煎じ

週明けから米株式市場で話題になっているのが、ゲーム販売の米ゲームストップ株と映画館チェーンのAMCエンターテインメントHD株などの急騰か。13日にはゲームストップが前週末比で約2.2倍まで急騰し昨日も60%高の大幅続伸で2021年6月以来の高値を示現、AMCエンターテインメントHDも同約8割高急騰し昨日も約30%高とこちらも大幅続伸となっていた。

この手の所謂「ミーム株」といえば上記の通り3年前の狂乱相場が記憶に新しいが、この時に今や上場を果たしたネット掲示板レディットを舞台にしてこれら急騰銘柄の火付け役となった株式投資家が約3年ぶりにXへの思わせぶりな投稿をした事で再度火が付いた格好で、この動きは上記の双璧以外のミーム株にも波及しヘッドホンのコスや上記のレディットも急動意となった。

前回のミーム株相場では、当時ミーム株の筆頭格であり約1年前に経営破綻してしまったベッド・バス・アンド・ビヨンドなど短期で株価が5倍に化けたのも束の間、たった2日間でその株価が半値以下にまで急落するなど熱狂相場を演じたものだが、果たして今回もその再来なるか?前回は個別株のみならず銀などコモディティーにまで投機熱が波及したが、コモディティーといえば高値圏を維持する金にミーム株の急騰はひと際不気味に映るものだ。


資本効率重視の流れ

本日の日経平均は昨日の急反発から往って来いの急反落となっていたが、そんな中でも逆行高を演じていたのが川崎汽船など。この辺は1000億円を上限にした自社株買いの発表が背景にあると思われるが、同社以外でも今月は月替り早々に三井物産が2000億円を上限とする自社株買いを発表し昨日の株価は上場来高値を更新してきていたが、依然として資本効率重視の姿勢が目立つ。

ちなみに昨年の上場企業の自社株買いは初めて10兆円を超えて2年連続で過去最高となっている。手元資金が昨年末時点で100兆円超ということで約1割に相当する額だが、長らくディスインフレ下で増加の一途を辿ったこうした資金をインフレ環境下でどう使うかが問われ、有効活用手段の一つとして手っ取り早く?ROE改善に繋がり易い自社株買いが注目され株数ベースの取得規模も大きくなっているのが目立つ。

確かに東証の要請対応で意識する指標の中でもPBR等は自社努力だけではどうにもできない部分があるが、ROEは自助努力で改善出来る部分なだけに今年も高い利益率が確保されれば自社株買いの勢いは衰えを見せないと推測される。例年決算発表のタイミングで株主還元策の発表は今月に集中する傾向があるが、そういった意味でも半ばにかけて本格化する決算発表で自社株買いがどの程度出てくるのか注目されるところ。


開示の増加と課題

先月上旬の日経紙で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧」を掲載した全面広告が載っていたが、そこで「本紙面では東証から公表された開示企業一覧表の内容をはじめ関連トピックについて今後も継続的にアップデートとともに掲載する。」と謳っていた通り、先月に続いてちょうど一週間前の日経紙全面広告にて再度開示企業一覧が載っていた。

ちなみに昨年からの開示状況を辿ってみると、先ずプライム市場では2023年12月末は815社で49%、2024年1月末は899社で54%、2024年2月末で検討中も含め969社で59%となっている。またスタンダード市場では2023年12月末は300社で19%、2024年1月末は325社で20%、2024年2月末で検討中も含め348社で22%と月を経るごとに上昇している状況となっている。

各社その資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として挙げられているのは配当の増額や自社株買いの実施が比較的多く、他には海外IR(投資家向け広報)の強化や国内IRの強化も次に多いが、この辺は先月末の日経紙にも2023年のIRに関わる人材の求人数が6年前に比べて4倍近くになった旨が報じられていたあたりでも見て取れる。

この同じ日の日経紙では「企業と投資家ともに変化を」と題した別の全面広告も見かけたが、このIRは情報開示だけでなく投資家との対話も担っている。今後は東証の動きに合わせて物言う投資家の動きも活発化してくる可能性があり益々その重要性は増すともいえるが、一方で課題はこれら人材の不足。東証はIR活動を支援する専門部署を立ち上げ企業の負担軽減に動き始めているが、並行してこうしたバックアップ体制も今後益々求められようか。


株主の視点

昨日は三菱UFJファイナンシャル・グループが新しい中期経営計画の最終年度の2027年3月期にROE(自己資本利益率)で9%程度を目指す計画を発表しているが、ROEといえば商船三井が従業員のボーナスをROEに連動させる仕組みを導入する旨も報じられている。これまで役員報酬などこの手はよくあったが、株主視点を持たせる意味でも末端にまで広がって来た感じか。

株主視点を持たせるという点では、昨年に空運大手のANAホールディングスが従業員持株会に入っている社員ひとりに譲渡制限付きながら100株を割り当てているが、他にも昨年は譲渡制限付き株式報酬を付与した例として電気機器のオムロンが一般社員や新入社員にも対象を拡大させ、警備業首位のセコムも先月末までに社員約23000人に付与している。

ところで昨日の市場ではプライム上場の豊田自動織機が大株主のデンソーによる持ち合い株の解消報道を背景に急落していたが、こうした株式報酬の類は斯様な大株主が手放す政策保有株の受け皿として有用な面もある。欧米に比べこの手の従業員向け株式報酬制度導入企業割合は見劣りしている感は否めないだけに、人材獲得競争の面からも今後もこうした導入を前向きにとらえる企業は増加してくるのではないか。


ROE拡大傾向

本日の日経平均は金融政策を巡る不透明感が和らいだ事などで1000円を超える急反発を演じていたが、今月の上旬だったか日経紙には「本紙面では、東証から公表された開示企業一覧表の内容をはじめ関連トピックについて、今後も継続的にアップデートとともに掲載する。」と謳い、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧」を掲載した全面広告が載っていた。

この資本コストに絡んでは先週の日経紙金融経済面では第一生命HDがTOBをかけたベネフィット・ワンを軸にしROE改善を目指す旨の記事があり、同日の投資情報面にも藤田観光が構造改革によりROEが急回復している旨の記事があったが、斯様に資本効率の改善に向けた動きにより個々の企業でもROEの拡大が漸く見え始めている。

ちなみにこのROE、昨年の3月末時点では8.1%であったものが23年9月末時点では8.7%へ、そして24年2月末時点では8.9%と順次拡大傾向にあり、2024年3月期では9.7%と2008年の金融危機後で2番目の高水準となる見通しにある。とはいえ日米のROEを比較してみると数字としてはここ4年程のあいだ米が15%以上を維持しているなか日本は10%に満たない水準が続く。

ちなみにこのROE10%水準、コロナ禍で落ち込みをみせた20年のそれは日本が5%未満にまで落ち込んだがその時でも米は10%以上をキープ、これはここ10年でも日本がまだ到達しない水準である。上記の通りROE拡大傾向でPBRも漸く最下位から脱出出来たものの、これとて過去10年のレンジ内推移にとどまる。今後も成長投資や株主還元の拡大が課題となろうが、強固だった持ち合い株などこれまでにない解消の動きも出てきているだけに悲願のROE10%以上の水準達成に今後期待したいところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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