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消えるか慣習

本日の日経紙投資情報面の一目均衡の頁では「持ち合い株が姿を消す日」と題し、資本効率の改善が求められるなか企業統治や資本効率の足枷とされる持ち合い株が姿を消す日は来るのかとの問題提議があったが、この項目に関しては東証プライム市場上場企業のうち7割がコーポレートガバナンス報告書で削減方針を示すなど近年は企業側の意識も高くなってきている。

そういえば今年届いた株主総会の招集通知では自己株式消却や株式分割に関するお知らせのほか、政策保有株についても言及する企業が何社かあったなと。株主総会といえば本日はトヨタ自動車の株主総会が開催されていたが、既に昨年から系列各社の相互持合いが見直されているほか、大手損保4社も政策株ゼロ方針を打ち出し三菱UFJと三井住友のメガバンク2行も同社の政策保有株売却観測報道がなされている。

こうした実際の動きもあり政策株の削減は年間4兆円程度ありこの10年で持ち合い比率は3.6ポイント低下したというが、適正化水準までこのペースで10年以上かかるといわれていたモノも、上記のメガ企業勢の相互解消などが促進される動きもあって適正化の道のりも半分程度に短縮するとの見方も一部に出ている。

複数の外資系証券試算では全ての政策保有株が自社株取得や消却で解消された場合では日本企業のROEが現状の9%から10%に改善するとの試算もあるが、この辺の自社株取得や消却も現状履行されてるのは未だ半分程度との見方もあるだけに今後も持ち合い解消のその先が注目されようか。


成長双六今は昔

さて、アクティビストとして知られる米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、メディア大手のフジ・メディア・ホールディングスに対し、自身と関連会社が6.55%を保有する同社にMBOを要求する書簡を送ったことが先週明らかにされている。MBOにより会社を非公開化した上でコンテンツビジネスなど放送事業に特化するよう求めるという。

しかしMBOといえばこれまで当欄でもベネッセホールディングスや大きなところでは大正製薬の大型MBOを取り上げてきたが、2023年度の株式取得額は前年度比5倍の1兆4688億円と過去最高になった旨が報じられている。東証の資本コストや株価を意識した経営の要請などを背景に、短期の業績や株価を意識せず中長期の経営改革に取り組みたいというところの非公開化増というところだろうか。

とはいえ全ての企業がMBOでの非公開化により企業価値が劇的に向上するかというとかならずしもそうとは限らないか。過日の日経紙でもアパレルのワールドが取り上げられていたが、同社がMBOを選択したのはちょうどこれが活発化してきた頃の2005年、当時の時価総額は約2444億円だったが、本日の引けでのそれは約683億円と激減している。

業界の誰かが言っていたのを思い出すが、外敵が全く居なくなると動物でも退化してしまう部分があるが企業もまた然り。MBOは小うるさいアクティビスト等の株主から解放され自由な経営が享受出来るが、緊張感の無いぬるま湯ばかりに慣れてしまうと自ら退化してしまう向きも中には出て来ないとは限らない。いずれにせよかつて上場は成長双六のアガリといわれてきたが、こんなところでも隔世の感を禁じ得ない。


自社株とモチベーション

昨日の日経紙一面には政府が2025年にも企業が自社株を使って海外企業を買収できるよう会社法を改正する旨が出ていたが、自社株といえば先週末の日経紙一面にも「自社株、社員に無償譲渡」と題しこれまで役員に限っていた自社株式の無償譲渡の対象を社員にまで拡大する方針とした旨の記事があった。

株式報酬といえばストックオプションが頭に浮かぶが、この度念頭においているのはRSとよばれる譲渡制限付き株式で一定期間後に売却出来るタイプ。この手の動きではANAHDも先に社員持ち株会向けに譲渡制限付き株式を取得する為の特別奨励金支給を発表しているが、現行制度において社員の金銭的負担が実質的に生じないようにするためのもの。

こうした上場企業以外でも未上場の中小企業で、社員に仮想株式を付与して利益を還元するという新たな取り組みも出てきている。仮想株式の株価は業績と連動しており、実際に受け取れる株式数は役職に応じて変化するもの。この仮想株式も現金化出来る時期は付与から数年後に設定されていて現金化する前に退職するとこの株式は消滅してしまう仕組みだ。

いずれも譲渡制限が付くことで社員の離職を防止する効果も得られ当の社員も株主となるために経営や業績を向上する意識を高めやすくなり、また上場企業側も金庫株として保有が増える自社株活用と双方でメリットがある。雇用の流動化が進むにつれて退職者も増加傾向にあるなか、人材確保策として今後もこうした新たな動きが顕著になってくるか。


外圧の利用

本日の日経紙ビジネス面には、セブン&アイ・ホールディングスの株主総会が昨年のアクティビストによる取締役選任の株主提案が出されたものから、今年は一転して「無風」だった旨の記事を見掛けた。ところでアクティビストといえば今週アマタの同紙でも「日本株、外圧が起爆剤」と題し、来月の株主総会を前にして所謂アクティビストが保有している企業の株価が動意づく場面も出ている旨の記事があった。

しかしかつてのアクティビストといえば増配要求一辺倒もしくは強引なTOB仕掛けというパターンが主流?であったが、文中にも出て来た00年代にサッポロHDを標的にしたアクティビストは、リーマンショック前に裁判沙汰に発展したブルドックソース事件において濫用的買収者の烙印を押されあからさまなこの手のハゲタカ勢は総会屋と共に姿を消していった感が強い。

この時と前後してこの手のアクティビストが保有している株は精彩を欠き上昇どころか逆に下落傾向になるなど提灯勢の関心も引いていったものだが、近年カタリストとして東証の要請や政府の指針も後押しになり、アクティビストそのものの変貌と共に異端扱いで無くなり冒頭の通りアクティビスト保有判明株が再度脚光を浴びる世界に回帰してきた。

斯様に此度の東証要請はこれまで目の上のたん瘤扱いだったアクティビストの存在意義を大きく変えることとなったが、この辺は相手のあり比較的ナーバスな案件だった政策保有株問題に関してもまた話を持ち掛け易くなった点で大きく意味のあるものだっただろう。企業側も或る意味緊張感と引き換えに無料でもらえるアイデアをうまく構造改革に生かしはじめているが、今後もこれから出てくるであろう個別提案に注目したい。


エンゲージメント効果

本日の日経紙グローバル市場面では「投資家と対話 時価総額6%増」と題し、約224兆円と巨額の資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用委託先の資産運用会社と国内企業のエンゲージメントの効果を検証、取締役会構成などの改善を促すと時価総額が大きくなったりPBRの改善が見られるなど一定の効果が確認された旨の記事があった。

GPIFといえば先月あたりはその運用資産の構成比率から日本株のウエイトを引き上げるのではないかとの思惑が出たが、なにせ上記の通りの運用額なので仮に仮に+5%の引上げでも約11兆円の買い需要が生じる。確かに定量的な数字は難しいだろうが、数千円程度の上昇寄与のインパクトはないわけでもない。

まあその辺はともかくも、今後は東証の動きに合わせた物言う投資家の動きも活発化と共に機関投資家のプレッシャーも強まって来るか。近年は代表取締役選任が厳格化してきており例えばニッセイアセットマネジメントは2025年6月からPBR1倍未満で東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現」への対応が無い場合は、代表取締役の選任反対という基準が出てきている。

また三菱UFJアセットマネジメントでも、TOPIX500対象で2027年4月1日以降、株主総会で、過去3年連続のROEが8%を下回りかつPBR1倍を下回る場合は代表取締役の再任に反対する旨を公表している。いよいよ株価を意識しないと社長のポジションも安泰ではいられない時代になってきている。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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