タイムラグの波

総務省が先週に発表した8月の東京23区消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が前年同月比1.8%の上昇となり、3か月連続で上げ幅を拡大させた。食料は3.9%上昇し全体を押し上げているが、我々の身近なモノでは夏野菜が高騰するなかこれらの“お供”ともいえるドレッシングも15.2%の上昇を見せており、この辺は帝国データバンクによる9月の価格改定動向でも見て取れる。

同社の調査によれば9月の飲食料品値上げは合計で4531品目となったが、単月で4000品目を超えるのは23年の10月以来のこと。食品分野別ではこのドレッシングはじめソースやマヨネーズなど「調味料」が1892品目で最多となり、それに冷凍食品などの加工食品が1818品目と続くが、これら購入頻度をなかなか落としにくいモノだけで9月全体の約8割を占めている。

先の“ナフサ不足”を受けて食品包装のフィルムやトレーなどの資材が急騰したが、それらの影響で価格変更に迫られた商品値上げのタイミングがちょうどこの期に集中しているというが、今後も食料品、日用品など幅広い品目で値上げの動きが本格化することが見込まれ、冒頭のコアCPIの上昇率は秋口に2%台、今年末にかけて3%台まで高まることが予想されている。

先に政府は食料品の消費税率を2年間の暫定措置で現在の8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しているが、年間数兆円にも上る財源の確保には不透明感漂う。こうした懸念を背景とした構造的な円安圧力が続き斯様な暫定措置も“焼け石に水”にならぬかどうか、粛々と進む食品値上げと並行しこれらも注視しておく必要がある。


輸入ETF襲来?

さて世界の株式市場が落ち着きを取り戻している旨の日経紙の記事を見たが、背景には投機色の強いレバ型ETF取引の後退があるという。この手の選好物色に沸いた第一幕を経て慎重姿勢も強まったものと思われるが、ついこの間は複数の米運用会社がSECにキオクシアHDの連動レバ型ETFの上場承認を申請した旨の報もあった。

この個別株のETFに関しては上記の第一幕で先にお隣の韓国が上記のキオクシアHDよろしく同じ半導体関連のSKハイニックスやサムスン電子に連動する個別ETFが解禁されているが、なにせこの2銘柄だけでKOSPI(韓国総合株指数)構成比の約半分を占めていただけに、市場のボラティリティーが過度に増幅し当局が証拠金引き上げなどの規制強化に乗り出さざるを得ない状況に追い込まれた経緯がある。

そんなETFだが日本ではやはりというかこの手のETFはまだ解禁されてはいない。ましてやこの韓国の事例を鑑みればなおさらNOが突き付けられそうだが、一方で米ではETFの新規設定が過去最多であった昨年を上回るペースで相次いでおり、主要指数連動が既に大手アセット中心に飽和状態になってきている事もありこれらレバ型ETFが米国設定の約4分の1を占めるという。

上記の通り日本では解禁していないETFだが、アセット側が金融庁に届けを出せば外国投信扱いで提供出来る可能性はある。そういえばこれら個別ETFとは違う商品ながらかつては個別株オプションのようなカバードワラントが取引されていた時期もあったなと思い出すが、単一銘柄で枝葉を広げた商品が無くなってしまった現在、“逆輸入”の個別株型には一定の需要があると思われるだけに今後の展開には注視しておきたい。


甘すぎた需給見通し

昨日から日経紙総合面の迫真では「コメ・クライシス」と題し2026年のコメの民間在庫が過去最大となる243万トン、1年後には最大で16%増える見通しで在庫の適正水準180万~200万トンを大幅に超える等の記事があった。見出しの通り政府が備蓄米を過剰に放出し、放出当時から多くの識者が指摘し懸念されていた市場のバランスを著しく崩した結果が具現化したというところか。

そういった事もあってジャブジャブな昨年米だが、今日もクイーンズ伊勢丹に一寸立ち寄った際に特売?コーナーに名の知れたブランド米が2000円台の値札で出ており何とも急落したものだと思ったのだが、他の所でも既に新米が出回る数か月前から某倉庫型チェーンストア等では各コメどころのブランド米を含め、投げ売りではと思わるほど安価な値札が付いていた光景も見た。

更に新米の出回りが謳われる今の時期、直近で話題になっているのが今年の新米は昨年から1000円以上も安い2000円台が続出、去年のコメよりも下鞘になる価格の逆転現象も彼方此方で見られるなど値崩れの中にあって追い打ちをかけているということ。出元の集荷・コメ卸業者の厳しい事情は想像に難くないが、はたしてというか最近は各所でこうした業者の破綻の報も聞こえ始めた。

一方で高いコメの買い控え等で我慢を強いられてきた消費者は、足元を見てまだ損切り米は安くなるのではと手ぐすね態勢。来月早々に政府は備蓄米の買い戻し方針を諮る模様だが、需給見通しの誤りは各所に暗い影を落とす結果となった。

“需給は全ての材料に優先する”


財政懸念で輝き再び?

さて米財務省が償還期間10年以上の国債買い入れ消却“バイバック”を倍増するとの発表でドル指数は下落したが、8月に入ってからV字型回復を見せていた金は3か月ぶりの高値を示現、またプラチナも2か月半ぶりの高値を付けるなど貴金属はこれを機に一段高、また代表的な暗号資産であるビットコインも先週には8万ドルに肉薄するまで戻り週間上昇率は約2年半ぶりの大きさを記録した。

足元では日本も先週には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となる2.945%にまで上昇しているが、財政悪化や先の見えない軍事衝突などを背景に米でも先週は30年債の利回りが約19年ぶりの水準にまで上昇、同様の環境を懸念する声が多くこのバイバックが拡大してゆくのか否か関心が向かう。

ソブリンリスクが意識される局面では無国籍通貨の続面を持つビットコインや金などが選好されるのが定番だが、久し振りに教科書通りのパターンというかマーケットでも貴金属系のETFなど先週末から商いを集めている。いずれにせよこれら今後の金融政策次第となってくるが、そういった意味でも今週末にかけてのジャクソンホール会議やFRB議長の発言には注目しておきたいところ。


個人株主誘致合戦

先週末の日経紙投資面では、3月期決算企業を対象に有価証券報告書に記載された単元株主数の「個人その他」を個人株主とみなして26年3月末時点の数と1年前からの変化を調べた結果が出ていた。かつてトヨタ自動車が株式分割を実施した後に株主数が急増した時の当時の記事を思い出すが、昨年の首位となったのは若年層を取り込み3割強の増加となったソフトバンクであった。

この首位のソフトバンクは24年に株式の10分割を実施しているが、2位のNTTも25分割と大幅分割を実施しており、3位の日本製鉄も昨年秋に株式の5分割を実施するなどこのランクインした一覧を見ると分割実施企業が多くみられる。これ以降も4位にランクインした株主数が2倍になった伊藤忠商事も年明けに株式の5分割をやっており、25年に株式の7分割を実施した9位のIHIも株主数が3倍になった模様だ。

分割と併せて各社優待も見直す向きも多い。上記3位の日本製鉄は分割と併せてこれまで株主から要望の多かった“工場見学会招待”の枠を拡大するなど見直しを進めている。8位にランクインしたサンリオも集計後ながら今年は株式の5分割を実施しているが、株主優待の長期保有制度を導入しており、若年層にはややハードルが高い株数ながら株主限定の“アクリルスタンド”や“株主限定のぬいぐるみな”どの提供を用意している。

以前に当欄では“ファン株主”を書いたことがあるが、こうしてみると分割しかり優待しかり総じて個人へのメッセージが熱い。一部外資系証券では株主優待導入企業の株価リターンがTOPIXを上回る旨のリポートも出ているが、斯様に外人勢も注目し始めるなかで株主優待導入企業の比率は7年ぶりに最高になっており今後も各社の“ファン株主”獲得の施策には注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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