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古手と新手

本日の日経平均は3日ぶりに急反落となったが、そんな中で全市場値上がりトップとなったのは三光合成がTOBを実施と発表した積水工機製作所であった。ところでこのTOBといえば先週には豊田通商によるトーメンエレクトロニクスのTOBを巡るインサイダー取引で会社員が東京地検特捜部に逮捕された報道もあった。

数あるインサイダーのネタでもTOBは企業破たんと共に旨みのある確実性の高いものからその人気?は衰えないが、素人はその買付処理の甘さゆえ今回のように見つかってしまう例が依然として多い。他に金融商品取引法違反といえばもう一つ、カリブ海の島にある投資会社もPTSを使っての不正売り抜けで数千万円の不正利益を得ていたとして課徴金納付命令の勧告が先週に出ている。

PTSといえばこれまでもマザーの狭間に売買が可能なことで投資顧問や株式専門紙の推奨情報に反応して値を飛ばす事があったが、そうでなくとも板が薄いだけに時として突飛な値動きが頻繁に起こり得る事が多く何時かはこんな新手な金商法違反が出てくるのは予想していたが果たしてという感じ。

とはいえ今回の件でも90銘柄近くの銘柄を食い散らかした挙句に数千万円を得ても、その課徴金は数万円程度とヤリ得感満載。個人の方はそこそこなお灸を据えられたにしてもまだまだ新手なネタは控えており、イタチごっこはこれからともいえるかもしれない。


家具屋姫

さて、今週の株式市場は高値警戒感が燻る一方で下値も堅いといえるが、こんな手詰まりで低位が乱舞する中やはり連日市場の注目を集めているのはジャスダックの大塚家具だろうか。先週26日から始まったストップ高の勢いは週明けも止まらず上限いっぱいのまま大引け、翌日のひな祭りの日にも更に連続ストップ高に迫るも一転急落と乱高下が続いている。

この背景には周知の通り内紛に端を発した今月下旬の株主総会に向けたプロキシーファイトの思惑台頭があるワケだが、これに加えて内輪揉めに付き物の停止規制を見越したカラ売りが急速に入り先週末には久し振りに見る逆日歩34円という近年に無い取組が形成された事も一役買っており、まさに鉄火場となっていた。

それにしてもこの一連の騒動で会長の株式資産もたった一週間で48億円増と倍化したと思えば、一日でそれが28億円も目減りしたりの乱高下であるからやはり創業者は凄い。長女の社長もこんな状況下いきなり配当倍増を発表、上記含めた諸々の株高はプロキシーファイトにも各方面で影響を及ぼす訳で、ほか浮動票への根回しも既に周到とも思えるが勝手に勘繰るになかなかしたたかともいえる。

株価と共に二人の記者会見など高見の見物的にはなかなか夫々の世代が反映されたものであって面白かったが、さて軍配は何方に上がるかのか?株主総会を前にまだまだ株価と共に目が離せない展開で要注目である。


北風政策だったハゲタカ

先週末の当欄で「消えたトラウマ」と題して書いた中でアクティビストとして挙げたのは「村上ファンド」、「スティール・パートナーズ」であったが、先週末の日経紙マーケット面には「元スティール銘柄開花」と題し、過去にこのファンドに狙われた銘柄の上昇が際立っている旨が書いてあった。

そこには一覧表のトップに出ていた名村造船の4倍化や記事の冒頭にあったハイレックスコーポレーションのここ2年での株価3倍増が挙げられていたが、一覧表に見られるアベノミクス期間の上昇以前にもここが目を付けた銘柄は度々取り上げられていた経緯がある。

例えばこの日経紙タイトルで思い出したのだが、今から数年前にもこのスティール・パートナーズが投資した約40銘柄が何れもすこぶる好調な旨の記事を見た記憶があり、その内容は同ファンドが銘柄選定後にこの約40銘柄全てに投資した結果、シミュレーション期間中のTOPIXが約10%下落した一方でこちらは配当を控除しても約25%の利益となったというもの。

最後は東京高裁から濫用的買収者のレッテルを張られヤレヤレの持ち株売却をさせられたスティール・パートナーズであったが、常々どう見ても割安なものに投資するからヘッジは要らないと言うのが彼らの弁だった。アプローチこそ結果的に間違えたものの、基本の選択眼は間違いのない物であったといえ軌跡があるだけにまだ投資のヒントが隠れているかもしれない。


投資と配分

本日の日経紙(一目均衡)には、今月にファナック株式を取得した米投資会社サードポイントと1兆円の資金を抱える同社が株式市場で攻防を繰り広げている旨が載っていた。かねてより豊富な資金を自社株買いに充てるよう要求していたようだが、同社は今週に国内の工場や研究所を新設することへの資金投入を発表している。

文中にはこの投資計画を差し引いても8,000億円以上の資金がさして利益も生まずに眠る旨も書いてあったが、こうした企業はなにも同社だけではない。こうした所謂貯め込み型の企業が続出した背景には長期にわたるデフレ傾向と銀行の貸し渋りがこれらを創造したのは想像に難くないだろう。

上記のファナックは本日も続伸し連日で上場来高値を更新してきているが、インカム期待だけでもアナウンス効果は高く短期でもそれによるキャピタルゲイン効果も高いのではないだろうか?勿論株主配分と成長投資の両取りを実施する優等生も居るが、JPX400創設でこれら双方に無関心であった向きが格段に少なくなってきているのは潮流の変化だろう。


内需の存在感

本日の日経紙マーケット面には「銀行株に資金流入」と題し、昨日の業種別日経平均株価「銀行」が前週末比3%上昇し、売買代金ランキングでも上位にメガバンクが並ぶなど出遅れ感のあった銀行株への資金流入が目立ってきた旨が書いてあった。

日経平均も昨日は18,000円大台を回復してきたが、こんな銀行株の堅調からTOPIXも先週は祭日前に日経平均が往って来いの反落となったものの、それを横目にTOPIXは3日続伸するなどそれ以上に強い動きさえ感じた。昨日は全36業種でこのセクターの上昇率が首位であったが、同指数の強さの背景にはこれらの堅調が大きく寄与している感もある。

長期金利が上昇し債券市場では金利低下の流れに変化が出てきている事が支援材料視されているが、当欄で先月中旬に「24年ぶりゼロ」と題して書いた通り昨年パンクした企業は8年ぶりに1万件を割り込み、その負債総額も前年比で32%減少し1990年以来24年ぶりに2兆円を割り込むなど金利同様にこちらにも変化が。昨年1年分の下落を取り戻せるかどうかこれらと併せ見ていきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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