153ページ目   雑記

アマゾンとESG

さて、先週末の日経紙金融経済面では「肉食に及ぶESGの波」と題し、英紙フィナンシャル・タイムズがアマゾン熱帯雨林火災をきっかけに投資家と消費者の両方から食肉業界に逆風が吹いている状況について論じていた旨が書いてあったが、「地球の肺」といわれるアマゾンの状況が深刻化するに至ってESGへの配慮に欠けるといわれる業界には改めて厳しい目が向けられている。

予てより農業関連産業とりわけ畜産業などは温暖化ガスの排出量が多い事で知られ、米でナスダックに新規上場した代替肉ベンチャー、ビヨンド・ミートが株価大化けと共に話題を振り撒くなど昨今は欧米の代替肉ブームの波が各所で波及しつつある件などちょうど一ヵ月前の当欄でも書いているが、この辺からとりわけ若者世代の代用肉指向が高まっている。

一方でそうした世相とは裏腹に同紙では食肉業界全体でサスナビリティーへの対策を怠っているとしているが、そうした事から前回書いた通りこれらESG投資のカテゴリーに括られる企業群は今後サステナブルを意識する動きの余地があり、またこれらから商機の伸びしろも多いということになるか。


逆鱗

さて、「逃亡犯条例」改正案をきっかけとする香港での大規模デモが過激化の一途をたどっているが、一昨日の日経紙・オピニオンではTシャツに「香港」を独立国のように表記した問題で中国から強い批判を受け7月にその販売を停止、8月に謝罪することを余儀なくされた伊ヴェルサーチが店の写真入りで出ていた。

これ以外にもヴェルサーチと同じように香港を中国とは別の国であるように表記したTシャツを販売したとして、米コーチや仏ジバンシィも相次いで大々的な謝罪に追い込まれているが、何れにせよ香港とその主権を巡る緊張がファッション業界にも飛び火した格好となったか。

この一件ではヴェルサーチのアンバサダーを務めていた女優のヤン・ミーが同ブランドに対し契約解除を申し出るに至ったが、アンバサダーが降りるなど中国人モデル達がショーをボイコットした昨年のドルチェ&ガッバーナ事件を彷彿とさせる一件だ。

ところで先にLVMHなど仏高級ブランド大手3社の2019年1〜6月期業績が纏まり3社共に前年同期比で2ケタ増を記録する結果となったが、いずれも牽引役となったのは中国である。アパレルに限らず中国市場を重視する外国企業ほど国家主権はじめ文化や多様性に関しては今後も一層の注意が求められようか。


次の活路

本日の日経紙投資情報面には「成人 ネット証券の危機感」と題し、ネット証券の関係者らが近年のHFT業者の台頭や日銀によるETF買い入れ等が個人トレーダーのエントリー機会を奪いつつあることを背景に、個人の市場参加者が趨勢的に細ってゆく現状に危機感を覚えている旨が載っていた。

ネットでリアルに板状況などいつでも閲覧できる今となっては、かつて株式の売買の際に担当の歩合証券マンや証券レディーなどに電話を入れて板読みなどやってもらっていたのが本当に信じられないくらいだが、少子高齢化による対面顧客の減少傾向のみならず対面から流出したアクティブ層の活力も奪われつつあるとなれば関係者の心中も穏やかではないだろう。

日銀によるETF買い入れの弊害やHFT業者の弊害についてはこれまで何度も取り上げてきたが、一方でこれらは株価下支えやリクイディティー寄与など時に現市場に必要悪?な部分も持ち合わせているあたり功罪論議も絶えない。ともあれ市場の変遷と併せネットからITまで日進月歩で業界も都度他に活路を見出す必要性が一層増してきた近年である。


需要と倫理

さて、現在スイスのジュネーブで開催されている絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約締結国会議の委員会は、その行方が注目されていた日本など象牙の国内市場を維持する国に早期の閉鎖を求める決議案の採択を見送る事を昨日決定したと報じられている。

象牙といえば春先に当欄で取り上げた際に国内での象牙取引厳格化の旨を書いたが、その一つである登録制度を盾に国内市場の維持を訴えたのが一先ず奏功した感じか。この登録制度を前に昨年から登録量が急増している旨が報じられているが、これらから明らかに駆け込みの用が窺える。

しかしこうした駆け込み登録の中にも違法取引されたモノを含んでいる可能性もあり、日本から違法に輸出された象牙が中国で押収されるケースが既に昨年1年間の件数を上回っており、禁止が先行している国への新たな供給源に化けている可能性も指摘されているだけに今回の決定に一部で批判も出そうだ。

ここ近年は象牙に限らず鰻や鮪から鯨まで世界中から厳しい視線が向けられているが、日本のマーケットはマニアックな需要からペット用に冒頭のような絶滅危惧種等の流入が度々事件にもなる。倫理より欲望が遙かに勝る一部の富裕層マニア等が存在する限り闇マーケットは存在し続けることは想像に難くないだけに今後も厳しい指摘は続きそうだ。


脱プラ機運

昨日の朝方のTVニュースでは今年春にタイの海辺で保護され人気となっていたジュゴンの赤ちゃんが残念ながら亡くなってしまった件が報じられていたが、その体内から大量のプラスチックが見つかった事でこれが原因となった可能性が高いとの事が波紋を広げている。

上記のような動物たちがプラスチックを飲み込んで傷ついてしまっている事が問題視されている件についてはこのTV放映があった日の日経夕刊ニュースぷらすでも「なぜ今、脱プラ運動?」と題し触れられており、遅れていた日本の規制も漸く30年までに使い捨てプラスチックの排出を累積で25%削減する事が決められた旨が載っていた。

脱プラスチックについては当欄でも数度触れているが、こうした機運を背景に日経産業紙纏めの今年上半期のスタートアップ企業の調達額ランキングにはプラスチック代替の新素材を開発する企業もベスト10にランクインしている。斯様に官から民も波が発生し消費者側もまた問題意識を持つ切っ掛けとなってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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