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宇宙ビジネスの裾野

さて、米フロリダ州から先週に打ち上げられたボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」は日本時間の7日未明、ISS(国際宇宙ステーション)に到着しドッキングに成功した。また、イーロンマスク氏率いる米宇宙開発企業のスペースXは大型宇宙船「スターシップ」の4回目の打ち上げ試験で機体を地球に帰還させることに初めて成功するなど宇宙開発が日進月歩である。

ところで先週は宇宙ゴミの除去など宇宙のロードサービスを目指す宇宙ベンチャー企業、アストロスケールHDが東証グロース市場に上場している。注目の初値は公開価格を50%ほど上回る好調な滑り出しとなったが、宇宙関連のスタートアップといえば近いところで昨年11月には小型衛星開発のQPS研究所が、またその前には月面着陸を目指すアイスペースが相次いでIPOしている。

前にも書いたが、宇宙ビジネスの市場規模は2040年代には現在の約3倍の150兆円になるとの試算がある。宇宙産業のすそ野は広くロケット衛星の打ち上げや人工衛星の開発などはもとより、それらのデータを使った利活用の分野も非常に伸びているなどで日本では100社超が月面ビジネスに関心を寄せているとされ、企業も宇宙ビジネス室なる新部署を設ける動きも一部ある。

いずれにせよ宇宙は最後のフロンティアともいえるが、今の宇宙ビジネスの規模は宇宙予算一つとっても日本は米の十分の一程度という。そういった事を背景に政府は宇宙分野の技術開発などを支援する「宇宙戦略基金」の設置を先に決定しているが、人材の育成も含めてそのリソースをいかに活用してゆくのかこの辺が今後の課題になってゆくだろうか。


利上げの是非?

内閣府が1-3月期のGDP改定値を発表しているが、5月速報値のマイナス2.0からマイナス1.8に上方修正された。企業の設備投資が最新の統計を反映し速報値のマイナス0.8%からマイナス0.4%に上方修正されたことが全体を押し上げたことが要因だが、一方でGDPの半分以上を占める個人消費は変わらずで4四半期連続のマイナス継続でリーマンショック以来最長となっている。

また街角景気を表す5月の景気ウォッチャー調査の結果も公表されているが、前月比1.7ポイント下がり3か月連続で悪化した。企業動向も悪化しているが、それ以上に特に個人消費を映す家計動向で小売りがマイナス1.4、飲食がマイナス3.7と振るわない。景気の先行きを判断する指数も3か月連続で低下し、こちらも家計動向がマイナス3ポイントと大幅な悪化を見せ総じて物価高の影響が大きく消費が活発化してゆくイメージが湧かないところ。

スタグフレーションの警戒感も出始めているが、個人消費が低迷している主因は金融緩和と円安による実質賃金の前年割れ。そういった事で今後を見てゆくうえで金融政策の行方がキーとなるが、消費が弱いなかでの金利引き上げは景気減速に繋がるという意見もあれば、一方で利上げをしない事でそれが輸入インフレを通じ消費の低迷を招いているという意見もある。いずれも成程感があるが目先はそれらを念頭に今週の日銀金融政策決定会合に注目としたい。


資産運用特区へ漸くの一歩

政府は先週「金融・資産運用特区」として東京をサステナブル金融の先進都市に、大阪を未来社会の実現に向けたチャレンジ特区に、福岡をスタートアップへの成長資金の供給強化を打ち出し、北海道をGXへの投資推進特区とするなどこれら4都市を指定すると発表している。これら特区で規制緩和などを進めて海外からの投資を更に呼び込む狙いがある。

ところで世界の国際金融センターの実力を評価する国際金融センターランキングだが、最新の2024年上位5傑は1位がNY、2位がロンドン、3位がシンガポール、4位が香港、5位がサンフランシスコ、はたして日本は19位となっている。一昨年に当欄でこれを取り上げた時は21位、昨年は20位と一応そこからはジワジワと順位を上げてきているもののアジア圏では依然下位に甘んじている。

ちなみに東京と並び特区指定された大阪は東京都とは逆に一昨年取り上げた時の38位から更に順位を下げて47位に沈んでおり福岡、北海道は言わずもがな。上記の通りアジア圏ではシンガポール・香港に運用業が集約してゆく中において、日本の規制緩和は国税の減免措置などが抜け落ちているなどまだまだ見劣り感が際立つ。

金商法など取ってみても外国人には条文が複雑で自ずと詳しい専門家も少なく、また幾つもある日本の特異な監督体制も事務手続きの煩雑さやコスト的に敬遠されるか。そう考えると世界の金融センターに並ぶべくするには課題が山積みだが、これまでとは違った具体的な課題に向き合っていけるのか、はたまた今回も掛け声倒れに終わってしまうのか今後に注目したい。


日本のお家芸

昨日の日経紙ビジネス面では、帝人が衣料素材メーカーの福井経編興業や大阪医科薬科大学と共同で開発した心臓パッチ「シンフォリウム」を12日に発売する旨が出ていた。同製品といえばかつて高視聴率を誇った日曜劇場の「下町ロケット2ガウディ計画」に登場する心臓の人工弁技術の題材にもなっており、さながらリアル下町ロケットといったところか。

ところで福井の衣料素材メーカーといえばもう一つ、福井の第一織物もハイブランド関連で時折報じられている。ポリエステルにもかかわらず綿や麻の質感を持ち強い耐水性も兼ね備えるデュクロスなる素材を開発し、ルイヴィトンやグッチをはじめモンクレールやバーバリー、国内ではイッセイミヤケなどのハイブランド勢から引っ張りだこになっている。

日本の繊維産業といえばかつては高度経済成長を支えた黄金期も今は昔、すっかり斜陽産業に成り下がってしまったイメージであったが、こうした向きが空洞化を食い止め日本の繊維産業の火を絶やさぬ一助を担っているか。冒頭の下町ロケットではないが、先端医療からハイブランドまで支える技術が日本の中小企業から続々と生み出されているのは実に誇らしい限りだ。


特定資産の再考を

さて、今からちょうど10年前に当時では世界最大であった仮想通貨交換業者のマウントゴックスが約480億円のビットコイン等を流出させた事件があったがあれから10年、先月末にDMM.comグループで暗号資産交換業を営むDMMビットコインが482億円相当のビットコインを不正流出させる事件が起きている。

むろんこの10年、この手の仮想通貨流出事件が全くなかったワケではなく日本だけでも18年にはマウントゴックスを上回る580億円が不正流出したコインチェック事件や、その同じ年のテックビューロの67億円不正流出、その翌年にはビットポイントジャパンの35億円不正流出など挙げれば幾つもの流出事件を挟んできている。

ところで本日はNF・日経半導体ETFが上場しているが、こうした管理運用が難しい仮想通貨こそETFではそのハードルが果てしなく下がることになる。先にも書いたように現行では投資信託の運用対象である特定資産から外れており、そもそも金融庁は5年前の指針改正において暗号資産を投資対象に含む投資信託の組成・販売を禁止しているワケだが、こちらもパラダイムシフトが求められる時期に来ているか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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