22ページ目   雑記

コストプッシュ型再燃

さて月初め恒例の今月の値上げ状況だが、帝国データバンクによれば主要食品メーカー195社における家庭用を中心とした7月の飲食料値上げは411品目、前年同期比では7か月連続で大幅減となったものの、今年値上げが予想される品目数累計は3年連続で1万品目を超えた。

今月に全食品分野で最も多かったのは「酒類・飲料」の199品目、メルシャンはワイン全商品の4割に当たる約130品目の出荷価格を引き上げるが、ワイン離れが言われるなかの値上げ敢行で消費に更なる暗雲が漂う。ほか「菓子」などは不二家のルックほかあのチロルチョコが内容量を減らすなど先月に続きチョコレート製品の値上げが目立った。

チョコといえばカカオ豆も生産地の異常気象と物流コスト、嗜好品の需要増大、投機マネーの流入などを背景に高騰、今年3月にはカカオ豆の先物価格がNY市場で初となる1トン1万ドル超えを記録している。当時の銅価格1トン9000ドルを上回る事態となり話題になったのが記憶に新しいが、オリーブオイルよろしく今後の更なる値上げは避けられないだろうか。

総じて値上げ要因として原材料高は言わずもがなやはりというか円安による値上げも約3割を占めたが、この円相場も前回の値上げラッシュ時より更に現在は崩落している。一頃の円安是正による輸入コスト低減への期待感も吹き飛び今年1月のビッグマック指数もマイナス46.5と過去最低を更新、購買力が落ち買い負けし易くなっている日本の消費者への影響が懸念される。


夢の国の新エリア戦略

さて、今月は東京ディズニーシーで8つ目となるテーマポート、「ファンタジースプリングス」がオープンしている。その投資額は実に3200億円、開業以来で最大の拡張ということでシーの総面積はこれでランドを上回る事になる。東京ディズニーリゾートもはや開業40周年という事でその客層も親子3世代に広がっており、高齢に差し掛かった世代にも認知度の高いピーターパンも取り入れているのが印象的だ。

この新エリア、入るためには新エリア内のホテルに宿泊するか先着順のパスもしくは短い待ち時間で利用できる有料パスを購入する必要があるが、予定より45分前倒しで開園した初日は早いところで4分後には一部のディズニー・プレミアアクセスが予定発行枚数に達し取得終了のアナウンスが流れるなど入場後にも新たな壁?が立ちはだかる。

新エリアといえばファンタジーシャトーとグランドシャトーの2棟からなるホテルも注目すべきで、これまでの直営で展開するバリュータイプ、モデレートタイプ、デラックスタイプに続き、今回のグランドシャトーは初の最上位となるラグジュアリーの位置づけとなる。この辺もまた冒頭の3世代を意識しており、楽しみ方の多様化を受けホテルで過ごす時間を重視するなど星野リゾートのコンセプト?に通じるところもあるか。

OLCはこのホテル事業も絶好調だ。昨年4-12月期売上高は約670億円とあのインペリアルを凌ぐ規模で、その営業利益率30%超とこのインペリアルやプリンス系の10%前後を横目に大きく上回る。今回の新エリアは売上高で約750億円の押し上げ効果を見込み、客単価も800円程度上がる見込みというがその客単価も昨年度は16644円、コロナ前から入園者数は減少している一方でこの客単は逆に40%上昇しているという。量から質への戦略は着実に奏功しているといえ、まだまだ夢が覚める気配は感じられない。


中元商戦2024

今の時期は各所より多くのお中元案内が届くが、斯様に今月から始まった中元商戦がたけなわである。今年のお中元市場は企業の贈答廃止等の影響もあって前年からわずかに減少し6560億円と見通しと言われている。とはいえ百貨店にとってはこれがスタートする6月は重要月に位置し、各社ともこの商戦の売り上げは前年並み以上とする目標を掲げている。

今年は何処も酷暑に対応すべく「冷」を意識し、例えば三越では二幸の冷やしておいしいカレーや有名パン店の冷やしパン、ホテルブランドの冷やし担々麵を、また高島屋でも有名イタリアンレストランとコラボした冷温いずれも美味しく食べられるというデザート系ピッツァや、冷やしでも食べられるフォンダンショコラなど変わり種のラインナップを展開してきている。

今年は上記の商品をコラボした有名店のシェフ直々に説明を受けそれを試食するイベント等も行われており、この時期だけのグルメを特別体験できるバレンタイン商戦よろしくトキ消費化の動きも出て来た。活況を呈する百貨店の物産展では試食やイートインが人気だが、この中元の類も今後各社の戦略如何ではその規模も物産展を追う規模への拡大も見込めるかどうか注目されるところ。


広がるソバキュリアン

先週末の日経紙夕刊一面を飾っていたのは「ワイン消費曲がり角」と題し、若者の酒離れや質を重視する傾向の強まりを背景に2023年の消費量がピークだった17年から7%ほど減った旨の記事だった。確か数年前のぐるなび総研が発表する今年の一皿では「ノンアルコールテイスト飲料」が選ばれていたのを思い出すが、ソバーキュリアスも若年層にまで広がって来たということか。

このソバーキュリアス、シラフを意味するSoberと好奇心のCuriousを合せた造語だが、飲酒に懐疑的なライフスタイルがZ世代にも受けているという。ある調査ではZ世代で日常的に酒が飲みたいと答えたのは今や22%、酒は効率よく時間を使いたいという若者の価値観とはミスマッチで、このほか健康への悪影響などデメリットの方が大きく感じられている模様だ。

近年ではラグジュアリーホテルのバーなどでも挙ってモクテルなどノンアルのバリエーションが多彩になってきており、下戸には敷居高かったこの手のバーのハードルが下がったのは朗報だろう。このノンアルもこれまでドライバー向けの代替品扱いで消極的な飲まれ方をされてきたものだったが、こうした動きにより今後も商機が増え積極的に攻めてゆく場面も多くなりそうだ。


上期ヒット商品と日本価格

さて、今月は毎年恒例の2024年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付が発表されている。ちなみに昨年は東の横綱が「5類移行」、大関が「ChatGPT」、そして西の横綱が「WBC世界一」、大関が「インバウンド復活」であったが、今年は東の横綱が「新NISA」、西の横綱は「円バウンド」と昨年の大関が昇格?したようなかっこうになった。

しかし円バウンドとはよく言ったもので、外国人観光客によるインバウンド消費のプレミア化が止まる気配を見せない。豊洲や築地では「インバウン丼」なる造語まで今や誰もが知るところとなった1万円前後の海鮮丼や1本3千円超の牛串が連日飛ぶように売れるほか、百貨店では購入者の6割以上を占めるインバウンド勢向けにミキハウスなど従来商品の約4倍の価格設定の高級ライン「ゴールドレーベル」を展開している。

4倍の価格設定とはいえ所詮子供服だろと侮ることなかれ、何せパジャマの16万円超からはじまり、今年の秋冬用に発売予定のモノではそれこそロロピアーナクラスのラグジュアリーブランドでしか見たことの無い「ビキューナ」の毛を使用したベビーポンチョが110万円、子供用セーターは約97万、ブランケットが165万円と振り切った値段を打ち出してきている。

斯様にインバウンド勢と日本人の金銭感覚に差が出るのはとりもなおさず円安の存在が大きい。日米金利差の影響が言われ久しいが、金利差がほぼ変化しない状況下で年明けから半年で円は対ドルで約16円も急落、ドルに限らずスイスフランに至っては私事ながらトランジットでチューリッヒ国際空港を利用していた頃の80円台の憶えから今や178円台と半値以下の水準だ。

冒頭の東の横綱「新NISA」にしても、雪崩を打ったような個人による海外投資の増加で家計の円売りを加速させ構造的な円安圧力の一因になっているからヤレヤレという感じだ。国内の客が手を出しにくい斯様な振り切った価格が映すのはデフレ慣れした安い日本の姿で、円バウンドという言葉の裏に取り残されている「日本の価格」という現実がある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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