239ページ目   雑記

官製相場の死角

各紙で報じられているが、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表した2015年10〜12月期の運用成績で運用益は4兆7,302億円であった。この直前の中国ショックから中央銀行の追加金融緩和を受けて減速懸念の一時後退で株価が回復していた事に因るところが大きい。

とはいうものの周知の通り年明けから先進国中での暴落を牽引しあっという間にアベノミクス始動直後の水準まで往って来いとなってしまっており、加えて円の急騰もあり15年度通期では5年ぶりの運用損失は避けられない公算が大きい。ましてや今流行りのブル型ETFよろしく一昨年には株式比率を2倍化しておりその影響度もこれからはかられるところ。

GPIF審議役は「短期でみれば収益のブレは大きくなるが、年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」と強調し改めて運用は長期的観点から評価すべきだとしているが、この「リスク」の定義もいろいろ工夫された言葉へ変換されているケースもあり、将来的な年金給付金減額もあり得るとの首相の仄めかしもいろいろ読み解く必要があるそうだ。


モノ扱いから手段へ

さて、先週23日の当欄では仮想通貨について触れ、「〜仮想モノは既存の通貨や有価証券といった金商法が及ぶ範囲の外側に位置しているという部分が大きいだろうか〜ビットコインも金融商品としての性格をより強めそうでこちらも当局の出方を睨みながらの展開になろうか。」と末尾に書いたが、その翌日24日の日経紙一面には「仮想通貨を貨幣認定、金融庁、法改正へ」と題してタイミングよく記事になっていた。

今通常国会に資金決済法の改正案を提出し成立を目指すとしているが、貨幣機能を持つと認定する事で決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づけ、取引所は登録制とし、顧客資産と自己資産を分ける分別管理等の導入等も含めて金融庁が監督官庁になり目を光らせるとしている。

そんな報道もあってこの日から株式市場では関連銘柄が急騰、ビットコイン関連を展開しているところに投資しているポイントサイト運営のセレスがストップ高、同じくポイントサイト運営のGMOメディアは2日連続のストップ高、更に圧巻は昨年7月にビットコイン取引所を世界的に運営する米社と業務提携したマネーパートナーズグループに至っては先週末まで3日連続ストップ高の余勢をかって本日も年初来高値を更新してきている。

マウントゴックスの汚点があるとはいえ日本のコイン利用者は数万人に上り、世界でも利用者はこの1年間でほぼ倍増するなど急速な拡大を遂げており、まさに利用者保護は焦眉の急といった機運が背景にある。また昨今のフィンテックとも絡めこれからの普及速度にも注目である。


いずれも正しい

さて、文化審議会漢字小委員会においては近年のパソコンの普及等で多用な印刷文字が使われる中、手書きの正誤の判断が分かれるようになったことから様々な字形が認められている事を解説した指針案を大筋で了承することになり、来週開催の親部会の国語分科会で報告する運びになった旨が先に報じられている。

この辺は一昨年あたりから指針が議論されていた事ではあったが、いずれも正しいと表記された漢字の中には親世代が習った当時なら、テストでは間違いなく先生からバツを付けられてしまうであろうモノが多く目に付く。

これに限らずローマ字もパスポート等では標準のヘボン式に双璧の訓令式も存在しこの辺は一部で長年議論が展開されてきた経緯があるが、このローマ字も今の小学生の教育現場では一律教育用文字で進めているので宿題等チェックした親の中には子供とぶつかり一寸戸惑う向きも多いのではないか。

何れにせよ長年使用しその経緯も解る大人なら兎も角も、初めて頭に擦り込む小学生などは教科書に準じていない書き方に対する混乱の懸念や、書道等どう対応するのかなど興味深い部分が多々あるが、めっきり手書きとご無沙汰になった今改めてこうした事例が出てくるとやはり想うところが色々とあるものである。


マイナス金利の功罪

本日の日経平均は円高から3日ぶりに再度16,000円大台を割って続落となったが、日銀のマイナス金利政策に伴い相対的にREIT関連は比較的堅調で、とりわけオフィスREITは賛否両論あるもののまだ魅力的との見方が多い。さてマイナス金利と言えば一般でも家計への影響が一段と広がっている旨が各所で報道されている。

預貯金などの金利引き下げも続きそうだが、昨年上場を果たしたゆうちょ銀行も貯金金利をもう一段引き下げる検討に入る。このゆうちょ銀行だが郵政グループ3社の中でも稼ぎ頭だったワケだが、10年物国債の利回りが一時マイナスになるなど利回り低下で収益悪化が懸念されている。

そんなワケで株価も今月は上場来安値まで沈む憂き目に遭っているが、こうなると前にも書いたように政府が計画する追加売却計画も暗雲立ち込める。しかし賛否両論あるこのマイナス金利政策、GPIFも一頃の勢いに対し持続性が疑問視されているなか、はたして期待するような政策効果が実現するのや否や注意深く今後を見守るしかない。


抜け穴

本日の日経紙アジアBizには中国景気の減速を背景にMGMが年内予定していたカジノ開業を延期する旨が出ていたが、さて賭博といえば仮想通貨界でも既存のデリバティブを模倣したハイリスク・ハイリターンのサービスが増え、賭博性との関連が議論されている旨も先週末の同紙に出ていた。

これまでも相対取引業者で裁判所が賭博と認めた金融派生商品は多数あったが、これら現行流通しているモノと異質性が著しかったものの最近は上記のようなモノも登場、こうしたビジネスが広がるのは、マウントゴックスが破綻した際にも議論された事だがやはり仮想モノは既存の通貨や有価証券といった金商法が及ぶ範囲の外側に位置しているという部分が大きいだろうか。

いずれにせよ法的裏付けが不十分なままその枝葉の広がりは加速度的になるのが世の常だが、ビットコインもこうなってくると金融商品としての性格をより強めそうでこちらも当局の出方を睨みながらという展開になろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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