31ページ目   雑記

2か月連続鈍化

さて月初め恒例の値上げ品目チェックだが、帝国データバンクによれば主要195社の今月の食品値上げは2067品目となり、値上げが本格化した22年以降で初めて2か月連続で前年同月を下回ることとなる。全食品分野で最多となったのは調味料であと加工食品や菓子類が続くが、加工食品は2023年通年での全食品分野で唯一1万品目の大台を超えている。

またこれに次いで粗糖やチョコレートの原料となるカカオ豆などの原材料価格が上昇したことが影響して菓子類の値上げも目立つ。ところでこのカカオ、産地の南米諸国はじめ主要生産国の大雨や洪水の影響によりNYやロンドンの先物価格は足元で数十年ぶりの高値を付けており、菓子類はもとより早くも来年のバレンタイン商戦で幅広く価格に影響が出そうとの懸念も台頭している。

ともあれ値上げの浸透や一部の原材料価格の一服を背景に年内の値上げは来月を最後にいったんピークアウトする可能性も高いとしているが、日本と諸外国の金融政策の方向性の違いから金利差拡大を材料に円安が長期化するなどコスト増加要因は依然燻るだけに、はたして素直に値上げ機運後退の気配が出てくるのか否かこの辺を引き続き注視してゆきたい。


62年ぶりスト

さて今年の2月に当欄では、「池袋の憂鬱」と題しセブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武の米投資ファンドへの売却を巡り迷走している様子を取り上げたことがあったがあれから半年、本日はとうとう旗艦店の西武百貨店池袋本店で労組側がストライキを決行する異例の事態となっている。大手百貨店のストライキは1962年の阪神百貨店以来、61年ぶりの事である。

事の発端は売却先の米投資ファンドがヨドバシホールディングスと連携している事でココの西武百貨店への出店案が雇用不安を生み出し、同時に2月にも書いたように当のテナントに20年以上入居しているラグジュアリーブランド勢はじめ地元の豊島区長、地権者からも猛反対を食らっているなど元凶?となっている。

従前に見られたような単純な賃上げストではないケースが時代を感じるが、報じられているところでセブン&アイ社長の「今まで十分に時間をかけて説明をしてきてこれ以上時間をかけられない」という主張に対し、労組側はこの辺の説明は今月から始まったばかりと述べており、また改装案にて大幅に入居場所が移動になるラグジュアリーブランド勢に対してもこれまでこの件に関する説明は無いとされている点など不透明を感じる向きも多いのではないだろうか。

ともあれこの一件を機に他の労組も実際にスト権利を交渉手法の一つとして活用しようとする契機になるのかどうかM&Aする側としてもその辺も留意すべき事項となって来ようが、不採算事業のイトーヨーカ堂も抱えるなか多くの利害関係者の納得を得られていない状況下で売却を強行した代償を今後負うことになるのかどうかも含めて事の成り行きを見守りたい。


株価も二極化?

さて今月は米ウォルマート株が上場来高値を更新してきたが、先に発表された同社の5-7期決算も既存店売上高が予想を上回り食品やヘルスケア関連など生活必需品を中心に堅調であった。そういった一方で米では節約志向が鮮明になりつつあり、不要不急の裁量消費の一部は我慢しようという二極化の動きが進んでいる模様だ。

この辺は株価にも色濃く表れており、上記のウォルマートの他にマクドナルドも先月には年初来高値を更新してきている一方で通期の予想を据え置いた高級志向のブルーミングデールズを持つ米老舗百貨店メーシーズや、米化粧品大手のエスティ・ローダーも米で高価格帯の売り上げが低迷し今月発表した2023年4-6月期の最終損益は20年4-6月期以来の赤字へ転落、株価も20年4月以来の安値を付けていた。

とはいえ富裕層に関しては株高による資産効果もあり堅調な消費が予想されるだけに振り切って高級に特化している仏エルメスや伊フェラーリ等の需要は安定的だと思うが、それ以外の層はパンデミックで急増した消費者の過剰貯蓄の取り崩しが進んでおり、加えて免除されていた学生ローン返済再開等も背景に今後の個人消費は不透明感が台頭する展開になるか。


都市部飽和状態の業界

ちょうど一週間前にクスリのアオキHDの株主総会が執り行われた。そこで見られたのは物言う株主のオアシス・マネジメントが創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなどの株主提案であったが、この光景は更にそのちょうど一週間前に執り行われたツルハHDの株主総会とほぼ同じものであった。

結果的にこのクスリのアオキHDの株主提案もツルハHDの株主提案も共に否決されることとなったが、オアシスの真の狙いはこの経営体制の刷新だけではなく業界の再編という見方が専らである。このドラッグストア業界で初の大型再編があったのは2021年2月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合であった。

このドラッグストア業界に絡んでは昨年当欄でもカインズによる東急ハンズ買収を取り上げた際の末尾で「これに限らずドラッグストアなど他の流通業界の再編も今後ますます加速してゆくのは想像に難くないか。」と書いていたことがあるが、ホームセンターよろしくこちらもオーバーストアが常態化している状況にあり常に再編の噂が絶えない。

ただホームセンター以上に各社の地盤や売りのカラーが違うところが厄介で、そういった意味では上記のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合などは本当に相性の良いマッチングであったのだろうと思う。ちなみに冒頭のオアシス・マネジメントはこのココカラファイン株も大量保有していた経緯がありちゃっかりと売り抜けにも成功しているが、自らが絡める再編の機会を虎視眈々と狙う動きは今後も続くか。


ガソリン政策

ガソリン価格の高騰が止まらない。直近で発表された先週アタマの価格は前週より1.6円値上がりし、リッターあたり181.9円とこれで13週連続の値上がりとなっている。政府による元売り会社への補助金が段階的に縮小して以降の値上がりがやはり顕著になってきたが、来月末にはこの補助を終了する予定と経産省は発表している。

これまでの史上最高値が2008年のリッター185.1円だったと思うが、既にこの水準を指呼の間に捉えておりこの政府補助金が終了するのと前後してこれを超えてくるかどうかというところ。補助金が無かったらとっくにレギュラーベースで200円超えという試算もあったが、こうも高騰が顕著だと改めてコーティングされた各種の税金が恨めしく感じる。

ところで税金といえば、証券などでは配当において法人税を支払った後の税引き後利益を株主に支払う際に所得課税が行われるという所謂二重課税が問題視されてきたが、このガソリンも構造的には基本税額に加えて揮発油税や石油石炭税など数種の税の合計額に消費税が課せられておりこれまた税に税がかけられる二重課税となっている。

いずれにせよこの補助金終了のタイミングでまたぞろ凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?補助金が機械的に終了し、円安や物価高で家計購買力が低下するなか凍結解除に今はまさに好機だと思うが。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2024

11

1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30