314ページ目   雑記

理屈と現実

今週は東京国際フォーラムにて国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会が東京では1964年以来、実に48年ぶりに開催されている。そんなワケで有楽町界隈は交通規制なんぞで渋滞やら物々しい様も見掛けるが、金融会議といえば先週は大手町でニッポン金融力会議の第一回トップ・シンポジウムも開催された。

この辺に関しては連休明けの日経紙にも載っていたが、この中で某大手証券の社長など日本株は歴史的に極めて割安な水準と強調、メガバンク3行の株式配当利回り平均が4%前後なのに対して、銀行の大口定期預金金利が0.2%台であることを例に挙げ預金からメガバンク株に一定の資金シフトがあってしかるべきだと述べているがそんな言葉も虚しく只管低迷する市場を見るにやはり違和感は拭えない。

こんな理論から今こそ「投資の機熟す」・「貯蓄から投資」と同紙にはタイトルが踊っていたが、今まで何度も書いているように既にこんなところに魅力を感じて株主になる向きが居なくなってしまっているのが事実。東電やオリンパスやシャープに見られるようにかつてのディフェンシブ優良株は無残にも時価総額を急減させ、配当や優待を狙っても斯様に値下がりの代償がそれを遥かに上回ったり突然のファイナンス実施で暴落の憂き目に遭って退場、素直にアップルやグーグルを買って放置している方が遥かに報われているという向きは潜在的に可也居ると思う。

同会議ではメガバンク勢も「サービス顧客回帰」と述べていたが、金融商品をセールスする銀行も他では無料の投資等の商品に高額な販売手数料を当然の如く徴集し、覆面で潜入調査したリポート等を見るに金融知識に乏しい行員がリスキーな金融商品をホイホイ捌いている様子も窺える。

確かに金融業界は総じて顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いのは事実だが、インサイダー等露骨に顧客の犠牲が糧になるような部分はそろそろ襟を正す時期に来ているのではないか。


ドサクサ紛れの転嫁

本日の日経紙には「惑う欧州年金マネー」として欧米を中心とする世界の年金マネーが長引く低成長・低金利で積み立て不足が深刻化している旨が載っていたが、同じ欄には日本でも過去10年の運用利回りの平均が2%と、加入者への年金給付に必要な予定利回りを下回る逆鞘状態と運用不振が深刻化している旨も載っていた。

斯様な情勢だけに高利回りに飢えた基金があのAIJ投資顧問の餌食になってしまったりする問題など勃発するワケだが、直近では長野県建設業厚生年金基金がこのAIJ投資顧問で企業年金資産の大半を消失させた問題に続き、未公開株運用でも多額の損失を被った旨が明らかにされている。この件では信託銀行、投資顧問もその責務に可也の問題があることが露呈された一件であった。

そんな責任放棄とも取れる行為が指摘されている中にはソシエテジェネラル信託銀行もあったが、数々の損失事件で表面化するパリバと共に何故かこの手に顔を出す頻度がフランス系は高い。まあ、その辺はともかくも上記のようなAIJ問題を引き合いにして最近は厚生年金基金制度廃止方針も出ていたが、誰が見てもおかしな理論でこの表現は混同甚だしいが近年堂々とこうした表現が増えてきているのは一寸不気味でもある。


再生医療に光明

連休明け本日の各紙を飾ったのはやはり京都大学山中教授の2012年ノーベル生理学・医学賞受賞だろうか。この生理学・医学賞部門で日本人がノーベル賞を受賞するのは、1987年の利根川理化学研究所脳科学総合研究センター長以来25年ぶり、成果から僅かに6年で受賞というから快挙である。

そんなわけで本日の冴えない株式市場のなかでも、関連株の「タカラバイオ」など筆頭にして「コスモ・バイオ」、「プレシジョン・システム・サイエンス」、「メディネット」、「DNAチップ」、「医学生物研」等が揃ってストップ高、「テラ」や「免疫生物研」など他の関連も急騰するなど何処を見てもバイオ物一色の展開であった。

斯様に枯れた株式市場にはちょうど良い材料提供のお湿りとなったが、水面下でも再生医療に関連した研究は個々で行われており、私も知人の医師からその手の興味深い話を聞かされた事があっただけに「日本再生医療学会」あたりから注目はしていたのだが、勿論のこと医療への現実的な利用は漸く取っ掛かりの段階という他、いよいよ科学も神の領域に近づいてきたことで倫理の問題やらと課題は多い。

もう一つ近年の課題としては特許問題、直近ではアラミド繊維でディポンが韓国大手と影しい知的財産権訴訟を繰り広げていたが、今のところこのiPS細胞に関しては日本が一歩リードしている模様、競争が激しい分野だけにこの辺も今後如何に海外勢から保護しつつ制度整備の充実を図ってゆくかが焦点となろうか。


新日鉄住金発足

本日の株式市場は手掛り材料難のなか円高で4営業日の続落、主力の鉄鋼も国内証券の目標株価引き下げもあって、昨日の海外大手溶鉱炉閉鎖報道による需給改善思惑からの上げも一日天下の上げに終った格好となっている。

ところで鉄鋼ポストといえば、今週は周知の通り新日本製鉄と住友金属工業が合併して「新日鉄住金」が発足している。取引所よろしく世界では大型買収が次々と成約し、欧州やアジアでもこれらのメガ物台頭でかつて粗鋼生産世界一とした新日鉄とて国際競争力回復のための合併話は自然な成り行きだっただろう。

ちょうど先月の日経「私の履歴書」も新日本製鉄名誉会長の執筆で、最終回には「理想的な統合が実行され、真にナンバーワンの製鉄会社になると確信している。」と記してあったが、そんな期待を背負ってこの話が出た当時は新日鉄は買い気配から40円高と急騰して寄るなど大騒ぎになった記憶が新しいものの、その後は互いに持ち合いしていた株式下落で一転赤字予想を打ち出したり今やその株価は半値にも満たない惨状となっている。

株価よろしくおりしも逆風下の発足となり今後も棘の道は避けて通れないのは想像に難くない。粗鋼生産は世界二位に返り咲いたものの首位の半分程度でアジア大手とはほぼ同じ規模、原料価格の高騰が続けば当初の目論見も狂ってくるなど課題は多い。

そういったことでこれからの手腕に注目したいが、ともあれ同業界に限らず今回の合併が国内企業の合従連衡復調の起爆剤となるかどうか今後も大いに注目される。


集約の為の一枚岩

昨日の日経紙には、来年1月に合併して「日本取引所グループ」になる東京証券取引所と大阪証券取引所が、決済機能一本化で市場効率性を高め市場拡大に繋げる狙いで来夏をメドにデリバティブの決済業務を東証子会社の日本クリヤリング機構に集約する旨が載っていた。

集約といえば先月末にも総合取引所の設立に向け、各省が取引所首脳陣を集めて意見交換会を開いていたが、ここでは参加者が取引活性化のために取引口座や税制の一元化などを要望した模様。一元化が叶えば投資家は株や商品先物を一つの口座で取引出来る為に利便性が高まるのは当然だが、これには先の当欄でも書いたように税制面等も含めて課題は満載。

ところでそれ以前に商品勢が合流するか否かが焦点にはなっているものの、先の会合では当のTOCOM側からは現時点では何も決まっていないとの声が聞こえる。この会合後に発表されたTOCOMの4-9月の売買高は1,188万枚と16年ぶりの低水準となり、ピークの2003年と比べると実に7割強の減少である。

斯様な環境から考慮しても各々の方向性を確定させるのは焦眉の急ともいえようが、一元化もその前提の一枚岩が求められやはり各省、行政の本気度が今後注目されようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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