39ページ目   雑記

辛勝に続く圧力

先週はJパワーが欧州機関投資家から受けていた株主提案に反対表明した旨を取り上げたが、これ以外にもここ一週間で多くの企業が所謂アクティビストの提案に反対表明を出している。任天堂創業家ヤマウチオファイスからTOBを受けている東洋建設、英投資ファンドニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドから株主提案を受けている日本精化、旧村上ファンド系から株主提案を受けているコスモエネルギーHD等々幾つも出てくる。

直近では成り行きが注目されていたセブン&アイHDは先週の株主総会で同社提案の取締役選任案が可決され、米バリューアクト・キャピタル側の提案は退けられた形になっている。ココは今から7年ほど前にも別の投資ファンドからも今回と同様の構造改革を迫られていた経緯があるが、これで何とか二度目も乗り切った格好となったか。

とはいえ昨年94.73%だった社長の選任議案の賛成比率は今回76.36%に減少、反対株主が約18%&増えた格好になる。総会前にグラスルイスなど議決権行使助言会社2社が再任への反対を推奨していた事も影響していると思われるが、一昔前のシャンシャン総会に慣らされた株主の質も近年はガバナンス改革を本気で考える層が増えつつあるようにも思える。

今年に入ってアクティビストから出された企業経営への提案数は43件にのぼりこれは2022年の同時点の27件を上回る。総じてまだ否決されるケースが大半だが、それらを受け別のアクティビストによる改革を訴える株主提案が続く可能性もあるだけに経営陣も喉元過ぎれば熱さを忘れるというわけにはいかず、今後も一定の圧力が続いてゆくのは想像に難くないか。


否決でも圧力

さて、ちょうど2週間前の当欄ではESGを巡る政治的分断を取り上げたが、ESGに絡んでは昨日にJパワーが欧州の機関投資家から受けていた脱炭素化の時期などを巡る株主提案2件に関し反対表明している。これまでも世界の石油大手で気候変動対策等の株主提案が話題になっていたが、近年では国内企業にもこの手の提案が活発化してきている。

ここ数年で提案を受けたのは大手金融期間ではみずほFGに三菱UFJに三井住友FGの3メガバンク、大手電力では東電HDをはじめ関西電力や中部電力、大手商社では住友商事や三菱商事といったところで、うち20%以上の賛成率を得たところはみずほFGや三菱UFJに三井住友FGの3メガバンク、冒頭のJパワーや関西電力に住友商事や三菱商事等の大手商社となっている。

とはいえこれら企業に対する定款変更を求める気候変動関連の株主提案はこれまで全て否決されている。定款変更には議決権の3分の2以上の賛成が必要とそのハードルは高いワケだが、否決されたとはいえ過去には住友商事が海外石炭火力事業からの撤退を表明し三菱UFJ銀行も日本の銀行として初めてネットゼロ・バンキング・アライアンスに加盟している。

これらの背景には株主提案の影響が少なからずあったのは否定出来ないところだろうが、今後も賛同を得た賛成票を基に企業との対話でプレッシャーがかかって来るのは想像に難くないか。ちなみに昨年6月の株主総会では株主提案が77件と過去最多であったが、今年も株主総会が近づくにつれ双方の緊張感が次第に高まってくる。


お家芸の商機

さて、先月末より公開している任天堂が共同製作したスーパーマリオのアニメーション映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の快進撃が続いている。既に全世界で累計で1600億円を突破しているが、日本でも累計興行収入が80億円を突破しており公開17日目での80億円の突破は今年公開作品の中で最速記録となるなど日本のコンテンツが世界を席巻している。

またこれに先立ち「スラムダンク」も中国で公開されているが、封切りからわずか10日で4月に中国全土で上映された映画の中で興行収入トップを記録、先週末段階で約121億円に達している。また欧州各国に先立ちイタリアでも公開されているが、メディアなどが挙って絶賛と少年ジャンプの掲載終了から26年も経っての映画化にも関わらず異例の大ヒットとなった。

アニメ等がお家芸とされる日本も近年はエンタメ産業の遅れが度々指摘されてきたが、こうした現象を目の当たりにするとやはり世界的な人気キャラクターを保持していることの強さを再認識させられる。こうしたエンタメ産業を席巻する人気キャラを生み出しているのは日米が2強ともいえるが、40周年を迎えた東京ディズニーリゾートのような外国のリソースを使ったテーマパーク創設等のコンテンツの活かし方など今後の労働力不足をも睨むにまだまだ商機があるか。


逆ザヤ苦境

本日の日経紙総合面には全国の地銀97行が保有する日本国債や外国債券、投資信託の含み損が2023年3月末時点で合計1兆8000億円と、1年前に比べて5倍に増えた旨が出ていた。欧米は言わずもがな日銀も昨年末に金融政策を修正するなど世界的な金利上昇による債券価格の下落が大きく影響した格好だ。

地銀といえば本邦勢もさることながら更に深刻な状況なのは米地銀勢か。同じく同紙のグローバル面には米株式市場で経営不安が高まる地銀株を標的としたファンドなどの空売りが勢いを増している旨も出ていたが、回転が効いているだけにこれらのポストの空売りによる利益は3月から5月上旬までの間で既にリーマン・ショック時並みの水準に上った模様。

浮動玉に対する空売り比率が平均で8割近くにも達したモノもあるといい日本なら即売り禁で逆日歩攻めに遭いそうな感じだが、それは兎も角もこれまでの金利環境下で構築していたレバレッジ経営のアセットが全て劣化してしまっている現状だけに厳しい状況だ。長短金利はここ30年で最も逆転している現状で、前にも書いたがこの辺が信用収縮に繋がってくると経済全般の下押し圧力にもなってくるだけに今後も注視しておく必要がありそうだ。


G7のジェンダー平等

さて、目前に控えたG7広島でもジェンダー平等は注目される議論の一つであるが先週の12日付け日経紙ではジェンダーギャップ指数や、グローバルから見た日本の課題を浮き彫りにすると共に先進企業による女性活躍推進の“異次元の解決策”を徹底討論するジェンダーギャップ会議の全面広告が出ていた。

前にも書いたが、昨年のジェンダーギャップ指数は146か国中で日本は116位と下位に甘んじG7の中では最下位と不名誉な順位となっている。特に経済では女性管理職の少なさなどが足を引っ張り下から26番目の121位となっているが、先月の男女共同参画会議では首相が東証プライム上場企業の女性役員の割合について2030年までに30%以上とする事を目指すと新たな目標を示している。

いまだ女性役員がゼロの大手企業が存在する日本だが、米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄は女性取締役の居ない企業は無くいずれも取締役総数の3割を女性が占めている。上記の首相が掲げた目標はこの辺を意識しているものと推測されるが、微増にとどまる女性社内取締役の嵩上げは急務と思われROEやPBRと並び欧米の株価指数がこれまたお手本ということになる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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