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マグニフィセント・セブンの独壇場

米S&P500は先週末に約2年ぶりに史上最高値を更新し今週に入ってもダウ共々これを更新してきている。緩やかな景気拡大が続くというゴルディロックス(適温)経済への期待が背景にもなっている模様だが、TSMCの強気の業績見通しを受けてもとより相場を下支えしてきたエヌビディアなどのテック株が上昇をけん引した側面も大きいか。

昨年は24.2%の上昇を見せたS&P500だが、個別ではやはりアップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・メタ、エヌビディア、テスラの所謂マグニフィセント・セブンの大化けが目を惹く。中でも主力である上記のエヌビディア等は約3.4倍、メタは約2.9倍、テスラは約2倍に、その他いずれも概ね5割以上と本体の指標をアウトパフォームしている。

もっと長いスパンでみると例えば仮に10年前にこれらにパッケージで投資していたとしたら実に39倍の大化けを演じており、同様にS&P500のETFに投じていたら現在は約3倍でありその差は歴然である。斯様にマーケットを牽引してきた騰勢が今年も継続されるかどうかだが、高い増益率の維持や飛躍的拡大が見込まれるAI需要を背景に引き続き高パフォーマンスに期待する市場関係者は多く、新NISAの資金が挙ってこれらに傾斜するのも致し方の無いところか。


リキャップCBの功罪

先週末の当欄では東証による資本コスト経営への対応を開示した企業の公表がスタートした旨を取り上げている。この資本効率改善を目指し各社鋭意取り組んでいるのが代表指標のROEを上げてゆくこと等だが、この辺に絡んでは先週末の日経紙投資情報面で「タダでは済まぬリキャップCB」と題し、この向上の為の手段としてリキャップCBが昨年は一昨年から5倍に増加した旨の記事が出ていた。

このリキャップCBなるもの、当欄でも昨年の春頃にアベノミクス時代に自社株買いの見せかけ実績に多用された旨を書いていたが、企業はコストの最小化を図れるうえにCBも或る程度安定した需要が想定されることでまことに都合の良い手段にも見え当時は実施企業の株価も代表的な指標から軒並みアウトパフォームしたものであった。

ただ年を経るごとに投資家の懸念は潜在的な希薄化の方に移ったこともあり近年では実施企業の株価パフォーマンスが冴えないのも事実。バランスシートの構成を変えることで手っ取り早く資本効率を改善出来るシロモノだが、CBを中心とするアービトラージャーなどの輩がこれを恰好の食い物にしているといった話も聞こえてくるに再度増加の兆しを見せている昨今、企業側の一層の金融リテラシーもどこかで要求されようか。


改革取り組み公表スタート

東証は既に昨年の春に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しているが、こうした取り組みを開示している企業の一覧表を開示済みとして今週から公表がスタートしている。今回は初回で昨年末時点の報告書に基づいて集計したものだが、検討段階である場合は検討中と付記するように求めている。

日経紙では昨年7月時点の集計でプライム市場上場企業では開示済みは31%だったというが、この資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応策を発表した企業数は9月までは10社未満であったのが11、12月は25社超えと年末に急増傾向になっていて、対応策の中には増配や自社株買いなどの株主還元方針を引き上げといった施策を打ってくる企業も散見される。

初回では開示済みだったのはプライム市場で約40%にあたる660社であった一方でスタンダード市場は約12%の191社と消極姿勢が目立つが、このポストでなくとも高PBR企業の中には指標に胡坐をかいて開示が進んでいない向きも一部見受けられる。改革への取り組みは株価にもパフォーマンスの差として表れてきているだけにこうした企業でも株主等からのプレッシャーはかかり易く、株主総会に向けてこの改革が緊張感のあるものになってゆくのは想像に難くないか。


大台超えに仲間入り

さて、昨年は日経平均が33年ぶりの高値を更新するなどの株高のなかで個別でも時価総額が節目となる1兆円の大台を超えた企業が、此処でも取り上げたOLCとねじれの京成電鉄など含め165社に達し22年末比で約2割増えることとなった。そしてさらにハードルの高い5兆円大台をクリヤした企業もまた32社とこれも過去最多となっている。

今年も時価総額の更なる増加に期待がかかるというものだが、周知の通り年明けからも日経平均は好スタートを切り1兆円、5兆円よりさらに狭き門の10兆円の大台に乗って来るプライム企業も出てきている。先週10日には任天堂が10兆円を超える場面があったが、ゲームで育てた豊富なコンテンツを武器にIPビジネスでは他の追随を許さない強味が光った一例だろうか。

そしてこの翌日11日には伊藤忠商事の時価総額も初めて10兆円を超え、総合商社では三菱商事に次ぐ2社目となった。総合商社といえばあの著名投資家のウォーレン・バフェット氏による買い増しの報で昨年は各社ともその水準を一段引き上げることとなったが、商社の中にあって非資源分野が強く最も収益安定性見込めるところが買われる格好になっている。

ところで昨年はカタリストとして東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などに関する要請や、経産省も企業買収における行動指針が出たりしたが、こうしたことによってTOBやMBOなども急増し企業の事業再編など加速してきた。こうした変革の波は今年も続くとみられ今後もその結果順次大台替えを達成してくるであろう向きには引き続き注目としたい。


悲願のETF承認

ビットコインの現物ETFを巡っては当欄でも度々取り上げてきたが、先週にSEC(米証券取引委員会)は、同ETF上場を申請していた米運用会社大手ブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストメンツ等の10本をはじめ、グレースケール・インベストメンツが求めていたビットコインで運用する未上場投資信託のETF化も認めている。これまで20軒以上の申請が却下されてきただけに悲願だった関係者の想いもひとしおだろうか。

そういえば上場承認の前にはSECのX公式アカウントがハッキングされ「同ETFの申請を承認した」との偽情報が流れ、当のビットコイン相場は急騰した後に急落する乱高下の憂き目に遭っていたが、はたして初日の取引額は今後半減期も迎えるだけに合計で45億ドルを超え早くも次期期待からイーサリアムなども2割近く上昇する場面も見られた。

ビットコインはデジタルゴールドとも言われているが、ゴールドといえば金ETFがNYに初めて上場した時はこれをポートフォリオに含めるハードルが下がり金需要を高めるまでになったが、このビットコインETFがその先例である金ETFに匹敵し暗号資産業界に大きな変化をもたらす可能性のあるモノになるか否かは未知数。とはいえこの時同様に投資家のハードルは一気に下がる事になるだけにどの程度彼らを呼び込めるかがキーとなって来るか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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