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再開の期待と憂鬱

さて、昨日から政府は入国者の上限を1万人から2万人へと制限緩和している。那覇空港や新千歳空港は国際線発着を再開できるよう準備し他の地方空港についても地元と調整したうえで順次再開を進めてゆく方針だが、これに併せ検疫措置も緩和され10日からは外国人観光客の受け入れも2年2ヵ月ぶりに再開する。

いよいよ待望のインバウンドが再開だが、おりしも世界経済フォーラムでは観光競争力ランキングで日本は公共交通機関の本数やその鉄道サービスの正確さが高く評価され3位のスペインや2位のアメリカをおさえ初めて1位となった。円安のメリットを受けられ地方への恩恵も大きかったインバウンドだけに復活への期待が高まる。

とはいえ今年春から数千人規模の解禁を経て以降も小出しに入国者を増加させているが、コロナ前の平均が14万人だった事を考えると冒頭の2万人では引き続きの小出し感が拭えない。G7並に水際措置を緩和すると表明したわりになんとも心許ない数字であり、インバウンドの取り逃がしが懸念されなくもない。

もう一つ、コロナ前の2019年訪日客の内訳は中国の30.1%はじめ広域中華圏で約半数を占めていたという点。ウクライナ侵攻を巡る新冷戦や当局による新型コロナ政策等に絡み個人消費が国家の方針に左右される中国依存のリスクもまた懸念され、上記と併せインバウンドが直ぐに戻って来るかどうかは不透明なだけに手放しに喜べるという状況には無さそうだ。


事実は小説よりも奇なり

本日の衆院予算委員会の集中審議において野党側からオンラインカジノについてこれを放置するのか?と総理に迫る場面があったが、これに対し総理はこのオンラインカジノについては違法なモノであり、関係省庁と連携し資金の流れの実態把握をしっかり行う事が重要で厳正な取り締まりを行うとの考えを示していた。

野党側が斯様に迫った背景には先に山口県で起きた誤送金された新型コロナ給付金をオンラインカジノで使い切った輩の事件があったからに他ならないが、それにしても当初回収に関して絶望的だったものが一人の弁護士によるサクサクとほぼ満額に近い回収劇はまさに稀代のエンタメを地でゆくような出来事であった。

それにしても一般的に考えられる示談云々から視点を国税徴収法に向けたところがなんとも頭が切れる。これを盾に決済代行業者から更に其の先の銀行にまで暗に圧力?をかけるテクニカルな技はまさに海外ドラマの「スーツ」を彷彿とさせる。しかし代行業者も揃って肩代わり?をしてまで満額に近い返金をしたあたり複雑な事情が見え隠れするが、何れにせよこの事件を機に今後この手の規制が更に一段と厳しくなるかどうか注目される。


ステーブルに非ず

さてこのところ低迷していたビットコインも直近で3万ドル大台を回復してきたが、一昨日の日経紙総合面には「仮想通貨1兆ドル消失」と題して、米の利上げなどから金融緩和であふれたマネーが逆回転した事を背景に暗号資産の世界全体の時価総額が1.2兆ドルと昨年末から46%減り1兆ドルが消失した旨が出ていた。

とりわけ今月は米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインのテラUSDの崩壊が市場で話題になった。なんといっても米ドルと1:1で連動していたモノが昨日は驚きの2セント台までの暴落を演じたワケで、やはりステーブルでもこの辺は担保型とは違った無担保型の脆弱性を改めて目の当たりにした感じだったか。

ビットコインは伝統的資産と非連動のデジタルゴールドなどと呼ばれていたものの既にリスク資産と化している現在では株式と同時に下落の軌跡を辿った今回だが、今後分散型金融サービス等への利用期待も高まるなかで斯様な市場環境の変化等で仮想通貨も一括りから選別のステージに入ったといえるか。


優待制度の在り方

さて、各株主には期末の配当金と共に優待カードなどが各企業から送られてくる時期でもあるが、優待と言えば先週末の日経紙・投資情報面には「株主優待の適用拡大」と題して、東急が株主優待制度を改定しこれまで200株以上の株主が対象だった優待適用を100株以上へと基準を引き下げるなど裾野を広げる旨が出ていた。

昨今の物価高の波を受けてふるさと納税と共にこの株主優待も家計を助ける手段として再度注目度が高くなっており、特に外食系で年2回ほど優待カードや商品引換券などを提供するすかいらーくHDや日本マクドナルドは安定した人気を誇っているが、内容を改悪?した吉野家などは最近の失態と相俟って失望の声も多く上がった。

ところで吉野家のような改悪から更に廃止へと方針転換する企業も一方で増加しつつあり、2021年9月末までの1年間で株主優待制度を廃止した企業は75社と過去10年間で最も多くなっている。優待の活用が難しい機関投資家や海外在住投資家は対象外とされている事などから不公平感を無くし公平な利益還元を求める声に対応した格好だ。

また4月の東証の市場再編では株主数の規定が緩和された事で、個人株主の確保策として優待制度の優先度は下がる事になった背景もあるか。一部の入札等も経て金券ショップに並ぶラインナップもこれから減少に向かうのかどうかだが、冒頭の例と照らし合わせ今後株主優待制度の増減は如何に各企業の取組に注目したい。


ルッキズムの是非 

さてここ最近、近大が受験生向けに発行したパンフレットのコーナー「美女図鑑」を巡って学内外から外見至上主義を煽るのは非常に問題で品性を疑うという旨の批判喧しい議論が起きている。これに限らず近年大学の間では斯様なルッキズムに対して敏感になってきており、既に上智大ではミスコンのミスソフィアを廃止している。

また更にこれらに続き、今週は東京女子大学がミスコンを廃止する旨をツィッターにて大体的に表明している。トンジョのミスコンといえば、これまで数々の人気女子アナを輩出してきた大イベントだっただけに時代の流れに衝撃が走っている。賛否両論喧しいが容姿差別といった一般的問題は理解出来るものの、個人的には何を是とするかはそれぞれの価値観と思う。

大学に限らず近年では社会環境の変化もあり企業のコンプライアンスに対する世間の目も厳しくなってきている事で、テレビにおいても芸人やタレントの容姿イジリの表現など特に作り手側も対応を迫られている。近年のテレビ離れがいわれて久しいが、「水清ければ魚棲まず」まさに過渡期を迎えているか。

上記の大学にしても中高の延長線上での学問のみならず社会に出るまでの人間関係の構築や教養を培う場でもあり、全てに多様性が叫ばれているいまニーズに応じた芽を摘んでしまうような風潮ははたして如何なものか?何を以て是とするのかその在り方について改めて考えさせられる案件である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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