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鯨の存在感

先週末の日経紙マーケット面では「クジラが動かす欧米金利」と題し、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)が5年に一度のポートフォリオ見直しを2020年度に実施し空前の外国債券買いに動き、欧米を中心に海外の金利上昇を抑える一因になるなど債券市場でGPIFの動向に関心が集まっている旨が出ていた。

このGPIFといえば新型コロナウイルスを受けた主要国の経済対策で大規模な財政支出や金融緩和から主要国株価が大幅に上昇し斯様なポートフォリオ見直しも奏功した結果、先に発表された2020年の運用実績は37兆7986億円の黒字となり、その黒字幅や収益率共に過去最高となっている。

年度の運用実績が黒字になるのは2年ぶりの事だが、昨年の1~3月にこの損失額が四半期としては最大に膨らんだ際に当欄では国債等に振り向けるべきとの慎重論も出てきそうだが、断片的にスポットで見るのではなく過去と照らし合わせマクロな視点で捉える事も肝要かと書いておいた。

しかしGPIFほどのクジラ的存在になると、小さいところでは先に婚約?が決まっていたところへニトリがTOB参戦し手中に収めてしまった島忠の筆頭株主であったり、約1兆円保有しているアップルが大化けの波に綺麗に乗るなど世間の関心事にも密接に絡んでおり、株に興味等ない向きも年金を意識する都度頭の片隅にでも思い出したらより身近に感じるようになるかも知れない。


其々の奔走

さて、東京都に4度目の緊急事態宣言が出された事もあり本日の日経平均は終日ダラダラと続落し安値引けとなったが、そんな中で今週は6日まで東証2部指数が3営業日続伸し7,739.83ポイントと、2018年1月23日に付けた7,731.41ポイントを上回りおよそ3年5か月ぶりに過去最高値を更新している。

この動きの背景には一昨日に当欄でも書いたように、東証の市場再編を見据え東証一部に代わるプライム市場に昇格するとの思惑による個別物色も背景にあるところが大きいだろうか。かつては一部に上場しで日経平均構成銘柄にもなっていたエンジニアリング御三家の一つ、千代田化工建設はじめ日本精機や中央自動車工業、つい昨日に年初来高値を更新したヨネックス等々候補銘柄は数多ある。

この東証2部指数の約3年5か月ぶりの過去最高値更新と並んで日経ジャスダック平均株価も先月末には2018年5月以来、約3年ぶりの高値を付けてきているが、こちらのポストからはフェローテックホールディングスや芝浦電子などがプライム昇格有力銘柄として挙がりいずれも先月末には年初来高値を更新してきている。

当然ながら既定の一部からも多くの企業がプライム入りを目指し、創業者など大株主に株を手放してもらう働きかけや保有する自己株式を消却したりと奔走する動きが見られるが、駆け込み?でこれが適ったとしても要はその後の維持で中長期的に企業価値を高めるべく市場と向き合う事が求められるなどその後こそ大規模な再編イベントの意義が問われるか。


前代未聞からのV字

さて、OPECとロシアなど非加盟国の主要産油国でつくるOPECプラスが8月以降の減産縮小を決めると見られていたところ、一昨日はこれに反し予定していた閣僚協議が中止され焦点の8月以降の協調減産幅が宙に浮いてしまった事を受けニューヨーク市場のWTIは一時76ドル台に上昇、2018年10月以来約2年9か月ぶりの高値を付けた。

何とも今となっては昨年にWTI当限が「余りモノに値無し」で、史上初のマイナス価格という前代未聞の値で取引を終えた件が幻のよう。幻を手にするのはなかなか難しいが誰でも買えたところでシンプレクスのWTI連動型ETFは当時の400円台から昨日は年初来高値を更新し1,630円と実に3倍以上に、レバレッジものではJPX原油先物連動型のダブルブルも当時の130円台がこちらも昨日は年初来高値を更新し678円とこちらは5倍以上に化けている。

しかし斯様な原油高でガソリンの値段も5週連続の上昇となりSAで提示されているモノなどなかなかふざけた?値段になっている上に、緊急事態宣言やらまん延防止等重点措置などダラダラと繰り返される御触れで高速道路の休日割引適用除外も何時になったら終るのやらストレスが溜まる。さてここまで書いたところで政府は東京に対し4度目の緊急事態宣言を再度発出する方針を固めたとの報が・・ヤレヤレである。


プライム目指し奔走

昨日はアクティビストが対話を求める銘柄に幅広い向きから投資資金が流入している旨を書いたが、もう一つ思惑買いが広がっているモノに東証の市場再編をにらみ東証一部に代わるプライム市場への昇格が有力視される中小型株などの銘柄に駆け込み的な需要が集まっている旨も1週間前の日経紙に出ていた。

周知の通り新市場はこれまでの一部、二部それに新興市場のマザーズ、ジャスダックの4市場を22年4月にプライム、スタンダード、グロースの3市場へと再編するワケだが、先月末で新市場区分への移行基準日を迎え4月から6月の終値平均に基づいた流通株式時価総額などから東証が各市場への適合状況を企業に通知する運びとなる。

ところで最上位のプライムは流通株式時価総額が現行の10倍、2年間の利益も現行の5倍など大幅に厳格化され、現状を鑑みるに約3割の企業がこの基準に満たないとされる。そんな訳で投資マネー誘致を狙う各社は基準達成に向け既に水面下で奔走している格好だが、取引所間の国際競争を睨みこの改革が奏功するかどうか先ずはこの辺の行方を見守りたいところ。


提灯か連携か

先週末の日経紙マーケット面では「個人、物言う株主に追随」と題し、先の東芝の定時株主総会で会社側が提案した取締役のうち取締役会議長含む2名の選任案がアクティビストの行動を切っ掛けに否決された事などを背景に、企業を変え得るという事実が広く知れわたった事でアクティビストが対話を求める銘柄に幅広い向きから投資資金が流入している旨が出ていた。

しかしこうした提灯買い?は今に始まった事でなくハゲタカ時代のような一昔前からあり、かつては大量保有報告が表面化し吹いた場面は絶好の手仕舞いの機会だったものだが、最近のこの手のものは積極的にTOBを仕掛けるパターンで価格引き上げが行われるケースもあるなど息が長くなってきている背景もありかつてとは状況も変わってきているようだ。

公募投信でもこうした背景に肖ったモノも登場しているようだが、実際に同頁では4月以降に新たにアクティビストが大量保有を出した主な銘柄の3月末比との株価騰落率の一覧が出ておりベンチマークを上回る銘柄が多数、これら銘柄もアクティビストらの初動期に乗った場合は当然ながらこれをもはるかに上回るパフォーマンスとなっている構図だ。

斯様にアクティビストの審美眼を頼りに提灯でキャピタルゲインなど追究する動きもさることながら最近では世界が驚いた米エクソンの一件に見られるように気候変動を巡る対応強化などアクティビストと連携するケースもあり、国内でも先の定時総会で同様な気候問題を巡りアクティビストに賛同する彼ら以外の共闘も目立つようになってきた光景はハゲタカ時代とは隔世の感を禁じ得ない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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