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丑の日2024

本日は存じ「丑の日」。この猛暑のなか、うな重でスタミナでもつけようかと舌鼓をうった向きも多かったのではないか?さて鰻といえば今年も東アジア全域で稚魚が大不漁ということもあり養殖量も世界的に低迷、東京都中央卸売市場ではウナギ1キロの平均価格がこの20年で約3.3倍にもなっている。街の鰻屋も最近では価格破壊を売りにした新興勢も出ているものの、老舗どころの多くは値上げを余儀なくされ庶民にはますます気軽な食べ物から遠い存在になりつつある。

そんななか朗報とされているのが、水産庁がシラスウナギの卵を人工的に孵化させ人工シラスウナギから成魚まで育てる完全養殖を実用化させようとしている件か。とはいえこの完全養殖の人口シラスウナギにかかるコストは、現在のところ一般養殖で天然シラスウナギにかかるコストの約3倍かかるという。朗報とは言うもののこれは一般に流通するまでの期間含め実用化のためには解消すべき課題は多い。

そこまで待ってはいられないということで民間でもウナギをターゲットにした開発が日進月歩だ。昨年は丑の日を前に植物性原料による「謎ウナギ」なるモノを発売した日清食品は今年も見た目や味を改良した新製品を発表、昨年は1分間で限定の1000セットが完売したというが、今年はその5倍の5000セットが1分未満で完売したという。

プラントベースフードの類はコストに見合っているのか否か疑問符の残るモノも多数あるものの、代持続可能な世界に貢献するというコンセプトがSDGsに敏感な一部消費者の共感を呼び易い昨今の流れも後押ししていることも確かで、そういった意味ではこの市場もまだ伸びしろがありそうだ。


宴席の賑わい今は昔

本日の日経紙投資情報面の一目均衡には「白酒バブル崩壊と中国経済」と題し中国を代表する高級白酒である茅台酒の流通価格が暴落している旨が出ていた。このブランドを擁する貴州茅台酒は昨年の今頃は日本で時価総額トップのトヨタ自動車をも凌ぐ時価総額を誇っていたものだが、今やその時価総額も認証不正問題の余波で高値から20%ほど下落の憂き目に遭ったそのトヨタ自動車よりも下に位置する。

先に発表された4-6月期GDP成長率は予想を大幅に下回っていたが、同社に限らず中国人の旅行需要失速が響いたマカオでカジノを運営する金沙中国や、宝飾大手の周大福珠宝集団もまた時価総額を減少させている。また欧州ラグジュアリーブランドの類を見ても、例えば最近アウトレットからの撤退が目立つグッチなど最大市場の中国で低迷したことが響き4半期連続で減収の憂き目に遭っており、高級ブランドコングロマリットの中でも低迷が目立つケリングの明日の決算発表が注目される。

しかし冒頭の貴州茅台酒もROE約30%を誇り海外の機関投資家にも注目され底堅い需要とブランド力で業界最大手として不変の地位を保ち、一時期は擁する商品の持つ希少性と換金性から金と同じ価値を持つとさえ一部でいわれていたものだがすっかりその輝きも色褪せている。斯様に不動産不況をきっかけに一気に逆回転が起きているが、はたして再度ブルーチップに返り咲く日は来るのか否か今後も注意深く見ておきたい。


ブルースクリーン

周知のように先週末に世界を襲ったのは米MSのOS「ウィンドウズ」を巡る大規模なシステム障害であった。成田や羽田では欠航や航空券の予約・購入が利用出来ない障害が報じられていたが、ドイツ、オランダ、スペインやインドなど海外の空港でも運行に多大な影響が出ていた。他にもロンドン証取運営の英LSEGでは企業開示情報等の配信が停止、オーストラリアでは一部銀行で送金が出来なくなどその影響は世界中で広範囲に及んだ。

今回の障害は大手向けセキュリティーサービスを提供する米クラウドストライクのソフトの不具合が原因だったようだが、システムを守るセキュリティーソフトそのものが障害を引き起こすという何とも皮肉な事態になった。これまで効率化を求め挙って大手への集中化も加速してきたワケだがこれらの裏側に潜むリスクが改めて顕在化、現代のIT基盤の脆弱性が露呈した格好になったか。

ところでシステム障害といえばローカルな話になるが、システム障害による冷蔵品の出荷停止を巡り春から全国規模で出荷停止の憂き目に遭っていた江崎グリコのプッチンプリンが来月から出荷が順次再開される模様だ。ただ、他製品含め全面再開の時期については依然見通しは立っていないというが、今後AI等含めた最新技術への切り替えも予測されるなかグリコのような上場企業は兎も角、体力の無い中小企業などコスト面含めデジタル化の波に乗れない向きにとってまたこの辺は頭の痛い問題になるのは想像に難くないか。


真贋如何に

さて、今週は国内の美術館で所蔵されている絵画が贋作の疑いがあるということが相次いで判明したニュースに興味をそそられた。徳島県立近代美術館が所蔵するフランスのキュビズム画家ジャン・メッツァンジェの「自転車乗り」と、高知県立美術館が所蔵するドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンクの「少女と白鳥」がそれで、月末より開催予定であった所蔵作品展等が急遽取りやめになっている。

これで久し振りに思い出したのが3年前だったか世間を騒がせた日本画の巨匠、東山魁夷や平山郁夫らの絵画を基にした版画の贋作事件だろうか。大阪府の画商の依頼で関西の工房経営者が作成しその流通量は800枚にものぼるともされ、オークションなどで売買されたほか一部大手百貨店が販売してしまった版画の買い戻しを進めるなど大問題になった経緯がある。

それはさておき冒頭の両作品共に、ドイツの天才贋作師といわれるヴォルフガング・ベルトラッキ氏の作品と疑われている。巧妙なのは実物が存在する作品を偽造せず、ターゲットになるのは大戦中に消息不明となったタイトルのみ判明しているような作品の類といい、模倣した贋作を消息不明の絵画を発見したと自作自演で発信する手口と、その絵のみならず詐欺の技術においてもまた卓越した才能を持っている。

その腕は著名画家50人分の画風を完璧にマスターしているといい、斯様な手法でこれまで300点を超える贋作を描き約80億円以上を手に入れたと言われている。しかしこれだけの腕を持ち切れる頭脳を持っているなら真っ当な道を歩んでも必ずや成功したと思われるが、凄腕の地面師よろしくかくも緻密に舞台が造られると対応もまだ限界があるか。放射性炭素年代測定など科学的解析も日進月歩だが、両者の鼬ごっこはまだまだ続きそうな感がある。


構成銘柄半減

さて、TOPIX(東証株価指数)が史上最高値を記録したのは先週11日のことだったが、この日の日経紙社説には「新TOPIXで企業改革の後押しを」と題しJPX(日本取引所グループ)がこのTOPIXの絞込みを含めた見直しを進めている旨が出ていた。既に段階的なコンサルテーションが為され、一昨年春に流動性に着目した見直しで市場区分との紐づけを廃止、その後は段階的ウェートの低減で100億円未満の銘柄削除を実施という運びになる。

つまりこの見直しではスタンダードやグロース市場でも基準を満たせばTOPIX銘柄として認めてもらえるという事になるワケだ。また直近ではちょうど先週にもアシックスが自社が保有する総額100億円超にもなる政策保有株の全てを今年中に売却する旨が報じられているが、この改革では既に一昨年に市場区分との紐づけ廃止と共に政策保有株を浮動株から除外ということになっており、明確な目的の無い持ち合い株の意義がここでも問われる。

市場区分見直し後も予想外?に東証の市場改革が粛々と具現化しているが、いずれにせ数年後には現行のTOPIX銘柄数は2100程度からほぼ半分程度に絞り込まれる予定となる。競争原理も自ずと働くであろうし上位ポストで胡坐をかいていたような企業も順次マーケットやアクティビストらの圧力を受ける可能性が格段に高くなるだけに、この改革においても市場の活性化に対する期待は大きくなる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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