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6502退出

再来年には創業150年を迎える名門東芝だが、今年9月の日経紙にて「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告から3か月、周知のように本日付けで上場廃止を静かに迎え、今後は先に同社のTOBを実施した日本産業パートナーズらの陣営の下で再建を目指すこととなった。

「サザエさん」の番組スポンサー企業でもあったこの名門、以前にも書いたが2015年の不正会計でケチが付いて以降迷走が続いた。この翌年には約9000億円を投じて買収した米ウエスチングハウスの巨額赤字が明らかとなりその翌年には債務超過に転落、この時の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢の始まりとなったが、漸く魑魅魍魎の呪縛から解かれることとなる。

とはいえ今後は事業の成長と共に負債の返済も両立させてゆくのが必須となる。ちなみに昨日の最終売買日は前日から出来高を5倍近くまで膨らませ、その終値は前日比5円安の4590円で一旦株式市場からは退出となった。74年にわたる上場企業の歴史に幕を下ろしたわけだが、はたして再上場が叶うかどうかすべては上記の課題にかかっている。


トップの品格

さて、東証プライム市場に上場するENEOSホールディングスの社長が今日付けで解任されたと報じられている。情けないのはその理由で、酒の席での女性に対する不適切行為だという。この処分と共にこの酒の席に参加していた副社長や常務など幹部も処分されたようだが、副社長のほうはコンプライアンス部門のトップだったというから酷い話だ。

しかしこのENEOSホールディングスといえば確か昨年の夏に当時の会長も女性へのセクハラ行為で辞任に追い込まれたのを思い出す。この時の記者会見で今回解任された社長が神妙な顔で「信頼を取り戻すべく社長として全身全霊で取り組む」と決意を語っていたのを思い出すが、同じ理由でプライム企業のトップが2年連続で解任となるともはや呆れるが可哀想なのは社員である。

そういえばこのENEOS会長セクハラ辞任の少し前には同じくプライム市場に上場している横浜ゴムの社長も20代の大学院生と所謂“パパ活”に精を出していたのも報じられ、パパ活といえばこの後にはこれまたプライム市場に上場するシステナの会長もパパ活を行っていたと相次いで報じられていたなと。

一昔前とは違って近年は、SNSの発達に恐怖の“文春砲”などもありプライベートの問題に対しても社会からの批判が強まる傾向にあるのは否めないところ。コンプライアンスやコーポレートガバナンスが声高に叫ばれる現代においては、トップの行動で企業のレピュテーションが大きく毀損するリスクも孕んでいるだけに経営陣の品格が問われるところか。


ハト派転換へ

今年最後となる日銀の金融政策決定会合が始まった。金融政策といえば世界でも先週は主要な中央銀行が金融政策を発表しているが、はたしてECBは10月に続き2会合連続で利上げを見送る決定をし、イングランド銀行もまた3会合連続で政策金利を据え置きすることを決定、そしてFRBは事実上の利上げ終了宣言となった。

まだ景気もそこまで悪化していないなかで金利が今後下がる期待感でマーケットはこれを好感、ダウ工業株平均は約1年11か月ぶりに史上最高値を更新している。FOMCでは中央値で来年3回の利下げを見込むという事が示されたが、一方でドル円相場もこれらを受け1日で4円以上も円高が進み約4か月半ぶりの水準を示現することとなった。

斯様に世界では利上げ局面が終了に向かう重要な節目を迎えているが、正常化が進まず周回遅れともいうべき日本はマイナス金利の早期解除への期待感が高まっている。とはいえ足元では実質賃金が19か月連続のマイナスと物価上昇に賃金の伸びが追い付いていない状態が恒常化。個人消費や設備投資等々の勢いを考慮すれば地ならし段階のいまマイナス金利解除に動くのかどうか微妙なところだが、いずれにせよ今週最大の焦点だけに明日の結果公表が注目される。


債券以上株未満?

さて、先週は東証プライム市場に上場している日本酸素ホールディングスが2019年1月に発行した劣後特約付き社債を財務の改善進行を背景に繰り上げ償還するとの発表があったが、社債といえば先月はソフトバンク(株)第1回社債型種類株式が東証プライム市場に上場している。ところでこの社債型種類株式、日本では初めてとなるシロモノだが会社法上では株式となる。

一部議決権や普通株式への転換権利があるこれまでの種類株で代表的であった優先株とは違いそれらの権利は持たないものの配当請求権が優遇される株より債券寄りな商品で、発行日から5年間年率2.5%の固定配当を得ることが出来、それ以降は発行体が買い戻せる権利が生じその際は発行価格相当で買い取る可能性もある。今回調達した資金は1200億円で購入申し込みの実に92%が個人投資家であったという。

初めて東証に上場したといえば9月にはETFのアクティブ型も計6本が初めて上昇している。パッシブ型のラインナップに新風を吹き込んだ形だが、この度の社債という絡みでは8月には三菱UFJ信託銀行とNTTデータが年度内に1万円単位で社債を売買出来るインフラ整備の旨が報じられている。

従来では100万円単位の取引が主体であった社債に個人も投資し易くなることで個人の投資と企業の資金調達の手段の幅も広がってくる。こうした新しいデジタル技術が与えるメリットとして効率性に加えて上記の通り投資家の選択肢の広がりなどがあるが、新NISAを前に今後も新たな枝葉の広がりに期待したいところ。


価格転嫁継続

大手百貨店ではクリスマスケーキの申し込みが今週あたりで締め切りになると思うが、本日の日経紙商品面には「甘くない原材料高」として、飼料高で値上げに動いた生乳の影響を受けた生クリームや物流事情の影響を受けた砂糖、猛暑の影響を受けたフルーツなどクリスマスケーキの原材料価格が軒並み値上がりし不二家では1割ほど値上げした旨が出ていた。

当欄で「甘くない今年のケーキ」と題してクリスマスケーキの値上げに触れたのが一昨年だったが、この時はコロナの影響でケーキと共にクリスマスには欠かせないチキンなども輸入モノは絶望的な状況であった旨を書いていた。この年は価格転嫁が間に合わず何処も泣く泣く耐えたが、これが適った去年は大手百貨店で約半数が5~10%の程度の値上げ、コンビニ大手3社では10%程度の値上げとなっていた。

今年は冒頭の通り不二家が定番商品を値上げしているほか、ザッと見たところ昨年比では5~10%の値上げが多いという感じだ。調べていた中には昨年買おうと思ったものの別の商品に目移りし結局買わなかったケーキが今年は一気に価格を5割も値上げしていて驚いたものもある。いずれにせよほろ苦い値上げを天秤にかける難しい舵取りが今後も暫くは求められるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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