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広がるソバキュリアン

先週末の日経紙夕刊一面を飾っていたのは「ワイン消費曲がり角」と題し、若者の酒離れや質を重視する傾向の強まりを背景に2023年の消費量がピークだった17年から7%ほど減った旨の記事だった。確か数年前のぐるなび総研が発表する今年の一皿では「ノンアルコールテイスト飲料」が選ばれていたのを思い出すが、ソバーキュリアスも若年層にまで広がって来たということか。

このソバーキュリアス、シラフを意味するSoberと好奇心のCuriousを合せた造語だが、飲酒に懐疑的なライフスタイルがZ世代にも受けているという。ある調査ではZ世代で日常的に酒が飲みたいと答えたのは今や22%、酒は効率よく時間を使いたいという若者の価値観とはミスマッチで、このほか健康への悪影響などデメリットの方が大きく感じられている模様だ。

近年ではラグジュアリーホテルのバーなどでも挙ってモクテルなどノンアルのバリエーションが多彩になってきており、下戸には敷居高かったこの手のバーのハードルが下がったのは朗報だろう。このノンアルもこれまでドライバー向けの代替品扱いで消極的な飲まれ方をされてきたものだったが、こうした動きにより今後も商機が増え積極的に攻めてゆく場面も多くなりそうだ。


株主総会2024

今週は株主総会がピークを迎える。株主総会といえば今年も今月上旬の日経紙には昨年同様にアクティビストファンドのストラテジックキャピタルによる投資先企業への株主提案や課題が綴られた全面広告が目を惹いた。ちなみに今年も昨年同様にダイドーリミテッドや極東開発工業のほか、新たに東亜道路工業、淀川製鋼所、大阪製鐵、日産車体、京阪神ビルディングの6社が挙げられていた。

特に昨年に続いてのダイドーリミテッドはほぼ一頁を使い詳細な調査分析のうえの反対理由が書いてあったが、総会を前にSC側の株主提案に賛同し電子投票にて会社提案の取締役選任に反対する旨を行った株主に対し会社側から反対は間違いではないのかとの連絡があった旨の公表もあり早くもバチバチな雰囲気だが、両者共に東京地裁に検査役選任の申し立ても為されておりその行方が注目される。

取締役選任といえばグラスルイスやISSといった米議決権行使助言会社が会長の取締役選任議案に反対するように推奨していたトヨタ自動車は既に先週総会を終えているが、はたして豊田会長は再任となったものの、その賛成比率は昨年84.57%だったものが今年のそれは71.93%と約12ポイント強低下、その賛成比率は取締役10人中最も低い結果となった。

こうした議決権行使助言会社やアクティビストの提案等により、近年では選任議案で再任とはなったもののその賛成比率が首の皮一枚といった取締役も多くなってきた。かつてアクティビストといえばハゲタカ呼ばわりされネガティブな印象が世間に蔓延していたものだが、今や徹底したボトムアップリサーチで企業改革やガバナンスに踏み込んだ提案が企業の変革を促す原動力の一つともなってきているだけに機関投資家の賛同も集めはじめており、経営側もより対話の重要性が増してきているといえようか。


上期ヒット商品と日本価格

さて、今月は毎年恒例の2024年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付が発表されている。ちなみに昨年は東の横綱が「5類移行」、大関が「ChatGPT」、そして西の横綱が「WBC世界一」、大関が「インバウンド復活」であったが、今年は東の横綱が「新NISA」、西の横綱は「円バウンド」と昨年の大関が昇格?したようなかっこうになった。

しかし円バウンドとはよく言ったもので、外国人観光客によるインバウンド消費のプレミア化が止まる気配を見せない。豊洲や築地では「インバウン丼」なる造語まで今や誰もが知るところとなった1万円前後の海鮮丼や1本3千円超の牛串が連日飛ぶように売れるほか、百貨店では購入者の6割以上を占めるインバウンド勢向けにミキハウスなど従来商品の約4倍の価格設定の高級ライン「ゴールドレーベル」を展開している。

4倍の価格設定とはいえ所詮子供服だろと侮ることなかれ、何せパジャマの16万円超からはじまり、今年の秋冬用に発売予定のモノではそれこそロロピアーナクラスのラグジュアリーブランドでしか見たことの無い「ビキューナ」の毛を使用したベビーポンチョが110万円、子供用セーターは約97万、ブランケットが165万円と振り切った値段を打ち出してきている。

斯様にインバウンド勢と日本人の金銭感覚に差が出るのはとりもなおさず円安の存在が大きい。日米金利差の影響が言われ久しいが、金利差がほぼ変化しない状況下で年明けから半年で円は対ドルで約16円も急落、ドルに限らずスイスフランに至っては私事ながらトランジットでチューリッヒ国際空港を利用していた頃の80円台の憶えから今や178円台と半値以下の水準だ。

冒頭の東の横綱「新NISA」にしても、雪崩を打ったような個人による海外投資の増加で家計の円売りを加速させ構造的な円安圧力の一因になっているからヤレヤレという感じだ。国内の客が手を出しにくい斯様な振り切った価格が映すのはデフレ慣れした安い日本の姿で、円バウンドという言葉の裏に取り残されている「日本の価格」という現実がある。


困難な舵取り

先週も幾つかの経済指標の発表があったが、注目された日銀金融政策決定会合は下馬評通り利上げは見送られ、これまた予想されていた国債の購入減額に関しては具体策決定が次回会合まで先延ばしされた。またこれより先に5月の企業物価指数速報値も発表されていたが、こちらは前年同月比で2.4%の上昇と39か月連続でプラスとなり1980年以降で過去最高水準となっていた。

川上のところでザッと3年以上もプラスの状態が続くとなると川下への影響も必至で、商品やらサービスの価格に転嫁されまもなく消費者物価指数にも響いてくるか。賃上げ圧力のなか企業間取引でも価格上昇が続いている状況で、この企業物価指数に先駆け発表されたGDP改定値でも企業の設備投資は0.4%減と2四半期ぶりのマイナスと経済活動のペースダウンも懸念される。

斯様に物価高騰への警戒感が高まるというものだが、理想とされる賃金と物価の好循環には暗雲が漂う。コロナ禍の反動もあって米では年内の利下げ想定が3回から1回に減るまで逡巡されるほど景気が過熱気味な状態にあるが、一方で日本はというとそれこそスタグフレーション懸念も一部台頭するなど対照的だ。賃金と物価の好循環が理想とされているがこれが叶う日は来るのか否か、的確な景気浮揚策の難しい局面を迎えている。


消えるか慣習

本日の日経紙投資情報面の一目均衡の頁では「持ち合い株が姿を消す日」と題し、資本効率の改善が求められるなか企業統治や資本効率の足枷とされる持ち合い株が姿を消す日は来るのかとの問題提議があったが、この項目に関しては東証プライム市場上場企業のうち7割がコーポレートガバナンス報告書で削減方針を示すなど近年は企業側の意識も高くなってきている。

そういえば今年届いた株主総会の招集通知では自己株式消却や株式分割に関するお知らせのほか、政策保有株についても言及する企業が何社かあったなと。株主総会といえば本日はトヨタ自動車の株主総会が開催されていたが、既に昨年から系列各社の相互持合いが見直されているほか、大手損保4社も政策株ゼロ方針を打ち出し三菱UFJと三井住友のメガバンク2行も同社の政策保有株売却観測報道がなされている。

こうした実際の動きもあり政策株の削減は年間4兆円程度ありこの10年で持ち合い比率は3.6ポイント低下したというが、適正化水準までこのペースで10年以上かかるといわれていたモノも、上記のメガ企業勢の相互解消などが促進される動きもあって適正化の道のりも半分程度に短縮するとの見方も一部に出ている。

複数の外資系証券試算では全ての政策保有株が自社株取得や消却で解消された場合では日本企業のROEが現状の9%から10%に改善するとの試算もあるが、この辺の自社株取得や消却も現状履行されてるのは未だ半分程度との見方もあるだけに今後も持ち合い解消のその先が注目されようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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