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官の影

さて、事実上最終入札となった先週の第二次入札実施を経て、今週何所が買収するのかが注目されていた東芝の医療機器子会社である東芝メディカルシステムズだが、午後の報道では応札していた三陣営のうち本日の日経紙一面でも有力視されていたキャノンが買収する見込みとなった模様だ。

この話題に関しては、ちょうど昨日某大手総合病院で医長をしている医師と話しをしていたのだが、入札以前から既に関係者の間ではキャノンの線がコンセンサスとなっていたらしい。一次入札を通過した物産とファンド陣営など二次を見送ったが、これまで一連の入札劇も既定路線というか背景には官の意向も色濃く働いていたという。

官の意向といえば、一頃民間を遮ってまで官民ファンドが受け皿になろうとしていたシャープもモラルハザードという世論を背景に偶発債務発覚などあるものの鴻海精密が一応悲願の買収契約を結んだが、官から見る両社には隔絶の隔たりというか全く異質のモノという。不祥事が霞む他のゴシップ記事が躍り、当局の対応もまたこの辺を色濃く反映しているともいえようか。


鞘の変化は基調の変化

本日の日経紙総合面には「資源価格に底入れ感」と題して、中国の財政出動による需要拡大期待の浮上や産油国の増産凍結を目指す動きが広がり、商品価格の動きを総合的に示すロイター・コアコモディティーCRB指数が約2ヶ月ぶりの高水準になるなどコモディティー全般の国際価格に底入れ感が広がっている旨が載っていた。

個別では鉄鉱石が約9ヵ月ぶり、原油は米国指標のWTIが約2ヵ月ぶり、銅は4ヵ月ぶりの高値を付けるなどしているが、特にこの原油は先月中旬にオプションマーケットで45ドルのコールのロングが3月物で1月末に比べて5割増に膨らむなど投資ファンドや需要家が反発を睨んでヘッジを掛けている旨が同紙で報じられていた。

此処までの戻りでこうした向きは思惑通りとなった訳だが、先物では「鞘の変化は基調の変化」なる言葉があり、コンタンゴでも微妙な変化を感じ追ってショートする気味の悪さを感じ取っていたのだろう。斯様な嵩上げで崩落していた資源株も内外問わず戻りに入っているが、こちらも比率の高かったモノのカバー一巡後が焦点といえようか。


再編機運と壁

先週末の日経紙社説には「魅力ある取引所づくりを急げ」と題して、海外取引所が国境を越えた合併に向け再度動き出した旨が載っていた。やはり直近ではLSE(ロンドン証券取引所)グループとドイツ取引所の経営統合に向け交渉を開始した旨が旬なところで、仮にこれが実現すれば時価総額で世界大手の米CMEグループや米ICEグループに匹敵する規模になる。

そんな中、先週は上記のニューヨーク証券取引所を傘下に持つ米ICEグループが当のロンドン証券取引所に対して買収を検討している発表をした報道や、米CMEグループも同取引所に関心を持っている旨の報道も出てさながら国際的な買収合戦に発展する可能性も出てきている。

この辺の背景にはやはりデリバティブ分野が厳しい国際競争の渦中にあり、またETFが急拡大する中で参照する指数分野で擁するブランド力などの観点からのメリットを同紙では謳っていたが、折しもEUからの離脱の是非を問う英国民投票が決まり、離脱した場合国際金融センターであるロンドンの地位低下は避けられないとの見方も多くその危機感も想像に難くない。

とはいえ規制当局の壁もあり国境を越えた合併は一筋縄ではいかないのは周知の通り。事実両者の統合話は今回が初めてではなく、LSEグループとTMXグループもかつて統合話が白紙になった経緯があり、ドイツ取引所もNYSEユーロネクストとの統合話がやはり白紙になった経験済みで、他にもシンガポールや豪証取等々事例は幾つもあり実現までのハードルを見守りたいところ。


今年の雛人形

本日は周知の通り毎年恒例のひな祭り。街の彼方此方では本日に合せてひな人形の登場頻度が増し、それにちなんだイベントも各所で目白押しとなっている。女子の行事だけに近年ではJALが女性スタッフだけの特別フライトをこの日に実施したり、東証等もたまたまなのかこの時期になでしこ銘柄を選定している。

ところで雛祭りといえば雛人形であるが、過日は一寸したついでの流れで今年の新しい作品を見る機会があったのだが、イメージでも普通になっている今の左に男びな、右に女びなの位置は元々が逆であったとか、三人官女の眉の相違等々知らなかった事が意外に多い事に気付かされた。

しかし以前に五月人形がスワロフスキーをあしらったものなど現代風にアレンジしたモノが近年人気と書いた事があったが、雛人形も今年は裝束がヒョウ柄になっていたり、名匠の新作も黒い衣装を着せたゴスロリバージョンからウエディング調のものまで登場するなどこちらも平安朝の宮廷装束からかけ離れた創作モノが増えてきたなと改めて感じた次第。


官製相場の死角

各紙で報じられているが、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表した2015年10〜12月期の運用成績で運用益は4兆7,302億円であった。この直前の中国ショックから中央銀行の追加金融緩和を受けて減速懸念の一時後退で株価が回復していた事に因るところが大きい。

とはいうものの周知の通り年明けから先進国中での暴落を牽引しあっという間にアベノミクス始動直後の水準まで往って来いとなってしまっており、加えて円の急騰もあり15年度通期では5年ぶりの運用損失は避けられない公算が大きい。ましてや今流行りのブル型ETFよろしく一昨年には株式比率を2倍化しておりその影響度もこれからはかられるところ。

GPIF審議役は「短期でみれば収益のブレは大きくなるが、年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」と強調し改めて運用は長期的観点から評価すべきだとしているが、この「リスク」の定義もいろいろ工夫された言葉へ変換されているケースもあり、将来的な年金給付金減額もあり得るとの首相の仄めかしもいろいろ読み解く必要があるそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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