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改革取り組み公表スタート

東証は既に昨年の春に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しているが、こうした取り組みを開示している企業の一覧表を開示済みとして今週から公表がスタートしている。今回は初回で昨年末時点の報告書に基づいて集計したものだが、検討段階である場合は検討中と付記するように求めている。

日経紙では昨年7月時点の集計でプライム市場上場企業では開示済みは31%だったというが、この資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応策を発表した企業数は9月までは10社未満であったのが11、12月は25社超えと年末に急増傾向になっていて、対応策の中には増配や自社株買いなどの株主還元方針を引き上げといった施策を打ってくる企業も散見される。

初回では開示済みだったのはプライム市場で約40%にあたる660社であった一方でスタンダード市場は約12%の191社と消極姿勢が目立つが、このポストでなくとも高PBR企業の中には指標に胡坐をかいて開示が進んでいない向きも一部見受けられる。改革への取り組みは株価にもパフォーマンスの差として表れてきているだけにこうした企業でも株主等からのプレッシャーはかかり易く、株主総会に向けてこの改革が緊張感のあるものになってゆくのは想像に難くないか。


大台超えに仲間入り

さて、昨年は日経平均が33年ぶりの高値を更新するなどの株高のなかで個別でも時価総額が節目となる1兆円の大台を超えた企業が、此処でも取り上げたOLCとねじれの京成電鉄など含め165社に達し22年末比で約2割増えることとなった。そしてさらにハードルの高い5兆円大台をクリヤした企業もまた32社とこれも過去最多となっている。

今年も時価総額の更なる増加に期待がかかるというものだが、周知の通り年明けからも日経平均は好スタートを切り1兆円、5兆円よりさらに狭き門の10兆円の大台に乗って来るプライム企業も出てきている。先週10日には任天堂が10兆円を超える場面があったが、ゲームで育てた豊富なコンテンツを武器にIPビジネスでは他の追随を許さない強味が光った一例だろうか。

そしてこの翌日11日には伊藤忠商事の時価総額も初めて10兆円を超え、総合商社では三菱商事に次ぐ2社目となった。総合商社といえばあの著名投資家のウォーレン・バフェット氏による買い増しの報で昨年は各社ともその水準を一段引き上げることとなったが、商社の中にあって非資源分野が強く最も収益安定性見込めるところが買われる格好になっている。

ところで昨年はカタリストとして東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などに関する要請や、経産省も企業買収における行動指針が出たりしたが、こうしたことによってTOBやMBOなども急増し企業の事業再編など加速してきた。こうした変革の波は今年も続くとみられ今後もその結果順次大台替えを達成してくるであろう向きには引き続き注目としたい。


悲願のETF承認

ビットコインの現物ETFを巡っては当欄でも度々取り上げてきたが、先週にSEC(米証券取引委員会)は、同ETF上場を申請していた米運用会社大手ブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストメンツ等の10本をはじめ、グレースケール・インベストメンツが求めていたビットコインで運用する未上場投資信託のETF化も認めている。これまで20軒以上の申請が却下されてきただけに悲願だった関係者の想いもひとしおだろうか。

そういえば上場承認の前にはSECのX公式アカウントがハッキングされ「同ETFの申請を承認した」との偽情報が流れ、当のビットコイン相場は急騰した後に急落する乱高下の憂き目に遭っていたが、はたして初日の取引額は今後半減期も迎えるだけに合計で45億ドルを超え早くも次期期待からイーサリアムなども2割近く上昇する場面も見られた。

ビットコインはデジタルゴールドとも言われているが、ゴールドといえば金ETFがNYに初めて上場した時はこれをポートフォリオに含めるハードルが下がり金需要を高めるまでになったが、このビットコインETFがその先例である金ETFに匹敵し暗号資産業界に大きな変化をもたらす可能性のあるモノになるか否かは未知数。とはいえこの時同様に投資家のハードルは一気に下がる事になるだけにどの程度彼らを呼び込めるかがキーとなって来るか。


経営者が占った2023年

今年の株式市場は能登半島の被災者に捧げる黙とうで始まり、取引の鐘も鳴らさないという異例の大発会で3日続落でのスタートとなったものの、先週は2,000円以上も値を上げ週明けの本日も続伸し5営業日連続でバブル後の最高値を更新、約34年ぶりの高値水準と辰年らしい登り龍の様相となっている。そこで今年もまた新春恒例の日経紙「経営者が占う」シリーズで株式市場を振り返ってみたい。

昨年の日経平均の高値予想平均は31,200円でその時期は9割以上の向きが10~12月との回答であったが、時期は大方の予想通りとなり値段も予想平均を2,600円以上上回る好パフォーマンスとなった。一方で安値平均予想は25000円台でその時期は3月を挙げる向きが多かったが、こちらは結局大発会が安値となったことで平均25,000円台に当て嵌まった格好になった。

今週の日経紙投資情報面では「注目銘柄2024」と題し、個別の有望銘柄を順に取り上げているが、こちらの1位に昨年選ばれたのはソニーG、一昨年は3年連続でトップに選ばれながらも40%以上の下落の憂き目に遭ってしまったが、昨年は大発会の10,120円から6月高値の14000円台示現まで約40%の上場と面目躍如となった。

さて今年の経営者各氏の予想はというと、日経平均高値の平均は約37,900円で年末高を予想する各氏が多く、安値予想の平均は31,250円でこちらは逆にその時期は1~3月を挙げる向きが多かった。有望銘柄は3年連続トップだったソニーGが4位に沈む一方で昨年2位だったダイキン工業が今年はトップに。昨年3位だったトヨタ自動車も5位に沈んでいる。

また今年は日経平均の史上最高値を塗り替える予想を挙げる経営者も散見されるのが印象的だったが、証券会社団体の年初の集いでは野村、大和、SMBC日興の大手三社のトップが揃って4万円台の大台を示し万年強気にも一層拍車がかかっていた。ただ昨年は東証のPBR1倍割れ是正要請や経産省の買収における行動指針が出て市場は様変わりの様相を見せており、昨年が水準訂正第1弾だとして次のステージで何処まで更なる水準引き上げが叶うか、今年も市場の新陳代謝から目が離せない。


世界10大リスク2024

今週は国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる米調査会社ユーラシア・グループが、年初恒例の「世界10大リスク」を発表している。昨年の1位は「ならず者国家ロシア」であったが、今年の1位には「米国の分断」を挙げている。11月の大統領選に向けて国内の政治的分断は悪化し、米国の民主主義がこれまでになく試される年になるとの予測だ。

成程、今年は大発会の日にも書いた通り世界規模で史上最大の選挙イヤーである。今週の台湾総統選を皮切りにして、来月のインドネシア大統領選、そして3月には昨年1位に挙げられた「ならず者国家ロシア」でも出来レース?の大統領選がある。このロシアも米大統領選でバイデン氏の再選か「もしトラ」かで命運が大きく変わって来る可能性があるが、その結果如何で世界のあらゆる問題にも大きく影響してくるであろう。

そして2位に挙げられたのが「瀬戸際の中東」、ロシアによるウクライナ侵攻もこの現代にあってまさかの出来事であったが、にわかに勃発したイスラエルとハマスの衝突も衝撃であった。いずれも今なお終息が見えないが、斯様に世界各地で落ち着いていたかに見えた紛争も活発化の可能性の高まりで世界は更なる紛争に戦々恐々とする事になってゆくのか不気味である。

また3位に挙げられた「ウクライナの事実上の割譲」もなんともやるせない感だが、この辺は上記も書いた通り米大統領選の結果次第か。そして4位にはAIのガバナンス欠如が挙げられているが、世界経済フォーラムも国際社会を取り巻く2024年の報告書にて誤情報と偽情報を短期リスクの1位に挙げている。昨年2位に挙げられた中国の不透明感も一段と増す事も予測されているが、いずれにせよ今年もまた各方面で予期せぬ事態に身構える1年になりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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