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何時の間にか地盤沈下

昨日に内閣府が発表したところによれば、2022年の日本の一人当たりのGDP(名目国内総生産)はドル換算で34,064ドルとなり、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国中で21位となった。前年の20位から順位を落としてイタリアにも抜かれ、比較可能な1980年以降でも最も低い順位となり先進7か国でも2008年以来の最下位に沈んでいる。

円安が響いたというところだろうが、22年の日本の名目GDPは4兆2601億ドルでトップの米国、そして中国に次いで3位の地位はなんとか維持することとなったが世界全体に占める割合は前年から0.9ポイント下落し4.2%と過去最低となっている。そういえばゴールドマン・サックスが最近まとめた2075年の世界のGDPランキングでは日本が12位に沈むというショッキングな転落が描かれている。

こんな背景には人口動態の問題があると思われるが、この辺はよく移民などが挙げられ議論されるところ。とはいえその移民も冒頭の一人当たりのGDPが高くはないところはなかなか選ばれないのが現状で、議論されているほどの経済活性化には繋がり辛いか。そうなると今後はますますAI等の使い方に工夫が要求されようが、相対的な地位が下がりゆく地盤沈下には更なる危機感を持つべきであろう。


SPACE WEEK 2023

本日は東証グロース市場にナルネットコミュニケーションズが上場となったが、初値は公開価格を約8.1%下回り終値もその初値を下回る軟調スタートとなった。ところでIPOといえば今月は同市場に小型衛星などの開発を手掛ける宇宙ベンチャーのQPS研究所が上場しており、こちらの方は本日ストップ高と気を吐いている。

この宇宙絡みでは先月末から今月アタマまでアジア最大級の宇宙ビジネスのイベント(NIHONBASHI SPACE WEEK 2023)が日本橋で開催されていたが、JAXAはじめロケット開発や人工衛星ビジネスを手掛ける企業に大学や自治体などが参加した他、損保や旅行など宇宙関連以外の企業や大使館も参加し今年のイベント出展数は去年の2倍を超えた。

斯様な盛り上がりにみられる通り、こうした宇宙ビジネスは世界規模では2040年までに市場規模は現在の3倍の150兆円にもなるという試算がある。とはいえ宇宙ビジネスを行うベンチャーに対してのリスクマネー供給が及び腰なことで日本の宇宙ビジネスの遅れがかねてより指摘されている。

そういった事を背景に政府は宇宙分野の技術開発などを支援する「宇宙戦略基金」の設置を決定し、先月はその改正法案が衆院本会議で可決されている。企業などに長期的に資金や補助などが付く事でハードルが下がり幅広い産業が参入し易くなる事が予想されるが、日本の宇宙ビジネスの更なる活性化のトリガーとなる事を期待したい。


不可能が可能へ

クリスマスムードたけなわということでホリデーギフト含めさまざまな案内が喧しいが、過日には世界三大珍味の一つであるトリュフのお取り寄せの案内が来ていた。さて、このトリュフといえば今月アタマの日経紙・地方経済面では「黒トリュフ人工栽培成功」と題し、茨城の森林総合研究所と岐阜県森林研究所がトリュフの人工栽培に国内で初めて成功した旨の記事があった。

白トリュフの旬が過ぎて今は黒トリュフが旬だが、この白トリュフの方は既に森林総合研究所が人工栽培に成功しているという。かつて人工栽培が不可能なキノコとされた舞茸も雪国まいたけの技術でこれが可能になった旨を書いた今から7年前の当欄では、このトリュフについては「松茸と共に人工栽培はほぼ不可能とされる。」と書いていた。

ところがこの松茸に関しては現在では東証プライム市場に上場する肥料メーカーの多木化学が既に松茸によく似た近縁種で香りや味が松茸以上ともいわれるバカマツタケの人工栽培に世界で初めて成功、当時はこの発表翌日からわずか3営業日で3日連続ストップ高をまじえてその株価が約70%も急騰したのが記憶に新しい。

このバカマツタケ相場からはや5年が経過しその後の様子が気になるところだが、今年9月の同社のニュースリリースでは市場の需要や生産効率を詳細に評価し、商品化については計画的に検討してゆくとのことであった。わずか数年前には不可能といわれた事案も日進月歩の技術で次々に夢物語ではなくなってゆくが、そう遠くない時期にはこのトリュフもホリデーギフトに人口栽培モノが登場する事になるのだろうか。


6502退出

再来年には創業150年を迎える名門東芝だが、今年9月の日経紙にて「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告から3か月、周知のように本日付けで上場廃止を静かに迎え、今後は先に同社のTOBを実施した日本産業パートナーズらの陣営の下で再建を目指すこととなった。

「サザエさん」の番組スポンサー企業でもあったこの名門、以前にも書いたが2015年の不正会計でケチが付いて以降迷走が続いた。この翌年には約9000億円を投じて買収した米ウエスチングハウスの巨額赤字が明らかとなりその翌年には債務超過に転落、この時の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢の始まりとなったが、漸く魑魅魍魎の呪縛から解かれることとなる。

とはいえ今後は事業の成長と共に負債の返済も両立させてゆくのが必須となる。ちなみに昨日の最終売買日は前日から出来高を5倍近くまで膨らませ、その終値は前日比5円安の4590円で一旦株式市場からは退出となった。74年にわたる上場企業の歴史に幕を下ろしたわけだが、はたして再上場が叶うかどうかすべては上記の課題にかかっている。


トップの品格

さて、東証プライム市場に上場するENEOSホールディングスの社長が今日付けで解任されたと報じられている。情けないのはその理由で、酒の席での女性に対する不適切行為だという。この処分と共にこの酒の席に参加していた副社長や常務など幹部も処分されたようだが、副社長のほうはコンプライアンス部門のトップだったというから酷い話だ。

しかしこのENEOSホールディングスといえば確か昨年の夏に当時の会長も女性へのセクハラ行為で辞任に追い込まれたのを思い出す。この時の記者会見で今回解任された社長が神妙な顔で「信頼を取り戻すべく社長として全身全霊で取り組む」と決意を語っていたのを思い出すが、同じ理由でプライム企業のトップが2年連続で解任となるともはや呆れるが可哀想なのは社員である。

そういえばこのENEOS会長セクハラ辞任の少し前には同じくプライム市場に上場している横浜ゴムの社長も20代の大学院生と所謂“パパ活”に精を出していたのも報じられ、パパ活といえばこの後にはこれまたプライム市場に上場するシステナの会長もパパ活を行っていたと相次いで報じられていたなと。

一昔前とは違って近年は、SNSの発達に恐怖の“文春砲”などもありプライベートの問題に対しても社会からの批判が強まる傾向にあるのは否めないところ。コンプライアンスやコーポレートガバナンスが声高に叫ばれる現代においては、トップの行動で企業のレピュテーションが大きく毀損するリスクも孕んでいるだけに経営陣の品格が問われるところか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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