40ページ目

5か月ぶり1000品目超え

はや台風の季節、長月となったがそんな秋も値上げは続く。恒例の主要な食品メーカー195社における今月の飲食品値上げは帝国データバンクによれば1392品目を数え、5か月ぶりに1000品目を超えている。アイス・氷菓類が1年ぶりに一斉値上げとなったほか、引き続きのチョコレートや冷凍食品などまとまった量の値上げが相次ぎ、年内の値上げとしては4番目の多さとなった模様。

個別では明治が人気の高いエッセルスーパーカップなど5~11%、チョコレート関連ではきのこの山・たけのこの里等を6~31%値上げする。そういえば今月は味の素AGFも家庭用コーヒー116品目を、ネスレ日本やUCC上島珈琲もボトルコーヒーを値上げするが、カカオ豆同様にコーヒー豆もロブスタ種など年初から5割以上の上昇を演じているのが背景にありこちらも先行きが懸念されるところだ。

食品値上げに対し購入点数の減少や買い控えといった値上げ疲れの消費行動が続き食品スーパーなどの現場からは食品に対する値下げ圧力が強まりつつある模様だが、大手のイオンなどは先月末まで支持の高い商品を中心に67品目の値下げを実施、他の大手どころも独自のセール等を開催するなど対抗策も目立ってきた。来月は更に2000品目を突破し2500品目に迫る模様だが、引き続き今後も各社の物価高に対する対抗戦略が注目される。


夏なのにおせち? 

先週末の日経紙夕刊の総合面では米商戦に関して「夏なのにハロウィーン」と題し、スタバやダンキンドーナツでパンプキンなど秋商品が最速で投入されたり、ディズニーランドでも過去最速でハロウィーンなど秋の行事が開始されるなど、価格競争が増すなか固定客が見込め値引きも少ない季節商品の販売期間を延ばし収益安定につなげる狙いで秋商戦の前倒しが相次いでいる旨の記事があった。

ところで商戦の前倒しといえば日本では「お節」の受付も早期からの需要取り込み狙いで年々早くなってきているような気がする。実際に昨日はこの猛暑真っただ中ではやくも高島屋からおせちの受付案内が来ていたが、百貨店以外ではイオンもまた昨年と比べ約1か月の前倒しで既に今月アタマから予約受付を開始している。

今年は物価の上昇が続き節約志向の高まるなか、コスパ重視のお節を用意している向きもあれば上記の高島屋などは輪島塗のお重に吉兆の料理を詰め込んだ66万円という振り切った価格もお披露目されるなど二極化も感じられる。個人的にはあまりおせちに興味は無いが同市場は新規参入や新商品開発等が需要を掘り起こしその市場規模は拡大しているという。

そういったことでECサイト勢の一部は上記の大手百貨店やスーパーなどより更に早い7月から受付を開始している向きもあるが、「お節」に限らずその前のクリスマスケーキにしても商戦時期は年々早まっている。クリスマスで思い浮かんだが、そのうちバブル期のイヴの赤プリの予約(解る人にはわかる)よろしく1月中に次年度のおせち予約まで始まるのではとさえ思ってしまうが、いずれにせよ需要獲得競争から斯様な早期予約は慣習にもなりつつある。


預金者の選択肢

本日の日経紙金融経済面には「ネット銀、口座4000万超に倍増」と題し、主要ネット銀6行の2024年3月期末時点の口座数集計では前年同期比13%増の4007万口座となり、この5年で2倍になるなどインターネット銀行の顧客数が右肩上がりに伸びている旨の記事があった。6行合算の預金量も前期比約19%増の34兆円とこちらもコロナ前と比較し2倍以上に伸びている模様だ。

個別ではネット通販で独自の経済圏を持つ楽天銀行などポイント経済圏の広がりもあって口座数は1年間で11%増加しており、スマホ決済に強みを持つPayPay銀行等も含めコストがかかるリアル店舗を持たないのでそういったところは手数料面などその分顧客に有利なサービスを提供できる余地が生まれるということになっている。

これまでマイナス金利政策の導入が長かったものの、日銀の利上げによる“金利のある世界”の到来で預金の獲得狙いが今後顕著化して来ようが、今月アタマにも書いたように彼らの存在は地域金融機関も含め脅威となり得る。ユーザーの選択肢が広がり、メガバンクのライバルもメガバンクに非ずといった構図にもなってきている。


投資から協業へ

本日の日経紙マーケット面には「ゲーム投資サウジ新局面」と題し、サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が保有するゲーム株を2025年以降に傘下の事業会社に移す見通しで、中東での事業展開やIP(知的財産)活用など投資先との協業を加速させるなど日本のゲーム企業への投資が新たな局面に入ってきた旨の記事があった。

昨年の1月にこのパブリック・インベストメント・ファンドの保有状況を取り上げた時点での主な個別の保有比率は任天堂で6.07%、ネクソンで9.14%、コーエーテクモHDで5.03%であったが、今日の日経紙で載っていた直近の保有状況は任天堂が8.58%、ネクソンが10.23%、コーエーテクモHDが8.97%といずれも買い増しが進んでいるのがうかがえる。

これら以外にも同じく保有比率を引き上げて来た東映株などもあるが、「スーパーマリオブラザーズ」を擁する任天堂よろしく東映も連結子会社が「ドラゴンボール」を擁するなどいずれも投資先は抜群の知名度を誇るIPを持っている。そういえばサウジはこのドラゴンボールの世界初となるテーマパークの開発地としても選ばれ話題になったが、これには東映アニメーションが協業する。

前にも書いたことだが、脱石油依存を見据えた彼らにとって経済的パートナーとしての日本のプレゼンスが高まって来ているだけに、世界で断トツの知名度を誇るコンテンツを擁する日本のエンタメ産業各社も宝であるIPを武器にこうした潮流は大きな商機と捉えて臨むべきだろう。


セール状態な買収指標

さて、仮に実現するとなると海外企業による日本企業買収として最大級の案件になるといわれているカナダのコンビニ大手アリマンタション・クシュタールによるセブンアンドアイHDの買収提案が先週から話題になっている。同社といえば03年にサークルKの運営会社を買収しており、過去には仏カルフールの買収に乗り出したこともあるが仏政府の壁が高かった経緯がある。

ストライキにまで発展した西武百貨店問題や、大量閉店に追い込まれたヨーカドーなど問題が山積みな同社だけに物言う株主も喧しかったが、先週末の日経紙でも取り上げてあったように買収資金を何年で回収できるかの目安にもあるEV/EBITDA倍率等でみても同社は約7倍と米の半分以下であり、全体の倍率平均からしても依然安い“買い物”という事になる。

そう考えると日本の有名ブランド企業でも認証不正問題が燻りその値位置を大きく下げてしまったトヨタ自動車や、エスティローダーよろしく中国不振の影響をモロに受け株価もいいいとこ無しの資生堂など、大手外資から見るとバーゲンセール期間?が長く買収に名乗りを上げる向きが居るかどうかはともかく食指が動く水準が続いているのは間違いない。

とはいえ取締役会や競争法の壁があるだけに今回も簡単に進む話ではないと思われ、ストップ高スタートの株価もあとその行方に不透明感が漂う事で気迷いの動きを演じている。いずれにせよ日本のブランド企業を時価総額で大きく上回る外資系はいつでも買いたいと手を挙げられる状況なのは確かなだけに、経営陣も時価総額引き上げの努力が益々求められることになろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30