50ページ目

異常気象の影響ジワリ

月初め恒例の今月の値上げだが、帝国データバンクによれば主要食品メーカー195社における家庭用を中心とした6月の飲食料値上げは、前年同期のカップヌードルからきのこの山にたけのこの里まで約3700品目超の大規模な値上げラッシュから83.7%減の614品目となり、6か月連続で前年同月を下回る事となった。

この6月の値上げでは全食品分野で「加工食品」が329品目で最も多く、中でも不作の影響を受けた海苔製品の値上げが目立ち大森屋では最大26%も値上げする。不作といえば昨年の猛暑の影響で不作となったコメもここに来て影響が出ているといいい、海苔もコメも値上げとなればこれのど真ん中で最近増殖しているおにぎり屋や弁当屋などなかなか厳しい感になるか。

他にもカルビーが国民のおやつポテチやじゃがりこ、かっぱえびせんなど68品目を最大10%の値上げ、この手の類ではハウス食品のとんがりコーンやオーザックなど6品目を値上げ、そして前年同期に値上げした冒頭のきのこの山やたけのこの里など再値上げと明治も54品目を値上げする。

大雨や猛暑、干ばつなどをはじめとする世界的異常気象で、不作・凶作となった原材料の価格高騰を受けた値上げが広がるが、国内でも異常気象による一部野菜の高騰が見られるようになって来ただけに今年の猛暑予想が気掛かりだ。政府肝入りの定額減税が今月からスタートするが、政府の電気・ガス代補助も終了する事で個人のみならず企業の光熱費上昇分がコスト押し上げ要因として値上げの口実にされぬかこの辺も注視しておきたいところ。


自社株とモチベーション

昨日の日経紙一面には政府が2025年にも企業が自社株を使って海外企業を買収できるよう会社法を改正する旨が出ていたが、自社株といえば先週末の日経紙一面にも「自社株、社員に無償譲渡」と題しこれまで役員に限っていた自社株式の無償譲渡の対象を社員にまで拡大する方針とした旨の記事があった。

株式報酬といえばストックオプションが頭に浮かぶが、この度念頭においているのはRSとよばれる譲渡制限付き株式で一定期間後に売却出来るタイプ。この手の動きではANAHDも先に社員持ち株会向けに譲渡制限付き株式を取得する為の特別奨励金支給を発表しているが、現行制度において社員の金銭的負担が実質的に生じないようにするためのもの。

こうした上場企業以外でも未上場の中小企業で、社員に仮想株式を付与して利益を還元するという新たな取り組みも出てきている。仮想株式の株価は業績と連動しており、実際に受け取れる株式数は役職に応じて変化するもの。この仮想株式も現金化出来る時期は付与から数年後に設定されていて現金化する前に退職するとこの株式は消滅してしまう仕組みだ。

いずれも譲渡制限が付くことで社員の離職を防止する効果も得られ当の社員も株主となるために経営や業績を向上する意識を高めやすくなり、また上場企業側も金庫株として保有が増える自社株活用と双方でメリットがある。雇用の流動化が進むにつれて退職者も増加傾向にあるなか、人材確保策として今後もこうした新たな動きが顕著になってくるか。


外圧の利用

本日の日経紙ビジネス面には、セブン&アイ・ホールディングスの株主総会が昨年のアクティビストによる取締役選任の株主提案が出されたものから、今年は一転して「無風」だった旨の記事を見掛けた。ところでアクティビストといえば今週アマタの同紙でも「日本株、外圧が起爆剤」と題し、来月の株主総会を前にして所謂アクティビストが保有している企業の株価が動意づく場面も出ている旨の記事があった。

しかしかつてのアクティビストといえば増配要求一辺倒もしくは強引なTOB仕掛けというパターンが主流?であったが、文中にも出て来た00年代にサッポロHDを標的にしたアクティビストは、リーマンショック前に裁判沙汰に発展したブルドックソース事件において濫用的買収者の烙印を押されあからさまなこの手のハゲタカ勢は総会屋と共に姿を消していった感が強い。

この時と前後してこの手のアクティビストが保有している株は精彩を欠き上昇どころか逆に下落傾向になるなど提灯勢の関心も引いていったものだが、近年カタリストとして東証の要請や政府の指針も後押しになり、アクティビストそのものの変貌と共に異端扱いで無くなり冒頭の通りアクティビスト保有判明株が再度脚光を浴びる世界に回帰してきた。

斯様に此度の東証要請はこれまで目の上のたん瘤扱いだったアクティビストの存在意義を大きく変えることとなったが、この辺は相手のあり比較的ナーバスな案件だった政策保有株問題に関してもまた話を持ち掛け易くなった点で大きく意味のあるものだっただろう。企業側も或る意味緊張感と引き換えに無料でもらえるアイデアをうまく構造改革に生かしはじめているが、今後もこれから出てくるであろう個別提案に注目したい。


Good Sleep

昨日の日経MJ紙では「睡眠ビズ革新へ目覚め」と題し、創業458年の老舗、西川の戦略などについて書かれた記事を見掛けたが、今月は三越銀座でも先週アタマまで「GOOD SLEEP FAIR」が開催され、体形等を計測し個別にマットレス等の寝具を提案するなどのイベントが行われるなど近年は睡眠をテーマにした催事を多く目にするようになった。

思えば2年くらい前だったか、睡眠の質が向上するとかのフレコミで「ヤクルト1000」がコンビニから駅の自販機に至るまで軒並みその姿を消すような現象が起きたあたりから睡眠関連のマーケットへの注目が高まったような気もする。ちなみに昨年2023年度の国内睡眠関連市場は前年比で4%増の1608億円にのぼる見込みという。

もともと日本人の平均睡眠時間はOECD30か国中の中でも最短と言われているが、睡眠不足などこの関連による経済損失は18兆円にものぼるとの試算も一部ある。社会保障費の増大や生産性の低さを問題に抱える日本の課題の一つにもなっていると指摘する向きもあるだけに、よりよい睡眠環境を求める需要を掘り起こす動きが今後もますます出てくるか。


安売りセット拡大

先週末の日経紙夕刊マーケット面では、マクドナルドの5ドルのセットメニュー導入に端を発しその後にウェンディーズやバーガーキングがこれに続くなどハンバーガーチェーンによる安売り競争が激化している旨が出ていた。ちなみにこの5ドルセット誕生の背景になったのが、米の一部店舗でマックのセットが18ドルで販売されていたことが話題になり顧客からの価格の高さに対する不満が出ていた事などいわれている。

マックで18ドル(約2800円)のセットなどちょっとピンとこないが、安売りでも780円かと一瞬思ってしまうほど我が国の購買力は沈んでしまったと実感するが、それはともかく、米消費者物価指数の全項目は2019年末から今年3月にかけ22%上昇したが、マックのようなファストフード等の限定サービス項目は31%増と、フルサービスの食事の25%増を上回る高い上昇率となっている。

マックで18ドルのセットが出るくらいだからフルサービスのレストランメニューがこれより安くなる逆転現象というケースも出始めていると思われるが、こうなると先週月曜日に当欄で、小売店中心に消費者が従来より低価格の商品を購入しようとする「トレードダウン」の動きが外食にも押し寄せてくる可能性もあり、米経済の先行きを占う意味でも今後もこれら含め個人消費の動向には注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30