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消えた時価総額

さて、10月入りということで世間では衣替えの季節だがもう早くも期末から半年が経過した。ところで欧州の財政危機やら中国等の新興国インフレ懸念などもあって周知の通り株安が世界的に進行、この半年で実に時価総額が約776兆円(約10兆1,309億ドル)も減少したことが明らかにされている。

これだけの額が消滅するとなれば当然企業を直撃し様々な影響をもたらすが、週末の日経紙にも出ていたように国内でも業績を圧迫している。先に書いたソフトバンクのような例で時価総額が急減したケースもあるが、先週末には住金が持ち合い株の新日鉄株下落で一転しての赤字転落予想を出し、本日も世界経済減速の影響で新安値更新に沈んでいる商船三井も保有株下落と泣きっ面にハチで赤字転落は避けられそうもない。

月替りとなった本日の日経平均は毎週の如く大幅安からの週明けで、特にコア系が再度の急落と依然として冴えない。再編や統合やらで本日からの新会社始動という企業も目立つが、従来予想の利益も評価損の度合いによっては一転して大幅下方修正となるケースもあり、厳しい経済情勢のみならず市場からの虐めとも相俟って更なる経営努力を迫られる場面も今後出てきそうか。


今度はLME

今週は貴金属の暴落というか乱高下が凄かったが、非鉄もまた先週末のたった2日間で銅先物価格など約13%の暴落を演じるなど総じてメタル系が波乱の様相である。さてこのメタルといえば、先週末には約130年の歴史を持ちメタルの取引高では世界最大の規模を誇るLME(ロンドン金属取引所)が、海外の複数の取引所から買収の申し出があり身売りを検討していることを明らかにしていた。

買収を申し出ているのはCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)やSGX(シンガポール取引所)等とみられ買収額は10億ポンド規模ともいわれているが、今年2月のドイツ取引所とNYSEユーロネクストの経営統合に向けた協議開始以来の一寸した縁談である。このSGXなど先のオーストラリア証券取引所買収案が豪政府の拒否で破談になったばかりであり、本件に関しては「報道や憶測についてはコメントしない」と慎重な姿勢が窺える。

斯様にオーストラリア証取も現状では白紙になってしまったが、今年はLSE(ロンドン証取)による加TMXグループ買収計画もまた白紙になっている。こうした国際的な取引所統合はやはりそう簡単には纏まらないものの、水面下では粛々と進行という感じか。

しかし、こうしてみるとくだらない既得権益に固執している国内勢の面々はなんともという感じだが、そうこうしているうちにも週明けの大量保有報告書では大証株式をドイツ銀グループが5.12%取得していることが明らかになり、また翌日の記者会見で東証社長は「スケジュール感は別にない」として特定の期限内合意にはこだわらない考えを表明している。この大量保有報告については一般ディーリングの用という模様だが、こんな内輪で縁談がゴタついている間に他が手土産を携え虎視眈眈と狙っている可能性もゼロとはいえないかもしれない。


期待先行あれこれ

実質下期相場入りとなった本日の日経平均は、配当権利落ち分を埋めてしっかりという指摘も一部あったが総じて気迷いといった感じ。ただ個別ではなかなか明暗が分かれ目に付くものもあったが、中でも昨日鳴り物入りで新規上場したSNS向けソーシャルゲーム開発のKLabの一転してのストップ安が一際目立った。

SNS向けソーシャルゲームといえばネットベンチャー業界同様に市場でも今が最も旬なだけに、昨日の初値も公募価格の実に2.3倍と大化けしたものだが回転も早い。ところで、IPOモノ以外でこんな急伸から一転急落というパターンでまた本日目立っていたのはJT。完全民営化を巡る思惑で急伸し年初来高値更新となるも、事業法改正に関する懸念から一転急落とこの株にしては珍しい動きとなった。それともう一つ直近ではやはりKDDIだろうか?

ご存知先週木曜にはあの「iPhone5」発売報道で寄付こそ急騰し年初来高値更新したもののあと急落、本日まで僅か4日で今月の上昇をきれいに帳消しにしている。しかしソフトバンクの独占体系を脅かしたのも束の間、早くもその料金体系やらネットワーククオリティーを巡ってのネガティブ観測台頭という感じだが、牙城が崩されそうな当のソフトバンクも暴落、初日だけで時価総額が3,500億円以上も吹き飛び久し振りに両者時価総額の逆転現象が見られた。時価総額逆転については何度も触れてきたが、今後も業界の力関係の変化はまだまだありそうだ。


今年の中間期末

本日は9月中間期末の権利付き最終売買日、本来であれば今の時期期末意識で多少なりともドレッシングなどが入るのが通常であるが、週明けの昨日は約2年半ぶりの安値更新と今年の場合一寸事情が違う模様だ。先に野村HDと大和証券Gの株価逆転を書いたが、特にこの金融系が低調で主力が軒並み年初来安値更新となっていた。

金融の中でも証券系は市況悪化、また損保系などは近年自然災害が相次いでいることで証券並みの下げを強いられているが、全体の影響を総合して被るのは生保系だろうか。今のところ国内9社が保有する国内株式の含みの分岐点は約8,500円といわれているが、大手で唯一上場している第一生命などここ数日では2月の年初来高値から半値以下にまで崩落している。

一昔前までは主力の金融系など崩落商状を黙って拾って放置しておけば殆どは報われたものだが、昨今は銀行などを取り巻く環境も変わって逆に金融株は戻りをショートしておくだけでそこそこ効率が上がるいいヘッジ銘柄へと構図が変わっている。取り敢えず今日は高値引けし目先は配当落ち後をどう埋めてくるかも気になるが、金融系保有の国内株式含み分岐点以下が今迄通り中長期で報われる水準というのは今回も有効なのか注目しておきたい。


ポスト金

本日の日経紙には「原油ETF ここが大切」と題してこの原油を始めとしたETFについての解説が出ていた。この原油ETFだが本日は代表的な「WTI原油価格連動型上場投信」などが暴落し年初来安値を更新しているが、「原油価格が高値圏で推移するなかで、原油価格に連動するETFが注目を集めている」?と冒頭からワケの解らない日経紙の見出しは理解に苦しむ。

それはともかくとして、今やETFで旬なのはやはり「VIX」であろうか?直近まで逃避資金の拠り所として「金」も株式が急落するたびに買われてきたものだが、その金も100ドルを越す暴落でさすがに相当出遅れながらこうした心理系へ最後は矛先が向かってきた感もある。上記の原油ETFが年初来安値更新するのとは対照的にこちらは年初来高値更新、既にここ2ヶ月の間に2倍以上の暴騰と破竹の勢いである。

このVIXのETF、当欄では上場前の昨年11月に書いたことがあったが半信半疑で喰い付きが悪かったのか、つい最近まではオプション市場なんぞと比較するに今ひとつ反応が鈍かったものだが、考えてみればタイムディケイを気にしなが値があってないようなプレミアムを拾うより、枯れている底がほぼ一定且つ期限を気にせずに済むこんな商品の方こそ万人向きと思う。

また先にETNについても触れたが、先週の連休の狭間には「VIX短期先物指数連動」モノも東証に上場の運びとなっている。株式市場でセリングクライマックスを待って買いに出ようとしている向きは少なくないが、その決定的材料もまだ起こらずまた売り規制やら日銀の判で押したような機械的ETF買いに震災時のような直下型暴落はなかなか起きない。そんなモヤモヤ感があるうちは折に触れこの手に活路を見出す動きが続くか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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