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決算とその先

さて、直近のディスクロを基に「一刀両断」「一目瞭然」など既に更新されているが、金曜日の日経紙商品面にも上場組の出揃った4-6月期決算が載っていた。ここでは三社が黒字に浮上となったものの、先行きの不透明感はやはり拭えない旨が認めてあった。

「商取各社、収益多様化急ぐ」との見出しであったが、このタイトルはもう何年も前から業界紙始め彼方此方で言い尽くされてきたことであり、一部躍進している取引員を除き個別では時間の経過と共に時折出て来る苦肉の策?が都度追加されるといった具合の繰り返しが為されているようにも見えなくはない。

これらポストの株価は既に底練りの程度を過ぎており、一頃は万年低PBRが言われていたが消去法的な散発物色の時期を経て、今ではもうほぼその織り込みが理に適っているのは明らかであろうと思われる。

ここ近年の商品高で商機のみならずその株価も見せ場を作った商社ポストなどを引き合いにすれば本来は何れも相関あって然りなのだが、そんな波に乗り切れないというか一部逆行してしまっている環境は実に歯痒いというか残念なところである。


安い・早い・緩い

さて昨日の日経紙一面には、2010年上半期に国内株式市場に新規上場した企業が12社にとどまるなどIPOの低迷が続く国内を尻目に、日本のベンチャー企業がアジアの証券取引所に相次ぎ上場する旨が載っていた。

この辺に関してはアニメのディー・エル・イーなど、先に当欄で台湾系証券会社が日本企業向けの説明会を行い、此処へ近く日本企業も上場する見通しとコメントした通りであるが、人気の「KOSDAQ」には先ず業界からはクリック証券、そして野菜ソムリエ講座のフードディスカバリーや、たまについ宅配を頼んでしまうサルバトーレ・クオモ・ジャパンなどが上場を検討している模様だ。

現在のところ同所に日本からは昨年上場のネット広告会社ネプロアイティ一社のみだが、機動性というかこの「KOSDAQ」など日本と比較するとやはり可也違う。上場審査に2年以上かかる日本と違って此処は半分以下の1年、基準も時価総額始め利益も純利益1億5千万程度でOK、そして手数料は約35分の1程度で済むワケだからそこへ目を付ける向きが多いのも当然か。

しかし新規上場数が06年には188社であった事を考えれば、上記の通り上半期で12社とはその激減ぶりは可也のもの。折しもこの日はNHKスペシャルで「アジア沸騰 急成長のタイに世界企業が殺到」としてここ近年の海外進出への変遷を特集していたが、日本の工場も空洞化問題に直面している。彼方此方で日本の空洞化が加速する可能性がある現状下、はたしてこの流れを止める事が出来るのかどうか市場間競争の行方が注目される。


短期化の背景

さて、決算シーズンで直近まで主要企業の決算発表が相次いでいたが、株価もサプライズの強弱で各々がそれらを織り込み思い思いの動きとなっている。

そんな中で今月に入ってから目立っていた記憶があるものの一つは、最近日経紙にもジャストミート等の広告が目に付くようになったパイロットコーポレーションか。第2四半期決算を好感して急伸、一気に年初来高値を更新するも後場からは一転高値から急落し一日で約2割のボラを演じ不気味な日足を描いた。

こんな乱高下銘柄が出て来る背景として、一説には信用取引や先物で短期売買する向きが増加傾向にあるのが一つの原因とも言われている。折しもFXの規制を嫌ってスキャルパー連中がこうした素地を作るのに一役買っているとの指摘もあり、証券各社もそれら当て込んでか短期系に焦点を絞っての手数料ディスカウントにも余念が無いのが現状。

こうした一方で、斯様な短期売買は市場の価格発見機能が弱まり、個別企業への長期投資が根付かないという構造的な問題も出て来るとの懸念も俄かに台頭している。ただこの辺は上記の通り参加者のキャラの変遷に加え、近年は個人が好む材料株への規制も容赦なくキツくなっているのが事実で、これら含め昨今の環境こそが参加者やそのスタイルを変えてしまったと言っても過言ではないだろう。


自立路線も何時まで

昨日は農業の規制緩和を受けて野村ホールディングスが農業ビジネスに参入する旨を書いたが、もう一つ、農政の重点転換から認可を得られる環境が整ったとの判断から東穀取が来春にも農林水産省にコメ先物の上場を再申請する方針を決めた模様との報もあった。

悲願の認可が下りれば72年ぶりの上場となるが、上記の通り農業政策転換でコメの流通価格の変動幅が大きくなる可能性がある為、価格変動リスクを抑えたい生産者や流通業者を市場に呼び込み低迷する売買の底上げを狙うという目論みらしい。

はたしてその来春の環境がどうなっているか想像するのも怖いがそれは兎も角、これに先駆けて先月から研究会を発足させるなどしていたワケだが、最近は業界団体の日本商品先物振興協会などが抜本的な再編策を突き付けるなど他取引所との統合を視野に入れた行動が焦点となる中、依然として粛々と自立路線を貫いているようにしか見えない。

この辺が先に「〜問題は東穀などに見られるように外野には形式的な振る舞いで済ます一方で内側からは一向に〜」とコメントする所以でもあるが、カンパニー制などという中途半端な提唱をする同所の自立路線を何時まで環境が容認してくれるかその成り行きを見たい。


野ギャルの次は野ムラ?

さて、先週末の大手各紙には農業の規制緩和を受けて、野村ホールディングスが農業ビジネスに参入する旨が載っていた。潜在的な成長分野である農業に早い段階から関与することで、本業の金融・証券サービスにも相乗効果が期待できるとみているというが、国内金融機関が農業ビジネスに本格的に乗り出すのは同社が始めてという。

農業といえば折しも2020年までに実現すべき成長目標として食糧自給率50%を掲げ農林水産省が農林水産分野を成長産業化するとしており、其の為の環境整備、産業規模の拡大、輸出促進の強化、将来ビジョンの策定とその実現等が打ち出されているが、株式市場でも折りにふれその関連銘柄が動意付く場面も見られた。

これら農業関連では、井関農機、日本農薬、クボタ、クミアイ化学工業、イハラケミカル工業、ホクト、雪国まいたけ、カネコ種苗、等々ざっと思い浮かぶだけでゾロゾロ出てくるが、ほか、物色されていないものでも二部やJASDAQにはこれらに関する対象銘柄が幾多もある。

そういえば産業規模の拡大は、水産物始めとする資源を食品産業など様々な産業と連携して利活用し新たな付加価値を生み出す等とあるが、野村は今月12日付にも書いたように漁業関連企業に運用対象を限定した投信を先に出している。2020年度までに6兆円の市場創出を謳っているが、コンサルといってもいろいろな芸当が出来そうでこの辺も注視しておかねばならないだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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