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急成長と驕り

さて、本日の株式市場は先週末の米株高に助けられ全般反発していたが、とりわけここ堅調継続だったのは非鉄専門商社やそれらの回収大手の株であった。これらは周知の通り、尖閣諸島を巡る摩擦からさまざまな形で圧力をかけてきている一環としていわれている中国のレアアース禁輸との情報に反応したもの。

しかしこの尖閣諸島事件を巡っての政府の対応はなんとも腰抜けという感しか覚えないが、このレアアース問題、当欄では昨年の8月に取り上げた際には「〜レアアースは現状世界生産の97%を中国が占めている。一国に偏向という点では南アが生産する白金のそれ以上にものぼるが、バッテリーなどの二次電池の用で不可欠なもので現在代替可能な物が存在しなくその依存度が脅威ともなっている。」とコメントしていた。

果たしてこの辺の構造を上手く利用されたのが今回の一件ともいえるが、ある意味いろいろな問題と繋がる試金石ともいえる。市場参入規制なども昨日の日経紙にはトヨタのプリウスが吉林省長春での生産を予定しており、狙いはそのハイブリッド技術だろうと指摘していたが、出資比率51%の条件草案など心理戦含みで利用できるものは果敢に盛り込んでいる。

さてこんな心理戦の延長ですべて中国側の思惑通りに事が運ぶか否かだが、上記の日経紙のタイトル「レアアースは泥か宝か」を引用するのであれば、所詮この泥を宝に変えられるのは日本の技術であり、そのまま出し渋っていてもただの泥を保有する事になるのは中国側。採掘調査が各地で進む中、EV一つとっても市場としては未完成であり、政府も冷静になってこの辺を考えるべきであろう。


銀座伊勢丹?

さて、過日は知人から誘いがあり、(花人)赤井勝氏の装花展を観に新装オープン直後の銀座三越に行ってきた。氏の「うるおう装い」の方はなかなかユニークで、さすが様式にとらわれないその自由な想像力は大使館筋からの人気も強いというのも納得であったが、序にこの新装オープンの新店舗を一寸チェックしてみた。

先ず歩いてみてアネックスを持つ他店舗との最大の違いを感じたのは設計上いわゆる連絡通路のイメージが無いという点か。自分の立ち位置を把握していないと窓や屋外に出た時に飛び込んでくる風景で一寸錯覚に陥ったりするが、このフロアもブランドの壁を取り払っているなど従来のイメージとはガラリと違うし、伊勢丹メンズのテイストも随所に移植されている。

従来のイメージと違うといえば、何処の百貨店でも1Fは香水の香り漂う店の顔でもある化粧品売り場と相場は決まっていたものだが、今回はそれをB1に持ってきている。更にその下食のフロアはまさに異国のマルシェのイメージだが、この界隈では漸く伊勢丹のそれと肩を並べる食品フロアの誕生といった感じだ。

路面では私の好きな「ジャン=ポール・エヴァン」が新たに入ったりしていたが、同店始めとして少なくとも会話を交わしたスタッフの接客態度はどれも素晴らしい。オープニングレセプション用でないことを祈るが、総じて見た感じでは上記の通り銀座に伊勢丹が登場した感がするほどそのカラーが随所に塗られている。

三越と伊勢丹が経営統合したのは08年だが、此処で初めてこのHDのカラーが濃く出た百貨店の誕生という感じ。長らく百貨店不況がいわれ、当欄で既報の通りファストファッション勢の侵食が進む銀座では地域最大の商業施設の誕生となったが、有楽町一帯まで含めて周辺の百貨店勢はどう迎え撃つのか、今後もこの百貨店戦争から目が離せない。


同時高の矛盾

今週は、戦後初のペイオフ発動やら、政府・日銀の6年半ぶりの為替介入やらと久し振りにいろいろな出来事があったが、ここ堅調維持していた金も一段急伸してまた今週に史上最高値を塗り替えることとなった。

昨年の秋ぐらいからこの金も史上最高値を塗り替えるのが頻繁に起こりその都度当欄でも取り上げてきたが、かれこれもう一年もこんな状況を繰り返していると値頃感も麻痺というか感覚も薄れてくるものだが、昨日は国内も海外高に上記の為替介入で円急落という事態も加わりTOCOMではサーキットブレーカーが発動、海外高に円安と目一杯ダブルメットを享受した格好で久々に上がったなという感じだったのではないか。

先週の日経紙クイックサーベイにも調査結果で、「金投資に関心がある」と回答した向きが57%に達していた旨が出ており価格上昇で益々注目の存在だが、ここ近年の史上最高値は金融緩和と共に目立ってきた現象で、昨今のファイナンス合戦よろしく通貨価値の希薄化に繋がる線からオルタナティブで金に矛先が向かっている部分もあるが、そもそも金融緩和の背景がデフレということ自体は金が物色されない材料。

こんな反教科書的現象は春先に金を取り上げた時にも書いた事だが、構造も複雑化しセンチメントが一致すればこうした現象が頻繁化する昨今、同時に上昇しているPGM系、対主軸通貨で堅調なユーロ、単独介入に因るものながら上記のようにデフレという環境構造下での円安、何れも教科書的には説明が付かない動きの数々だが、センチメントと構造を見抜ける向きには然るべき回帰を睨んでの裁定機会がより増えてきたともいえよう。


6年半ぶりの為替介入

菅首相と小沢幹事長の一騎打ちが注目された民主代表戦であったが、結局下馬評?通りに菅氏が小沢氏を破ったものの、その獲得票は菅氏721ポイントに対し小沢氏491ポイントと党員・サポーター効果でその差は200ポイント以上となった。

結局は首相続投が決まった事で今後としては内閣構造や党役員人事に注目が集まるが、気になるのはマーケット。昨日は前日米株式が10,500ドル回復と堅調地合な上に、直近ではバーゼル銀行監督委員会による新たな銀行自己資本規制比率「バーゼル3」の合意内容が緩かったとの安心感も出て上げに反応し易い地合であったものの、国内はこの続投判明で円高が進み株価は重い蓋をされた格好。

ところが一転翌日には突如として前場から政府・日銀は介入を実施し円は主軸通貨に対し急落、株価は急上昇となっている。続投決定直後からこれ見よがしに為替は82円台まで急騰するなどの嘲笑いに切れてとうとう受けて立った喧嘩という具合だが、単独介入だけに今後はそのテクが問われる。大したこと無いと思われていた奴が暴れると最初はサプライズだが、やはり戦い方が下手と分れば反撃は更にキツくなる。

現状、主軸通貨など欧米諸国は自国の通貨安で輸出を促し、日米金利差の構図もあってその円高構造は変りがない。為替敏感株などの日足を見てみると、どれもこれも打ち上げ花火のような軌跡を描いているが、この実に6年半ぶりの為替介入でそのラインを今回引いてしまった事で単発モノになってしまうのかどうか、真価が問われるのはこれからだろうか。


立ち乗り飛行機?

全般に疑心暗鬼の株式市場でもこのところコンスタントに高値を追っているのは一握りの銘柄しかないが、その一つが全日空で地味な動きながらジリジリと連日上昇し、本日もまた年初来高値を更新している。

この全日空、背景にある材料の一つには直近で正式発表された格安航空券事業に参入する件で、香港の著名投資家率いる投資会社の出資を仰ぎ関西国際空港拠点に国内・国際両線のサービスを来年にも開始するらしい。

LCCは近年日本にもシンガポールのジェットスター・アジア航空、中国の春秋航空、韓国のエアプサンなどが続々と就航の運びとなっているが、何れもその価格から人気を博している。斯様な機運から大手勢も漸く重い腰を上げたというところなのだろが、後発組の部類に入る上に文化も異なる障壁は未知数か。

政府の立場としては観光立国の方針を掲げこれらLCCの参入を促す考えであるが、ところでLCCといえば会社更生手続き中のJALも先に更生計画案にはLCCへの参入を仄めかしている。コレに関しては老舗百貨店がディスカウントストアを経営するようなものとの批判が早速一部に出ているが、それ以前に双璧の全日空参入から価格競争が始まった場合その前提そのものが崩れてしまう恐れもあるといえまだまだ前途多難である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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