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表裏一体のIoT

さて、周知の通りこの週末にはKDDIで大規模な通信障害が発生し、auやUQモバイル等で3900万人超え、最大3915万回戦の利用者に影響を及ぼした。この炎天下の中auショップには行列が出来て、発生から3日が経過した週明けの今日も復旧作業は終了したものの音声通話などではいまだに利用し辛い状況が続いている模様だ。

こうなるとIoT社会の現代なだけに、ザッと挙げても各所で電子チケットが使用不能になったのをはじめauユーザー以外でも宅配大手ヤマトでは荷物問い合わせシステムが機能せず、コールセンターやドライバーへの電話もつながらない等の問題が発生、日本郵便では配達に遅れが出たほか、一部の地銀ではATMが利用できない状態になり、更にはトヨタ車ではナビのサービスの一部が利用できない状況になるなど様々な影響が広範囲に出た。

斯様な混乱下では俄然頼りになるのが安定の公衆電話という事になる。そんなワケで使った事が無いと宣う若者が慣れない公衆電話を使う姿も見られたが、いざ公衆電話を遣おうと思っても電子マネーが普及している現代ではコインを持っている向きは少なく、ましてやテレカの存在自体知らない若者も多くこれまた公衆電話さえも使えないヤレヤレな事例も。

こうした光景を見るに昨年にドコモが全国規模で起こした通信障害が思い出されるが、上記の通りあらゆるものがネットで繋がるIoTの社会ならではの事例か。近年の大手キャリアは個人向け携帯事業が飽和状態なだけにIoT社会等の新分野に力を注ぎ今後も「5G」の普及で通信量は更に伸びてゆくだろうが、同時にこういったリスクも孕むだけに便利さと危うさは表裏一体ということも胆に銘じておくべきだろう。


株主総会2022

さて、昨日は3月期決算上場企業の株主総会の集中日であった。この日は全体の26%に当たる約600社が開催する集中日であったが、今年も多くの企業の株主総会招集通知には「~株主総会当日のご来場はお控えいただくようお願い申し上げます。」とか、「当日のご来場を慎重にご検討いただきますようお願い申し上げます。」等と謳ってあるものの、コロナ感染拡大の落ち着きを受けて出席株主数も増加傾向にあったようだ。

増加傾向といえば出席株主同様に増加傾向となっていたのが株主提案を受けた企業の数で、三菱UFJ信託銀行の調査では今年は昨年より6割増加し77社と過去最多を記録していた。とりわけアクティビストの提案はコーポレート・ガバナンス・コード改定後は増加を辿り、今年はこの77社のうちアクティビストから提案を受けた企業は41社となりこれまた昨年の2.3倍と大幅に増加していた。

アクティビストといえば米では石油大手のエクソンモービルが気候変動対策を巡って経営陣と株主の対話が昨年から話題になっているが、今年の三井住友FGの総会でも株主の環境団体が気候変動対策の強化を定款に明記するような提案が為されていた。果たしてこの提案は否決されたものの、斯様に近年はアクティビストもESGに積極的な向きが目立ち提案内容も脱炭素系など新しいトレンドが出来つつある感もある。


低体温

先週末に総務省は5月の消費者物価指数を発表しているが、変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数は101.6となり、先月に続き前年同月比で2.1%上昇した。先月の2%を超えた伸び率は7年1ヵ月ぶりの事であったが、原材料高で食料品の上昇も目立ち2ヵ月連続で2%超えの上昇率となった。

とはいえ食料とエネルギーを除いた総合指数で見ると上昇率は0.8%と米のそれが6%超を記録しているのに比べその鈍さは否めないところで低体温なのは明らか。依然として川上の資源高・原材料高があっても川下では値上げが浸透するという状況ではなく、何よりも米のように賃金の上昇が付いて来ている構図とは違うか。

日銀金融政策決定会合での主な意見の公表では金融緩和の継続は持続的な賃上げを後押しするために有効だとのコメントを出していたが、日本の名目賃金の上昇率はエコノミストの平均的な予想で22年度は米の5%に対し0.75しか伸びていない。昨日も厚労省が中央最低賃金審議会を始めているが、これまた諸外国のそれとは乖離幅が大きくここの政策はやはり喫緊の課題か。


IPO変調

本日の日経平均は2週間ぶりに27000円の大台を回復したが、そんな中をM&A総合研究所とヌーラボがグロース市場に新規上場となった。注目の初値はM&A総合研究所が買い気配で推移し後場に入って公開価格1330円を大幅に上回る2510円で初値を付けた一方で、ヌーラボの方は売り気配から前場早々に公開価格1000円を下回る955円での初値形成と2社で明暗が分かれる格好となった。

直近でいろいろあった主幹事のイメージが影響しているなどという事はないのだが、ヌーラボに限らず先週末の日経紙マーケット面でも書いてある通り今月の上場6社のうち3社で初値が公開価格を下回る「公募割れ」をおこしている。そういえば今年のIPO第一号リカバリー・インターナショナルも公募割れだったのを思い出す。

年間上場第一号の公募割れは実にブックビルディング方式が導入された1997年以降初めての事だったが、斯様な” 梯子外し”等のIPOの変質 で中小型株を手掛ける投資家の投資余力がそがれ新興市場全体に悪影響を及ぼしかねない旨も指摘されている。ただでさえ今年の上半期のIPOは前年同期から3割減となっており上場延期組の動向も今後気になるところではある。


ESGの潮流

本日の日経紙一面には「ESG推進 賞与へ反映」と題し、企業や投資家はこれまで企業のROEや利益を重視してきたものの、利益を追求する資本主義が地球温暖化などで限界を迎えて事などを背景に近年35兆ドルともされるESG投資が存在感を増して企業に意識改革を迫る旨が書かれていた。

先に国内では金融庁が昨年のガイドラインでESG課題などに取り組む体制整備を推奨、ESGを推進する社内委員会を設置する企業も昨年末時点で118社が設置し1年半で倍以上に増加した旨を書いたが、緩和マネーの受け皿となっているファンド等では実際に企業の取組を調べているか否か疑わしい事例もあり金融監督当局が厳しい目を向け始めた旨も報じられている。

またウクライナ危機でその潮流の変化もここ謳われており、人道的観点からタブーとされてきた防衛産業への投資も社会主義にかなうとして米軍事関連などは軒並み市場最高値を更新し化石燃料への投資需要も高まりつつある。斯様に逆風が吹いていると取る向きもあるが、何れにせよ個々では企業価値という成果に繋がってゆく重要な非財務指標となるだけに今後も重要視される流れは継続されるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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