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難攻不落?

昨日の日経紙夕刊一面には「英独取引所 統合に暗雲」と題して、一昨日に英ロンドン証券取引所(LSE)グループがドイツ証券取引所との経営統合に関して規制当局である欧州委員会の承認を得られない見通しになったと発表した旨が記事になっていた。

ロンドン証券取引所に絡む案件ではまたかといった感じだが、それもそのはずLSEといえば今から約10年前に米ナスダックがTOBを試みたものの株主の圧倒的多数が応じず失敗し、その数年後に今度はカナダのTMXグループが2月に対等合併案を発表したものの、プロクシー投票結果が株主の三分の二の賛成票を得られなかった事でこれまた合併合意が撤回になった経緯がある。

このLSEグループとドイツ証券取引所の経営統合に向けた動きについては当欄でもちょうど昨年の今頃に「再編機運と壁」と題して取り上げた事があり、その時も上記のようにTMXの数回の破談案件ならずドイツ証券取引所もユーロネクストとの統合話が白紙になった旨を書き規制当局の壁含め国境を越えた合併は一筋縄ではいかないとも書いたが、いつの日かLSEも縁談が現実になる日が来るのか否か今後の動向を見守りたい。


リスク恒常化

さて、先週はFOMC議事録要旨公表後にドルが主軸通貨に対して下落し金が時間外取引で上昇する場面があったが、先週末の日経紙マーケット面にも「金買い、欧州選挙を意識」と題し、春先からのオランダ総選挙や仏大統領選など欧州選挙で金の国際価格が上昇基調を強める可能性が出てきた旨が書かれていた。

この辺は勿論のこと、昨年のブレグジットやトランプ大統領候補当選等の大衆迎合気運の台頭による予測不能のリスク回避の動きの長期化が背景にある裏返しだが、CFTCの発表ではニューヨーク市場の投機筋の金先物買い越し幅は年明けから今月はじめ迄に約20%増加、長期保有が前提のETF等も代表格のSPDRゴールドシェアが1月末で約799トンだったものが先週段階では841トン強になったという。

ところでSPDRゴールドシェアといえばもう一つ先にイスラム法に適合するか否か曖昧だったETFが、WGCの活動も下地となり助言会社の権威から最近お墨付きを貰った旨も報じられており、この認定でこれまで二の足を踏む姿勢から追い風に変わりイスラム圏からの投資も活発になる事も予想されこの辺と併せて今後の推移にも注目しておきたい。


群がる

さて、一昨日の日経紙夕刊には「投信保有7年ぶり長さ」と題して、個人投資家が運用実績を吟味して選ぶ傾向が浸透したほか投信を長く保有する傾向になった旨が載っていたが、投信で思い出したのがちょうど一週間前にたまたま見かけたここ数年人気を誇っているひふみ投信を取り上げたカンブリア宮殿であった。

冒頭から3年間で500万投資した資金が約300万プラスに!100万円が4年で2倍!と景気のいい話が続きそれを販売した高木証券の外務員もすごいですよねと成績自慢満載で、投資の儲けで海外旅行をしているという外国人観光客も織り交ぜタイトルからしていかにも一般が食い付き易そうな構成に仕上がっていた。

翌日に同投信の購入者が殺到したどうか知る由もないが、番組中で取り上げた銘柄群は果たしてというか明らかに群がり具合が顕著であった。放映直後のPTSが既に反応していたのはさておき、例えば第三位の大株主に名を連ねるまで保有を進めたというマザーズ市場のWASHハウスなど翌日の寄りが6,700円だったものが本日は年初来高値更新で9,010円の高値まであり僅か5営業日で3割以上も急騰している。

他にもニイタカや朝日印刷は放映日翌日に揃って年初来高値を更新、更に番組最後に「投資は自己責任で」とコンプラ対応バッチリのスーパーと共に投資セミナー最後に見られるお約束のような大ブレイク寸前企業は?との問いに答えた薬王堂が、放映翌日には出来高が前日の約10倍に膨らみ連日の続伸で本日も年初来高値を更新、大義名分は長期資産形成の投信特集だろうがそんな番組も短期筋のイナゴのエサとなる様は今のマーケットを或る意味如実に表していると言えるか。


ブランドのカラクリ

本日も送られてきたDM類の処分をしている際に伊ブランドのファミリーセールなど紛れていたが、今週あたまの未来世紀ジパングで「揺れるイタリアの真実・・・高級ブランドの裏側」と題し、各所でメード・イン・イタリーの危機が忍び寄ってきている旨が放映されていたのを思い出した。

昨年の夏頃にも当欄では、イタリアのハイブランドバッグが劣悪環境下と安い賃金でほとんど中国人が作成したものが、メード・イン・イタリーと銘打って売られている旨を書いた事があったが、今回も冒頭で靴産業界幹部が一部の高級ブランド以外は安い賃金で中国人に作らせそれを高い値段で売っている旨を話していた。

今回は食材でも加工物については加工した国を表示する事が認められている事から、中国産トマトを輸入しイタリア国内で加工しメード・イン・イタリーを堂々と銘打つ事例など垣根を越えた其れが問われる事態にも触れ、長い歴史をかけ大事にしてきたブランドや食文化に大国から人、モノなどが大量に流れ込んでいる様を報じていた。

確か昨年も伊ブランドの闇を報じていたのもこれも同じ番組の特集ではなかったかと記憶しているがそれは兎も角も、一頃の爆買いも沈静化し中国人が作ったメード・イン・イタリーをこれまた中国人が買い漁る姿もあまり見かけなくなったが、ハイブランドから食材までもういちど背景を正確に視る眼を持つ必要があるか。


商品の選択肢

本日の日経紙・一目均衡では「商品ETFという革命」と題して、08年に東証にも上場した主力級のSPDRゴールド・シェアなどさまざまな商品のETFやETNが世界の証券取引所に上場してきた旨が書かれていたが、投資家構成も日銀のマイナス金利政策の背景等から金融法人や年金も金を買う抵抗感が無くなってきた旨が書いてあった。

この主力の金と共に原油も取り上げてあったが、出来高もすっかり安定してきたのはココにも書いてあった野村の「日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN」で投資家数も一昨年春先から昨年同期には5万3千人弱と2倍以上に拡大した旨が書かれてあった。組成元のヘッジを通じて市場に繋ぐ間接効果を考えれば、まさにTOCOMには救世主といっても過言では無い存在であっただろうか。

ただ先にも書いたように斯様なメジャー商品の裏で、取り敢えず品揃えで組成しました的なモノも数多く存在し板を見るのさえ無駄な出来申さず銘柄も野放しになっているのも現状。主力とてその構造が片道の仮需モノでは自ずと一方通行の圧力も増すというものでこの辺が更に整ってくるのかどうかも課題か。


格差拡大

さて今月はまさに確定申告の時期だが、それに向けてふるさと納税などの寄附金受領証明書などを揃えている向きも多いことと思う。このふるさと納税といえば当欄でも何回か触れているが、先週末の日経紙には「ふるさと納税 過熱にクギ」と題して、行き過ぎたふるさと納税に対して総務省が地方自治体の対応に是正を促す方針との旨の記事もあった。

行き過ぎといえば今からちょうど三年前の当欄では「納税利回り?」と題し50%を超える利回り?がゴロゴロしているワケだからこれに群がらない理由がなく、ふるさと納税熱は続きそうな気配であると書いた事があったが、その後エスカレートし家電や商品券、果ては純金製品など換金性の高いモノへ明らかに寄付を媒体として「その次」の橋渡しが容易な事例も出てきた。

また昨年末にも下剋上の格差はますます拍車がかかりそうだと書いたが、果たして「売り」を持たない首都圏は税流出が止まらず今年の税収減は昨年度の1.6倍になる見通しとも報じられている。こんな格差背景には節税メリットを謳いその豪華な返礼品をお得感たっぷりに煽ったマスコミの功罪もあろうが、寄付する向きや自治体も一度吸ってしまった甘い蜜の味は忘れ難く今後の総務省の対応が注目される。


サロン・デュ・ショコラ 2017

さて、今週も恒例のバレンタインデーがあった。バレンタインといえば例年この日に先駆けて開催されるものにサロン・デュ・ショコラがある。今年は東京国際フォーラムで開催され私は一般公開前の招待があったものの、初日は入場待ちで最大3,600人が並ぶなど年を追う毎に人気も過熱気味になってきている。

送られてきた本のような立派なカタログを先にザッと見てみたが、今年も初顔らしきショコラティエが登場の模様で、やはり先に書いたように産地生産者を謳ったビーン・トゥー・バーにより一層磨きがかかり数年前のビジュアルモノから或る意味本質に回帰したような感もある。

そんな傾向だけに今やトレンドはそういった蘊蓄が解る自分用おもたせといった感だが、バイヤー側としては日本に対する注目が極めて高くなり所謂THIS IS JAPANといったところと言う。確かに仏アンリ・ルルーなど去年のクリスマスケーキのテーマが「VOYAGE AU JAPON」と題し柚子をふんだんに使用した物を出していたが、果たして此処でも胡麻やほうじ茶といった日本食材の組み合わせを出してきた。

こうした背景には本家仏のサロン・デュ・ショコラ品評会や、ワールドチョコレートマスターズ等において金賞や総合優勝を勝ち取るなど、日本人ショコラティエの技術がここ十年の間にかつて仏料理でも歩んできたように世界の注目を集めた功績に因るところが大きいか。

そんな彼らもお家芸だけに別の日本食材で応戦、王道の抹茶はお約束としても今年は山椒や桜、煮切り醤油から果ては納豆や奈良漬まで登場させるなど縦横無尽の様相である。ただ其処にはシェリー酒など洋とのマリアージュではじめて絶妙な味を醸し出す技術が光り今後何所まで進化してゆくのか来年がすでに待ち遠しい。


短期需要

本日の日経紙マーケット面では「短気売買制限論の弊害」と題し、政府や企業の批判論者が投資家の短期志向を抑えようとしても決算発表後に乱高下する銘柄が目立つ旨が載っていた。その理由として順張り短期筋の横行ともう一つ、約1年前から証券会社のアナリストが決算前の企業取材を自粛するようになった事が挙げられていた。

アナリストといえば本来は企業の実力と株価の乖離を発見するのが役割というのが一般論だが、上記の縛りも元はといえば未公表業績情報を顧客勧誘のツールとした動きがあった事による行政処分を鑑みた措置で、ココにもやはり業績に関する所謂早耳を欲する短期的視点を擽るエサの需要が高かった事が窺える。

其処の部分を当局指導で縛った弊害?でサプライズ銘柄の乱高下が横行している部分もあるのは否めないところだが、既にビッグデータをAIを駆使して解析し決算結果と予想値の乖離をアナリスト以上に高精度で絞り込むモデルも開発されている旨が同紙には書かれており、モラルの観点からガイドラインの縛りが入る裏では粛々と技術革新は進行しているようだ。


低PBR事情

本日の日経紙マーケット面には「資源株に3つのリスク」と題して、昨日の業種別日経平均・石油が9年振りの高値圏に並び資源ポストに対して強気な投資家が増え物色の対象になっている一方で、外部環境の先行き不透明感もあり向かい風に変るリスクもはらんでいる旨が書いてあった。

確かに個別では出光が先月末に年初来高値を更新、資源の雄三菱商事は今月あたまに年初来高値更新、JXと三井物産も揃って昨日に年初来高値を更新と夫々勢いはあるものの、米のリグの稼働数が15年10月以来の高水準となっているなど年明け以降膠着状態を呈している原油相場を警戒する指摘は多い。

またCFTC発表のWTIにおける商業部門のショートは先月末時点で過去最高の154万9,219枚と過去最高、一方投機筋のロングも16年11月以降の価格上昇局面で膨らみ先月末時点で66万7129枚とこれまた過去最高水準となっており内部的にも警戒される。上記銘柄が直近で年初来高値を更新するも、何れも低PBRが目立つのはこの辺の事情も反映しているというのは否めないところか。


2部指数最高値更新

さて先週末の日経紙マーケット面では「東証2部指数最高値」と題し、週末の東証2部株価指数が2006年以来およそ11年ぶりに過去最高値を更新した旨が出ていたが、本日も値上がり率ランキングにはTOBの2部ニッコウトラベルがストップ高で堂々の一位となるなど同指数は4日続伸となっている。

中長期で同指数を底上げする原動力となった背景として寄与度の高い時価総額首位のシャープ株価が約4倍近くに化けた事が主因と書かれてあったが、本日も上記のニッコウトラベルはじめ鉄道関連株人気から先週のストップ高の余勢を駆って森尾電機が続急騰、ほかフジマックもストップ高するなど個別でテーマ物色も旺盛である。

斯様に個人の小型株選好や同紙では中小型株へ投資するファンドも年々増えている旨の指摘もあったが、日米首脳会談も終了しVI等がじわりと低下とはいえ今後もトランプ大統領の朝改暮令な言動で一喜一憂場面が出てきそうな状況に変わりはなく外部環境に左右されにくい2部の一角はまだ折に触れ物色の対象にされそうだ。


ETF格付け

本日の日経平均が日米首脳会談を前に手控えムードから反落となるなか、ETFおよびETNの売買代金はNEXTレバレッジなど日経平均連動型の増加が寄与し前日比13.1%増となっていた。ところでこのETFといえば、一昨日の日経紙投資情報面に投資信託評価のモーニングスター社がETFの格付けを始める旨が載っていた。

日銀買い入れやロボアド等の普及でETF純資産残高は増加しており投資家の利便性を高めるというが国内ETFの155本を5段階で評価するという。東証にETFが導入されて以降各社の開発努力や啓蒙活動が奏功し飛躍的に銘柄数も拡大、今ではザッと200銘柄以上もあるが人気のレバレッジ型など売買代金を稼ぐ一方で終日出来申さずという銘柄があるのも現状だ。

ここ最近の商状では上位3銘柄程度で全体出来高の約半分も占めているという感じだが、上記の通り取り敢えず組成して埃を被っているモノも少なくない。同社は将来的には評価基準に指数との連動性などを入れることも検討するというが、ほとんどリクイディティーが無いモノが散見されるのも東証が10年ほど前に一部の上場廃止基準を撤廃した事に起因するケースもあり今後はこれらの扱いも課題になって来ようか。


一次放出から30年

本日の日経紙朝刊一面の市場の力学には「バブルの傷拭う新世代」と題してその冒頭ではNTTが初めて東証に上場した際の事が書いてあった。明日ではや30年といったところだが、今でも当選のハガキが当時住んでいたアパートの古ぼけたポストに投げ込まれていたのを見つけた時のある種ドキドキ感が鮮明に蘇るものだ。

当時は地上げ等が都内でも横行し始めた頃でまさにバブル序盤戦といった感じであったが、当のNTT株も上場して一月もしないうちに100万の大台が200万、そして300万円と二つも変わるなど土地と共にバブルの様相を呈することになり、これに味を占め同じ年には一時の2倍以上の価格で二次放出が行われる事になる。

そのNTT以来の大型上場とした先の郵政グループ株3社放出は日銀が決定したマイナス金利政策を背景に、ちょうど一年ほど前にはかんぽ生命などそれこそ半値水準まで株価が崩落する憂き目に遭っていたが、この二次放出以降の軌道に垂らし合わせる向きも多かっただろう。これら鑑み試行錯誤の放出をしてきた政府の次の手も注目される。