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価格転嫁継続

大手百貨店ではクリスマスケーキの申し込みが今週あたりで締め切りになると思うが、本日の日経紙商品面には「甘くない原材料高」として、飼料高で値上げに動いた生乳の影響を受けた生クリームや物流事情の影響を受けた砂糖、猛暑の影響を受けたフルーツなどクリスマスケーキの原材料価格が軒並み値上がりし不二家では1割ほど値上げした旨が出ていた。

当欄で「甘くない今年のケーキ」と題してクリスマスケーキの値上げに触れたのが一昨年だったが、この時はコロナの影響でケーキと共にクリスマスには欠かせないチキンなども輸入モノは絶望的な状況であった旨を書いていた。この年は価格転嫁が間に合わず何処も泣く泣く耐えたが、これが適った去年は大手百貨店で約半数が5~10%の程度の値上げ、コンビニ大手3社では10%程度の値上げとなっていた。

今年は冒頭の通り不二家が定番商品を値上げしているほか、ザッと見たところ昨年比では5~10%の値上げが多いという感じだ。調べていた中には昨年買おうと思ったものの別の商品に目移りし結局買わなかったケーキが今年は一気に価格を5割も値上げしていて驚いたものもある。いずれにせよほろ苦い値上げを天秤にかける難しい舵取りが今後も暫くは求められるか。


繰り返されるブーム 

昨日の日経紙夕刊のルーツ調査隊の記事ではカプセル自動販売機、所謂ガチャガチャが取り上げられていたがこれもここ数年で空きスペースなどで急激に増殖した感がある。それもそのはずで昨年の市場規模は610億円とここ数十年で約3倍にも膨らんでいるというが、もともとの出始めの頃はキャラクター消しゴム等から始まりバブル期には大人向けの商品展開が盛んになってきたのが記憶に新しい。

そういえば10年くらい前には「コップのフチ子」なるキャラもヒットしこの時の累計出荷は2500万個にものぼったとかの報も思い出すが、こういったキャラモノから近年ではエモいモノがトレンドで学校の廊下にあった水道周りや、かき氷機に個人商店の店先にあった赤電話まで昭和レトロ風のモノがウケている模様。

また最近見たのだが食品系も再現度が高い。ファミレスのメニュー等から銀座コージーコーナーにしっかりレモンスライスが再現されているサクレアイスまであるが、テレビ業界では定番の喜山飯店の中華弁当や金兵衛の西京漬け弁当、サイドのポテトまで忠実に再現されたオーベルジーヌのカレーなどその再現度合いはもはやマニアックな域である。

また最近ではインバウンド客を巻き込んだ第4次ブームが到来ともいわれており、お寺でもお賽銭を入れるとガチャガチャが回せるところまで出てきた。というワケで既に昨年の市場規模は610億円とここ数十年で約3倍にも膨らんでいるというが、魅力的な商品を入れれば人気を呼び売り上げに繋がってゆく点では同じく再ブームのクレーンゲームも同じか。タピオカもそうだったがこの手はある一定のサイクルでブームが繰り返されるポテンシャルを持っている。


買収たけなわ 

当欄では先月だけでベネッセホールディングスや大正製薬など3件のMBOを取り上げたが、今月に入ってもこの流れが止まらない。先週末はプライム市場に上場している人材派遣のアウトソーシングの創業者が投資ファンドのベインキャピタルと共にTOBを実施した後に株式非公開化の方針との旨が報じられている。

さてTOBといえばもう一つ、直近では人材派遣業界3位のパソナグループの子会社ベネフィット・ワンに対し第一生命ホールディングスがTOBを実施する旨もまた報じられている。とはいえ同社に対しては既に医療情報サイト大手のエムスリー社がTOBを実施中でパソナも賛同を表明しており、買収対象の同意を前提とするとしている第一生命に対してのパソナ側の対応が注目される。

ところで10月に当欄では京成電鉄が保有するオリエンタルランド株の方が親会社である京成電鉄よりも時価総額が上回っている親子逆転現象について書いた事があったが、このベネフィット・ワンもまた親会社のパソナより一時期は5倍以上の時価総額を誇っていた“超親子逆転”株で有名であった。近年ではこの差も随分と縮まったが、それでも先週7日時点で子会社の方が約2.5倍と10年以上続く親子逆転は解消されないままであった。

それは兎も角も、つい最近では日本生命が介護大手のニチイホールディングスの買収を明らかにしているほか、住友生命も医療データ解析のPREVENTを8日までに買収と大手生保の異業種買収がこのところ目立つ。国内の少子高齢化・人口減少で市場が縮むなか、収益多様化を図る動きの活発化でこうした買収により活路を見出す動きが今後も増加してくるか。


決着でココロも満タンに?

さて、株主総会シーズンから当欄では度々取り上げてきたコスモエネルギーHDだが、岩谷産業が投資会社シティインデックスイレブンズなど旧村上ファンド側から保有する同社株のほぼ全てを取得したことが先週に報じられた。これまで更なる買い増し意向を示していた旧村上ファンドだが、今回の件に伴いこれが取り下げられる事となった。

同ファンド関係はコスモ株を1000万株超まで集めた昨年の段階で投入コストが300億円超といわれ、直近ではそこから更に8割弱まで買い進めていることを考慮すれば約600億円弱の投入で雑な胸算用だが今回の売却では約500億円前後の利益というところか。いずれにせよ百戦錬磨のファンドだけに買い増しの構えを見せつつもイグジットの期を虎視眈々と狙っていたというところだろう。

これで昨年の春から続いた両社の戦い?は1年半での幕引きとなった。MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)まで持ち出し対立してきた両社だが、はれて水素分野で協業する岩谷産業が安定株主となり脱炭素時代に打って出られる体制が一歩進んだ。これも一つの再編劇といえるかというところだが、今後も再編絡みでこうしたケースが出てくるのは想像に難くないか。


テロと金融市場

本日の日経紙グローバル市場面には「ハマス攻撃前空売り急増」と題して、10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃する数日前に、主要イスラエル株で構成するMSCIイスラエルETFやテルアビブ証取に上場しているイスラエル大手行のレウミ銀行などの個別株に空売りが膨らんでいたとの疑惑が持ち上がっている旨の記事があった。

これで真っ先に思い出されるのがあの世界を震撼させた9.11米同時多発テロ事件の際の金融市場か。真相は闇の中だがイスラム原理主義を掲げるテロ組織アルカイダの関係者およびグループが、テロと前後して大手航空会社や大手保険会社の空売りやプットオプションで巨額の利益を上げたとする話だ。

同じ利益でもサブプライムローンの破綻を予測して巨額の利益を得たジョン・ポールソン氏や、ERMの限界を見越したポンド売りで巨額の利益を手にしたジョージ・ソロス氏等は多くの投資家に神扱いされるが、金融市場は入って来るマネーの色や人物は見分けようもないものの同じ巨額の利益でも相場の読みとは無縁な上記とは天と地である。


先物も1万円大台超

このところ堅調相場が続くゴールドだが、先週末のNYでは金先物が20年8月に付けたこれまでの最高値2069.40ドルを抜き、約3年4か月ぶりに過去最高値を更新した。この流れを受けJPX(日本取引所グループ)の大阪取引所でも週明けに先物の中心限月がザラバで10028円を付け1982年の上場以来、初の1万円大台を超えて最高値を更新してきた。

1日のFRB議長の講演では早期利下げ観測の牽制と取れる発言が聞かれたが、これより先の先月末のFRB理事の講演で積極的なタカ派とみられていた同氏が利下げに言及していたこともあって市場は現在の金融引き締めは緩和に向かうとの思惑が広がっている。これで米長期金利も4.1%台と約3か月ぶりの水準まで低下、ショートカバーも巻き込み金に矛先が向かった格好だ。

現物や先物が最高値更新ならETFもまた然り、国内現物保管型の三菱UFJ信託の純金上場投信、ワールドゴールドのSPDRゴールドシェア、野村のNEXT金価格連動型上場投信、WisdomTree金上場投信等々、多いもので商いを前日比9倍近くも増加させていずれも軒並み年初来高値を更新してきている。

目先はちょうど1週間後に始まるFOMCに注目というところだが、折しもイスラエルとハマスは交渉決裂で交戦が再開しこれにウクライナ侵攻と依然燻る地政学リスク、分断の深まりで基軸通貨ドルの信認低下には歯止めがかからずドル指数も3か月ぶり安値を示現、米ドル保有のリスクを意識した中銀の金買いなど今の金は複合要因が背景にある点がこれまでと構図を異にする事を認識しておきたい。


師走の値上げ

早いもので師走入り。今年もまた値上げに明け暮れた一年となったが、帝国データバンクによれば今月の飲食料品値上げは677品目。調味料が全食品分野で最も多く、次いで乳価改定の影響を受けた乳製品が続く。単月値上げ品目数としては今年の7月以来、5か月ぶりに前年同月を上回るものの年内では2番目に少ない水準となっている。

結局今年の値上げ品目数は累計で3万2395品目、1回あたりの値上げ率の平均は15%にのぼり昨年の水準を上回る記録的な値上げラッシュの1年となった。この度重なる値上げによる価格転嫁で大手食品メーカー各社の4~9月期の増益効果は主要9社で約1060億円にも達し、原材料高等のコスト増影響を差し引いても420億円のプラスになっている。

来年の値上げ予定品目は直近で判明しているところで原材料や冷凍食品など中心に累計1596品目と前年同期比9割減となり、通年の値上げ品目は最大で1万品目前後の水準とこちらも約7割減とラッシュは収束化の見込みだが、円安の長期化や賃上げによる人件費上昇等々の影響がタイムラグを経て発生する可能性も高くこの辺は引き続き注視しておきたい。


鷲のマークもMBO 

本日で今月も終わりになるが、今月の株式市場ではとりわけMBO実施が目立った印象だ。当欄では先々週にシダックスとベネッセホールディングスの2社の相次ぐMBOを取り上げていたが、先週末には大正製薬がMBO実施を発表している。ベネッセの時に国内MBOでは最大規模としたが、その規模を軽く倍以上超えて日本企業のMBOでは最大規模となる。

その買い付け価格もなかなかの高プレミアムとあってこれにサヤ寄せする格好で週明けからわずか3営業日で先週末終値から約6割もの急騰を演じ、これまで高値掴みで我慢してきた一部株主へは最後のささやかなプレゼントとなったか?ただ高プレミアムになったのも当然なところで、そもそもがMBO発表時で同社株のPBRは0.5倍台と低迷しておりこの急騰で6割高を演じた本日でも0.8倍台に甘んじている。

同社は市場再編で自らスタンダード市場を選択していたが、上記の株価指標と併せ今後の長期的な経営計画に伴う時間とリスクの前に株主の全面的支持を得るのは困難との判断によるものがこの度のMBOの背景にあるか。ベネッセも構造改革の長期化を見据え非上場化を選択したパターンだったが、あの「鷲のマーク」が株式市場から自ら退出するさまはやや驚きだ。

というよりむしろOTC市場においてブランドが浸透しているからこその退場かもしれないか。誰もが一目瞭然の鷲のマークが広く知れ渡っている今、上場継続のその対費用効果が見合わないという事なのかも。いずれにせよ今月の立て続けの大物?の非公開化決断を見るに株式市場の新陳代謝が本格化してきた感が窺える。


米年末商戦2023 

米では先週のブラックフライデーを皮切りに年末商戦が本格化し、今週はサイバーマンデー、トラベルチューズデーと続いた。コロナ禍の巣ごもり需要などを背景にここ数年好調な売り上げが続いてきた年末商戦だが、全米小売業協会では今年の伸び率は前年比で3%~4%と2021年の12.7%と2022年の5.4%から減速し、パンデミック前の2010~2019年の平均である3.6%増に沿ったものになるであろうとしている。

とはいうものの今年は小売り業者が前例のない規模の値下げや宣伝活動を打ち出すなど金利上昇やインフレ等が重荷となる中で節約志向を強める消費者を取り込む動きが見られ、調査会社のアドビでは今年の年末商戦のオンライン売上高は前年比4.8%増と昨年度実績の3.5%成長から加速して2218億ドルになるとの予想を出している。

実際に先週のブラックフライデーでのネット通販の売上高はアドビの96億ドルの予想に対して98億ドルと前年比7.5%増となり、サイバーマンデーの売上高も過去最高になった模様だ。特に若年層の消費は学生ローンの返済再開が不安材料であったものの、BNPL(後払い決済)等の新たな分割払いが日常生活に溶け込んでおり先週のBNPL決済は前年比47%増とこの懸念材料を吸収する格好となっている模様だ。

というワケで全米小売業協会の減速懸念をよそに堅調な雇用市場や賃金上昇率などを背景に、今年の年末商戦で支出する一人当たりの金額の平均は567ドルと前年比13%増の見込みで過去最高の更新をするとの予測も出ている。小売り企業にとって年間売り上げの4分の1を占めるといわれるこの年末商戦、FRBが高金利を維持するなかでも米経済を支える個人消費が引き続き底堅さを維持出来るかどうかに注目が集まる。


複合施設続々

さて、先週の日経紙の全面広告でも見られたように大型複合施設の麻布台ヒルズがオープンしている。高さ330メートルと東京タワーとほぼ同じ高さで日本一を誇り緑と健康がテーマ、というわけで敷地の3分の1を320種類もの植物が占め緑化されているのが特徴で、ホテルのような人間ドックの慶応義塾大学予防医療センターが入る。

また都心では最大規模のインターナショナルスクールが入居し、浅草の老舗パン屋のペリカンや、米でミシュランの星を取った鮨AZABUも逆輸入で入るなど店舗も面白い。そういえば先月には森ビルが進める再開発事業、虎ノ門ヒルズの最後の1棟である虎ノ門ヒルズステーションタワーもオープンしているが、この一連のプロジェクトではあのアマンが手掛ける300億円とも噂される超高級レジデンスも話題になったなと。

複合施設といえば虎ノ門ヒルズステーションタワーと同じく10月には旧代官山東急アパート跡地にフォレストゲート代官山が開業しているが、東急といえば渋谷。100年に一度の再開発のラストピースとなる来年に全面開業する渋谷サクラステージが先週お披露目されているが、冒頭の森ビル系と今後どう差別化してゆくのか?いずれにせよこうした複合施設が我々の生活に新たな提案をしてくれることを期待したい。


凍結解除の是非

先週に経済産業省が発表したガソリン全国小売平均価格だが、原油価格の下落に伴い政府の補助金の支給額も減っていることなどを背景に2週連続の値上がりとなっていた。ところでこの政府補助金といえば、ガソリン価格発表と日を同じく行われていた衆院予算員会で、国民民主党代表から補正予算案に賛成する条件としてトリガー条項の凍結解除を求められたのに対し総理は解除を検討すると表明している。

当欄ではガソリンが13週連続の値上がりを演じるなど高騰が止まぬ8月に「凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?~凍結解除に今はまさに好機だと思うが。」と書いていたが、政府側はこれまで解除には慎重な考えを一貫して示していた。

それでもなお財務大臣はトリガー条項を発動すれば1兆5千億円の巨額の財源が必要になると慎重な姿勢を崩さないが、ガソリン補助金の予算総額は既に6兆円超に膨らんでいる。先に発表された石油元売りの4-6月期決算は大手勢が軒並み前年同期比2倍以上の好決算に沸いていたが、GS価格への反映が見えにくいなかモヤモヤしている消費者も多いのではないか?

また直近の会計検査院検査報告では、このガソリン補助金の二重交付など過大交付が見つかり、基金の62億円を投じたGSの価格モニタリング調査も資源エネルギー庁調査と重複しているなど無駄遣いが指摘されている。そもそも論で政府の温暖化ガス排出量実質ゼロ目標に自ら逆行している政策との指摘がなされるなかはたして排除は叶うのかどうか、先ずは行方を見守りたい。


イルミネーション2023

本日から西のUSJではクリスマスイベントがスタート、ナイトショーも4年ぶりに復活ということだが、東の東京ディズニーリゾートでも4年ぶりにクリスマスツリーが復活とクリスマスムードが高まるこの時期に楽しみなのはやはり街のイルミネーションか。既にこの近所であれば東京駅から日本橋エリアまでを東京イルミリアが艶やかに日本橋さくら通りで灯っている。

都内では他に定番の六本木けやき坂や丸の内のイルミネーションも先週からスタートしたほか、近年はイルミネの名所になりつつある日比谷でも先週から日比谷ミッドタウン周辺5か所で「マジックタイムイルミネーション2023」がスタート、今年は5周年のアニバーサリーイヤーでコンセプトは“魔法のような瞬間”日比谷仲通りでは1本1本カラフルなカラーで彩られ、日比谷ステップ広場では7つのツリーが虹色に染まっている。

ところでイルミネーションといえば、今年も引き続きSDGsを意識した環境への配慮がうかがえる取り組みが目立つ。上記の日比谷では白熱電球からLEDへの変更で電力消費が約40%減少しており、ルミネーションに使う電力は日比谷ミッドタウン屋上のソーラーパネルを活用。この手では目黒川のイルミネーションも廃油原料のバイオディーゼルを燃料としているが今年も引き続きこれを踏襲している。

ちなみにココは家庭内で出た使用済み油を回収するアップサイクススポットも今年設置しているが、個人の貢献が煌びやかなイルミネの元になっているというような目に見える体感でその意識も変わってくるか。東京オリンピックで皆が持ち寄った都市鉱山がメダルで使われたパターンもまたこれと同じであると思うが、貢献の可視化に工夫を凝らすような動きが広がれば循環型社会もより一層進んでゆく事になるのではないか。