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一寸注目

さて昨晩のニューヨーク原油は3日ぶりに反発となったものの、週明けにはザラバで80ドル割れまで下落し、2012年6月以来およそ2年4ヶ月ぶりの安値を付けた。北米を除くOPEC(石油輸出国機構)非加盟国の生産増加が見込まれるという事で、ゴールドマン・サックスが予想価格を引き下げたのが材料にされたようだ。

同社では、2015年第1・四半期の原油価格予想をWTIで1バレル90ドルから75ドルに15ドルの引き下げ、また北海ブレント先物を1バレル100ドルから85ドルにそれぞれ引き下げたが、これまで教科書的には定石だった中東有事の際の価格上昇に変化がみられる。背景には過激組織の収入源である原油価格を下げたい米国の意図との一部見解もあるが、こんな状況下でワラント取引等も活気づいてきた。

この辺は今月の日経紙商品面や金融アイテムレビュー等でも取り上げられているのを見かけたが、原資産の実際の変動よりはるかにこちらのボラの方が大きく、オプションながら満期も長いことであまりタイムディケイを気にしなくてもよい上になんといっても少額で始められるのがポイントか。

ニュアンス的にはバイナリーや昨日書いたレバレッジ系のETFに近い感覚だが、リクイデイティの面から原油以外にも金も原資産としては注目されており、単品はもとより最近のプナチナスプレッドに注目したプットとコールの組み合わせ等いろいろとバリエーションもきくことでこちらも今後の注目商品になってこようか。


乱高下で人気

本日の日経紙マーケット面には「値幅2倍 ETF売買最高」と題して、相場が9月下旬の高値から大きく変動する中、個人や海外投資家が短期の値幅取り狙いの売買を積極化させ値動きが株価指数の2倍になるレバレッジ型ETFの商いが膨らんでいる旨が載っていた。

今月の月間売買代金では「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」が過去最高を記録と載っていたが、昨年の夏場も日経平均が乱高下を繰り返していた時のETF売買代金が上半期で前年同期比4.3倍に上っていた事が思い出され、斯様に数年前に登場して以降このNEXTシリーズは常に上位にランキングされている。

当初はその構造上長期保有にも向かずマル信未満といった中途半端?なレバでここまで売買代金を集めるとは想像もしなかったが、貸借モノも増加し短期筋中心にけっこう需要があったということになる。そんな事からアジア圏で売買が最多に膨らんでいる模様だが、こうした背景にはこの手のレバレッジ型の寄与が大きく関係しており選好性を測る上で今後も注目されよう。


遺伝子検査の行方

昨日の日経紙には「病気の傾向知って予防」と題して、消費者が直接ネットなどで検査を申し込んでその結果も受け取れる「直接販売型」の遺伝子検査が増えている旨が載っていた。前々から都心のアンチエイジング等を謳う自費診療主体のクリニック等でこの手はあったが、今年になってからモバゲーのDeNAがDNA解析に参入したりでにわかに話題になった感がある。

話題作りを後押しした件でもう一つ、女優のアンジエリーナジョリーがこの検査で乳がん発症リスクがあるということで乳房切除手術まで実行した件も思い出す。彼女がやったであろう超高額な検査はさておき、最近では分析器の価格下落もあって検査料も格段に安くなった事が上記の普及に繋がっているだろうが、現段階では提供会社によって解析結果は異なったものとなる部分もあり他にも医師法に絡んだ問題で中途半端な部分も出てくる。

しかしこの検査、自覚症状も無いときに任意で健康管理の一環で調べる人間ドックとはまた異質のもので、上記の未統一な部分と併せ消費者も一寸検査してみようとの思いが頭をもたげる一方では心情的にいろいろと逡巡する部分もあるのではないか。

消費者の心情もさることながら管理面での懸念も。例えば先のベネッセの如くこの手の情報が魑魅魍魎のブローカー経由で保険会社などに出回り、隠密裏に共有されるような事態もないとはいえないのではないか?ある意味更に究極の個人情報だけにこの辺がどう発展してゆくのか興味深い。


成長戦略の行方

本日の日経紙には「混合診療、大病院に限定も」と題して、政府が公的保険のきかない薬や技術も患者と医師の合意等を前提に健康保険診療と健康保険外診の併用を包括的に容認し、身近な医療機関で少ない費用で使えるようにする所謂混合診療の仕組み作りが始まった旨が載っていた。

これまで混合診療に関してはここ数年議論がなされてきたが、同紙には厚労省が示した案はこれが事実上大病院での実施に限られ「身近」が遠のく可能性があるとしている。同省はこれまで療養の給付原則は崩さずと一貫して慎重論を貫いているが、歯科等は事実上混合診療、最近ではボトックスも対象になってきており斯様に患者の選択肢が広がるメリットは多大で是非身近な医療機関への浸透を望みたいところでもある。

ご存じの通り混合診療は安倍政権の成長戦略にも盛り込まれているが、同じ成長戦略の一環として女性活躍を掲げその看板大臣として抜擢された前小渕経済産業相や、松島法相といった女性閣僚が就任数か月で相次ぐ辞任という失態を晒している折、こちらも既得権益の壁になし崩しになる等の事態は避けてもらいたいところ。


PKOと言われぬ為に

本日の日経紙社説には「公的年金運用の信頼高める改革を急げ」と題して、政府が公的年金の運用を現在の国債中心の運用から株式等の価格変動の大きい資産へ比率を上げる改革を進めようとしている旨が出ていた。

この辺は先週末にかけての日経平均大幅続落の翌日にタイミングよく同紙の一面にも「公的年金12%から引き上げ調整」と出ていたが、ここに書いてあったように仮に運用比率目安を20%台半ばまで高めるとなれば単純計算で8兆円の株買い需要が発生、また上限まで活用すれば国内株を最大30%程度保有する事となる。

GPIFも面子刷新で斯様に機運がまさに高まったといえようが、ここの動きが魑魅魍魎のマーケット参加者に利用された場合投資家間でも優劣が生じるアンフェアな事態も想定される。また上記のようにGPIFが大株主になり得る事は、何度か取り上げた日本版スチュワードシップ・コードと絡めて矛盾する部分もある。

社説の末尾には公的年金で株価維持という不健全な印象をもたれる事は避けたいとの一文もあったが、情報開示の扱いの難しさはあるものの一昔のPKOを彷彿させないような透明性のある改革が求められようか。


脱白金

本日の日経紙には「燃料電池車の触媒安く」と題して、帝人が自動車各社が市販を検討する燃料電池車向けに、高価な白金の代わりに割安な鉄と窒素を使う触媒を開発した旨の記事が載っていた。

この白金を使わない燃料電池車といえば、上場企業ではかつてダイハツ工業も産業技術総合研究所と協力し白金を使用しない新しい燃料電池を開発、パナソニック子会社も白金を使わないディーゼル排ガス触媒を開発、トクヤマもその関連を進めている。また、大学も九州大学の研究グループがニッケル系を使用した安価な触媒を開発し群馬大学、千葉大学もこの辺に着手している。

白金といえば産出国が南アやロシアに偏っている事などからそれぞれ先のストライキや政情不安で高騰したのが記憶に新しいが、こうしたことからも安定調達出来る安価な素材代替が共通の課題となっている。上記触媒は今のところ性能が現在の70%にとどまるものの、改良して従来の白金以上の性能を目指すといい日進月歩の技術だけに今後大いに期待したいところである。


リクルート好発進

さて今年後半の大型案件のうち、先に取り上げたすかいらーくが再上場を果たした次ということで先週にはリクルートがはれて上場となった。ご存じの通り生活のあらゆるシーンに入り込む巨大メディカンパニーで知名度は抜群、久し振りの大型IPOであった。

先のすかいらーくは公開価格がブックビルディング下限で決まっていたのとは対照的に、こちらの公募価格はブックビルディング上限で決定していたこともあって、世界の主要株式が暴落する中を初値が公開価格を上回る白星スタートから、更に引けでは3,330円と値を伸ばし初日の時価総額は東証一部で43番目に位置する事となった。

思い起こせばあのリクルート事件からダイエーグループ傘下になった時期もあったが今やそのダイエーもイオン傘下となり年末には市場から姿を消す予定。その過程であった負の遺産が、好調な滑り出しをきった上場初日の時価総額とほぼ同じというのも何かを感じさせる。

ところで本日も株価は大幅続伸となりその時価総額も並み居る老舗企業を連日抜いてきているが、以前に当欄で書いたようにココは持株会が10%を超え第一興商の時よろしく古株社員の中にもニワカ成金?が出てくるのも想像に難くない。何れにせよそういったところも含め今後もベンチャー企業の元祖といわれた同社の動向が株価と共にまだまだ話題になろう。


10月のアノマリー

本日の日経平均は急反落し5/30以来約4ヶ月半ぶりの安値水準となったが、それにしても今週は世界的に崩落が顕著になったものだ。米国の金融緩和終了後の不透明感を背景に昨晩のNY市場も一時460ドル安と急落だが、欧州も先駆していたドイツなど今週ZEW(欧州経済研究センター)が発表した独景況感期待指数が前月から更に低下、12年11以来の水準に落ち込みDAXも同様に暴落の憂き目に遭っている。

既に先週からモルガンの225とTOPIX双方への一手売りが先物で目立っていたが、グローバルマクロ系のヘッジファンドなどやはり相場が動く時には果敢に攻め続ける。一部に運用成績低迷も目立つ折、「もうはまだなり」とばかりに執拗にショートの回転を効かす地合いになっている。

そんな背景もあって恐怖指数と呼ばれるS&P500種の今後1ヶ月の変動予測を数値化したVIX指数は先週末に前日から2ポイント超上昇して約8ヶ月ぶりに21台に乗せ、これを受けた連休明けの東証VIXETFは比例配分のストップ高とこの種にしては非常に珍しい光景も見られた。

ダウやS&P500種はこれまで割れる度に切り返してきた200日移動平均線を割り込み、後者は過去3日間の下げが2011年以来で最大となった。上記のVIXもVXVとの比率では1.0割れ水準になり総悲観の感も強いが、果たして数年来の上昇相場も終焉となってしまうのかどうか今後も目の離せない展開になってきた。


謝罪さまざま

昨日は外食大手すかいらーく再上場に触れたが、本日は同じ上場企業である外食企業の木曽路に対して消費者庁が、先に発覚した価格の安い和牛を松坂牛等と偽り提供していた問題に絡んで、これが景品表示法違反に当たるとして同社に再発防止等を求める措置命令を出している。

私のところにもこの件が発覚後しばらくしてお詫びの通知が届いたが、昨年のホテルで続出した偽装の衝撃が一服した頃また出たかという印象だった。会見では味の面では大きな差はない等いろいろ言い訳していたようだが、そもそもPOS等がこれだけ普及しているなか在庫管理の整合性というかズレが本部で把握出来なかったというのもよく考えればおかしな話である。

外食ではもう一つ、先のマクドナルドでもトップによる謝罪会見があったが大手の対応は遅さばかりが目立つ感が最近はある。顧客補償も懲りず?な食事券から一転して現金になったりと右往左往だが、先のベネッセも当初は金券等によるお詫びはしないとの表明から結局金券と言い出し更にはもう一つの方法で基金への寄付等とワケのわからないお詫びの受け皿もあったりと何かこう違う感満載な今日この頃である。


再上場組

さて先週は外食大手すかいらーくが東証一部に再上場のはこびとなった。2006年にMBOで非公開化して以来、8年振りの再上場となり注目の初値は公開価格と同じ1,200円、引けは初値より5%安い1,143円であった。

これで計算した時価総額は2,219億円となり、外食では首位の日本マクドナルドに次ぐ規模となったものの、ちょうど株式市場も台風襲来のおり暴風雨のなかでの上場となったことも影響したのか否か上場廃止直前の時価総額2,944億円には及ばなかった。

11年から経営に参画した米投資会社ベインキャピタルは上場後も筆頭株主として発行済み株式の6割超えを保有するが、株価が上がるとベインによる売却が意識されるという見方もある。しかし同じ再上場組では西武の時もサーベラスの影がチラつき初値は肩透かしだったものだが、上場後は約5割も意外?な上昇を演じた経緯がある。

とはいえ外食産業の適正PERは約20倍、同社のEPSから合せてみればまだ高めという見方もあるが、上記の西武等のようにファンド絡みの事情や思惑や年末の優待取りを控え今後もいろいろ思惑含みの展開になろうか。


ノーベル賞思惑

さて、今週のビッグニュースはなんといっても2014年のノーベル物理学賞に赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授の日本人3人が選ばれた事だろうか。省電力でエネルギー消費の少ない青色LEDの発明と実用化に貢献した業績が認められたものだが、いずれも各紙の紙面を大きく飾った。

しかし、中村教授といえばすぐに思い出すのがLED発明当時に在籍していた日亜化学工業に対し発明対価として200億円の支払いを求めた裁判の一件か。結局これを大きく下回る額での和解となったが発明対価訴訟としては最高額となり、改めて我が国のインセンティブのあり方に一石を投じる一件となったのは記憶に新しい。

二年ほど前の当欄では「企業の事情も絡んでくるので一口にインセンティブの国際標準を考慮するのも難題」と書いたことがあるが、政府もこの辺に関して指針検討まで出たもののあらゆる業界でその待遇格差から人材・技術双方の流出脅威は燻る。

ところで株式市場もこの報からLED関連銘柄の中には物色されるものが相次いだが、既に普及が進んでいる分野だけに蒸し返し感も強く上値はいまいちといったところであった。そんな中でまさに今が旬を迎えている銘柄が同じノーベル賞でも文学賞関連で、中でも書店大手の文教堂は本日で3日連続のストップ高と急騰している。4人目の日本人受賞を織り込んでいる相場となっているが、果たして市場の予測通りに4人目の快挙となるかどうか今晩の発表が注目される。


ジミーチュウIPO

昨日の日経紙には女性誌マリソルの別冊広告が入っていたが、表紙のモデルの靴や末尾のオードトワレなど「ジミーチュウ」がさりげなく目についた。ところでこのジミーチュウといえば、JABホールディングスが保有している株式のうち25%の売却計画が先に報じられている。

既に今週はじめにIPOの仮条件を140-180ペンスに決定しており、月内にロンドン証券取引所での上場を目指している旨もロイターから報じられている。当初噂だったものが改めて現実となった訳だが、話は変って高級ブランドの株式といえば長年燻っていた世界最大手のLVMHモエヘネシーが同業のエルメス株式を買い進めていた問題で和解が成立したとの報も最近あった。

LVMHが保有しているエルメス株は現在23%だが、LVMHの株主に割り当てる格好で今後5年間同社株を新たに買わないという内容も織り込み影響力を低下させるという。漸く終戦といったところだが足元ではユーロ高、頼みの日本の消費増税や中国の贅沢品禁止政策の影響もあって1-6月期はLVMHで増収率が前年同期の半分にとどまっている。

一方でエルメスは欧州全体で7%増収、日本を除くアジアでも12%増収と堅調持続している。LVMHのようなコングロマリットの強みはブランドミックスによる相互補完性にあるが、そう考えるとブルガリやディオールのように買収快進撃とはならなかったが此処が非常に魅力的な存在であったことは頷ける。