183ページ目

規制の匙加減

昨日取り上げたバークレイズの件に絡んだ話だが、ちょうど昨日の日経紙多面鏡には「米で現物業務の規制案」として、米国で浮上している金融機関による商品現物業務の規制を強化する案を巡る話が載っていた。

同紙にはグラス・スティーガル法廃止で動きの幅が広がり、大手銀などが次々とLME等の指定倉庫や様々な設備を所有するようになったのに伴い商品の需給や価格形成に影響を及ぼしかねない不安もあるとあったが、上記のLMEなど値鞘稼ぎの在庫積み増しの裏で大口需要家は思うように出庫出来ない弊害が出ている旨が書いてあった。

この在庫積み増しによって手数料を稼いだと書いてあるが、おそらく先をショートして調達しておいた現物の渡しというパターンで積みあがったということだろうか?また、一連の規制とは関係無いと表明しつつも銀の値決めから撤退したドイツ銀行の影響もあって今年8月にはロンドンの銀価格算定基準が失われる。今後の円滑な市場機能維持に向けた施策は焦眉の急である。


LIBORから金まで

さて先週末には英金融大手バークレイズに対し英国市場監視当局のFCA(金融行為監督機構)が、金価格の値決めに関して内部管理を怠ったとして2,600万ポンドの制裁金を科した旨が報道されていたが、この件は本日の日経紙社説にも「商品市場の不正は許されない」として取り上げてあった。

バークレイズといえば、一昨年にもLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作で2億9,000万ポンドの罰金を科せられた一件があったが、金価格操作におけるトレーダーの不正行為は10年近くに及びLIBOR問題の制裁金を科された翌日もこうした行為が行われていたというからその管理体制も責められよう。

この金価格操作だが、金指標価格が特定水準を超えれば代金を顧客に払う契約でこの特定水準を超えないように価格操作を施しこの顧客への支払いを免れていたというもの。まあこの辺は国内でもEB債などのノックイン商品においてそれらに絡む証券会社等によるこうした価格操作が疑われてきた事例も枚挙に遑がないが、国際的指標価格に携わってきた企業だけに失望感は大きく影響が懸念される。


岩盤規制

昨日の日経紙社説には「治療の選択肢広げる混合診療の拡充を」として、保険が利かない自由診療を一連の治療の中で組み合わせる「混合診療」の拡大を検討する件に絡んだ旨が載っていたが、安倍政権の成長戦略の具体化への期待が高まっているなかでこの分野は政府内での対立がいわれて久しい。

この混合診療に関して当欄で最初に触れたのが漢方薬の保険適用外論議が騒がれた5年ほど前であったが、足元で規制改革会議が適用拡大のため医師と患者が同意すれば混合診療の対象とする選択診療を提唱しているのに対し、厚労省は高額医療の強要懸念等々慎重意見はブレていない。

ただ今まで自身の経験で言えば、大手大学病院でも個人開業医でも自由診療と保険診療に結果が大差無き場合などこれを選択する必要性がない理由を医師がしっかり説明してくれるケースが多く、その辺の懸念は杞憂と思われるしまして歯科系など既にその境界線は無いようにも思う。

医療格差の広がりという論もまたあるが、衣食住とてこれとステージは同じではないだろうか?反対勢力の懐柔も時間との戦いではあるが自由診療の受け皿となる機関の充実もまた課題、いずれにせよ原則論にとどまったものを変えることができるかどうかその成り行きが注目されるところ。


首都圏SM連合

さて今週目立ったニュースといえば週明けの日経紙一面トップに出ていたようにイオンによる食品スーパー事業の再編の報だろうか。今回は資本提携するマルエツとカスミが来年春までに持ち株会社形式で経営統合、イオンと丸紅が共同出資で設ける新会社が株式の過半数を持つ方針という。

この報道で当日の株式市場ではマルエツが急騰し年初来高値を更新、カスミもほぼ年初来高値を舐めにゆく急騰を見せていた。ただ、イオンや丸紅はこれら以外にも彼方此方資本提携をしており、今後もこの持ち株会社への参加思惑で折に触れて物色再燃の動きも出てくるかもしれない。

ところでこんな銘柄の流通再編の光景を見るにふと思い出したのだが、バブル期における秀和が流通再編を掲げてスーパー株や百貨店株等を買い占めした事件。上記のマルエツの発行済株式の25%近くを集めたのをはじめ裁判沙汰にまでなった忠実屋やいなげやその他百貨店まで幅広い買い占めが行われ、急騰した株の恩恵にあずかった投資家も多数居たものだった。

バブルに乗っての舞台だっただけに、ほどなくおとずれる不動産バブル崩壊でこの構想は食い散らかしたまま消耗戦で終焉を迎え当の秀和は外資に買収され、その前に破綻回避策として株を担保に同社に融資したダイエーも今や上記のイオン傘下になっている。時を経てこの騒動時に買い占めに遭った百貨店など近年は再編が進み、今度はスーパーにもこうした波が来ているのを見るにいろいろと感慨深いものがある。


植物への想い

先週から日経紙文化面には「植物幻想十選」として仏文学者の巖谷氏の連載があるが、週明けは酒井抱一の「白蓮図」が取り上げられ、昨日はエミール・ガレの「キノコ文火器」が取り上げられるなど、いずれも私が個人的に好きな作者が立て続けに登場し久しぶりにこの欄が目に留まった。

このうちエミール・ガレは、昨日まで「芸術と自然のふれあい ガレ・ドーム展」として日本橋三越で催し物があった。ほぼ定期的にある催し物ながら毎回あまり作品がかぶっていなく、なんといっても名品が間近に見ることが出来るのが素晴らしいところ。

美術名鑑に載るような作品も稀に出てくるが、今回の展で目に留まったのはドームの「トンボとアイリス文花瓶」か。形状が「トリステスの花器」に酷似していることで最初はガレかと思ったくらいだが、淡いパープルのグラデーションがなんとも美しく時を経た金彩の絶妙具合も然りで今年もまた良いものを見せて頂いた。


5/20より「よそうかい海外市況レポート」提供開始

岡藤商事は、2014年5月20日よりEXPERTユーザー向け情報サービスに、「よそうかい.com」松本英毅氏の海外市況レポート配信サービスを開始。よそうかい.comで自社会員向けに有料で提供されている海外市況レポートを「Expert]のユーザー向けに無料で配信(前月末の預かり残高に合わせて閲覧可能なレポートは変更)。

▼「Expert」新・情報サービス開始のお知らせ


続きを読む

隠蔽で拡大

さて、本日の日経紙社会面には「14厚生基金で106億円損失」として、投資運用会社プラザアセットマネジメントなるところが運用していた2つのファンドの資産価値がゼロになった結果、少なくとも14の厚生年金基金で多額の損失が発生、2008年以降資金繰りの悪化を説明せずに新たな勧誘を続けていたという件が載っていた。

既にココは昨年に金融庁から業務改善命令が出て多額損失が喧伝されていたが、上記の資産価値がなくなってしまった2つのファンドは米国の生保を売買対象とする投資商品で、これは当欄では2年前に一度「〜契約も解約より換金率が高いことから契約者との成約もし易く、その契約者の生死で運用利回りが決まるので外的なファンダメンタルズとの相関性がほとんど無いというのがウリ〜」と取り上げた事があったのを思い出す。

年金に絡んだこの手の事件では一昨年のAIJ投資顧問の年金消失発覚が記憶に新しいがココは同社の投資先の一つ。資金繰り悪化を隠蔽して新たな勧誘継続というのは以前の安愚楽牧場事件もあったが、年金モノの場合はトップの裁量というのもあり信託の問題性とも絡めてまた議論が再燃しそうだ。


HOXSIN投資家予想指数ページをリリース

北辰物産は、2014年5月16日(金)付で、金、白金、ガソリンの相場予想を投資家の皆様に投票してもらう仕組みの「HOXSIN投資家予想指数」ページをリリース。

▼HOXSIN投資家予想指数


明日の相場、皆様はどのように見ていますか?
相場に取り組むトレーダーは、とても孤独です。時には、色々な人の相場観を聞いてみたいと思う事もあるでしょう。
一つの材料に対しても、相場の上げ下げの判断は、投資家によって様々です。他の投資家の方が、現在の相場に対してどのような見方をしているかは非常に興味深いものですが、中々それを知る術はありません。
当指数は、単純に明日の相場を大勢の投資家の方々がどう予想しているか投票して頂き、データー化したものです。明日の相場見通しに対して、投資家が相対的に強気か、弱気かを示すものになっており、大勢の投資家の相場観を反映させた、北辰物産「投資家予想指数」を参考指標の一つとしてお役立て頂ければと考えております。

続きを読む

何所が違う?

さて、先週15日付けの日経紙夕刊社会面には「早大OBらを強制捜査」として、証券取引等監視委員会がネット株取引において所謂「見せ玉」を使い、不正に株価を吊り上げていた疑いがあるとして早大の投資サークルOBらの関係先を強制調査していた旨が載っていた。

これを見た時は数年前の早大OB事件が何故今更?とも思ったが、2009年のその件ではなく今回はまた別件であった。同じ投資サークルの同胞が挙げられたにも関わらず同様の手口でまた挙げられるというのも全く学習していない気もするが、近年ではアルゴを逆手に取るようなテクを駆使する輩も出てきて個人レベルも日進月歩である。

しかし、この行為自体を擁護するつもりはないものの摘発の境界線とはどの辺に敷かれているのだろうか?市場には外国籍含め魑魅魍魎のヘッジファンドがウヨウヨしているが、所謂「狩り」行為も横行しており個人でやっているこれらと何所に違いがあるのだろうか?というアルゴなど頻繁にある。

むしろ上記のような狡猾アルゴを逆手に取った方が摘発されるなどこの辺が逆に不信感を募らせている部分もある。2009年の事件の時に当欄では末尾で「活躍のフィールドが変わればまた貴重な力となるのは否定できないところ」と書いたことがあるが、この背景はこんなところからも来ている。


13年9月末までの「電子取引に関する状況推移」を掲載

日本先物振興協会は2013年9月末までの「電子取引に関する状況推移」を掲載。

▼電子取引に関する状況推移(2013年9月末まで/PDF)

これによれば9月末時点では

全口座数   :34,888口座(証拠金の預託されている口座数)
電子取引口座数:25,218口座(証拠金の預託されている電子取引口座数)
有効口座数  : 7,082口座(建玉のある口座数)

となり、預かりの電子取引比率は60.1%、売買高は51.1%。


続きを読む

ガラ法?

今週気になったニュースとして政府の規制改革会議が客にダンスと飲食をさせる営業とダンス教室について、風営法が定める風俗営業から外すべきだとの提言を纏めたという件があった。

当欄ではこの辺に関して昨年初めに今の風営法を、「額面通りに受け取れば学習指導要領も再考しなければならない」と書いた事があったが、この規制改革会議では「健全なダンス文化や関連産業の発展の支障になっている」という理由から風営法所管の警察庁に同法改正案の査定を促すという事で、ヤレヤレ果たしてといった感じがする。

更に風営法に関しては8年くらい前に第2号というよりは手軽に第5号に流れている旨を書いた事もあったが、つい最近も3号営業絡みで起訴された経営者に対し大阪地裁が無罪判決を言い渡した件もあった。

同紙にも書いてあるがもともとこの風営法、戦後に客と踊り子との売買春の温床になるとして規制されてきたものだが、先進国においてこんな埃をかぶった法を現代社会まで継続させてきた方が驚く。風営法では無いがこれと似た件には小中学校等で行われてきた「座高測定」と「寄生虫卵検査」も近々廃止される事になったという報もあった。

携帯でさえガラケーなどと揶揄されるが、さしずめ上記のアレコレはガラ法とでも呼ぶのだろうか?この煽りで数々の文化を生み出したクラブが消えていったがある面では被害者だった側面もあろう。


リスクオンもまた

本日の日経紙マネー&インベストメントでは「商品市況でリスク先読み」として海外情勢に敏感な商品市場の動きに目を光らせれば、商品投資だけではなく株式や外国通貨への投資でもリスク回避などに役立つ情報が多い旨が載っていた。

この辺に絡んでは今月1日に「本当にそうなの?」として、ウクライナ情勢に絡んだロシアの経済混乱でパラジウム等の供給が細る事で末端までいろいろ影響が出ている旨を書いたが、本日は商品面にも「ニッケル5割高」としてこのロシアの供給不安等でLMEの地金価格が2年3か月ぶりの高値を付けている旨も載っていた。

これらの材料を基に上記のようにリスクオフもいいが、非鉄の低迷相場が一変したような時こそ関連株を拾わない手はない。代表格の大平洋金属なんぞは2月の安値から実に6割近くも上昇し週明けは年初来高値を更新、ほか別子も3月安値から4割近くも上昇し年明けからの低迷相場の中で異彩を放っている。

アベノミクス相場で総かさ上げの時は市況敏感株も今一つ連動性に欠けたものであったが、年明けから往って来いの全般低迷相場期には水を得た魚の如く動く習性もまた健在である。