220ページ目

設定熱も束の間

本日も株式市場は小動き推移のなかを4日続落であったが、先の9,200円水準から真綿で首を絞めるようにジリジリと弱い地合いがここまで続いている。思えばこの直近でこの高値を付けた20日といえば、野村アセットマネジメントの単位型投信「野村日本株投信1208」が設定された日である。

12年ぶりの大型設定で1,200億円と意外?にも集めた感があるが、これまでも2度設定されていずれも半年ほどで繰り上げ償還になった実績を持つだけにこの効果も高かったのは明らかか。この繰り上げ償還だが、分配金を除く基準価格が12,000に到達すると繰り上げ償還になる条項付ということだが、条項モノでは本日の日経紙には商社株を対象にした仕組み債の件も書かれていた。同債券を組成した向きはヘッジ絡みの売買に駆られるとの事だが、ズルズルと年初来安値を更新している個別にはこの手が結構紛れていたりするから要注意である。

ともあれこの大型設定で日本株にスポットがあたりココに追随する運用会社の資金が日本株に継続的に入ってくるのではという期待が関係者には多かったのだが、フタを開けてみれば現況では上記の通り打ち上げ花火に終ったような何とも寂しい状況である。やはりイニシアチブを執れる参加者が不在という状況は今も変わりはない事の表れか。


匠の技と昇華

さて、大手百貨店ではセールも終りこの時期になると開催されるのがワールドウォッチフェア、ちょうど1週間前に終ったが今年も案内を頂いたので三越ワールドウォッチフェアに過日行って来た。

だいたい毎回見たい物は決まっており、昨年であれば時計ではなかったのだが「カランダッシュ・1010Diamonds」の特別製作モデル、更にその前であれば「ショパール&山田平安堂の漆と蒔絵シリーズ」の作品等であったが、今年は「ハリー・ウィンストン・プルミエールフェザー」である。以前よりこのダイアルを担当したフェザーアーティストのネリー・ソーニエ氏には興味があったのだがはたして実物は圧巻、フェザーもここまで昇華出来るものかと改めて感動であった。

ところで一昨年のこの会場では中国人客もメイン層と捉えそれこそ通訳スタッフが会場の彼方此方で見受けられ、実際其れなりの顧客が思い思いの品を手にとっていたのが思い出されるが、少なくとも私が訪れた日にはこの手の顧客は全く見当たらず心なしか例年より閑散とした雰囲気も感じられた。中国景気も失速感がいわれる昨今、あの「ヴァーチュ」のブースも消えこんな一角からもその片鱗が読み取れる感もあるか。


コメ先物上場1年

さて、今月でコメの先物が東京穀物商品取引所と関西商品取引所に上場して1年が経過した。72年ぶりの復活上場と鳴り物入りで登場したものの、果たしてメインの市場であった東穀取に至っては何度もその杜撰経営を取り上げてきた通り経営不振から解散の挙句に擁していたコメ市場を来年2月に関西へと引き継ぐことが決まっている。

同所経営陣がまったく場当たり的な経営を続けてきたのは、その他の商品を東工取へ移管決定した後の記者会見にて社長が「〜度重なる勧誘規制の強化が取引減少の理由〜」とその辺の三流マスコミレベルの答弁をしているあたりでも窺えたが、三菱地所のパークハウス基礎工事が粛々と行われている剥き出しの取引所跡地もまた目に入る度に資産食い潰しの酷さを物語っている。

そんな迷走も足を引っ張り上場からこの1年の1日あたりの平均売買高は約370枚で、国内上場商品の売買高ランキングでは14位である。これだけでも東穀取社長の「全限月が揃ってからが本番と考えてくれ」とか「1日5,000枚」というのが如何ほどの大風呂敷かという事になるワケだが、この移管が決まった関西商品でも板寄商いとなるなかで異銘柄共存の相乗効果は未知数と明確な展望があるわけではない。斯様にコメのゆくえも気になるところだが他を引き継ぐ新生「東京商品取引所」もまた然り。

世界の商品先物取引所を見てみると2011年取引高ランキングはNYMEXが3年ぶりに首位に返り咲き、このベストスリーでは2位にインド・マルチ商品取引所、そして3位が上海商品取引所となっている。その後にはCBOTやらLMEが続くが、はたして新生「東京商品取引所」は何位くらいになるのだろうか?おそらく売買高ベースでは首位比較で数%程度と見られるが、先の日経紙には東工取の先月の外国人売買比率が最高の31%になった旨も載っていた。今後彼ら主力含め他をどう誘致してゆくか、先を見れば日本取引所グループの骨子がはっきりしてくるあたりでまた新展開も考えられるが何れにせよまだまだ安穏な道ではない。



関心と矛先

欧州問題が依然として不透明な中を米金融緩和を睨んでかここ直近で金の堅調が目立つ。価格堅調と共に一時期残高が減少した代表的な金ETF「SPDRゴールド・シェア」の運用残高も先週時点で約1,286.5トンと前月比で約4.5トン増加し、4/9以来約4ヵ月半ぶりの高水準となった旨も週末の日経紙に載っていた。

そういえば昨日記のジョージ・ソロス氏のファンドやポールソン&カンパニーも4-6月期にこの手の金ETF保有額を増加させている事も報じられているが、国内でも足元では4-6月の「金需要動向」にて日本の投資用の金需給がおよそ3年半ぶりに買い越しに転じた旨をワールド・ゴールド・カウンシルが発表している。

ところで金といえば先週の日経紙には「東工取、取引に停滞感」として、東工取の売買回転日数が今月20日時点で約9.5日を要し前年同月の3.8日や前年平均の5.4日を大幅に上回っている旨が出ており、先物へはこの辺の波及効果は今ひとつといったところだろうか。その前の同紙には若年層の間で金投資の関心が高まっている旨の記事も見掛けたが、商機かどうかは別としてこちらの啓蒙も業界は工夫したいところだ。


Red Devils

昨日の日経紙には、香川選手と日本の人材赤字なるタイトルが「経営の視点」に出ていたが、彼の所属する英の名門マンチェスター・ユナイテッドといえば周知の通り直近でニューヨーク証券取引所に上場を果たしている。注目の初値は14.05ドルとほぼ公開価格と同値となったがそれでも調達額は190億円近くになった計算だからやはり名門の貫禄である。

欧州各国リーグはファンを熱狂させるが、その裏ではイタリアやドイツ勢などの上場組は過去上場以降の采配を誤り何れも財務状況の悪化を引き起こしているというジンクス?のようなものがある。今回の静かな上場シーンもその辺が市場関係者の脳裏を過ぎったのかもしれないが、細かいところではオーナーのLBOやら種類株等の問題もよく聞くところ。

そんなマンUであるが、先週はあのジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドがクラブの全発行株式の1.9%を保有していることが分かったとロイターで報じられている。プライベートでは最近42歳年下の女性と3度目の結婚波話が報じられているソロス氏だが、クラブへ食指を動かしたのは今回が初めてではない。放映権が狙いとの噂もあるようだが、何れにしても上記の通り過去上場後に低迷したというジンクスを破れるかどうかファンならずともこの辺は気になるところ。


一先ず一歩

周知の通り先週は東京証券取引所グループが大証に対して実施したTOBが成立している。果たして買い付け上限を上回る応募があったことで撥ねられた株の還流懸念から先週のストップ安に続いて大証は本日も続落で年初来安値を更新となっていたが、何れにせよこれでまたひとつ「日本取引所グループ」への作業が進展することになった。

東証といえば先に挙げたシステムトラブルなど近年不祥事が相次いでいるが、これに限らず高速化の流れの裏では世界中でこれらに絡んだ事故も最近は多い。統合ではシステムや市場の一本化となった後に再度この手のトラブルが発生したら代替取引が利かなくなる脆さも持ち合わせることになるわけで、今後投資家を如何ほど誘致出来るかは統合メリットを生かしその技術を以ってこの辺に対する信頼をどれだけ築けるのかにかかってこよう。

またもうひとつ統合によって銀行よろしくメガ的な規模になるとはいえ、上場ベースでいえばかつての大証のウリであるデリバティブというステージで見れば、先週水曜日に触れたCMEなどからするにその時価総額は1割そこそこというところ。世界規模での再編劇では未だ未だ予測出来ない動きも水面下で進行していると思われるが、これに絡んだサプライズもまたあるや否やこの辺も併せて注目されようか。


絶てるかセール依存

街を見ると先月から続いていたある種の風物詩であるセールも秋物の登場で漸く終盤といった感じであるが、今年のそれは例年とは一寸違った風景であった。周知の通り三越伊勢丹がセールの開始時期を例年より約2週間遅らせ、東急百貨店からルミネまでこれに倣い、高島屋なんぞはセールを2段階に分ける変則形で対応した。

果たしてこの先陣を切った上記の三越伊勢丹は2.6%の減収、高島屋は2.9%の減収となるなど、大手4社が月初に発表した7月の売上高は軒並み前年割れに終る結果となり分散効果は共倒れという格好になっている。消費者行動を読み切れなかったとの指摘が相次ぎ、追随して折衷案を取ったところなどはこれに懲りて来年は先送りを止めるとしたところも出ている。

しかしセール時だけ消費が活発になる客層を考えるに、デフレが長期化したなかで近年セールの早期化や多発化の様式はこうした層の脳裏に刻み込まれ、そもそも通常価格に対する信頼などこれらの客層は既に持ち合わせていない。ホテルであれば稼働率の悪い時期に半値以下で客室を開放した時期があっても、回復期では全く同じ空間提供でもその倍の値でも予約は埋まるもので、この辺がアパレルとの違いである。

アパレル業界低迷の中でセールはまさに集客や売り上げの起爆剤になっているのは明白だが、それらを更新し続ける為に上記の早期化や多発化という後戻り出来ない環境は或る面麻薬のようなものである。そういった意味では今年はセールを抜本的に考え直すのに一石を投じたとも言われているが、麻薬を絶つ苦しみに双方耐えられるのかどうか?この辺は今後を見てみないとわからないが、家電よろしく業界の株価とも併せこの辺を見守りたいところ。


欧州デリバティブ事情

さて、既報の通り週明けには世界最大のデリバティブ取引所を運営するCME(シカゴ・マーカンタイル)グループがロンドンに欧州顧客向けのデリバティブ取引所を新設すべく英規制当局に申請した旨が報じられている。

ロンドンのデリバティブ取引所を巡っては、上記のCMEグループも取得に名乗りを上げていた昨年の香港取引所による非鉄のLME(ロンドン金属取引所)買収もあったが、このレースから離脱を余儀なくされ今回の独自路線に打って出たCMEの行動には、米国の厳しい規制を嫌う欧州金融機関に配慮した決定であることも報じられている。

ところでLMEといえば、先月末には会員の反対票が0.76%にとどまりほぼ満場一致で香港取引所との統合が承認されたが、今後は従前の相対決済や倉庫事業なども絡んでいるだけにワラント操作?等々含めた所謂ムラ社会の商習慣がこのまま踏襲されるのかどうかも一部関係者には目下のところ注目されるところ。


相次ぐ金融スキャンダル

本日はVN指数が一時5%近く急落するなどベトナム株式市場が急落となっていたが、これは同国の大手銀行アジア商業銀行の創設者である大富豪が昨日に不正な経済活動を理由に逮捕され銀行株などが大幅下落したことによるもの。

金融界で著名だった氏の逮捕で動揺が広がった格好だが、これに限らず直近では金融界の暗部が明るみに出る報が多い。周知の通りもっと大きなところで今月は英スタンチャート銀行が対イランの不正取引を過去10年近く行い、数億ドルに上る手数料を得てきた件がマネーロンダリング防止法違反との報があり、同じマネーロンダリングでは英HSBCもメキシコを舞台に関与していたとの報もあった。

斯様に立て続けにシティがクーズアップされたが、そういえばLIBOR問題のバークレイズもまたシティであった。それは兎も角も挙がったところは新興国絡みが抜きん出ており、果たしてというかリスクの代償としての旨みは大きいというのはこちらの世界でも明白で、日本でも大手証券がファイナンス情報と引き換えにいろいろ商機を見出していたのが咎められている。儲け至上主義の露呈はある別な意図があるともいわれているが、ここまで伏せられてきた物が立て続けに表面化する動きは確かに陰謀説の類が組み立て易いか。


08年再来?

さて、ここ最近紙面を賑わせているものに穀物の高騰問題がある。これに関しては先に仏と米が世界的な天候異変で穀物など食料価格が上昇している問題への対応を協議するためG20による緊急会合招集の準備に入っているが、直近では先週末の日経紙に「穀物高、じわり食卓圧迫」として食用油の値上げが浸透、飲食店向けや店頭価格も上がり始め、小麦も値上がりしそうとの旨も書いてあった。

当然近年金融商品化が著しいコモデティー市場においては先にカゴではトウモロコシも大豆も史上最高値を付けているが、食料とエネルギーという二つの顔を持つトウモロコシなどは争奪戦の様相を呈し本日の日経夕刊でも「食料か 燃料か」と物議を醸し出している。ましてやここへ最近頻繁にチラつかせる機会が多くなってきた金融緩和政策では過剰流動性の波が再度作られており、ファンドも其れなりの商機を狙っているから尚更か。

さて冒頭の件だが、足元ではデフレ化著しいなかで正直何処まで原料コストの上昇分をそのまま製品価格に転嫁出来るかどうかは未知数というところ。本日の日経紙ではレアアースもあの手この手で世界中からかき集めている旨が書いてあったが、斯様に調達先を増やし必要量の安定確保を図るのは企業側の重要課題。この辺に関しては最近穀物に強い丸紅は先に米穀物商社ガビロンの買収を決めているが、従前の総花的経営からの同社の転向は競争激化もさることながらこの辺を睨んでの展開ともいえこの後に続くメジャー群の動向もまた注目されるところ。