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回復の鍵

昨日はコスト削減の動きから本邦では重複上場解消が進行している旨を書いたが、株式といえばその取引自体が世界で減少している旨を昨日の日経紙一面では載せており、2012年7-9月の売買代金は約7年ぶりの低水準に落ち込んでいるという。3極の追加金融緩和政策で市場への資金供給は増えているものの、その中身はさっぱりといったところか。

しかしそれでも米国のDOWなどほぼリーマン・ショック前の5年前の水準まで回復を見せており、独や英などもそれを追うような戻りの軌跡を歩んでいるのに対し、方や本邦はこれらと比べるに5年前の半値ほどの水準であり、個別でも主力株で数十年ぶりの安値が続出している有様とその凋落ぶりが鮮明である。

上記の通り世界中で売買代金落ち込みなど不振を極めているという器の間でも、斯様に日本からは株式然り投信然りマネーの流出が著しい空洞化?現象ではこの先が思いやられるというものだが、「投資の日」にも書いたように関係当局がどの程度この辺の環境というか事態を深刻に捉えているかが焦点だろう。

インサイダー取引問題一つ取っても野村證券が実質過去最高額の過怠金云々が喧伝されていたが、過怠金規定上限の5億円を下回る水準としたことには証券会社自身によるインサイダー取引ではないという認識が昨日の日証協の記者会見で言われており、この辺は同協会がこの取引に関わった社員を外務員資格の剥奪も検討としているあたりにも窺える。

ちょうど一週間前には総じて金融業界は顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いとも書いたが、この手の魔女狩り的見せしめで封印してしまうのもまたこの業界の特徴で協会も上記のようにある意味同調している部分等この先自浄されてゆくのだろうか?こうして挙げると幾つでも出てくるが、土壌という部分でこの辺は今後も注目して見て行きたいところ。


地方への皺寄せ

昨日の日経紙夕刊一面には、企業間で複数の証券取引所に株式を上場させる「重複上場」を解消する動きが加速してきた旨が載っていた。本年度はこれまでに昨年度の29社を3割強上回る39社が新興市場を含めた取引所の重複上場解消を決めたというが、大きなところばかりが記憶にあったので改めて数字を見ると随分と多いものだなといった印象である。

この重複上場については当欄でも2年前に触れたことがあったが、その当時は1999年に1,042社あった重複上場が昨年には773社に減少した旨を書いていたが、その辺の動きが依然として加速しているという構図か。主因としてはやはり上場維持コストという問題になってくるがこの辺はMBOもまた然りといったところであろうか。

さてそうなると地方取引所も一段と厳しい状況になってくるが、好景気のときならいざ知らずこんな時世ではこうした流れは当然か。そういえば余談ながら業界でもMBOを実施したところあり、また地方市場とメインマーケットでトコロ相場を演じた経緯のある企業もあるが、この辺もゆくゆくは一本化の動きへ纏めてくるのかどうか注目したい。


円高と商機

さて、昨日は凪のような相場になってしまったJALを冒頭で挙げたが、それとは逆にこのところボラタイルな相場を演じているのはやはりソフトバンク株か。先週末からの急落のあと本日は一転して急反発を演じているが、イー・アクセスに続く矢継ぎ早の大型買収で最近は紙面を賑わせている。

しかし英ボォーダフォンのときの兆単位の買収もそうであったが相変わらずのレバレッジ買収は凄い。今回もボーダフォンのときとほぼ同額となるがやはり同社社長とは感覚の違う個人株主は戦々恐々、そんな投げもあって直近の株価急落からその時価総額は春先から差が広がっていたKDDIを一気に下回る場面も見られた。

数々の有言実行を成し得てきた氏だけに今回の決断が奏功するのか否か急変動の時価総額と共に注目されるところだが、こんな通信業界以外でも大型買収案件といえば最近は消費関連企業なども積極姿勢を取っている。レコフの集計によれば今年4-9月の消費関連企業のM&A金額は前年同期比51%増といい、やはりこの背景は円高が後押ししている部分が大きいとつくづく、現在水面下で交渉中の案件も近々表面化してくるかどうか今後に注目である。


鎖国継続?市場

本日も株式市場は方向感の無いまま円の弱含みを手掛りに辛うじて小反発となっていたが、先月に上場したJALも上場直後でこそ乱高下を演じたものの、先週からは日足で連日コマを描きすっかりとボラの無いおとなしい銘柄になってしまった。

ところでこのJAL、直近で証券保管振替機構が公表した資料で発行済み株式の約4割を外国人が保有していることが先に判明している。先の売り出しで海外割り当てが25%であるから再上場後の手当てとなるが、航空法によって外国人の議決権割合は三分の一未満に抑えなければならない所謂「外資規制」の問題で規制超過分は配当等一部失う恐れがあるという。

こんな規制は何も航空に限ったことでなく、この辺ザッと挙げてみても「放送法」、「電波法」、「貨物利用運送事業法」等々あり、数年前も英投資ファンドへのJパワー株式の追加取得中止勧告や、豪ファンドの日本空港ビルでもまた似たような経緯があった。他にもタイトなところでは証券取引所なんぞは外国人が議決権の五分の一以上の株式を所有出来ない事になっている。

近年では優先株の無議決権株式なども登場しているが、総じてこの辺に引っ掛かる物には半官・半民だったものが多し。当時諸般の事情があったのかどうか場当たり政策や天下り先確保の用が疑われる向きも多く、本当に民営化の必要性があったのかどうか疑問視される物も多い。海外と違ってスポーツクラブなども上場する素地は皆無で、グリーンメイラーのようなファンドならいざ知らず資本市場開放の流れに逆行した日本市場の鎖国性故の海外からの投資意欲を殺ぐことにならねばよいが。


理屈と現実

今週は東京国際フォーラムにて国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会が東京では1964年以来、実に48年ぶりに開催されている。そんなワケで有楽町界隈は交通規制なんぞで渋滞やら物々しい様も見掛けるが、金融会議といえば先週は大手町でニッポン金融力会議の第一回トップ・シンポジウムも開催された。

この辺に関しては連休明けの日経紙にも載っていたが、この中で某大手証券の社長など日本株は歴史的に極めて割安な水準と強調、メガバンク3行の株式配当利回り平均が4%前後なのに対して、銀行の大口定期預金金利が0.2%台であることを例に挙げ預金からメガバンク株に一定の資金シフトがあってしかるべきだと述べているがそんな言葉も虚しく只管低迷する市場を見るにやはり違和感は拭えない。

こんな理論から今こそ「投資の機熟す」・「貯蓄から投資」と同紙にはタイトルが踊っていたが、今まで何度も書いているように既にこんなところに魅力を感じて株主になる向きが居なくなってしまっているのが事実。東電やオリンパスやシャープに見られるようにかつてのディフェンシブ優良株は無残にも時価総額を急減させ、配当や優待を狙っても斯様に値下がりの代償がそれを遥かに上回ったり突然のファイナンス実施で暴落の憂き目に遭って退場、素直にアップルやグーグルを買って放置している方が遥かに報われているという向きは潜在的に可也居ると思う。

同会議ではメガバンク勢も「サービス顧客回帰」と述べていたが、金融商品をセールスする銀行も他では無料の投資等の商品に高額な販売手数料を当然の如く徴集し、覆面で潜入調査したリポート等を見るに金融知識に乏しい行員がリスキーな金融商品をホイホイ捌いている様子も窺える。

確かに金融業界は総じて顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いのは事実だが、インサイダー等露骨に顧客の犠牲が糧になるような部分はそろそろ襟を正す時期に来ているのではないか。


ドサクサ紛れの転嫁

本日の日経紙には「惑う欧州年金マネー」として欧米を中心とする世界の年金マネーが長引く低成長・低金利で積み立て不足が深刻化している旨が載っていたが、同じ欄には日本でも過去10年の運用利回りの平均が2%と、加入者への年金給付に必要な予定利回りを下回る逆鞘状態と運用不振が深刻化している旨も載っていた。

斯様な情勢だけに高利回りに飢えた基金があのAIJ投資顧問の餌食になってしまったりする問題など勃発するワケだが、直近では長野県建設業厚生年金基金がこのAIJ投資顧問で企業年金資産の大半を消失させた問題に続き、未公開株運用でも多額の損失を被った旨が明らかにされている。この件では信託銀行、投資顧問もその責務に可也の問題があることが露呈された一件であった。

そんな責任放棄とも取れる行為が指摘されている中にはソシエテジェネラル信託銀行もあったが、数々の損失事件で表面化するパリバと共に何故かこの手に顔を出す頻度がフランス系は高い。まあ、その辺はともかくも上記のようなAIJ問題を引き合いにして最近は厚生年金基金制度廃止方針も出ていたが、誰が見てもおかしな理論でこの表現は混同甚だしいが近年堂々とこうした表現が増えてきているのは一寸不気味でもある。


再生医療に光明

連休明け本日の各紙を飾ったのはやはり京都大学山中教授の2012年ノーベル生理学・医学賞受賞だろうか。この生理学・医学賞部門で日本人がノーベル賞を受賞するのは、1987年の利根川理化学研究所脳科学総合研究センター長以来25年ぶり、成果から僅かに6年で受賞というから快挙である。

そんなわけで本日の冴えない株式市場のなかでも、関連株の「タカラバイオ」など筆頭にして「コスモ・バイオ」、「プレシジョン・システム・サイエンス」、「メディネット」、「DNAチップ」、「医学生物研」等が揃ってストップ高、「テラ」や「免疫生物研」など他の関連も急騰するなど何処を見てもバイオ物一色の展開であった。

斯様に枯れた株式市場にはちょうど良い材料提供のお湿りとなったが、水面下でも再生医療に関連した研究は個々で行われており、私も知人の医師からその手の興味深い話を聞かされた事があっただけに「日本再生医療学会」あたりから注目はしていたのだが、勿論のこと医療への現実的な利用は漸く取っ掛かりの段階という他、いよいよ科学も神の領域に近づいてきたことで倫理の問題やらと課題は多い。

もう一つ近年の課題としては特許問題、直近ではアラミド繊維でディポンが韓国大手と影しい知的財産権訴訟を繰り広げていたが、今のところこのiPS細胞に関しては日本が一歩リードしている模様、競争が激しい分野だけにこの辺も今後如何に海外勢から保護しつつ制度整備の充実を図ってゆくかが焦点となろうか。


投資までもが空洞化

今日の日経紙全面広告にもあるように本日は十月四日ということでご存知「投資の日」。昨年はギリシャのデフォルト懸念などから欧米金融市場株が暴落しメガバンクなど主力が低迷していたのが記憶に新しいがあれから一年、誰もが感じているように欧米株の力強い回復をよそに日本市場の低迷ぶりが一際目立つ。

一年前当欄ではメガバンクや商社株が揃って年初来安値を更新している旨を書き、非鉄系も別子こと住友鉱がリーマンショック以来久しく見なかった4桁割れの崩落と書いたが、それから1年後の本日の市場を見ても依然ザラバで4桁割れがあったし、主力商社株も1年前の水準と変わらずかそれ以下に低迷しているものも少なくない。

ここまでの間に日米欧の3極追加金融緩和がありその辺も欧米の指数を更に一段高と押し上げる要因となったのだが、それでもロクに株価も上がらずそもそも売買代金が冷え切っているのが現状。円高、ビジネスモデルの行き詰まり、無策な党等々その理由は挙げればキリが無いが、それらによって結局は一般的なリターンの見返りがここ数年で殆ど消滅してしまったからであろう。長期投資も報われず、短期も高速取引の弊害?で昔ながらのディーラーから個人まで激減状態。

そんなワケで「貯蓄から投資へ」の掛け声虚しく先に書いたように投信からは資金流出著しく、離散した投資家は外国株や外国債、海外REITへと活路を見出しており、産業ではないがここでも空洞化が粛々と進行している。関係当局がどの程度この状況を憂慮しているかが問題だが、株式譲渡益課税など一つ取ってみても目先の課題はゴロゴロしておりこの辺から早急に見直すべきではないだろうか。


新日鉄住金発足

本日の株式市場は手掛り材料難のなか円高で4営業日の続落、主力の鉄鋼も国内証券の目標株価引き下げもあって、昨日の海外大手溶鉱炉閉鎖報道による需給改善思惑からの上げも一日天下の上げに終った格好となっている。

ところで鉄鋼ポストといえば、今週は周知の通り新日本製鉄と住友金属工業が合併して「新日鉄住金」が発足している。取引所よろしく世界では大型買収が次々と成約し、欧州やアジアでもこれらのメガ物台頭でかつて粗鋼生産世界一とした新日鉄とて国際競争力回復のための合併話は自然な成り行きだっただろう。

ちょうど先月の日経「私の履歴書」も新日本製鉄名誉会長の執筆で、最終回には「理想的な統合が実行され、真にナンバーワンの製鉄会社になると確信している。」と記してあったが、そんな期待を背負ってこの話が出た当時は新日鉄は買い気配から40円高と急騰して寄るなど大騒ぎになった記憶が新しいものの、その後は互いに持ち合いしていた株式下落で一転赤字予想を打ち出したり今やその株価は半値にも満たない惨状となっている。

株価よろしくおりしも逆風下の発足となり今後も棘の道は避けて通れないのは想像に難くない。粗鋼生産は世界二位に返り咲いたものの首位の半分程度でアジア大手とはほぼ同じ規模、原料価格の高騰が続けば当初の目論見も狂ってくるなど課題は多い。

そういったことでこれからの手腕に注目したいが、ともあれ同業界に限らず今回の合併が国内企業の合従連衡復調の起爆剤となるかどうか今後も大いに注目される。


集約の為の一枚岩

昨日の日経紙には、来年1月に合併して「日本取引所グループ」になる東京証券取引所と大阪証券取引所が、決済機能一本化で市場効率性を高め市場拡大に繋げる狙いで来夏をメドにデリバティブの決済業務を東証子会社の日本クリヤリング機構に集約する旨が載っていた。

集約といえば先月末にも総合取引所の設立に向け、各省が取引所首脳陣を集めて意見交換会を開いていたが、ここでは参加者が取引活性化のために取引口座や税制の一元化などを要望した模様。一元化が叶えば投資家は株や商品先物を一つの口座で取引出来る為に利便性が高まるのは当然だが、これには先の当欄でも書いたように税制面等も含めて課題は満載。

ところでそれ以前に商品勢が合流するか否かが焦点にはなっているものの、先の会合では当のTOCOM側からは現時点では何も決まっていないとの声が聞こえる。この会合後に発表されたTOCOMの4-9月の売買高は1,188万枚と16年ぶりの低水準となり、ピークの2003年と比べると実に7割強の減少である。

斯様な環境から考慮しても各々の方向性を確定させるのは焦眉の急ともいえようが、一元化もその前提の一枚岩が求められやはり各省、行政の本気度が今後注目されようか。


(不?)惑の四十

週末の日経紙には「国と国をつなぐのは一人一人。」と題し、田中角栄・周恩来の両首相が杯を交わす写真と共に日中国交正常化40周年を謳う全面広告が載っていた。

こんな広告を見るたびに哀しさというか仰々しさまで漂ってしまうのは、やはり直近の中国各地で起きた野蛮極まりない反日デモ暴動の影響だろうか。その被害額も機会損失まで入れると多大になるだろうが、先月末に予定されていた40周年記念式典まで中止にされてしまっている。

一方で、同じ日の同紙一面にはこんな反日デモ暴動等もあって「対中ビジネス減速」と題し、日本企業が出店を遅らせるなど対中投資を見直す動きを載せていた。こうした投資や生産活動停滞は中国景気を冷やしひいてはこの辺が諸外国の景気へスパイラルに跳ね返ってくる悪循環になる。近年の関係悪化は国力も絡んでいるのだろうが一刻も早い事態の収拾が望まれるところである。


On the rise&花魁

さて、早いもので長月もそろそろ終ろうとしているが、ご招待をいろいろ各方面から頂いた都合もあって今月のカルチャーものとしては「池坊展・いけばなの夜明け」、「アートアクアリウム展」など過日観てきた。

池坊といえばここ数年は春行事の幕開けで桜の季にご招待頂いていたのだが、今年は秋の展ということで楽しみにしていった通り果たして今回の展も素晴らしいものであった。やはり季節柄その作品もオーガスターの枯れ葉、蓮の花托や枯れ葉、栗といった秋ならではの素材が多用され、それらとモンステラ、胡蝶蘭、グロリオサなどの組み合わせが斬新であった。他にもヘリコニアに女郎花、鬼灯にキングプロティアなど縦横無尽な和洋の組み合わせの完成度は流石の一言に尽きる。

また青年部の「誰もが知っている私のSTAR!」なるスターをイメージしたコーナーではやはり「LADY GAGA」が多数目に付き、他にはやはりロンドン五輪で注目された田中理恵選手や男子競泳といった旬?なものをイメージした作品が並ぶなどこの辺も面白い企画であった。

一方、ダイナースクラブの「アートアクアリウム&ナイトアクアリウム展」も相変わらずなかなかのものであった。水族館や街中の専門店でも見たことがないオパールのような五色琉金や黒い琉金、出目金のアルビノ等々、珍しい種もさることながら無数の金魚を巨大な鉢に放流させている「花魁」、「華魚繚乱」、風流な「水中四季絵巻」等こちらも圧巻であった。

今年は共に近所での開催で纏めて展を味わうことも出来とても満足のゆくものであったが、双方やはりその見せ方にはセンスが光りまさに巧の技、次回にまた期待が膨らむものであった。