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2008年との相違点

さて、今週よく見かけたのは身近な品の原材料高騰の報か。コーヒー最大手のUCCホールディングスが3/10からの値上げを発表したが、既に年末からキーコーヒーやAGFは実質値上げを決めており業界最大手の同社の動向が注目されていた折果たしての値上げ、背景には新興国の需要拡大等でコーヒー豆国際相場は13年ぶりの高値にありコスト圧縮も限界にきているという。

この他にも1/26付け日経紙などは、カカオ豆の有力生産国が禁輸措置を取った為に、ロンドンのカカオ豆先物はおよそ30年ぶりの高値水準近くに達していると報じたほか、上記のコーヒーの件や食用油が軒並み上昇している件、その隣にはNY綿花が最高値更新とも載っていた。

よく値頃など前回の2008年商品バブルと比較されるが、前回の過剰流動性相場一辺倒と違って今回はこれに天候不順や新興国の需要増による逼迫が加わっており、構造的問題になりつつあるのは厄介だ。FAO(国連食糧農業機関)算出の主要食糧価格指数は既に年末に過去最高を更新、そういえば同機関の事務局長が「食料価格高騰が数年にわたり続いたら各国で政情不安を招くことになる」と警鐘を鳴らしているのが1/25付け日経紙一面にも載っていた。

この辺は最近のチュニジア等で既に見られ始めているが、我が国とて目下のところの円高で輸入価格抑制が利くのもあと僅かだろう。デフレの後遺症で製品価格への転嫁は困難を極める一方、各業界での値上げ交渉も難航から進んでいない中で今後も企業や末端の試練は想像に難くない。


小口化促進?

本日は街中を歩いていてふと思ったのだが、昨年から金や関連宝飾の買い取りしますという看板がやたらと目に付くようになっている。近年の金高騰で商機とみたのだろうが、それにしてもこんな事業していたか?というようなところまでこうした旨を謳っている。

買い取りといえば老舗の田中貴金属工業、貴金属ジュエリーリサイクルシステム「RE:TANAKA」の一年間の買い取り実績によれば回収した金の総量は3,646キロ、プラチナは450キロ、銀は1,592キロで取扱総量は5,688キロであった模様。うち最終月では最高の月間買い取り実績を記録したというが、鉱石換算では7万トン相当の貴金属資源を循環させた事になる。

さて、金地金等の買い取りといえば昨日の日経紙に出ていたが、2012年以降は税の申告漏れを防ぐ為に金やプラチナを売却する際に売り主名などを記載した支払い調書の作成がこれら扱い店に義務付けられる見通しという。

ここ近年、地金でも簿価の倍以上になっている向きも多く、これに伴い申告漏れも多額のものが出てきている現状での補足新制度なのだろうが、大手業者と中小では見方が異なり賛否両論。これで小口化の動きにも拍車が掛かろうが、費用対効果の問題もあるので一部は他の派生商品へのシフト等も出て来るのだろうか。


善意

本日の大手紙では新入学シーズンを前に、ランドセルの製造・出荷がピークを迎えている旨が報道されていた。そういえば過日、某百貨店でランドセル売り場を見る機会があったのだが、昔は無かったパステルカラーは言うに及ばずゴールドやシルバー等のメタリック系やらクロムハーツ風の装飾を施した物あり、またメーカーも他業種ブランド等多彩な顔ぶれが揃っていた。

さて、このランドセルといえば周知の通り、漫画「タイガーマスク」の主人公等を名乗って児童擁護施設等へランドセル始めとしてその他プレゼントを寄贈する動きが年末あたりから話題である。ざっとだが47都道府県でその数は約300件近くにもなり、ちなみにランドセルは350個以上にも上ったという。

外国の知人と電話していた時にこの話題になり、何故日本人は匿名ばかりなのか非常に奇異に映ると言われたが、諸外国に比べると各段に遅れている寄付文化、秘するが美徳とか寄付は恥ずかしいとかの風潮もあるのだろうが、一部では最も時代性が出ている表現とする向きも居る。

しかしこういった施設の子どもたちへの支援は本来であれば行政の仕事、ばら撒きと言われた子ども手当てはこういった施設には支給されない。政府も漸く同額の補助金を出すようにするなど重い腰を上げたが、厚生省を動かすパワーがあったということだ。一方では双方向の継続的交流が必要だとする問題提議もあるが、幅広い年代をうかがわせるその内容に善意のうねりはまだ心底の優しさが残っていると安堵感も。実体験が社会で共有されつつ文化も変わると思うし、これら問題も日本の寄付文化を発展させるに必要な議論であろうか。


Moral hazard

さて年末からにわかに出ていた問題であったが、本日の日経紙には急激な円高・ドル安で多額の損失が発生している為替デリバティブを保有する中小企業が約19,000社に上ることが、金融庁が銀行に実施した聞き取り調査で明らかになった旨が載っていた。

この商品、パワー・リバース・デュアル・カレンシー債とフラット為替といわれているが、前者には金融機関の期日前解約権がついており、これは地方自治体や財団まで幅広く販売された。フラット為替は所謂為替先物予約で主に輸入企業等に販売されたが、抱き合わせで売った部分やら横並びの思惑もあったのだろうが想像以上に多くの企業が契約していた。

年末にも一度触れたがこうした影響で破綻するパターンも続出しており、昨年は26件と一昨年の7件から急増、この動きを受けて直近ではメガバンク等は本業は健全だが損失が大きい企業対象に資金繰りを支える為の新規融資を実行する対応策を検討する流れになっている。

現況鑑みるにこうした措置も避けられないなと思う反面、気になったのは当該企業からは世論を味方に融資だけでなく損失負担を求める声が出ているという点。今でこそ契約企業からみれば想定外?の円高になったのだろうが、フラット為替など当初に享受した為替差益を棚に上げて損失分は補填してくれとは虫のいい話だ。

相場の損失に「特例」と称して行政が介入してどうこうしたらこれはもうモラルハザードの世界。この分野は今迄散々日本固有の事情で物議を醸し出してきたが、自己責任のあり方が問われる昨今ラインの引き方には十分注意すべきであろう。


さまざまな教訓

さて、今週はあの痛ましい阪神大震災から16年を迎え、神戸市など各地では恒例の追悼行事が営まれていた。被災地の様子は今でも鮮明に思い出すが、マーケット関係では当日でこそ事情を把握し切れていなかった株式市場は小幅安の模様眺めに終ったものの、翌週は週明けから1,000円以上も暴落、これがあの有名な事件となったベアリングス銀行破たんにおいて止めを刺すことにもなった。

さて、この株式暴落といえばもう一つ今週はまた、あのライブドア・ショックがあった日から5年を迎える。この取引所機能がストップしてしまった事件から新興市場は暴落しマザーズ指数など直前の2,800ポイントからズルズルと長い下げ続け255ポイントの安値にまで急落し、新興市場の不信、不審、不振がその辺からダラダラと長引いたものだ。

ただこれも本日の日経紙マーケット面にて「新興市場、売買代金が増加」と載っているように漸く昨年の秋口くらいから一変してきている。ちなみに昨日のジャスダック、マザーズ主要2市場の売買代金合計は664億円と昨年4月23日以来約9ヶ月ぶりの高水準となった。

これには日経平均の上昇に伴って個人の信用余力が大幅に改善されたり、またJASDAQ-TOP20ETFの承認等も刺激になったりで、それなりに素地が整っていたというのもあるが、出遅れ循環という側面もあり再び主力系に物色の矛先が向かってきた時のその資金離散具合も注視したい。この5年間である意味新陳代謝も進み、今後はその背景となった規制等も絡めてこの復活が第一幕だけで終了してしまうのかどうか真価が問われよう。


商品関連株明暗

本日の日経平均は小幅ながら三日続伸となったが、このところ個人の信用評価損率も大幅な改善を見せ個別の材料株乱舞が止まらない。一方で主力の構成銘柄の方だが、ここ最近はブリヂストンがしばしば日経平均値下がり寄与度のランキングに登場している。

これに関しては本日もTOCOM市場でのゴムの急騰に見られる通り、天然ゴム価格の上昇を受けて今後の営業利益は伸び悩むとして野村がレーティングの引き下げを行ったほか、日興も弱気レポートをリリース等の動きがある。

同様にキューピーも食用油の価格上昇が嫌気されて冴えない動きが続いており、また先週末の1/15付け日経紙マーケット欄の「まちかど」では、バレンタインデーを前にして明治HD・森永・モロゾフ等のチョコレート関連企業の株価が騰落率で日経平均を大きく下回る旨も出ていたが、この背景にあるというのがロンドン市場先物で昨年33年ぶりの高値を付けたココアの高騰に加えて砂糖の高騰も影響しているという。

これらの動きは総じてインフレ懸念や世界的な天候不順による商品価格の上昇が業績を圧迫するとみられているところに起因するが、こんな背景から一方でストップ高まで買われるなどの急騰を見せているのは穀物商品指数のETF。この件はまた後述するがこんな株価の二極化はなんとも不気味である。


新興国猛迫

昨日の日経紙には「新・新興国」であるラオスで、上場2銘柄の世界一小さな株式市場が発足した旨が載っていた。初の株式文化スタートということで初々しいが、同所はKRX(韓国取引所)が49%を出資して売買注文の付け合わせや清算・決済など主要システムを全て提供している韓流市場という。

ところで取引所といえば先にWFE(国際取引所連合)が発表した統計によると、2010年の株式売買代金ランキングはトップがニューヨーク証券取引所で2位が米ナスダックOMX、3位が上海証券取引所となっていた。

さて、東証はというと3位の上海に注いで4位、これで09年に続いてアジアでは2年連続で2位であった。その東証の次に位置しているのが新興市場として活況を呈している深セン証券取引所であるが、下半期ではこの深センにも東証は抜かれておりその猛迫ぶりは際立っている。

国際金融市場としての地盤沈下がこのところ燻ぶっている問題だが、近年はMBOの増加や親子上場も少しずつ解消してゆこうとする機運もあり、この辺は国の独自の事情という点もありそうだ。ただ一部特異なオペレーションによって本来の新陳代謝機能がそがれてしまって来た部分なども問題であり、この辺はやはり今後も課題となるだろう。


節約疲れ?

本日はいつもの通り道にある牛丼店の前を通った際にふと思い出したのだが、現在またもこの業界は値下げキャンペーンを展開中である。この値下げ競争に関しては昨年も何度か触れた事があるが、今年もまた同業他社に追随して各社が競走に走ったというのが経緯らしい。

ところで、先週の日経紙総合面には「消費薄明かり 収益も底入れ」として個人消費が少しずつ回復してきた旨が乗っていたが、確かにこの年末年始を通してはその商戦も一寸贅沢志向が一部戻ってきたような報道が目立っていた。

例えばクリスマスでは、帝国ホテルがイヴ、そして25日の両日が満室となったが、これは実に2005年以来5年ぶりの事。またリーガロイヤルホテルの40万円スイートルームプランもほぼ満杯となったり、ケーキは高額品から無くなり、ヘリによる夜間飛行サービスも完売状態。クリスマスが終れば年末年始のホテル滞在予約も順調に伸び、年が明ければ今度は三越の50万以上する御節に予約が入り、初売りでは1,850万の高額福袋に約400件の応募が集まったとか。

小売各社の収益底入れが鮮明になってきた中で、商品戦略を低価格路線から修正したローソンなどの企業の好調も目立つが、そんな現況を横目にこの業界は独自の消耗戦がまだ終焉を迎えない。昨年の春にも他のオプションがあったのではと消耗戦に疑問を呈したことがあったが、こうした混沌とした二極化は何やら違和感を覚える。


値上げマジック

さて今週は西のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が2月から入場料を値上げすると発表している。サービスの維持、向上が理由というが、テーマパークといえば東のオリエンタルランドも先にTDL、TDS共に個人チケット料金を新年度入りから値上げすることを発表している。

テーマパークといえば、利用者を飽きさせない為の絶えず新しいアトラクションの追加など巨額の設備投資が不可欠でありデフレ云々に関係なく段階的な値上げも当然といえるが、オリエンタルランドの場合、バブル崩壊後から5回にわたる値上げでもその都度入場者数や利用金額の増加を達成するマジックを魅せつけているのは流石といえる。

TDLとTDSの一日一人当たりの利用金額は約1万円というが、先月の日経紙記事では平均滞在時間は8時間半前後でこれを1時間に換算すると730円、平均滞在時間が約5時間の八景島シーバラダイスはこれが同900円弱で値上げの余地があるという解説が出ていた。

こうした時間割りのデータはなかなか面白いものもあるが、同様に収益構造なんぞを見てみると1時間あたりで原価が50分20秒、販売管理等が2分51秒、会社への利益還元部分が6分49秒、これらから給与や役員報酬という部分では12分33秒という具合であるとか。余談ながら、2009年に上場廃止の選択でマザーズ市場からその姿を消した冒頭のUSJの役員報酬は2億円超で業界では断然トップとなっているが、さてこちらはオリエンタルランド同様のマジックを見せられるかどうか見物である。


100%超希薄化を買う?

昨日は新型の増資手法規制を大幅緩和との報に触れたが、この増資といえばお決まりのファイナンス発表で株価急落という構図から、まだ事例が少ないとはいえ今年は年明けからファイナンス物の銘柄の動きが変わってきている。

直近でやはり目立ったのはJVC・ケンウッド・ホールディングスだろうか。ファイナンス観測が出て直後の寄付きでこそ軟調を強いられたものの、あと急速に切り返し翌日からは二日間連続のストップ高という離れ業をやってのけた。勿論、売り規制やJPモルガンのニュートラルからオーバーウエート評価で目標株価の引き上げ等の追い風もあったと思うが、それにしても破竹の勢いだった。

このケンウッド効果もあってか、前代未聞の現在の発行済み株式を上回るという100%超の希薄化増資を敢行するりそなHDまでが先週末にかけて急騰したのにはさすがに驚いたが、週明けはやはり裁定された。先導したケンウッドも所謂踏み一巡で結局本日はストップ安まで叩かれているが、先に上げが来たあたりに地合の変化も感じられる。

個別では動きが止まれば話題にも上らなくなるだろうが、執拗なメガバンク群の堅調相場も単なる大手証券が設定する投信の思惑だけではなさそうである。斯様に昨年のファイナンス組でも再騰の芽が出てきているモノありで、規制具合にも因るが腕に覚えのある個人には買いでも売りでもまた張り甲斐のある相場になってくるか。


rightsissue 創成期

さて、昨日の日経紙一面トップには金融庁が企業が既存の株主に新株を購入する権利を渡す新型の増資手法の規制を大幅に緩和する方針と出ていた。この件の対象になるのは「ライツ・イシュー」、既存の株主に新株予約権を無償で付与、増資に応じる向きは権利行使し現金を会社側に払い込み新株を得る。反対に応じたくない向きは予約権を売却し現金を得て権利落ちのカバーが出来るという構図。

このライツ・イシュー、かつてはみずほFGなどでこれに絡んだ思惑が出て昨年の5月にはこの辺に一度触れた事があったが、実際の実施例としてはちょうどこれを取り上げた時期のタカラレーベンの一件。この実施に関してはオーナーやその関連などの安定株主が約半数な為ある程度纏まった権利行使が予想されていたものの、蓋を開けてみたら約95%と予想以上?の転換比率となったのが一寸した話題になった経緯がある。

さて今回の緩和策ではディスクロルールをネットでも可能にしたり、新株予約権の証券会社による買い取り規制の緩和などを盛り込んでいるが、この証券会社に関してタカラレーベンの場合は所謂ノンコミットメント型であった。このタイプは今後どの程度の割合になるか判らないが、相対で増資決定可能というのも問題がないわけではない。

斯様にまだまだリクイディティーが限定的という問題や、引き受け等の課題もあるが、これらがどんどん台頭し、先の公募増資前のカラ売り規制など整備されればいよいよかつて横行した「公募増資利用型手法」などというお手軽裁定も自ずと今後は消えるのだろうなとふと思う。