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空港も市場も

さて当欄で6月に一度触れている通り、シンガポールでは昨日から、金やエネルギー関連品目などを扱うSMX(シンガポールマーカンタイル取引所)が取引開始となっている。

同所は、インド最大の商品取引所を運営するファイナンシャル・テクノロジーズの傘下だが、アジアの主要な金融・商業センターとしてのシンガポール特有の地位を最大限活用しようとする中で、SMX解説は正しい方向への段階の一つとCEOは述べている。

ところで、シンガポールといえば一方でこのSMX始動の前日の30日には、日本政府観光局が羽田空港の10月末の本格国際化を東南アジア諸国の旅行業界に売り込む座談会と商談会をこのシンガポーツにて開催した模様。また、今週月曜付け日経紙夕刊「あすへの話題」にはソウル仁川空港がハブ空港となっている現状で羽田ハブ化を打ち出した今後に注目したいとしているが、この羽田も成田ももう何年も前からハブ空港としての地位確立は悲願とはなっているもののいまだ叶わず。

今のこうした他のアジア諸国の勢いを見るに付け国内商品市場縮小の様子も鑑みると、昨年日経紙にて前に地銀総裁の福井氏が「日本に国際ハブ空港が育たない構図と似ている」とした一文を思い出さざるを得ない。


乗せ易い素材

本日の日経平均は急反落となっていたが、新興市場ではまたも虚偽の財務諸表を前提に新規上場や公募増資が行われていたということで上場廃止が決定したシニアコミュニケーションも連日の暴落を演じている。

怪しい増資といえば未上場ではあるが、先週にはバイオ燃料会社を謳う日本中油なる会社が架空増資の疑いとかで東京地検特捜部から家宅捜索を受けているとの報もあった。同社は中国最大の石油国営企業「中国石油グループ」の日本法人を謳っているが、近年中国を語ったファイナンス系の話がまた増殖しつつある。

実際に株式市場でも数年前から中国ビジネスへの進出をネタにしてインチキ相場を作った銘柄は山ほどあり、その後の枯れ?果てた姿も実に谷深しそのものであるが、現在も背後に中国資本介入やら裏上場の噂やらでどう見ても不自然な化けかたをした銘柄は依然多い。

他にもファンド系など国が国だけに当事者連中にしか真贋は解らず、煙に巻いているうちに練金が行われている疑いが濃厚だが、当局の挙げる基準ってどうなのだろう?まだまだ堂々と資本市場から資金を巻き上げる向きが数多横行しているが、これはおかしかったと騒ぐのはいつも可也時が過ぎてからのことである。


10/29付で三菱商事Fのネット取引事業を承継へ

ドットコモディティは、三菱商事フューチャーズとの間で、MCFのネット商品取引事業を事業譲渡の方法によりドットコモディティに承継することについて、事業譲渡契約を締結。

事業譲渡契約書の締結  2010年8月26日(木)
お客様の口座移管    2010年10月29日(金)日中立会終了後

▼ネット商品取引事業の承継に関するお知らせ=ドットコモディティ


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Big Mac指数事情

さて、先週末の日経紙「日経平均で読む株式市場」には欧米機関投資家が日本株に対する投資成果を本国通貨換算で評価している旨が出ていたが、これでフト思い浮かんだのがビッグマック指数の類。

このマクドナルドといえば先週まで店頭にはビッグマックを200円で販売する旨が謳ってあったが、こんな独自の値下げもあって各所ではこれらを基に1ドル約53円が購買力平価である旨が彼方此方散見される。しかし余談ながら六本木にアービーズがあった頃に比べてみると随分とビッグマックも安くなったものとしみじみ。

この1ドル約53円という相場が一人歩きしているが、いろいろフェアバリューで測ればユーロ圏での相場などから計算すればまだユーロ相場の評価はオーバーバリューというコトに。アジア圏では実質緩やかな切り上げとなった元など、その販売価格から同様に測れば可也のアンダーバリューという結果が出て来る。目下政府がどういった円高抑制策を取るか注目されているが、いろいろ参考にすべき点は多い。

しかし、マクドナルドが相次ぐ牛丼の値下げ戦争が繰り広げられているのは対岸の火事ではないとの危機感から独自の事情で起した措置から斯様な計算が横行するなら、やはりそれぞれの国で流通する同じ財・サービスを複数選択しバスケット物価指数で比較するオーソドックスなモノへ生真面目な向きは回帰してゆくのであろうか。


再建スピードの相違

月曜日はIPO事情に触れたが、IPOといえば先週末にかけて入ってきたニュースには米政府管理下で経営再建中のGMが、4-6月期まで2四半期連続黒字を確保した好業績を追い風にIPO申請に漕ぎ着け、年内にも上場実現し政府関与が薄まる見通しとの報があった。

同社は普通株を新規発行せずに、優先株だけで資金調達する方向とのことだが、焦点は早くもどの程度の値で資金回収出来るか納税者の損失割合等が逆算されている。さて、GMが米を代表する企業再建なら、一方で日本を代表する企業再建といえばJALであろうか。奇しくも直近ではこのJALも今月末までに提出する再生計画案にて、2012年末までに再上場する方針を盛り込む方針で検討していることが報道されている。

しかしながらこの両者、畑違いをトップに据えた点こそ同じであるものの、後ろ盾にした政府の姿勢や組織全体への危機感は可也相違しているようにも見える。一年ソコソコで再上場申請に漕ぎ着けたのに比べると、なんともJALのそれは多くの部分で見劣りするのは否めない。

日本では98年に破綻した日本長期信用銀行が、04年に東証一部に新生銀行として再上場した例があるが、思えばココも破綻前まで債務超過額が3,400億円とされていたものの、その後の資産査定では2兆円を上回っていた結果は、同様に数千億円の差異があったJALとそれこそ酷似していたなと。それは兎も角、ココのように再上場がはたして叶うのかどうかまたもサンプルケースとして注目される。


インカムゲインの罠

主要企業の悲鳴をヨソに依然として「注意深く見守りたい」と判で押したようなコメントを続ける政府の静観ぶりにドルは83円台、日経平均は9,000円を大きく割り込み催促?相場の様相とも言われているが、まあそんなお陰で久し振りにボラタイルで面白いマーケットになってきている。

そんな中でも株式市場では断続的な売り物が個人にコツコツ拾われている対象銘柄としては高配当銘柄が目立っている。昨日の日経紙にも世界景気の減速懸念が強まる中、投資家が景気敏感株から高配当利回り銘柄に資金を移動している旨が載っていたが、さて報われるか否かこの辺は賛否両論。

確かにここ最近の長期金利の低下を見るに配当利回りで見た株式の魅力が高まっているというのも理解出来るが、斜陽業界始め今までの高配当イメージから避難的に買った企業群では値下がりではるか喰われてしまうパターンが非常に多い。

株式配当利回りというのは教科書的には国債利回りよりも低いのが通常であり、これを以って現状の株式は割安という図式を挙げる向きも少なくないが、手垢銘柄は買い残もネックになり結果的にはツナギの利が最も効率がよかったなどと当初の思惑通りにはいかない例も。折しも今はマル信の売り残が10年ぶりの低水準にあるといい、この辺も考慮して行動したほうがよさそうか。


決算とその先

さて、直近のディスクロを基に「一刀両断」「一目瞭然」など既に更新されているが、金曜日の日経紙商品面にも上場組の出揃った4-6月期決算が載っていた。ここでは三社が黒字に浮上となったものの、先行きの不透明感はやはり拭えない旨が認めてあった。

「商取各社、収益多様化急ぐ」との見出しであったが、このタイトルはもう何年も前から業界紙始め彼方此方で言い尽くされてきたことであり、一部躍進している取引員を除き個別では時間の経過と共に時折出て来る苦肉の策?が都度追加されるといった具合の繰り返しが為されているようにも見えなくはない。

これらポストの株価は既に底練りの程度を過ぎており、一頃は万年低PBRが言われていたが消去法的な散発物色の時期を経て、今ではもうほぼその織り込みが理に適っているのは明らかであろうと思われる。

ここ近年の商品高で商機のみならずその株価も見せ場を作った商社ポストなどを引き合いにすれば本来は何れも相関あって然りなのだが、そんな波に乗り切れないというか一部逆行してしまっている環境は実に歯痒いというか残念なところである。


投資家育成プロジェクト「THE MASTERS」開始

ドットコモディティは、「勝てる投資家」を育成することを目的として、「本気で学びたい方」に「本気で応える」投資家育成アカデミー「THE MASTERS」を開始。講師は伊藤智洋氏、小次郎講師氏(手塚宏二氏)で第1期生を8月21日から9月30日の期間でそれぞれ10名・20名募集。

▼投資家育成プロジェクト「THE MASTERS」開始=ドットコモ


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安い・早い・緩い

さて昨日の日経紙一面には、2010年上半期に国内株式市場に新規上場した企業が12社にとどまるなどIPOの低迷が続く国内を尻目に、日本のベンチャー企業がアジアの証券取引所に相次ぎ上場する旨が載っていた。

この辺に関してはアニメのディー・エル・イーなど、先に当欄で台湾系証券会社が日本企業向けの説明会を行い、此処へ近く日本企業も上場する見通しとコメントした通りであるが、人気の「KOSDAQ」には先ず業界からはクリック証券、そして野菜ソムリエ講座のフードディスカバリーや、たまについ宅配を頼んでしまうサルバトーレ・クオモ・ジャパンなどが上場を検討している模様だ。

現在のところ同所に日本からは昨年上場のネット広告会社ネプロアイティ一社のみだが、機動性というかこの「KOSDAQ」など日本と比較するとやはり可也違う。上場審査に2年以上かかる日本と違って此処は半分以下の1年、基準も時価総額始め利益も純利益1億5千万程度でOK、そして手数料は約35分の1程度で済むワケだからそこへ目を付ける向きが多いのも当然か。

しかし新規上場数が06年には188社であった事を考えれば、上記の通り上半期で12社とはその激減ぶりは可也のもの。折しもこの日はNHKスペシャルで「アジア沸騰 急成長のタイに世界企業が殺到」としてここ近年の海外進出への変遷を特集していたが、日本の工場も空洞化問題に直面している。彼方此方で日本の空洞化が加速する可能性がある現状下、はたしてこの流れを止める事が出来るのかどうか市場間競争の行方が注目される。


短期化の背景

さて、決算シーズンで直近まで主要企業の決算発表が相次いでいたが、株価もサプライズの強弱で各々がそれらを織り込み思い思いの動きとなっている。

そんな中で今月に入ってから目立っていた記憶があるものの一つは、最近日経紙にもジャストミート等の広告が目に付くようになったパイロットコーポレーションか。第2四半期決算を好感して急伸、一気に年初来高値を更新するも後場からは一転高値から急落し一日で約2割のボラを演じ不気味な日足を描いた。

こんな乱高下銘柄が出て来る背景として、一説には信用取引や先物で短期売買する向きが増加傾向にあるのが一つの原因とも言われている。折しもFXの規制を嫌ってスキャルパー連中がこうした素地を作るのに一役買っているとの指摘もあり、証券各社もそれら当て込んでか短期系に焦点を絞っての手数料ディスカウントにも余念が無いのが現状。

こうした一方で、斯様な短期売買は市場の価格発見機能が弱まり、個別企業への長期投資が根付かないという構造的な問題も出て来るとの懸念も俄かに台頭している。ただこの辺は上記の通り参加者のキャラの変遷に加え、近年は個人が好む材料株への規制も容赦なくキツくなっているのが事実で、これら含め昨今の環境こそが参加者やそのスタイルを変えてしまったと言っても過言ではないだろう。


自立路線も何時まで

昨日は農業の規制緩和を受けて野村ホールディングスが農業ビジネスに参入する旨を書いたが、もう一つ、農政の重点転換から認可を得られる環境が整ったとの判断から東穀取が来春にも農林水産省にコメ先物の上場を再申請する方針を決めた模様との報もあった。

悲願の認可が下りれば72年ぶりの上場となるが、上記の通り農業政策転換でコメの流通価格の変動幅が大きくなる可能性がある為、価格変動リスクを抑えたい生産者や流通業者を市場に呼び込み低迷する売買の底上げを狙うという目論みらしい。

はたしてその来春の環境がどうなっているか想像するのも怖いがそれは兎も角、これに先駆けて先月から研究会を発足させるなどしていたワケだが、最近は業界団体の日本商品先物振興協会などが抜本的な再編策を突き付けるなど他取引所との統合を視野に入れた行動が焦点となる中、依然として粛々と自立路線を貫いているようにしか見えない。

この辺が先に「〜問題は東穀などに見られるように外野には形式的な振る舞いで済ます一方で内側からは一向に〜」とコメントする所以でもあるが、カンパニー制などという中途半端な提唱をする同所の自立路線を何時まで環境が容認してくれるかその成り行きを見たい。