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資本逃避

さて、先週の日経MJ紙では「日本の宝石、円安で富裕層が注目」と題し、先月中旬に開催されたオークションで6.11カラットのピンクダイヤが出品され、それがこれまでの国内オークションの落札最高額だった2017年の2億2500万のブルーダイヤの2倍以上となる5億3000万円で落札された旨の記事があった。
   
急速に進む円安を背景にドル建て取引が多い海外の富裕層からは円建て資産が割安に映り、日本円の価値低下に不安が高まるなか国内では円からのキャピタルフライトも見られるという。この辺は上記の宝石に限らず、これと同様に魅力的に映る現物資産として最近問い合わせが急増しているものに高級不動産物件もあるという。

冒頭の宝石も希少なタマが多く揃う日本だが、不動産もまた日本はクオリティがトップクラスな割に最近の円安も相俟って非常にリーズナブルに映るという。不動産の買い漁りといえば今週初めにも書いたバブル景気に沸いていた頃は米国の魂を買ったと揶揄された三菱地所によるロックフェラーセンター買収などが思い出されるが、時を経て今や日本は買う側から買われる側に成り下がっているあたり栄枯盛衰を感じ得ない。


親会社の上鞘に

さて、今週はじめにF1のターボ技術を量産車に初採用した新型AMG「SL43」を発売した独高級車大手メルセデス・ベンツだが、本日は同社がロシア市場から撤退する方針を明らかにしている。英ロールス・ロイスも先にロシア関連事業を全面停止しているが、ソ連崩壊と共に西側の資本や技術でもって近代化を進めてきたロシア自動車産業もこれで万事休すか。

ところで高級車といえば話変わって独ポルシェが先に独フランクフルト証券取引所に単独で新規上場を果たしている。発行済み株式のうち12.5%分が議決権のない優先株として売却された格好だが、欧州ではIPOがほぼ行われていないなかで公開価格は仮条件の上限に設定され初値はこれをも超えて時価総額は約780億ユーロと10兆円超えの大型上場となった。

ポルシェといえば独自動車大手フォルクスワーゲンの傘下にあるワケだが、子会社にあって親会社の12兆円に迫る時価総額で誕生を果たした同社は今月に入って既にこのフォルクスワーゲンの上鞘に躍り出ている。群雄割拠の自動車業界において開発に資金が幾らでも欲しいVWにとってはニンマリのIPOだっただろうが、EV開発など今後ますます熾烈を極めてゆくことになろうか。


コメ離れの一方で

さて、先週に農水省は2023年度の主食用米の需要量(23年7月~24年6月)が過去最低を更新するとの見通しを公表しているが、翌日の日経紙商品面でも「コメ離れ、需給均衡遠く」と題しコメ離れが止まらない旨が出ていた。確かにパンや麺類といった食の多様化により、日本のコメの消費量はかれこれ60年近く減り続けているというデータがある。

ただ上記の需要量見通しはそれとして、米穀機構の調査では2022年の一人当たり精米消費量は5ヵ月連続で前年を上回っているというデータもある。今月アタマにも当欄ではコメに触れていたが、小麦高騰や円安で値上げの影響を実感し主食をコメにスイッチするなどコメに着目する向きが増えて来ている証左だろうか。

コメといえばもう一つ、世界では日本食マーケットの拡大を背景にコメの引き合いも拡大傾向にありコメの輸出量も増加傾向にあるという。農産物といえば今年のアタマに輸出が悲願の政府目標1兆円を超えた旨を書いた事があったが、足元の急激な円安で日本のコメは世界から更に安価に映っておりこれを商機として活かせるかどうかが注目される。


31、32年前の光景

政府・日銀が約24年ぶりに大規模な円買い介入に踏み切ったのが先月の22日だが、周知の通りそこから再度ズルズルと反落しこの大規模介入からちょうど1ヵ月後の先週22日未明、1ドル152円手前にあった円が約2時間ほどの間に一気に144円台にまで急騰し政府が事実上市場介入に踏み切った動きを見せた。

今回は9月の大規模介入時と違い政府は介入の事実を公表していないが、本日の午前中も取引の薄い時間帯に再度150円目前まで戻した水準から一気に145円台にまで円高方向に急騰する動きが見られた。これまで日銀の介入で突っ込んだところは悉く絶好のドルの買い場になっているが、日銀が金融緩和を継続する一方で政府の大規模円買い介入実施という奇異な構図が変らぬうちはこうした動きもまだ続きそうか。

さて、上記の通りドル円相場は32年ぶりに1ドル150円の大台を割ってきたが、ほぼ同じく31年ぶりの水準を示現したのが先週発表された9月の消費者物価指数。輸入物価上昇の主因は資源高から今や円安に切り替わっており、価格転嫁が進まずに厳しい内需型の中小企業勢を中心に収益が圧迫されている。

思えば32年前、世はイタメシブームとなりこの時にティラミスが爆発的に流行っていたのを思い出す。そして31年前といえば今のZ世代はもはや知らないジュリアナ東京がウォーターフロント地区に華々しくオープンしたのも思い出すが、円相場や経済指標は同水準とはいえ名目賃金の上昇率一つとっても今とは比べ物にならず当時を思い出すに今の寒々しい現状がより浮き彫りになるとつくづく。


2年ぶりの経済効果

さて、全国旅行支援がスタートし初の先週末は各地の宿泊施設が多くの利用客で賑わった模様。今月はこれと並行して様々な支援策がスタートしており全国旅行支援と日を同じくして静岡県ではプレミアム付食事券の販売を開始、翌12日には大阪府がプレミアム食事券の第一期受付を開始している。

そして本日からは東京都の全国旅行支援「ただいま東京プラス」がいよいよスタートとなるが、更に26日から約2年ぶりにプレミアム付き食事券の販売も開始される。また翌27日からは新潟県もプレミアム付食事券の一般販売を廃止するなど全国旅行支援にGoToイートキャンペーンも加わる事で各業界の期待は大きく、先に書いたように大和総研では波及効果と合せ約8300億円の経済効果が見込めるとの試算もある。

前回のGoToシリーズはそれぞれ感染拡大を助長しているとの批判も浴びて事実上頓挫してしまったような格好になってしまっただけに今回のキャンペーンに臨む思いも一入だが、制度終了時に見込まれるであろう駆け込み需要や反動減を見据えソフトランディングさせる措置などその対応なども今後の課題となってこようか。


iDeCoも変更?

さて、政府は公的年金に上乗せ出来るイデコ・iDeCo(個人型確定拠出型年金)の加入対象年齢を現在の64歳以下から、69歳以下まで拡大する方向で検討に入った旨が本日は報じられている。投資から貯蓄への道筋作りということで先にNISAの恒久化が報じられていたが、「資産倍増プラン」の柱に位置付けるという。

今年の4月から公的年金の受け取り時期が最大で75歳まで先送り出来るようになったが、その翌月5月から上記の通りこのイデコ・iDeCoも元々の60歳までの加入年齢が65歳までに拡大され、今月からは企業型確定拠出年金に加入している人でも原則イデコ・iDeCoに加入出来るようになっているなど各所でハードルは下がりつつあった。

今回は加入年齢について更なる一段の拡大というものだが、そもそもが少子高齢化で公的年金の給付水準が先細りする事が予測される背景があり、ならば国民年金の加入期間も延ばして然るべきとも思うがその辺は兎も角、平均寿命も延び老齢年金の受給開始年齢を過ぎても働く向きが過半を占めつつある現状下でのポジティブな幅の広がりは期待出来るだろうか。


商慣習に変化

昨日の日経紙一面には「政策保有株売却2.3兆円」と題し、2022年3月期の政策保有株の売却額は前の期より約6000億円多い2兆3000億円となり開示が始まったここ4年間で最大となるなど上場企業の持ち合い株の解消が進んでいる旨が出ていた。東証再編前に当欄では上場基準も睨んで政策保有株の売却要請も進むと思われると書いていたが、果たしてこれらが後押しした格好となったか。

ちょうど昨年の今頃には政策保有株の減少が著しい三菱商事を取り上げた際に、これまであまり見られなかったAGCやキリンなど金曜会メンバーの株売却が目に付いた旨を書いていたが、三菱グループの中核とされる三菱グループの御三家の一角の三菱重工も三菱グループ中心に政策保有株を減らしている旨が同紙に書かれていた。

また政策保有株として多くの企業に持たれている割合が高いことで有名?なリクルートホールディングスも保有比率の高かった企業が手放す動きが継続している。ともあれ特異な商慣習ともいわれた持ち合いの動きは今なおあるものの、昨日も取り上げた東証再編における流通株式の基準変更等にも盛り込まれている通り持ち合いの合理性が問われるなか投資家目線の経営改革は粛々と推進されようか。


横一列のパフォーマンス

週明けの日経平均はFRBが積極的な金融引き締めを継続するとの警戒感から反落スタートとなったが、東証が市場再編を4月からはや半年が経過している。上場基準を満たさぬままに経過措置として新市場に上場した549社の所謂暫定組のその後は約1割が企業価値向上の取り組みを進め基準超えとなったものの、暫定組全体では約6割が時価総額を減らしている旨が先の日経紙に書かれていた。

この暫定組、当初より経過措置の期限を決めておらず関係者からは旧一部との違いも見いだせないとの声が多く挙がっていたが、その株価の方も勢いを欠き毎日日経紙に掲載されているプライム市場指数もスタンダード市場指数等と共に再編直前の4月1日を基準日とした1000に絡んで一進一退の推移と冴えない。

ところで株価指数といえばTOPIXも算出方法を見直し、プライム市場の205社とスタンダード市場の288社の計493社の構成比率を引き下げると先に東証が発表している。但しこちらの方も、23年10月の再評価で基準をクリアすれば同指数への採用を継続するという事になっておりこれまた猶予が与えられている。

TOPIXもまた上記のプライム市場指数等と比較するに殆ど変らぬパフォーマンスとなっており、TOPIX100とかROEで選りすぐったJPX400然りでこちらもここ10年間でパフォーマンスにほぼ差異は無くどれも団栗の背比べ状態。指数構成の椅子に座り続ける企業努力も大切だが、MSCIのような市場代表性を備えた真に使える指数への道はまだまだ遠いか。


依存体質

本日の日経紙金融経済面には全銀協が115行を対象に仕組み債等に絡む実態調査を開始した旨が出ていたが、デリバティブを駆使し国債や社債より高い利回りが出るよう設計した金融商品の所謂この仕組み債、既に三井住友銀行は販売を停止し楽天証券も先月末で全ての仕組み債の取り扱いを停止、更に今月から横浜銀行や京都銀行など6地銀・グループも仕組み債の個人販売を全面的に停止している。

この背景には先に金融庁が2022事務年度の重点施策をまとめた金融行政方針を発表しているが、ここで仕組み債が名指しされ販売する金融機関にその販売状況をヒアリングする旨の明記があった点などがあるようだ。証券子会社などを持つ地銀グループの販売構成を調べると実に約4分の1にあたる23%が仕組み債であったという。

仕組み債といえば10年以上も前からリーマン・ショック等の相場急変が起こる度に有名私大や地方自治体の損失などその都度問題が表面化してきた商品で、その変動の激しさ故に関西の某地方自治体など相場急変による値洗い損の拡大で訴訟を起こしたものの、アベノミクスの波で値洗いが一気に改善し訴訟が取り下げられたというヤレヤレな話もあったのを思い出す。

いずれにしろ直近では野村や大和など大手証券まで足並みが揃った感のあるこの度の動きで、喉元過ぎればでこうした金融商品に依存してきた向きには死活問題というところも出て来よう。ただ金融庁としても「貯蓄から投資」が喧伝されるなか、こうした流れが削がれるような金融商品の問題はマズイというのは想像に難くなくそういった意味でも今回の本気度が窺える。


争奪戦3年

さて、先月は三つ巴、いや四つ巴となったオイシックスによるシダックスへのTOBを取り上げたが、本日の日経紙社説には「企業は敵対的買収から逃げず価値向上を」と題し相手企業の取締役会から賛成を得ないままTOBを始める敵対的買収が経営戦略の一つとして定着してきた旨の記事が書かれていた。

この辺に絡んでは直近では先月末に文具メーカーのぺんてるに敵対的買収を仕掛けた東証プライム上場のコクヨが、買収方針を取り下げて保有するぺんてる株の全株を同業のプラスに売却する旨が報じられている。当欄で「文具争奪戦」と題しこのTOBを取り上げたのが3年前、最終的にホワイトナイトと一緒になる格好で治まったようだ。

こんな買収劇の伏線だったワケではないだろうが、敵対的買収が報じられる数カ月前の某バラエティー番組ではコクヨにぺんてる、それにプラスの社員が集まり各社其々の自慢の商品を持ち寄り随所でぺんてるの海外網を羨ましがる光景が繰り広げられていた。その辺は兎も角も、この度の決着で縮小傾向にある国内文具市場の構図がまた変わりゆくか否か引き続き注目しておきたい。


内外経済効果

周知の通り、政府は本日より旅行代金を一部補助する観光需要喚起策である全国旅行支援をスタートさせた。東京が少し遅れてスタートするため46道府県がスタートし12月下旬までとするが、具体的な日付は各都道府県の判断に委ねる模様。前回のGoToトラベルは緊急事態宣言で腰を折られた格好になったが、コロナ禍で打撃を受けた経済の再生へ起爆剤としたい考えだ。

早くも予算上限に達し受付を終了した自治体も出始めたこの旅行支援だが、GoToトラベル以来、約1年10か月ぶりとなる。1人あたり2万円の割引が出来た2年前のGoToトラベルと比較するに今回は1泊最大1万円一寸と数字では見劣り感がするも、高額な宿泊施設に人気が集中する傾向にあった前回から今回は割りを食ってしまったリーズナブルな宿への経済効果にも繋がるか。

大和総研ではこの全国旅行支援の経済効果に関して波及効果と合せ約8300億円と試算しているがもう一つ、水際対策の方でも本日より日本への入国者数上限が撤廃されている。ツアーに限って来た観光が個人旅行も解禁となり、元々ビザが免除されていた国からの短期滞在者のビザ取得も不要となるなど日本への渡航条件が大幅に緩和されることとなる。

G7並みに水際対策を緩和すると首相がロンドンで講演したのが5月、漸く開国の運びとなった感だが首相はインバウンド消費について年間5兆円を目指す考えを示している。中国勢のゼロコロナの影響が不透明だが、インバウンドの回復が仮に5割程度になるとしても全国旅行支援と合せて約4兆円程度との試算があるだけになかなかの目標ともいえるが、何れにせよここは円安のメリットを引き出す商機を最大限に生かしたいものである。


ノーベル賞ウィーク

さて、今週は毎年恒例のノーベル賞ウィーク。今年もはやこの季節になったかという想いだが、先ず皮切りとなった月曜日の生理学・医学賞はネアンデルタール人のDNA解読に成功した沖縄科学技術大学院大学の客員教授が授与された。また火曜日の物理学賞には量子力学の発展に貢献した欧米の3人の研究者に、水曜日の化学賞は「クイックケミストリー」と呼ばれる分野における功績等が評価された欧米の3人に授与された。

これら生理学・医学賞、物理学賞、化学賞共にそれぞれ日本人の候補者も挙がり、株式市場ではそれら関連銘柄にも物色の矛先が向かう場面もあったものの、果たしてここまで日本人受賞者はなし。来週月曜日は経済学賞でこちらは米プリンストン大教授の日本人が候補に挙がっているが、6部門で唯一此処だけが日本人受賞者ゼロの状況が続いている最難関だけに今年の発表が引き続き気になる。

とはいえその前にやはり気になるのは本日の文学賞だろうか?    これはもう言わずもがな、かれこれ10年以上も村上春樹氏が有力候補に挙げられている。これを書いている時点ではまだ発表前だが、世のハルキストたちがひたすら期待しては結果に落胆を繰り返すさまはこのシーズンの風物詩?になりつつある。

英のブックメーカーの予想で村上氏は昨年から順位を下げており、日本の株式市場でもこれに照準を合せて毎度賑わっていた関連銘柄の三洋堂や文教堂は全く動意を見せず、丸善HDも先週に年初来安値を付け低迷するなど関連株は既に賞味期限切れの様相だがこれらが枯れ木に花となるかどうか先ずは数時間後の発表に注目したい。