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政府銘柄の蜜月

さて、東芝の株主総会を巡っては当欄でも春先に株主側要求による異例の臨時株主総会について触れていたが、今月の株主総会を目前に控えた先週に昨年の定時株主総会が東芝と経産省とが連携しアクティビストの提案を妨げようとしたなど総会運営について調査した第三者の弁護士から「クロ」判定の調査報告書を受け取ったとの発表が為された。

早速本日の午後には東芝の取締役会議長が記者会見にて陳謝、株主の信認を得るのは難しいとして報告書で関った社外取締役及び執行役を退任させる旨を報告しているが、大株主だった米ハーバード大学や3Dインベストメント・パートナーズなどに経産省側が接触し無言の圧力で議決権行使判断に一定の影響を与えたというから何とも闇が深い。

皮肉?にもこのニュースでザワついた11日には東証が上場企業の経営に関するルールを纏めたコーポレート・ガバナンス・コードの改訂版を施行している。確かに東芝といえば原発から量子技術に至るまで或る意味国の安全保障の一翼を担っている面もある事で他の一般的な上場企業とは異なる顔を持つ特異性はあるものの、官による企業への関与が何所まで許容されるのか、企業統治改革そのものの信頼に関るだけにこの辺も明確なところが求められようか。


カップヌードルのシールが・・

さて、先週はTVでも取り上げられるなど一寸世間がワザついたニュース?に日清食品がカップヌードルの蓋留めシールを廃止にするという発表をした件があった。私の周りにはそもそもこのシールの存在自体を知らなかった者も居たが、それは兎も角もちょうどこの発表と同じ日にはプラスチック廃棄物削減をめざすプラスチック資源循環促進法が参院本会議で可決されている。

上記のカップヌードルの件もこれの廃止でプラスチック使用量を削減するのが目的というが、この新法成立でこれまで小売店や飲食店が無償で提供してきた使い捨てのストローやスプーンについては、レジ袋よろしく有料にしたり代替素材へ転換したりする対応を義務化する事が出来るようになりコンビニや外食産業は其々が対応を迫られる事になる。

斯様にプラスチック廃棄物の削減気運が盛り上がっているが、あるデータではプラスチック廃棄物の排出量の割合ではレジ袋が約1.7%、また今回の新法で対象となった使い捨てスプーンやストローに至っては1%にも満たない0.17%という。そんなワケでこれらが有料化されたとしてもプラスチック問題解決に直結する事も無いが要は問題意識の啓蒙だろうか。

実際に早いものでプラスチック製レジ袋の有料化から来月で1年が経つが、この啓蒙が浸透してきたのかどうか最近ではエコバッグなども普及しレジ袋を辞退する向きはコンビニで7割程度に、またスーパーでは8割程度にものぼっているという記事も見たがさて今回も同様の動きが広がるかどうか一先ず注目である。


物価上昇の良し悪し

一昨日の日経紙・グローバル市場では「銅価1万ドル時代」と題し、代表的な非鉄金属である銅の国際価格がLME(ロンドン金属取引所)の先物価格で先月1万ドル超となり2011年2月に記録した史上最高値を10年ぶりに更新したが、脱炭素の気運から世界のグリーン革命を背景にして一時的な高値示現では無いとする見方が書かれていた。

世界需要の半分を占めるようになった中国の需要が前回の波なら、今回の波はその需要に匹敵か上回る可能性があるグリーン革命によるものという。ところで銅が高値の波を作る度に起こる社会現象として銅合金製品を狙った盗難事件多発というものがあるが、果たして今回も度々TVや紙面を賑わす盗難劇がぼちぼち出て来るのだろうか?

その辺は兎も角、直近では牛肉がこの中国需要の波に呑み込まれ国内外食企業や中小のスーパーなど急遽対応を余儀なくされている模様だが、気になるのは斯様に脱炭素と共に世界景気回復の流れから冒頭の銅はもとより原油に穀物、木材から上記の牛肉などの商品価格が軒並み急騰している点か。

既に食用油は今年に入って大豆相場の高騰を背景に一部で値上げが3回目となり、大豆に連れ高となった小麦の影響で小麦粉やパスタなども一部値上げが発表されている。原料価格高騰が価格改定を上回るケースで企業が更なるコスト高の転嫁を進めれば上昇圧力も自ずと強まる事になるが、物価上昇もロケーションで良し悪しが二分されるだけにアフターコロナに向けこの辺も注視しておきたい。


Vで蒸し返し

さて、4月には松山英樹氏がゴルフ4大メジャーのマスターズ・トーナメントで日本人初の優勝を飾ったのが記憶に新しいが、この興奮冷めやらぬままこれに続いて今度は女子ゴルフのメジャー、最高峰ともいわれる全米女子オープンで周知の通り笹生優花氏が大会史上最年少タイでの優勝を成し遂げている。

松山氏のマスターズ・トーナメントからまだそう日が経っていないものの、株式市場ではまたぞろ関連銘柄に対する蒸し返しの動きが一斉に出て昨日は前回ストップ高となったシャフト製造大手グラファイトデザインはじめゴルフウェアのデサント、ゴルフ場運営の東急不動産HD、またゴルフ場予約サイト運営のゴルフダイジェスト・オンラインも一時10%の大幅高を演じていた。

本日も日経平均が反落となる中、上記のデサントは続伸し年初来高値を更新、また東急不動産HDも続伸し年初来高値を更新している。前回も書いたが息の長い相場へ発展する可能性は望むべくもないご祝儀モノとはいえ、このコロナ禍で蜜にならずプレーの出来るゴルフ人気は実際高まっている模様で蒸し返しの持続性もこの辺が背景になっている部分が大きいか。


To the moon

さて、今年2月にはSNSで連携した個人の共闘買いからひと月で約20倍にまで大化けしたゲームストップ株が米証券ロビンフッドまで巻き込んでいろいろとマーケットをザワつかせたが、先週は映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングスが同様な共闘買いで乱高下し、上記のゲームストップ株も蒸し返しの動きで約2か月半ぶりの高値まで再度急騰したのが話題になっていた。

なにせ今月に入ってから1日は23%高、その翌日2日に至ってはサーキットブレイカー発動を交え再開後もなお急騰を続け終値は95%高と暴騰し上場来の高値を更新、この日だけでも倍増だがかれこれ年初来ではおよそ30倍もの大化けを演じている。この株高に乗じて最大で1155万株を売り出す増資計画の発表で3日はさすがに一服となったが、1日の売買代金があのテスラをも凌ぐ日があるなど熱狂冷めやらぬといった感だ。

上記のようなこの手の銘柄は米個人投資家の間では、何所までも値上がりする意を込めるTo the Moonの合言葉と共にMemestock(ミームストック)なる新語で扱われている模様だが、暗号資産が下落し足元でダウ工業株30種平均も史上最高値まで指呼の間と迫っているものの小動きの展開が続き短期のホットマネーは虎視眈々と次のミーム銘柄を狙っている。

日本のイナゴ勢?とは違って最近の彼らはオプション市場も利用してディープアウトを買い上げたりプットでヘッジしたりとデリバティブを駆使しているだけに自ずとVIXなどへの影響力も高まって来るが、これが顕著になればひいては全体へ及ぼす影響度も高くなってくる可能性もあるだけにこの辺も注視しておきたいところか。


白紙小切手?

さて、前回当欄でSPAC(特別買収目的会社)について取り上げたのは4月半ばのことでその際の末尾にて日本では未だ解禁されていないと書いていたが、先月末の日経紙総合面では「日本版SPAC解禁検討」と題し政府が米国で広がったこのSPACの解禁を検討、今月に閣議決定する成長戦略に明記する旨が出ていた。

これが先行している米では今年1月から3月で既に調達額は750億ドルに達し、IPO全体の実に70%以上をSPACが占めるなどラッシュの様相を呈している。直近でもSPACを通じた上場で過去最大といわれるシンガポールの配車大手グラブが今年中に米ナスダックに上場する見込みだが、アジアでもそのシンガポールが上場ルール案を公表、香港も年内には解禁との一部報道がある。

とはいえ先行した米でも最近は会計慣行にメスが入りトーンダウンしている模様で斯様にSPACも賛否両論喧しい。雑な言い方になるがいってみれば福袋のようなモノで、○○円相当の中身とのフレコで並んではいるものの開けて見るまで、つまり買収決定まで当局の財務諸表チェックが出来ないだけに事前にミスリードがあった場合など袋を開けた時のリスクは考慮しなければならない。

日本ではかつて解禁を検討したもののユニコーン級のタマの少なさなどから結局は見送りになった経緯があるが、今回は政府内で産業の新陳代謝が活発になるとの期待があり2022年以降の解禁を模索としている。賛否両論あるものの、この件が解禁となった暁には長らくスタートアップ企業の調達の課題であった選択肢の多様化が一歩前進するという事になるのは確かなだけに注目しておきたい。


廃材のバリュー

さて、今日は欲しかった洋菓子の再販通知が来た。と言ってもこれは製品を成型する際に出た端の部分を売る所謂ジャンクモノだが、この製品自体大量に作っているワケではないのでこれがなかなか出て来ず忘れた頃に出ても直ぐに売り切れになってしまうシロモノ。一頃の大量消費の頃は廃棄されてしまっていた物でも、SDGsな最近はこれら無駄無くという気運になってきている。

ところで先の日曜日の日経紙でもカカオの廃材から作ったチョコなど菓子のプロジェクトで地球の環境問題を考える旨の特集が載っていたが、文中の食レポ?は「かなりクセのある苦味」、「ザラリとした舌触り」、「粉っぽい食感」とどれも微妙な言い回しが気になる。それでいて値段もジャンクならまだしも、高級ビーントゥバーの逸品とほぼ同じ札がついているのも個人的には正直釈然としないところ。

食に限らずこうした気運から捨てられていたビニール傘を使ったバックなどの製品の類もたまにTVで紹介されているのを見るが、もともとゴミだったものを現代アートなら兎も角もいくらリメイクの手間を挟むとはいえ数万円の札を見るに何ともという感。フェアトレードの類の品にしても然り各々で賛否が分かれようか。


脱日銀トレード

本日の日経紙マーケット面には「日銀、ETF購入ゼロ」と題し、5月最終日の昨日も買い入れを見送り結局先月は買い入れに動かなかった旨が載っていた。月間ベースでは2013年春の異次元金融緩和開始後で初めてゼロとなった格好だが、最後に観測されたのが4月の21日にTOPIXが大幅続落し1900ポイントを割った時の701億円購入というから確かに久しく鳴りを潜めている。

周知の通り日銀は3月の金融政策決定会合で年6兆円程度としてきたETF購入目安を撤廃の政策修正を表明していたが、上記の購入はこの表明以降初の事であったもののこれまでの一定の下落率というような単純推測では肩透かしに遭い、マーケット関係者の間では悉くコレと言った法則?で測れなくなったのは否定できないところだ。

ところで日銀といえば先に発表された2020年度の決算では保有するこのETFの時価から簿価を差し引いた含み益は21年3月末時点で15兆4444億円と過去最高を記録、実に前年の50倍に急拡大している。財務体質が一層株価に左右され易くなっている背景を鑑み新法則?探りもよいが購入論議と並行し出口政策も自ずと意識されて来ようか。


脱炭素気運

さて、先週は米エクソンモービルが開いた株主総会で気候変動対策の強化を求めアクティビストが推薦した取締役候補が選任されるに至った。またオランダでは同じく石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルに対し裁判所が大幅な二酸化炭素の排出削減を命じる判決を言い渡すなど脱炭素に向け世界的な企業に厳しい要求が相次いでいる。

この辺は先週金曜の日経紙社説にも「市場の力を脱炭素社会への移行に生かせ」と題し、上記の例を挙げ日本企業にとっても自社の環境関連の取り組みについて積極的に情報を発信する必要があると書かれていたが、直近では伊藤忠商事がインドネシアで建設中の石炭火力発電所について契約満了を待たず売却交渉を模索と石炭火力から完全撤退の方針を固めた事が明らかになっている。

この手の長期売電などの美味しい案件からの撤退は通常で考えれば理解に苦しむが、脱炭素は自然になるわけも無くIOC会長の言葉よろしく?実現する為には企業側も犠牲を払わなければならない。経産省など太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した事の証明書を公的機関が発行、価格も安くし一般企業が買えるようにする新たな市場創設取組を打ち出しているがまさに世界規模で気運が高まってきている。


中国市場の踏み絵

さて今週はファーストリテイリング傘下のユニクロが、同社製品の生産過程で強制労働が確認された事実はないとするコメントを発表していたが、これは同社のシャツが中国の新疆ウイグル自治区産の綿製品に対する禁輸命令に違反した可能性があるとして米国が輸入差し止め措置を取った事に対するもの。

新疆綿を巡っては同じファストファッション業界のH&Mが新疆ウイグル自治区に工場を持つ企業との取引停止を表明、これが引き金となってあっという間に中国のECから締め出された経緯があっただけにユニクロ同様に衣料品にこの新疆綿を使用している良品計画なども毅然とした使用中止宣言には逡巡している感が受け取れる。

一方でカゴメは今年中に新疆ウイグル自治区で生産された加工品を製品に使用するのを止める事を先月に表明、また日経紙の取材ではミズノやワールドにコックスなど3社も新疆綿の使用を止める事を表明している。これら以外の小売り各社も続々とサプライチェーンの生産履歴の確認の厳格化を打ち出している。

これらの各対応の背景には中国市場への依存度も大きく関係しているのは想像に難くないが、近年の中国市場の特性として政府と国民が外交関係で一体化し連動して動いている感が強い。ESG喧しい昨今、企業は特にSの対応により重要度が増しており中国が成長のドライバーとなる企業には迎合するか切り捨てかまるで踏み絵のような難題だが、何れにせよこのウイグル問題も一つの試金石になるか。


強弱材料併存

さて、今月に入ってから早々に金価格は1800ドルを回復し先週も一段と水準を切り上げはや1900ドルも指呼の間となっているが、先週末の日経紙商品面にも「金ETF、資金流入超に」と題し世界の金ETFが保有する金現物の残高が5月に入り2週間連続で増加し第2週の流入超幅は13.1トンと1月8日以来約4か月ぶりの高水準となった旨が出ていた。

とはいえこの金といえば米の長期金利上昇等を背景としてWGCによれば今年1月〜3月は95億ドルの流出超過となり、四半期では13年4月〜6月以来の大幅流出を演じていた。これが景気回復期待等を背景に市場が予想する将来の期待インフレ率が上昇、その結果名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利が低下し金利が付かない逆相関関係の金には追い風となっている構図。

ただ上記の約1兆円にも及ぶ流出超過の裏で金嗜好の強いインドの輸入関税引き下げや、双璧である中国の春節が需要を喚起するなどの背景からアジアでは残高が増加、欧米投資家の売りにこれらが受け皿として効いた格好といえるか。上記のように強弱材料が併存している下で方向性は見極め辛いものの、何れにせよ環境に左右され難い実需の買いが下支えとして効いている構図には変わりないか。


面従腹背

緊急事態宣言の延長がほぼ確実視されるなか昨日は一般社団法人日本映画製作者連盟が映画館再開の要望について新たな声明文を発表していた。これまで休業の根拠について説明を求めても納得のいく合理的な説明が得られていない中、クラスター発生のエビデンスも無く「なぜ映画館が」と今回の措置に対する平等性への疑問も生じ、また投資資金の回収が絶たれるなど休業が及ぼす甚大な被害の可能性を謳っている。

この辺は先週も当欄で「場当たり要請?」と題して書いた通り目安となる明確なエビデンス無き線引きの曖昧さがストレスを増幅させており、これに先駆けてライブエンタメの4団体も要請撤廃を求めた声明文を発表していたが、何れも政府・自治体の連携も覚束無く納得のゆく回答が得られていないところが不平等感を煽っている部分が大きい。

同じく先に取り上げた百貨店も高級品の解釈を巡って東京都と鬩ぎ合いが続いており、これまた担当者サイドが豪奢品とは具体的に何かと都へ説明を求めたが曖昧な返答にとどまったという。コロナ禍でも富裕層のブランド品への消費意欲は旺盛で百貨店に取ってもこのセクターは売り上げの要、意地になって押しつけ要請を継続させれば何れの業種も面従腹背でいたちごっこの構図になってくるか。