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代替肉とESG

NYは大幅続落となったものの本日の日経平均は円安効果に助けられて小反発、そんな中個別では本日続落となったものの大塚ホールディングスが連結業績上振れ着地から一昨日急騰し一時4,000円台に乗せてきた。同社株といえば先月の日経紙・市場点描でも代替肉関連株への関心が高まっている旨で、大豆ミートを手掛ける不二製油ホールディングスと共に肉を使わないソーセージを販売する同社も取り上げられていた。

この代替肉といえば斯様な上場企業でなくとも埼玉のベンチャー企業グリーンカルチャーなど先月から代替肉焼売の販売を開始しているが、米でナスダックに新規上場した代替肉のビヨンド・ミートが株価大化けと共に話題を振り撒いているあたりから昨今は欧米の代替肉ブームの波が各所で波及しつつある。

当欄ではこれまで度々ESGについて触れてきたが、リアル肉に比べて飼料による地球温暖化への懸念等々環境への負担が少ないという事で環境や企業統治の観点から上記の企業群もESG投資のカテゴリーに括られるという事になるが、各所でこうしたサステナブルを意識する動きが加速しつつあると切に感じる。


思惑外れ

本日は日本郵政グループがかんぽ生命保険による不正販売問題に絡んで約3千万件の全契約について調査に乗り出す無の発表をしていたが、日経紙経済面では早ければ9月に売り出すとしていた政府による日本郵政株の第3次売却が、この不祥事から株価が急落した事による影響で今冬以降となる公算が大きくなった旨が出ていた。

当の日本郵政株は本日も寄り付きから年初来安値を更新しており、復興財源1.2兆円は必達事項と表明していただけにこの株価では売り出し価格の設定から、売却までの需給緩和を勘案するにここからはあと10%以上の値上がりが最低ラインといったところでやはり今回の不祥事は何ともなタイミングの悪さである。

売り出しに関る思惑外れといえば来月マザーズに上場する大阪大学発の新興バイオ企業のIPOも仮条件変更から当初の手取り額が計画より約4割減少する見通しとなった模様だが、この手とは違ってこちらは復興財源が懸かっているだけに深刻だ。今後政府の思惑通りに事が運ぶのか否かだが、先ずはグループ全体のコーポレートガバナンス体制の再構築が何所で一区切りつくのかが焦点となるか。


地銀の苦悩

本日の日経紙地方経済面には「持ち合い株削減じわり」と題し、北関東の5地銀・グループが持ち合い株式の削減を進めている旨が出ていた。単体の中核的自己資本に占める持ち合い株残高比率を25%まで低下させる方針を掲げる群馬銀行は、2019年3月期で18銘柄135億円を売却、以降額ではめぶきFG、栃木銀行、東和銀行と続く。

周知の通り日銀の超低金利政策の長期化による利鞘縮小を背景に地銀は収益力の低下に苦悩しており、先に全国地方銀行協会が公表した会員63行の平成31年3月期決算は最終損益合計が前年比20.7%減の6211億円と3年連続で前年割れとなり、全体の7割弱にあたる41行が減益の憂き目に遭っている。

企業資金需要低下や地域経済地盤沈下のなか貸し出し競争激化でスルガの様な苦し紛れの不正融資事例も出てきてしまっており、削減促進の背景にはコーポレートガバナンス・コードの政策保有株削減方針明記要求を背景にしているだけではない上記のような構造問題の恒常化もあり再編促機運がまた高まりそうだ。


令和の隅田川

さて、26日に発生した台風6号の影響で各所のお祭りや花火大会など夏の風物詩が各地で中止に追い込まれ、場所によっては2年連続で中止の憂き目に遭うなど関係者から恨み節も聞こえた先週末であったが、ここ数年順延や雨のチラつく天候に悩まされている隅田川花火大会は予定通りの開催となった。

東京三大花火大会の一つであった東京湾大華火祭が休止となってはや4年だがその分の経済効果も期待が掛かるというもので今年で42回目となるこの花火大会、衝撃の中止に追い込まれた2013年の記憶から関係者もやきもきしていたが、果たして約96万人の見物客が訪れ約2万発の花火を楽しんだ模様。

隅田川といえば恒例の花火コンクールが楽しみの一つだが、今年はエントリー最初の阿部花火工業と最後の菊屋小幡花火店の題材が両者共に奇しくも散る桜であったが、店が違うと作品も斯様に違うのかと感心。またここ数年時間差で動きや変色を見せる技術が格段に進歩し、今年優勝した丸玉屋小勝煙火店の五輪をテーマにした作品はやはり圧巻で令和最初を飾るに相応しい大会であった。


大麻投資

さて、先週末はロックバンドDragonAshのサポートメンバーが大麻取締法違反の容疑で現行犯逮捕される事件が報じられたが、大麻といえばアジアでは従来厳しい姿勢をとってきた医療用大麻の規制を見直す動きが広がりつつあり2月にはタイで、そして3月には韓国で医療用大麻が合法化されている。

一方で米などは一部の州で大麻が合法化されており、医療用どころか大麻入りの菓子など最近ではよくTVでも話題になっているが、金融市場でもコロナビールの販売で知られる米酒類大手が昨年8月に医療・娯楽用大麻を生産・販売するカナダのキャノピー・グロースに40億ドルの追加投資をし筆頭株主になった旨が過日の日経夕刊に出ていた。

米での法制度面での進展期待を背景にリスクを取ったパターンだが、さながらエシカル投資の真逆をゆくカジノ、煙草から銃メーカー等に投資するVICEFUNDを思い出す。大麻が合法化された際には多かれ少なかれ大麻関連事業が盛り上がってきた経緯があるが、規制当局の動きを睨みながらVICE関連も再度の盛り上がりを見せるのか否か興味深い。


五輪と市場の宴

さて、東京オリンピックまであとちょうど1年となった本日は東京2020オリンピックメダルのデザインが東京2020組織委員会より発表されたが、オリンピックといえば今日の日経紙市場点描でも「選別色強まる五輪銘柄」と題し、東京開催が決定して以降の五輪関連銘柄の株価がどう推移しているのかを取り上げていた。

冒頭では中核銘柄とされた大手建設株が取り上げられていたが、このポストは前回の五輪相場での覚醒がやはり記憶に新しい。それまで万年低位に放置され続け大きな震災発生時に僅かな出番があるかといった程度であったが、この五輪相場の時はゼネコン大手4社の売買高が連日でバブル期の記録を上回るという破竹の勢いを見せた経緯がある。

此処で他にスポーツクラブ・用品メーカーの動向を取り上げていたが、上記の大手建設株同様に何れも受注や業績への期待感が剥落しピーク時からは4割がた下げている模様。五輪開幕の度に選手所属企業や用品メーカーが辿る軌跡も同様なものがあるが、材料先喰いの株価がときに開催前に閉幕商状となるのはこの手のテーマの常とはいえ、いざ開催後はメダル獲得数に絡んだ行動ファイナンス事例などその辺もまた期待出来るか


引き下げ圧力彼是

本日の日経紙金融経済面には「運用会社、手数料下げ競争」と題し、公募投資信託の残高が大きい主な運用会社10社の2019年3月期は7社が最終減益となったが、その収益を圧迫している背景には投資信託の手数料引き下げ競争が激しく資産運用会社が低コスト化の逆風に直面している旨が書かれていた。

パッシブ型運用の手数料は大幅に低いところへ長期的に高い運用成績を見込み難くなるなかアクティブ型も引き下げ圧力が及んでいるというが、金融商品の手数料といえば株式売買においてもスマホアプリで顧客にサービスを提供する新興証券会社の一部で手数料をゼロにしたり、大手ネット証券では米国株式の最低売買手数料をゼロにする動きもまた広がっている。

1999年に株式売買委託手数料が完全に自由化されてからこの20年、手数料率の変遷を見るに隔世の感は否めないが、この期に及んでも旧来型営業の回転売買で手数料稼ぎが問題視された証券会社が立ち入り検査強化等の指導を受けている報を聞くに一部の旧来型対面営業に荒涼とした環境を禁じ得ないが、少子高齢化に業界の合従連衡の波と今後も環境変化が注目される。


その先の消却

先週末の日経紙投資情報面には「自社株の消却 倍増」と題して、同社調べで自社株を消滅させる消却額の合計が約5兆3000億円と前年度の2倍に増えて自社株買いの金額を上回るなど、自社株買いから更に踏み込んだ消却が相次ぎ斯様な動きは今年も継続しそうとの旨が書かれていた。

ところで当欄では先月に政策保有株を圧縮する動きを取り上げたが、先週は時価総額が上場時の3倍強になったリクルートホールディングス株に政策保有株として保有する幅広い取引先からの売り圧力が俄かに高まっているなか、この受け皿として自社株買いを検討している旨も報じられていた。

背景には国内外の投資家が資本効率の改善を要求しROEを重視する波に乗る動きがあるが、これが意識されるばかりに資金が刹那的にこれらに振り向けられているパターンも一部見られた。上記のリクルートも資金の使い道のプライオリティとしてはM&Aを軸とする成長投資としているが、今後其の先の余力の部分をどう生かしてゆくかこの辺が各社共に課題となりそうだ。


梅雨寒模様

さて、昨日は21日ぶりに日照時間が4時間を超えた模様だが、一昨日など東京都心の日照時間はわずか10分にとどまるなど先月27日から一昨日16日まで20日連続で日照時間が3時間未満と観測史上最長を記録している。ちなみにこれまでは関東や東北で低温による農業被害が出た88年の17日間が最長記録。

今月上旬にはCanCamがプロデュースする恒例のナイトプールが公開され今年のテーマは動画映えする「ムビジェニ」という触れ込みであったが、この梅雨寒で心なしかプレスも取材陣も盛り上がりに欠ける感じで既にプール開きとなっている都内各所の序盤戦の客足が早くも大幅減と一部報じられている。

こうした裏で対照的に屋内型施設は堅調を維持している様子だが、斯様なレジャー施設以外でも百貨店など年末年始に次ぐ季節モノ商戦となる大事な時期にもかかわらず低調懸念が台頭し、またナスやキュウリ、トマトなど野菜相場も当然ながら影響が出て価格上昇や出荷量減少が出てきた模様。

こんな光景を見ると40年ぶりとなる記録的な長雨を記録しレジャー関連等が大打撃となったちょうど2年前が思い出されるが、当時も書いた通り企業の対策もさることながら年々予測不能な天候事情に備えるべくデリバティブ関連商品等の商機でラインナップの充実が益々求められるところか。


代替通貨

さて、ちょうど1ヵ月前の当欄では最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェアの金保有高が先月2016年7月以来約3年で最大の伸びを記録した旨を書いたが、WGCでは金価格連動の世界のETF が価値の裏付けとして保有する現物残高が6月末時点で2548トンと、2013年3月末以来の高水準となり、1か月間の増加額としても7年ぶりの高水準になった旨を発表している。

この6月といえば中旬に米利下げ観測に加え中東の地政学リスクも背景に急騰した後に一時下落を見せた価格であったが、今月に入ってから今度は米中貿易摩擦による世界景気の減速懸念などから安全資産としての需要を背景に再度上昇し3日には1,420.9ドルと2013年5月以来、約6年ぶりの高値を付けている。

最近の金は株と同時並行で上昇している部分も注目されつつあるが、国内では金関連投信の純資産残高トップが三菱UFJのファインゴールドとなり金の採掘や精錬等を手掛ける企業の株式に投資するものも上位にランクインしてきている。今月に入って1,400ドル割れがあってもすかさず切り返し1,400ドル台に回復する動きが続くが、ETF残高と併せ中央銀行の動き等今後も目が離せない。


普及と壁

さて先週は「ノルマの亡霊」と題し、かんぽ生命の保険業法に抵触する恐れのある不正販売の広がりを取り上げたが、これを嫌気した同社株への売り物は連休明けの本日も止まらずに年初来安値更新から時価総額は先週から上場来初の1兆円割れとなっている。今秋にも政府は日本郵政株の追加売却を予定しているだけになんともなタイミングというほか無い。

もう一つ時価総額が先月末からはや半減しようかという勢いのモノとして、先週末にストップ安まで叩かれ今日もなお大量の売り物を残し2日連続ストップ安の比例配分で引けているリミックスポイントがあるが、周知の通りこれは先週末に子会社のビットポイントジャパンが不正アクセスにより約35億円相当の仮想通貨が流出した旨の発表を受けた事に因るもの。

仮想通貨流出といえば記憶に新しいものに昨年9月にテックビューロ運営の交換所から約70億円が流出した件が記憶に新しく、その前の1月のコインチェックからは約580億円が流出した経緯がありその度にセキュリティ対策関連が物色される不気味な光景が市場で見られたが、いずれの仮想通貨交換所も金融庁から業務改善命令を受けてきた経緯がある。

同交換所に関しては金融庁が直近で業務改善命令が解除していただけに別な意味で冒頭のかんぽ生命同様になんともタイミングが悪いというほか無いが、直近ではフェイスブックのリブラなども話題になり決済手段としての普及の可能性が日進月歩で囃されている一方で、法改正成立直後に斯様な流出事件が繰り返されるなど行政の難しさが浮き彫りになっている。


シルクの伸びしろ

さて今週は週明けの株式市場で免疫生物研究所が急騰する場面があったが、この辺の背景として同社に関しては先週末の日経紙に「カイコ使いHIV薬前進」と題し、遺伝子組み換えカイコから作った抗HIV抗体医薬品の実用化に向け研究開発を加速する旨が報じられている。

繭からは品質が安定した抗体を容易に生産出来るところがポイントというが、遺伝子組み換えカイコの可能性に関しては今からちょうど4年前の当欄で紫外線を当てると光る特性のある他の遺伝子を組み込んだシルクを取り上げ、化粧品から外科手術の縫合糸はじめ再生医療までメディカル分野で伸びしろが大きい旨を書いた事があった。

思えばかつては世界を席巻した養蚕業、先物市場でも前橋乾繭や横浜生糸が上場し数々の記憶に残る名シーンを演出した事もあったが現在その姿は無い。一方で富岡製糸場など日本の近代化遺産で初の世界遺産登録が叶ったが、すっかり新興国に押されてきた産業も斯様な分野からこれと併せ再度注目を集める日が来る事を期待したいところ。