社外取と統治体制

本日の日経平均は2565.58円安と昨日から一転して急反落、個別ではただでさえ弱い自動車セクターなど軒並み安、トヨタ自動車や日産自動車は年初来安値を更新しているが、本日開催された経営再建中の日産自動車の定時株主総会では社外取締役の永井氏の再任が否決されることとなった。予てより同氏がメインバンクの出身ということで独立性を疑問視する声が上がっていた。

この辺に関しては米議決権行使助言会社のグラスルイスやISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービ⁠シーズ)も再任に反対をしていたが、そもそも大株主のルノーが採決を棄権しており、これまである意味キーマン的存在だった同氏の否決で周辺からの距離感にも今後関心が向かう。ところでこの社外取締役といえば先週末の日経紙では掛け持ちの多さを取り上げた記事を見かけた。

3社以上兼務する社外取締役は400人以上居て、2社以上となると1881人にのぼるという。更にはそれ以上の向きも居り人材の供給が限られている証左でもあるが、上記のISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービ⁠シーズ)は上場企業5社を超えて取締役を兼務する候補者に対し米では選任議案への反対を推奨しているという。

東証の定める社外取締役の条件として親会社や子会社で業務執行に携わる人物やメインバンクの関係者などは除かれるというのがあるが、今年の株主総会後に独立社外取締役が取締役会の半数超えを占める主要企業の割合は4割に達する見通しという。役割が一段と強まっていると同時に株主も彼らの構成に関心を持ってきているだけに他の総会にも注目が怠れない。


テンバガーの日経平均

先週の日経平均は終値で初めて7万円台に乗せたが、当欄で先月末に「実感なき6万円超え」と題した終値での6万円超えから2か月弱、史上最速で大台替わりを果たしている。前回も大台更新ごとのスピードが毎回早くなってきているのだけは実感するとして3万円大台超えから4万円超えまで約3年、そして次の4万円大台超えから5万円大台超えまでが前回の約半分の1年7か月、そして6万円大台超えまでが半年の達成であった。

そして冒頭の通り7万円大台までが2か月弱、週明けの日経平均もAIや半導体関連株を中心に買いを集めて続伸し72353.96円と終値で72000円超えとなっており、このまま最速記録がまた塗り替わるかどうかという勢いだ。その速さもさることながら思えばリーマンショック後の2009年の安値7054円から先週にはその10倍の70540円超えを示現、“テンバガー”を達成したことになる。

米でも先週はNYダウが史上最高値を更新したが、これまで市場を牽引してきた“マグニフィセント7”からスペースXの上場などで次はAI分野に注力する向きを加えた“MANGOS”なるテーマがETFなどで浮上している。思えば日本市場も株価が驚異的な化け方をしたキオクシアはじめとしたAI関連7社で年初からの時価総額の増加幅のうちこれらが過半を占めている計算となり、米市場の軌跡を後追いしているような感もする。

冒頭の言葉ではないが“実感なき”次々の大台超えにはたして死角はあるのか否か?シティーのトップがかつて述べた「音楽が鳴っているうちは踊り続けなければならない」も思い出され、成長ストーリーの変調に慄いた時の逆回転を考えるとなんともゾワゾワする。とはいえスペースX祭りに続いて今後もAIの雄の超大型上場も控えており、まだまだ音楽に身を委ねる展開が続くか。


優待とファン株主

さて、今年も各企業から株主総会招集通知や株主優待が送られてくる時期になったが、一昨日の日経紙投資面・26年株主総会ガバナンス最前線では「個人株主味方に「与党」形成」と題し、一時は減少していた株主優待の実施企業が再度増加に転じて3月末時点では過去最高の約1600社となるなど、上場企業が個人株主の獲得に力を入れている旨の記事があった。

同頁にはホンダの工場見学会やホンダジェットの試乗会や東急の個人株主との懇談会など書かれていたが、他にも「ファン株主10万人構想」を掲げるカゴメなどもオーストラリアの工場見学やポルトガルの圃場見学ツアーを企画するなど多くの企業のコト体験が近年目立つ。こうしたことを通じてファン株主を獲得し経営方針に賛同し易い個人を味方に付けようとする動きが顕著だ。

ファン株主は会社理念や商品・サービスに強い愛着を持ち、株価下落局面でも狼狽売りをしないで保有してくれる向きが多いが、最近では推し活に絡んで“推し企業”がある向きも一定数存在し、物価高でも推し企業の商品は購入し続け値上げも許容できるという。十分な価格転嫁に悩む企業が多い中こうした動きはアドの時代から関係性の時代への転換を示唆している感もあるが、各社与党を増やす為の戦略がますます問われる時代になってきたか。


額面超え次々

本日の日経紙商品面には「10円高「時価」10.5円に」と題し、AIインフラを支える素材として銅の需要が世界で拡大したことで10円玉の主原料となる銅相場の高騰と円安が重なり、含有する金属の時価が額面の10円を上回った旨の記事があった。素材価格が額面を上回るのは別にこの10円玉に限ったことではなく、5円玉など昨年末から原材料費が額面を上回っている。

当時は10円玉の原材料費はまだ8.7円であったが、上記の通りAIインフラ投資の進捗で電線需要の急拡大等でさらに高騰したことで5円玉に続いて10円玉も額面超えとなった模様だ。ところでこの5円玉の話題に先駆けて米国でも1セント硬貨の製造・流通コストが3.69セントと額面の4倍近くになったとしてトランプ政権が財務長官に製造を止めるよう指示した経緯がある。

この辺の背景には素材価格の高騰もさることながら電子決済が普及したことで現金決済の重要性が年々低下していたのも影響しているわけだが、キャッシュレス化の波は日本にも押し寄せている。とはいえ日本はまだデジタル・キャッシュレス“難民”にも配慮してここからさらに硬貨の素材価格高騰でも米に倣えで製造中止とはならないだろうが、発行環境などは変わってきておりその辺後の動向には注視しておきたい。


宇宙株明暗

本日の日経紙投資面には「宇宙株、失望売りで急落」と題し、米スペースXのIPOを通過したことで材料出尽くし感が重荷となり、国内の宇宙関連銘柄が軒並み急落となった旨の記事があった。昨日はザッと挙げて宇宙ゴミ除去のアストロスケールHDがストップ安に沈み、小型衛星開発のアクセルスペースHDも同様にストップ安に、他にも宇宙撮影画像データ販売のQPSホールディングスも急反落の憂き目に遭っていた。

急落した背景には先週に発表された2027年4月期の連結最終損益が赤字になるとの見通しで売られたモノもあったが、まあこれが普通の反応でこの辺が同じく赤字でも常識では考えられないPSRを叩き出すスペースXとの違いか。ただ今後ロケットが航空機のように日常的に飛ばせる日が来ればあらゆる宇宙関連企業にも恩恵が及ぶことになる。米ロケット・ラボやビアサットにハイコなど挙げれば数多出てくる。

日本企業もまた然り、宇宙ステーション補給機“こうのとり”に絡んだ三菱重工や三菱電機など大手のほか、グロース市場に上場する冒頭の企業もそれぞれがユニークな技術を持つ。ある意味更新需要が常に存在する宇宙産業ビジネスがこれから無くなることは考えづらく、スペースXの上場で宇宙は一つの大きな注目テーマになるのは間違いなさそうなだけにその成長余地を長期目線で見てゆきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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