自社株買いラッシュ

前回の当欄では分割ラッシュとして昨年度の株式分割の発表件数が前年度比で36%増加、今年も多くの企業が分割に踏み切っている旨を書いていたが、この分割よろしく自社株買いもまた盛んだ。先週は週明けから20銘柄に迫る発表があり、翌12日はKDDIほか30銘柄以上、13日は三井住友FGほか40銘柄以上、14日はニッスイほか50銘柄以上、週末は三菱UFJほか地銀勢多数で30銘柄以上が自社株買いを発表している。

ちなみに昨年設定された自社株買いの取得枠は全体で22兆3250億円と前年度比で18%増えてその増加は5年連続となった旨を先週日経紙が報じているが、依然として東証が企業に要請している資本コストや株価を意識した経営がこれらの拡大を後押ししているか。加えて近年では手元資金も潤沢になってきており、自社株買い規模も対時価総額比でかなり高いところを出してきている企業も出てきている。

この辺に関しては東証要請に加え今年は5年ぶりのコーポレートガバナンスコードの改定を控えているが、先に書いたように改定案では今回は特に現預金を含めた経営資源の配分による投資の促進など企業が抱える現預金を有効活用できているかどうか取締役会に検証を求める項目が盛り込まれ一段とその意識が問われる部分が意識されている部分も少なくないだろうか。

企業がこれまで内部留保を積み上げてきた背景には日常の資金繰り対応に加え災害や地政学リスクなど危機への備え等という部分が大きかったが、足元では中東情勢の緊迫も先が読みづらい状況が続く。これに絡んでナフサ不足の影響も日々表面化してきているが、今後この拡大しつつある自社株買いの伸びにもこうした部分が影響を及ぼしてくるかどうかにも注意しておきたいところだ。


分割ラッシュ

今週も日経平均が史上最高値を更新するなか、株式分割の発表も相次いでいる。先週の日本ハムや福田組に続いて今週は株価大化け中の古河電気工業も株式分割を発表、これを好感し一昨日はストップ高まで買い上げられ一気に大台を変えていたが、株価急騰中の電線大手では住友電気工業もまた株式分割を発表している。また昨日には三井住友FGも1株を2株に株式分割を行うと発表している。

斯様に分割熱が喧しいが、この辺に絡んでは先週の日経紙総合経済面でも「株投資、下がるハードル」と題し、昨年の株式分割の発表件数が前年度比で36%増加し2025年度末の上場企業平均の最低投資額は21万円と20年前の半分以下になった旨の記事があった。先に書いたように日経平均は年を追うごとに大台塗り替えが加速し、ここ3年ではや2倍になった割に最低投資額が同じように上昇してこないのは企業の株式分割が活発化している証左だろう。

ただ投資金額が従前より数分の一になるなど大幅に下がっただけに値嵩時代に買えなかったホルダーの中には下落耐性があまり無い向きも一定数居る事で、そういった時の振れ幅が大きくなるケースも出てこようか。それでも新NISAの創設もあったほか企業側としても、持ち合い解消の受け皿としての個人株主の取り込みを重要視しておりこうした動きはまだまだ道半ばだろうか。

しかし今から4年くらい前の当欄で米アップルなどの主力株は数万円で投資出来ると書いた事を思い出すが、これだけ東証側の詳細な要請など後押しが奏功しているわりにいまだ単元株制度を堅持している光景も時に奇異にさえ映る。企業側も上記のように挙って対応しているが、この辺の課題も株主提案の要件の議決権数などの見直しと併せて今後も折に触れて議論されるべきであろうか。


非鉄も高止まり

昨日の日経紙グローバル市場面では「アルミ高止まり強まる現物不足」と題し、中東情勢の緊迫化で現在世界生産の1割を占めるアルミの供給懸念が燻り国債指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物は既にバックワーーデーション化し、価格も先月中旬には一時1トン3672ドルまで上昇、約4年ぶりの高値を付け今月に入ってもなお高止まりしている旨の記事があった。

このアルミといえばちょうど1年前くらいに米トランプ政権は米が輸入するアルミに対する追加関税を50%に引き上げているが、ここにこの度の中東紛争が加わり更なる供給不足がこの高騰の背景ともなっているか。同じ非鉄の銅の国際価格も足元では1月に付けた最高値に迫る勢いだが、この騰勢強める銅の代替品として割安感でアルミ活用の関心が高まっていただけに代替も滞ろうというもの。

まさにホルムズ海峡の封鎖が包囲網のように次々とあらゆるモノに波及し影響しているが、上記の件を鑑みるに今後自動車などへの影響も懸念される。この辺は既にトヨタが先週に原材料高等で今期最終は22%減益の決算発表をしているが、原材料高が今後も継続されれば厳しい展開が続くか。斯様に産業界のコスト上昇がまだ続くとなるとこれまた物価上昇含め暗雲漂うだけに今後も中東情勢から目が離せない。


下剋上の10兆円クラブ

本日の日経紙総合面には「時価総額10兆円クラブ27社に」と題し、日経平均が史上最高値を更新するなか個別企業の時価総額も膨らみ、その時価総額が10兆円以上の企業数が2025年末から4社増加し今週のあたま時点で27社になった旨の記事があった。同頁にも出ていたが10年前にはこれがわずか3社であったから躍進といえるが、銘柄間でもなかなかの下剋上模様である。

この辺でいえば当欄では一昨年の年初に日立製作所に伊藤忠商事や任天堂が10兆円クラブ入りを果たした旨を書いてきたが、この3銘柄だけでもそれ以降は各社共に大きく差がつき日立製作所はそこから時価総額を2倍以上にした一方、任天堂は本日終値では10兆円クラブから陥落している。そういった中でも株価の大化けと共に上位に食い込んできたのはやはり半導体・AI関連か。

ここまで日経平均の上場来高値を演出してきたのはいわずもがなこのセクターだっただけに当然といえば当然だが、10年前の上位企業と併せ見るに日本企業の産業構造の転換も垣間見える。前回もコングロマリットディスカウント企業でも構造改革で変貌を遂げる一歩と書いていたが、半導体・AI関連など“旬”の企業と併せコングロマリットプレミアム企業として今後もどの程度伸びてくるのか注目したい。


政府との温度差

さてゴールデンウイーク中には愛車にたっぷり給油して出かけた向きも多かったと思うが、現在実施されているガソリン価格を抑制する国の補助金の確保分の4割以上が使用され、このままのペースで行けば来月にも枯渇するとの一部試算が出ている。この補助金、以前より批判も多いが、今月に入って総務省が発表した4月の東京23区消費者物価指数は前月から伸びが縮小する結果となっている。

中東情勢の緊迫化で原油高がインフレを加速させるなか、世界の主要国では米国が3月の消費者物価が前年同月比で3.3%の上昇を演じ約2年ぶりの伸びとなっているほか、欧州圏も4月の消費者物価は3%上昇し3月の2.6%から加速しているような中で、上記のガソリン補助はじめ電気代やガス代など政策効果で日本の物価だけがなんとも歪んで見えるのは否めないところだ。

アジア各国でも既にエネルギーの消費抑制策が次々と取られているが、これを尻目に先の衆院予算委員会で高市氏は、「燃油等の使用を控えるよう制限かけたらどうかという声を頂くが、経済活動や社会活動を今止めるべきではないと思っている。」と答えていたが、本日も「現時点で国民に更に踏み込んだ節約をお願いする段階にはないと考えている」と答えている。とはいえ一部世論調査では原油が高騰するなか節電や節約が必要と答えた向きは必要あるが74%にのぼっている。

また経済学者と対象とする日経エコノミクスパネルでの調査でも、原油高で日本政府が石油の消費抑制策が必要とした向きが66%となっている。直近の為替介入にしても円を取り巻く構図の変わらない中で急場しのぎの対処療法との見方も多く斯様な温度差も勘案するに出口戦略の難しさも浮き彫りになってきたが、デフレ慣れした日本の免疫力を政府が今後この環境でどう捉えてゆくのか注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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