関税政策で二番天井?

本日の日経紙グローバル市場面には「コーヒー豆相場 収穫順調も高値」と題して、主要なコーヒー豆生産国の収穫は順調なものの、米国の関税政策によるコーヒー豆の流通にゆがみが生じていることで需給の逼迫が意識されアラビカ種を中心に再度上昇基調にある旨の記事があった。同商品のICE(米インターコンチネンタル取引所)先物相場は今年2月につけた最高値に迫る勢いとなっている。

このコーヒー豆もカカオ豆と共に近年の高騰の影響で国内でもネスレ、UCC上島珈琲、味の素AGF等の大手が度重なる値上げを敢行、これはチョコレートも同じだがコーヒーの方が肌感覚ではまだ値上げがマイルドな感じがする。もっとも収穫が順調ということであれば、関税自体の引き下げなど環境変化で収穫が戻ってきたオリーブオイル同様に相場が下落に向かう可能性もあるか。

相場下落といえば上記のカカオ豆も年初には二番天井を付けにゆくかっこうで再度の急騰を見せていたが、こちらも今年度の収穫量が前年度を上回る観測や所謂“レーショニング”もあり指標のロンドン先物相場は年初の高値からはや半値水準にまで急落している。とはいうものの世界の在庫自体は低水準であり、コーヒー豆とて所謂“コーヒーベルト”土地の半減観測も燻っていることなど再燃素地が残っているだけに今後も相場動向には注視しておきたい。


ショートスクイーズ

昨日に初の5万円大台を達成した日経平均株価だが、本日は利確の売り等が優勢となり3営業日ぶりに反落となった。そんな中で依然として気を吐いていたのがSBG株で、本日も大幅続伸して上場来の高値を更新していた。SBGといえば本日の日経紙投資面にも「SBG株、空前の大商い」と題し、空売り等もテコに全員参加型の上げ相場となっている旨の記事があった。

同社株の売買代金も1銘柄として初の1兆円超を記録していたが、本日も売買代金ランキングは2位のフジクラの3倍以上を記録して堂々のトップ。そうした大商いの過程において相当量の空売りを誘い込んでいることもあって約2年ぶりに逆日歩も発生していたが、貸借倍率もまだ低位で再度の踏み上げ素地は残る。まだ東証が無法地帯?だった頃はこうした売り長株に仕手筋が目を付け仕掛けたケースも多かったが、規制の煩い現代にあって久し振りの光景だ。

空売りをテコに仕掛けるといえば米でも最近は2021年以来の“ミーム株”ブームが再燃している模様。21年はゲームストップやAMCがその象徴銘柄であったが、今月は代替肉のビヨンド・ミート株が約1週間で14倍以上にも化けている。ミーム株はリスクオンの先行指標ともいえるが、他に当欄でも先週に金(ゴールド)もミーム化と書いたように今回はその物色の幅も広がっておりこうした過度なリスクオンに警鐘を鳴らす向きも少なくない。


日経平均5万円大台達成

先週に日経平均株価は50000円の大台まで指呼の間に迫るもあと一歩のところで息切れしあと急落の憂き目を見ていたが、週明け本日の日経平均株価ははれて史上初の50000円大台に乗せてきた。思えば昨年の2月に約34年ぶりにバブル期に付けた最高値を更新し、その翌月には史上初の40000円大台乗せを達成したが、そこから約1年7か月で1万円上昇し次なる大台を達成したことになる。

大台突破の呼び水となったのは米中協議の進展とかだが、先週末の利下げ期待の米株高、ハト派寄りの高市内閣の高水準の支持率等々、金(ゴールド)よろしく複合的に好材料ばかりが期待先行で好感されている状況ともいえる。年始の日経紙恒例の「経営者が占う2025年」の予想で今年の日経平均の最高値の平均予想は44450円、万年強気の大手証券トップでも5万円を上げた向きは皆無だったがあっさりとこの水準を超えてきた。

こうなってくるとなかなか悩ましいのがバリエーションに対する視点か。過去のチャートを並べて現在値の水準を測る向きもあろうが、 “失われた30年”が何度となく引用されてきた日本株への捉え方そのものが外国人投資家をはじめ変貌していたらこの辺は何の意味も持たない。個別よろしくマーケット全体が“バリュー”から“グロース”に変わりつつある転換点が今なのかどうかこの辺も今後見極めておく必要があるか。


ミーム化でETF異常乖離

さて今週も金の国内小売価格が史上最高値を更新したが、そんな裏で東証が純金ETFに対して受益権1口あたりの市場価格が純資産額にあたる基準価格と比べて高い状態で推移する傾向が継続していることで注意喚起を実施している。同ETFが上場来の高値を更新した先週17日の金先物生産価格をベースにした理論価格に基づく1口(約0.94グラム)あたり基準価格は20,553.99円であったが、この日のザラ場高値は25,740円まであった。

また今週に入ってからはWisdomTree貴金属バスケットについて、同日取得した外国の主たる金融商品取引所における直近の値段を円換算した値が先週設定した基準値と大幅に乖離したことで20日の基準価格を変更して成り行き注文も金下旨を告知している。これで思い出したのが昨年はじめに日本株に連動するETF「チャイナAMC野村225」に中国の投資家が殺到し取引が一時停止に追い込まれた件か。

日経平均が約34年ぶりの高値を付けるなか、資本規制に縛られ海外株式の口座もないドシャ降りの本土株急落に見舞われた投資家が利便性の高いこのETFに我先に食いつき売買停止前には純資産に対するプレミアムが10%近くに上昇していたものだ。足元では先週も書いたように田中貴金属がスモールサイズの地金販売が停止に追い込まれるなどしているが、そうした向きの資金がETFに大挙している構図はなんともこれに似てはいないか。

そんな狂乱相場も21日のNYでは金先物価格は1日としては過去最大の下落幅を記録、上記の国内ETFもこれに加え東証や運用会社側の注意喚起の影響から一転して急落の憂き目に遭っている。FXもかつて“ミセスワタナベ”なる造語が闊歩していた時期があったが、なかばミーム化した「金」もイナゴ勢含めた投機買いの影響力が無視できない水準まで増してきており昨今の金需要の構成図も彼らによって比率が塗り替わりつつある。


海外企業も“同意なき買収”成功

今年4月に当欄で一度触れた温度センサー最大手の芝浦電子が台湾の電子部品大手ヤゲオから“同意なき買収提案”を受けていた件だが、その後紆余曲折を経て一昨日には芝浦電子へのTOBが成立している。ホワイトナイトとして登場した国内大手企業が敗れた?のも衝撃だったが、これで海外の事業会社が日本国内のプライム上場企業に対して“同意なき買収”を成立させた初めてのケースとなる。

かれこれ2月から始まったこの争奪戦?、ホワイトナイトとして名乗りを上げたミネベアミツミと数度にわたる価格競争を繰り広げ長期に及んだ外為法の審査手続きをもクリアしての悲願のTOB成立となった。4月の当欄でこのTOB合戦を取り上げた時の芝浦電子株の終値は5550円だったが、結局最終的には株式応募は約87%にのぼり価格は1株あたり7130円、買収額は当初予定から1.6倍超にも膨らんだ計算だ。

前にも書いたが経産省は一昨年に企業が買収提案を受けた際に企業価値向上に繋がる真摯な提案を理由なく拒んではならない旨の「企業買収における行動指針」を策定しており、買収に関する潮目の変化から今回の買収劇はその辺を象徴しているともいえる。とはいえ今回の件ではミネベアミツミも一連の過程でヤゲオを上回る価格提示で対抗し戦いを挑んでいたものの、経済合理性で説明のつかない価格で競り負けた点を含め経済安全保障に絡む官民の役割の在り方など今後も課題となってこようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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