円下落どこまで

いやはや円の下落が一向に止まる気配を見せず、本日の東京外国為替市場で円相場は一時、約34年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル154円台半ばまで値下がりした。昨晩に発表された先月の米小売売上高が市場予想を上回り、米経済は堅調だという受け止めが広がったことでFRBの早期利下げ観測が後退し改めて日米の金利差が意識されたことなどが背景となっている。

加えて現在の円安には投機筋の存在も大きいとされている。本日の日経紙マーケット面でもCFTC(米商品先物取引委員会)の直近データではヘッジファンドなど投機筋の売買動向を示す「非商業部門」の米ドルに対する円の売り越し額が2007年6月以来およそ17年ぶりの高水準となり、円売り建玉も同時期以来の高水準となっている旨の記事があった。

金利差や経済指標を使って測った円の実力は10円以上高いとも一部で報じられていたが、ここに投機筋の参戦などでそう理論通りに相場は動かないのは世の常。ともあれ政府・日銀の介入を試すかのような円安だが、日銀が早急に金利を引き上げるなどかなうべくもなく米利下げの助け舟が出るまで為替介入或いは牽制ポーズで時間稼ぎをするしか方策が無いようにも見える。取り敢えず目先は明日未明のFRB議長発言で利下げについてどこまで触れるのかこの辺に注目か。


開示の増加と課題

先月上旬の日経紙で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧」を掲載した全面広告が載っていたが、そこで「本紙面では東証から公表された開示企業一覧表の内容をはじめ関連トピックについて今後も継続的にアップデートとともに掲載する。」と謳っていた通り、先月に続いてちょうど一週間前の日経紙全面広告にて再度開示企業一覧が載っていた。

ちなみに昨年からの開示状況を辿ってみると、先ずプライム市場では2023年12月末は815社で49%、2024年1月末は899社で54%、2024年2月末で検討中も含め969社で59%となっている。またスタンダード市場では2023年12月末は300社で19%、2024年1月末は325社で20%、2024年2月末で検討中も含め348社で22%と月を経るごとに上昇している状況となっている。

各社その資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として挙げられているのは配当の増額や自社株買いの実施が比較的多く、他には海外IR(投資家向け広報)の強化や国内IRの強化も次に多いが、この辺は先月末の日経紙にも2023年のIRに関わる人材の求人数が6年前に比べて4倍近くになった旨が報じられていたあたりでも見て取れる。

この同じ日の日経紙では「企業と投資家ともに変化を」と題した別の全面広告も見かけたが、このIRは情報開示だけでなく投資家との対話も担っている。今後は東証の動きに合わせて物言う投資家の動きも活発化してくる可能性があり益々その重要性は増すともいえるが、一方で課題はこれら人材の不足。東証はIR活動を支援する専門部署を立ち上げ企業の負担軽減に動き始めているが、並行してこうしたバックアップ体制も今後益々求められようか。


休眠基金

さて、政府の有識者会議は先月末に経済・財政一体改革の検証結果を報告しているが、国と地方のPB(プライマリーバランス)は目標とする2025年度の黒字化に近づくものの、基金乱立といった歳出膨張が税収増効果の足を引っ張るとしている。この辺に関しては中長期的な政権推進のため積み立てた基金の総点検を巡り事業が事実上停止している約10の基金を廃止する方向で調整に入った旨が報じられている。

ちなみに廃止予定の基金は週明けに取り上げたEV(電気自動車)の充電設備を設置する「省エネルギー設備導入促進基金」、農林漁業者が発電事業を行う「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」、東電福島第一原発事故で企業立地が落ち込んだ地域を支援する「環境対応車普及促進基金」などが並んでいる。

財源はほとんどが国債だが、斯様に借金?で賄っているこの基金はコロナ禍以降もここ数年で30兆円以上が確保され国が所管する基金の数は180超に膨らんでおり、その残高も2022年度末時点で計16兆6000億円と巨額なカネが使われずに残っているのが現状だ。とはいえこれらその運営には人件費などの管理費が発生、本来の事業を全く行わずに管理費だけがかかっている休眠基金など本末転倒だろう。

おそらくは使い勝手が良くその規模も大きなものになるので経済対策としてはアピールし易いという側面があるのだろうが、上記の廃止予定以外のモノでも例えば地方自治体のデジタル化を進めるための「デジタル基盤改革支援基金」はその執行率が5%、新技術の研究を支援するための「経済安全保障重要技術育成基金」の執行率はわずかに2%など5%にも満たないモノがゴロゴロしておりPB黒字化には更なる見直しが求められるか。


ECLIPSE商戦

昨日に北米で2017年以来、約7年ぶりに皆既日食が観測された模様が彼方此方で報じられているが、今回は部分日食を含めるとほぼ全米の住人が観賞可能という事で盛り上がった。ニューヨーク市内に開設された入場料48ドルのPV(パブリックビューイング)は完売、クリスピークリームドーナツの皆既日食を表現した限定商品販売など飲食店もこれに便乗するなど彼方此方で商戦も盛り上がった。

他にもデルタ航空等では皆既日食が見られる時間帯に合わせて空から見る鑑賞フライトを運行、この皆既日食を見る為に経路となる州へ最大で400万人が旅行するとの事前予想もあったが、これらの諸々で米経済分析機関では宿泊支出や関連消費でその経済効果は60億ドル(約9100億円)に上ると試算が出ていた。

日本でもリーマンショック後の09年夏に皆既日食があったが、今回ほどの盛り上がりはなかったように記憶する。この次の日食の類はというと「金環日食」が2030年に、そしてこの「皆既日食」は2035年に皆既日食の通り道となる北陸や関東で観測出来る予測という。流石に米規模の商戦は期待できないものの、今回の感動を求め一時的にも更なるインバウンドの拡大が起きる可能性が無くはないワケでその辺の経済効果には期待したいところか。


肥満薬市場の春

昨日から大正製薬が内臓脂肪減少薬のアライの販売を始めている。この手の薬としては日本初という事で話題にはなっているが、もう一つこの手の肥満症薬関連では「ウゴービ」も保険適用で販売が始まっている。ウゴービはGLP-1受容体作動薬だが、「オゼンピック」と共に本来使用されるべき2型糖尿病患者以外に美容目的のダイエット薬として自由診療の世界では人気を博している。

それにしても昨年からこれら肥満症治療薬でその製造元は我が世の春を謳歌している。上記の「ウゴービ」と「オゼンピック」を製造するデンマークの製薬大手ノボノルディスクファーマはその時価総額が今年に入って5000億ドルを突破、昨年は同社が強い需要を背景に株式時価総額が一時は仏高級ブランドのLVMHを抜いて欧州で首位に躍り出る場面もあったが、今年は米マグニフィセントセブンの一角であるテスラも抜いてきている。

また米製薬大手イーライリリーも先月に23年10-12期決算を発表しているが、同社の肥満症治療薬や糖尿病治療薬「マンジャロ」の販売が急拡大したことで売上高も1株利益も市場予想を上回っていたが、その株価も昨年は6割上昇し今年に入り1年で約2倍に大化けし相場の牽引役となっている。上記に見られる通り、肥満症治療薬市場と昨日書いたEV市場の成長期待の差を色濃く映し出している点でこれら時価総額の優勝劣敗劇は象徴的な事例とも取れる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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