欧米並み水準狙う

一昨日の日経紙の金融経済面では「株・投信・債券「4割」へ」と題し、政府が2040年までに家計金融資産に占める株式や投資信託、債券の比率を40%に引き上げる目標を掲げる調整に入った旨の記事を見た。日銀のディスクロでは昨年末の時点で2351兆円の家計金融資産のうち現預金の比率は48.5%の1140兆円、そして株式などの3資産が占める比率は約23%にとどまっている。

23%にとどまっているとはいえ曲がりなりにもリスク資産の割合が20%を超えたのはこれが初めてではないだろうか?また現預金の比率にしてもコロナ禍が漸く落ち着きを見せてきた2022年の同時期の同比率は54.4%であったから、上記の50%割れを見るにリスク資産の比率と併せてインフレ型へほんの少しシフトしてきたと捉えるべきかどうか?

それでも他に先進国と比較するに例えばユーロ圏の現預金割合は約32%、米に至っては実に約12%程度になる。そうしてみるとインフレ型にシフトしてきたとはいえ48.5%はあまりにも諸外国と比較するに大きい。そういった事からの冒頭の政府目標なのだろうが、現残高を前提とすれば400兆円程度の残高増が必要になってくるわけで現在の日本の外貨準備の倍近くにもなる数字だ。

とはいえデフレ経済からインフレシフトで現預金の実質的価値が時間の経過と共に減少するケースでは株式などの資産を保有する方が合理的か。そうしてみると現預金が50%割れとはいえまだ半分近くあるのはインフレに対して脆弱なポートフォリオが続いているわけで、今後どの程度リスク資産が選好されこの政府目標に近づいてゆくのか推移を見守りたい。


期限無しの拡大

昨日の日経紙ニュースワードでは、通常の先物取引と異なり資金が続く限り投資家が契約のポジションを保有し続けられるのが特徴の「永久先物取引」が取り上げられていた。仮想通貨が主流だったこの取引もナスダック市場へのスペースXの上場によるショートスクイーズ現象などから注目が集まり、次に控える大型AI関連と相俟って市場拡大も予測されているという。

そういえばCFTCも予測市場の「カルシ」に対してビットコインの無期限先物を先に承認している。これまで無期限先物は海外の取引所を通じていたものだったがこの規制が緩和された形となり、これが叶うとなると満期無しの取引が24時間365日可能となる。またロールオーバーにも都度一定のコストがかかっていたが、長期にわたるポジション維持にも追い風になるか。

上記のカルシといえばポリマーケットと並んで商いを集めているが、この度の承認でデリバティブ取引所としての“顔”も持ち合わせることとなり事業としての幅も一層広がることになるか。いずれにせよ規制改革で投資家層の幅も広がってくれば市場の流動性、そして安定性の向上にもつながる期待も出てくるわけでこうした部分にも期待を寄せたい。


社外取と統治体制

本日の日経平均は2565.58円安と昨日から一転して急反落、個別ではただでさえ弱い自動車セクターなど軒並み安、トヨタ自動車や日産自動車は年初来安値を更新しているが、本日開催された経営再建中の日産自動車の定時株主総会では社外取締役の永井氏の再任が否決されることとなった。予てより同氏がメインバンクの出身ということで独立性を疑問視する声が上がっていた。

この辺に関しては米議決権行使助言会社のグラスルイスやISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービ⁠シーズ)も再任に反対をしていたが、そもそも大株主のルノーが採決を棄権しており、これまである意味キーマン的存在だった同氏の否決で周辺からの距離感にも今後関心が向かう。ところでこの社外取締役といえば先週末の日経紙では掛け持ちの多さを取り上げた記事を見かけた。

3社以上兼務する社外取締役は400人以上居て、2社以上となると1881人にのぼるという。更にはそれ以上の向きも居り人材の供給が限られている証左でもあるが、上記のISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービ⁠シーズ)は上場企業5社を超えて取締役を兼務する候補者に対し米では選任議案への反対を推奨しているという。

東証の定める社外取締役の条件として親会社や子会社で業務執行に携わる人物やメインバンクの関係者などは除かれるというのがあるが、今年の株主総会後に独立社外取締役が取締役会の半数超えを占める主要企業の割合は4割に達する見通しという。役割が一段と強まっていると同時に株主も彼らの構成に関心を持ってきているだけに他の総会にも注目が怠れない。


テンバガーの日経平均

先週の日経平均は終値で初めて7万円台に乗せたが、当欄で先月末に「実感なき6万円超え」と題した終値での6万円超えから2か月弱、史上最速で大台替わりを果たしている。前回も大台更新ごとのスピードが毎回早くなってきているのだけは実感するとして3万円大台超えから4万円超えまで約3年、そして次の4万円大台超えから5万円大台超えまでが前回の約半分の1年7か月、そして6万円大台超えまでが半年の達成であった。

そして冒頭の通り7万円大台までが2か月弱、週明けの日経平均もAIや半導体関連株を中心に買いを集めて続伸し72353.96円と終値で72000円超えとなっており、このまま最速記録がまた塗り替わるかどうかという勢いだ。その速さもさることながら思えばリーマンショック後の2009年の安値7054円から先週にはその10倍の70540円超えを示現、“テンバガー”を達成したことになる。

米でも先週はNYダウが史上最高値を更新したが、これまで市場を牽引してきた“マグニフィセント7”からスペースXの上場などで次はAI分野に注力する向きを加えた“MANGOS”なるテーマがETFなどで浮上している。思えば日本市場も株価が驚異的な化け方をしたキオクシアはじめとしたAI関連7社で年初からの時価総額の増加幅のうちこれらが過半を占めている計算となり、米市場の軌跡を後追いしているような感もする。

冒頭の言葉ではないが“実感なき”次々の大台超えにはたして死角はあるのか否か?シティーのトップがかつて述べた「音楽が鳴っているうちは踊り続けなければならない」も思い出され、成長ストーリーの変調に慄いた時の逆回転を考えるとなんともゾワゾワする。とはいえスペースX祭りに続いて今後もAIの雄の超大型上場も控えており、まだまだ音楽に身を委ねる展開が続くか。


優待とファン株主

さて、今年も各企業から株主総会招集通知や株主優待が送られてくる時期になったが、一昨日の日経紙投資面・26年株主総会ガバナンス最前線では「個人株主味方に「与党」形成」と題し、一時は減少していた株主優待の実施企業が再度増加に転じて3月末時点では過去最高の約1600社となるなど、上場企業が個人株主の獲得に力を入れている旨の記事があった。

同頁にはホンダの工場見学会やホンダジェットの試乗会や東急の個人株主との懇談会など書かれていたが、他にも「ファン株主10万人構想」を掲げるカゴメなどもオーストラリアの工場見学やポルトガルの圃場見学ツアーを企画するなど多くの企業のコト体験が近年目立つ。こうしたことを通じてファン株主を獲得し経営方針に賛同し易い個人を味方に付けようとする動きが顕著だ。

ファン株主は会社理念や商品・サービスに強い愛着を持ち、株価下落局面でも狼狽売りをしないで保有してくれる向きが多いが、最近では推し活に絡んで“推し企業”がある向きも一定数存在し、物価高でも推し企業の商品は購入し続け値上げも許容できるという。十分な価格転嫁に悩む企業が多い中こうした動きはアドの時代から関係性の時代への転換を示唆している感もあるが、各社与党を増やす為の戦略がますます問われる時代になってきたか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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